386. 名無し募集中。。。 2009/06/27(土) 00:05:35.05 0
屋上へと続く階段を登りきりドアノブに手をかけた

「梨沙子、うちのものになってくれる?」

かすかに聞こえたそんな声にドアノブを回しかけた手が止まった
この声…
どこかで聞いたことのあるその声…
間違えるはずがない
夏焼先輩の澄み切ったキレイな声…

「なんだ…夏焼先輩はりーりゃんが好きだったんだ…」
私は堪えることのできない涙を拭いながら階段を一気に駆け下りた
366. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 23:34:47.17 0
梨沙子たちとは別の学校でのお話
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ねぇ・・・ホントに行くの?」
「何言ってるの今さら!応援してくれるって言ったのはキャップだよ!」
そうだけど・・・・といいたいところをこらえて熊井ちゃんについていく。
だいたい一瞬会っただけなのにどうしてこんなに熱中してるんだろう。
どうせ聞いても恋に理屈がなんたらかんたらって言われるだけだし・・・。
「みやと同じ学校ならバスで行けるね」
「でも待ち伏せなんてしたら迷惑じゃない?」
「放課後なら大丈夫ってなっきぃが言ってたし」
そうこうしているうちにみやたちの学校に着いた。
誰もいない・・・
「誰もいないじゃん!」
「まだ授業中なのかな?・・・」
「それぐらい調べてきなよ・・・付き合わされるこっちの身にもなってよ」
「いいじゃん。恋に待ち時間はつきものだよ!」
はぁ・・・熊井ちゃんの言う恋に○○っていうのは聞き飽きた。
でも、折角来た訳だし、他に術もない以上、待つしかない。
368. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 23:44:27.36 0
校門前に差し掛かると女の子が1人、2人の横をものすごい勢いで走りぬけた
「え、今の愛理ちゃんだよね?」
「そうだった?」
「ごめん熊井ちゃん!ちょっと」
「え、ちょっキャップ!」
なんでか分からないけど走りぬけていった愛理ちゃんの頬に光る物が見えて追いかけずにはいれなかった
こんなに全速力で走るのは何年ぶりだろう
愛理ちゃんの距離が詰まるたびに息があがっていくのがわかった
「愛理ちゃん!」
やっと追いついて愛理ちゃんの腕を掴んだ
肩で大きく呼吸をしていた愛理ちゃんは背中を向けたままこっちを見てくれない
「なんかあったの?」
「…」
「みやとなんか…」
「なんでも!なんでもないんです…」
そういってるわりには震えている愛理ちゃんの手
「でも…」
「ほっといてください!」
愛理ちゃんは腕をふりほどくともう一度全速力で駆け出して行った
377. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 23:57:42.23 0
「はぁはぁ…やっと見つけたよ…」
キャップの小さな背中が見えうちはその横へと並んだ
「キャップ走るの早いし」
問いかけても返事がない
いつもと違うその雰囲気に顔をキャップのほうへ向けた
「佐紀ちゃん?」
普通に素に戻ったうちはキャップのことを昔のように佐紀ちゃんと呼んでいた
それくらいキャップの顔は険しく長く続く道の一点をずっと見つめていたから
「熊井ちゃん。みやの高校戻るよ」
「え?でも、さっき乗り気じゃ…」
「気が変わったの」
「え、あ、うん…」
さっきまではうちが主導権を握っていたのにキャップのその険しい顔にはどうにも逆らえなかった
393. 名無し募集中。。。 2009/06/27(土) 00:38:49.76 0
上履きのまま私は校舎を出ると校庭も校門も一気に走りぬけた
どれくらい走ったただろうか
私の腕が誰かに掴まれて走り続けていた足が止まった

「愛理ちゃん!」

その声でもう誰だかわかった
清水さん…
泣いている姿なんて見せたくなくて私は清水さんに背中を向けた

「なんかあったの?」

清水さんの優しい声
でもそんな優しい声も夏焼先輩の澄んだキレイな声に聞こえてしまう
気づいたら私は清水さんの小さな手を振り払い止めていた足をまた大きく動かしていた
最終更新:2009年07月03日 01:11