611. 名無し募集中。。。 2009/10/04(日) 13:56:10.89 0
さっき、駐輪場にいたのって愛理ちゃんだよね?
一緒にいた人が恋人かな?
もうちょっとちゃんと相手の顔見ておけばよかったなぁ。
なぜか熊井先輩に目隠しされちゃったし。
後で愛理ちゃんに聞いてみよ!

熊井先輩と二人で部室に入ると何人かの先輩がすでに着替え終わっていた
「おはようございます!すみません、遅くなっちゃって」
「いいよいいよ、うちらが早かっただけだから」
明るくフォローしてくれる久住先輩
「あ、梨沙子ちゃん、みや見なかった?」
「え?・・・な、夏焼先輩?」

―――夏焼先輩・・・
徳永先輩が言ったその名前を聞いただけで胸が少しずきっと痛む

「そういえばみや、どうしたの?」
「なんかさぁ、さっきのことでいじってやろうと思ったのに逃げるように出て行った」
久住先輩と徳永先輩のやりとりしている中、胸の痛みを隠して着替えていると
後ろからドアの開く音が聞こえる

「あ、みや!帰ってきた!」
「熊井ちゃん、おはよ!あ、梨沙子、ドリンク用意しといたから」
ニコッと笑うと久住先輩と徳永先輩に絡まれながら再び部室から出て行った
613. 名無し募集中。。。 2009/10/04(日) 14:43:42.52 0
さっきのことをいじる・・・?
なんのことだろう、またあたしの知らないことかな・・・

あたしは部室を出ると、ゆっくりと息を吐いて空を見上げた

「もう分かんないよ・・・」

部員のことも、夏焼先輩のことも
この街のことも学校のことも、
この痛みがなんなのかも、全部分からない

わかんなすぎて、もうやだよ・・・

しょんぼりしながら歩いていると、その先で夏焼先輩たちが話をしているのが見えた
あたしは軽く頭を下げてその横を早足で駆け抜けた
614. 名無し募集中。。。 2009/10/04(日) 15:07:56.10 O
ちーがうっとうしく肩を組んで絡んでくる
「もうしつこいって!」「いやいや、夏焼さん、朝からごちそうさまですねぇ」

あぁ、サイアク…
まさかこの二人…特にちーに見られてたなんて…

なんとかごまかしていると梨沙子がいつもと違う様子で頭を下げて走っていく

また何か梨沙子あったのかな?
何かあったらうちに言えって言ったのに…

うちはちーを振り切って梨沙子を追い掛けた
616. 名無し募集中。。。 2009/10/04(日) 16:14:01.96 0
「梨沙子!」
腕を掴まれて振り向くと、夏焼先輩が少し怒った顔であたしを見ていた
・・・え?何?あたし、何かした?
掴まれてる腕は痛いし、引っ張っても放してくれない
いつもと違う先輩に正直ちょっとびびった

「ど、どうしたんですか?先輩おかしい・・・」
「それこっちのセリフなんだけど」
「え?」
「梨沙子今日変じゃない?つらそうな顔してる。何かあったんでしょ?」

あたしの両手を握って目をじっと見てくる夏焼先輩
あちゃー・・・あたしまた顔に出てたんだ・・・
マネージャーが暗い顔しちゃダメってさっき決めたばっかりなのに
あたし駄目だなあ・・・

いや、違う!あたしはダメじゃない!こんなことばっかり考えてるから暗くなるんだよ!
明るくいかなきゃ!あたしなら出来る!
頑張れ、頑張るんだあたし!

「先輩は心配性だなあ」
「・・・」
「大丈夫です。何もつらくない」
621. 名無し募集中。。。 2009/10/04(日) 17:10:11.56 0
あたしは笑顔でそう言った

「ほんと?ならいいけど・・・」
あたしの言葉に納得したのか、そっと手を離してくれる先輩

・・・ほら、あたしやれば出来るじゃん
ちゃんとうまく笑えるじゃん
そうだよ・・・クヨクヨしたって意味ないし
先輩に心配ばかりかけたくない
大丈夫・・・この調子で頑張れば・・・そのうち胸の痛みなんて・・・


「みやー!今度は梨沙子ちゃんにキスする気なのぉ?」
「愛理ちゃんに言ってやろー」
「・・・っ!?小春!ちー!うっさい!!バカ!!」



―――・・・・え??
622. 名無し募集中。。。 2009/10/04(日) 17:45:04.26 O
今、なんて・・・?

今度は・・・?
キス・・・?


愛理・・・ちゃん・・・?


「ったく、あいつら・・・」
夏焼先輩はブツブツ言ってたけどあたしは先輩たちの言ってることがよくわからなくて・・・
頭がついていかなくて・・・
聞き間違い・・・?
623. 名無し募集中。。。 2009/10/04(日) 17:47:55.27 0
キス? 愛理ちゃん? え?え? どういうこと?

頭の中をクエスチョンマークが飛び回ってる

「見たよー! さっき自転車置き場で愛理ちゃんとキスしてたとこ!」
「げっ!・・・・・ま、まじで?」
「まじぃ!」

!!!!!  夏焼先輩、恋人いたんだ・・・

久住先輩の言葉を聞いてクエスチョンマークは消えたけど
何もかも消えてしまって頭の中が今度は真っ白になった


「さっき恋人とキスしてたのに、もう次の人にキスしようとするなんてスケコマシー!」
「ちがーう! ちー、変なこと言わないで!」

徳永先輩の冷やかしに必死で反論している夏焼先輩の真っ赤な顔を、あたしは呆然と見ていた
625. 名無し募集中。。。 2009/10/04(日) 18:04:44.85 O
自転車置き場で愛理ちゃんとキスしていた夏焼先輩
さっき愛理ちゃんと一緒にいた人は・・・

顔を赤らめながら付き合っている人のことを話してくれた愛理ちゃんの相手は・・・


夏焼先輩・・・。
629. 名無し募集中。。。 2009/10/04(日) 20:44:51.52 0
「・・・先輩、ごめんなさい」
「え?」
「お腹痛いんで、朝練休んでいいですか?」

何も考えられなくなったあたしは、先輩の返事を聞く前に逃げるように部室に戻った。
いつもはうるさい部室も不気味なぐらい静かで、孤独だなって冷静に思った。

「はは。あたし・・・何してんだろ」

誰もいない部室で呟いた。ほんと、あたし何してんだろ。
なんで逃げたんだろう。なんで部活さぼったんだろう。
なんでこんなにショック受けてるんだろう・・・
なんかもう・・・バカみたい・・・

・・・先輩。悔しいけど、あたし分かっちゃった。
苦しかったわけが、胸が痛かったわけが、今やっと分かったよ。

「あたし、先輩のこと好きだったんだね・・・」

せっかく素直になれたのに、気付いた時にはあたしの恋は終わってた。
あたしはひとりぼっちで、声を殺して泣いた。
630. 名無し募集中。。。 2009/10/04(日) 21:05:30.72 0
トントントン
一人部室で泣いているとノックの音が聞こえる
部室なのになんでわざわざって思うけど泣いているから開けたくない
そのまま返事もせずにいると扉越しから声が聞こえる

「梨沙子、入るよ」
「・・・ぁ・・・」
声の主はママだった・・・
あたしはダメですとも言えなくて黙ったままでいたら
ゆっくりとママが扉を開けて中に入ってきた
632. 名無し募集中。。。 2009/10/04(日) 21:27:41.65 0
ママはあたしの隣に座るとそっと背中を撫でてくれた。
あたしは何も言わなかったし、ママも理由を聞いたりしなかった。
ただ、泣いてるあたしを温かく受け止めてくれた。

「梨沙子」
「ヒック・・・グス・・・うん・・・」
「・・・部活、辞めたいって思った?」

ママはいつの間にかあたしの髪を梳くように撫でていた。
ゆっくりと顔を上げてママを見る。
ママは寂しそうな、悲しそうな笑顔であたしを見つめていた。
あたしは涙を拭うと、ブンブンと首を横に振った。

「あたしは辞めない」
「うん」
「あたしはバスケが好きで入ったんだし・・・ママを一人にはさせないもん」
633. 名無し募集中。。。 2009/10/04(日) 21:40:41.79 0
梨沙子は辞めないって言った

ねぇ、梨沙子?
私ね、梨沙子がみやのことが好きだって言うことは薄々気づいていたんだよ
本人は気付いていなかったみたいだけど、みやと話す時の顔はすごく嬉しそうだったから

だから今朝ちーと小春があんなこと言っちゃって青ざめた
なんでそんなこと言うの?って・・・・

だけど私は二人よりももっとひどい仕打ちをしていたのかもしれない
梨沙子がみやのことを好きなのを知ってたのに言わなかったから・・・
みやには彼女がいること・・・
その彼女のことがすごく大好きなこと・・・

私・・・「ママ」失格だ・・・
637. 名無し募集中。。。 2009/10/04(日) 22:20:33.53 0
ママに言った言葉ではっと気がつく

そうだよ、あたしはバスケが好きだからこの部活に入ったんだ
なのに、夏焼先輩に彼女がいたってだけで何逃げてるんだろ・・・
あたしは自分に言い聞かすけど、
そうすればするほど先ほどの徳永先輩のセリフが蘇って涙が出そうになる
だからあたしはママにぎゅっと抱きついた

「ママ、ごめんなさい・・・」
「ん?」
「放課後からはがんばるから・・・今だけ・・・」
「うん」

関係ない・・・そんなんじゃない・・・夏焼先輩はただの先輩・・・それだけ・・・

639. 名無し募集中。。。 2009/10/04(日) 22:33:03.48 0
やるせない気持ちを隠して梨沙子を抱きとめた
辞めないって言ってくれた
ママを一人にさせないとも言ってくれた
そして、放課後から頑張るって言ってくれた
素直に嬉しいことだった

「梨沙子は絶対必要だからね?バスケ部にも、私にも」

言わないけど、もちろんみやにも・・・
梨沙子は一瞬ポカンとしたあと、思いが通じたのか嬉しそうにイヒヒって笑った
可愛い奴め

「・・・その言葉、今、一番嬉しい言葉かも」
「そう?よかった」
「ありがとうございます。あたし、ママといると安心する」
「え?」
「大好き。ママ」
最終更新:2009年10月05日 01:04