- 542. 名無し募集中。。。 2009/10/27(火) 22:56:56.50 0
- 部室はいつも通り慌しかった
いちいち、落ち込んでいる暇も無いくらいに・・・
考える時間が無いくらいの方が今はありがたい
「梨沙子」
「はいっ」
「あくび。口ちゃんと手で押さえな」
「あ・・・」
「部活中は、寝てる暇なんて無いよ」
「わっ、わかってます〜」
そう、集中しなきゃダメだ
愛理の事は本当に大切だけれど、これはうちと愛理ふたりの問題
部活は部員と監督、学校、家族・・・
いっぱいの人が関わって、応援してくれて
個人的な問題で、疎かにするわけにはいかない
着替えもいつもより早めに終わり
気合を入れる為に、両手で頬っぺたを叩いた
「よしっ」
小さい声で言ったつもりだったのに
バッシュの紐を結んでいた熊井ちゃんと目が合って、笑われた
ちょっと頭を掻いて、立ち上がる
「みや、ちょっと」
- 544. 名無し募集中。。。 2009/10/27(火) 22:58:33.02 0
- 「何?」
体育館に向かおうと意気込んで立ち上がったら
部室の外へ呼び出され、空き教室まで連れてこられた
「監督、今日職員会議だから遅くなるって」
「へ?」
こんなところまで連れて来て、何かと思えば
「みんなには、先生に呼び出されたって言っておくよ」
そう言って、まぁはジャージの上着と
見慣れない包みをうちに差し出したした
「みや、お昼食べてないんでしょ」
「・・・何で」
「そんなんでね、バスケ出来るわけないでしょ」
「・・・大丈夫だよ、別に」
「とにかく、食べないとダメ。マネージャー命令」
「キャプテンに?」
「健康面を見るのはマネージャーの仕事」
「そうかも、だけどさ」
「ふたりがどーとか、何があったとか
詳しくは知らないし、今は聞かない
それ食べて、早く部活来て。キャプテンなんだから」
浮かない顔をしているうちを見て
机の上にソレを置き、まぁは足早に出て行った
- 545. 名無し募集中。。。 2009/10/27(火) 22:59:18.03 0
- HRが終わるのと同時に、高等部の校舎へ急いだ
結構来てるけど、やっぱり緊張する・・・
悩んだけど、やっぱり渡す
折角、早起きして作ったし・・・
幸い、まだ先輩のクラスはHRが終わっていないみたいで
教室の前で待つことにした
「・・・はぁ」
無意識に出た溜め息。幸せ、逃げちゃうかな・・・
「愛理?」
声のする方へ顔を向けると、あたしの待ってた人
「あの、ちょっといいですか?」
「うち?いいけど」
キョロキョロと大きな目で周りを確認してから、笑う
バスケ部にとってもあたしにとっても頼りになる人
先輩を廊下のひと気の無い方へ
「珍しいね。どした?」
- 546. 名無し募集中。。。 2009/10/27(火) 23:00:00.39 0
- 「あの、これ・・・みやに渡して貰えませんか?」
少しソワソワした様子の愛理に、薄いピンク色した包みを渡された
「お弁当?」
「はい」
「うちが渡していいの?たぶんもう部室に居るから、一緒に行く?」
「いや・・・先輩からで、お願いします」
晩御飯?な、わけないよね
お昼はいつも一緒に・・・
「これ、何時のおやつ?」
「お昼・・・」
「食べなかったの?」
コクっと伏し目がちに頷く愛理
「何か、伝えることある?」
「えっと・・・」
うちの前ではいつもフニャフニャしてるんだけど
今日は、何か肩に力が。しかも、歯切れの悪い台詞ばっか
「・・・ごめんなさいって・・・」
「謝るの?」
- 547. 名無し募集中。。。 2009/10/27(火) 23:00:45.28 0
- 後、部活頑張って、って
そんなこと、愛理が直接言わなきゃ意味無いのにさ
詳しくは掘り下げなかったけど
何か無きゃうちにこんなこと頼まないよね
めんどくさい、までは思わなかったけど
ふたりはうちから見ると、よそよそしい時がある
ま、一人モンのうちが言える立場じゃないんだけど
付き合ってるんだから、もっと、ねぇ・・・
全く。みやもみやだよ
激しい運動するってわかってるんだから
しっかり食事くらい摂って欲しい
愛理の事となると、よけいな事考える
みやを動かす原動力でもあるし
ブレーキをかけてしまう危険性もある
見守る方も、気ぃ使うんだよ
しっかりしてよ、キャプテン・・・
- 548. 名無し募集中。。。 2009/10/27(火) 23:01:51.00 0
- 昼ご飯食べてないって、何で知ってんだろ
見られてたって事かな?
思い出すつもりは無かったけど、無理だった
お腹はあんまり空いてないけど、食べないと・・・怒られる
数分考えて包みを開いた
まぁが弁当二つ持ってきたのかな?何て考えてると
手紙が添えてあった
外に書いてある文字だけで、それは愛理だってわかって
あ、ヤバいって思った
うち、泣くじゃん・・・
読むと、部活行けないって思った
読みたいけど、我慢だ
お弁当箱を開けると、不恰好だけど手作りのおかず
ちゃんと栄養を考えてあるって、わかる
いっつも、お昼購買とかコンビニのパンで
「そんなのじゃダメ」って言われてて・・・
- 549. 名無し募集中。。。 2009/10/27(火) 23:02:36.79 0
- −−−−−−−みや、今日もパン?」
いつもの場所、いつもの風景
横には困った顔の愛理
「だって朝早いからお母さんに作ってもらうの悪いし」
「でも、それじゃ炭水化物しか摂れないよ?」
「タンスイカブツ?」
「もぉ・・・試合の日とかはどうしてるの?」
「試合の日は作ってくれるよ。試合だし」
「何それ。でも、試合じゃない日の方が多いんだから
栄養ちゃんと摂ってよ。倒れちゃうよ」
「大丈夫だよ〜。今までも大丈夫だったし」
「今大丈夫だからって明日が大丈夫なんて事ないの
ちゃんと体大事にしてよ・・・」
「う〜ん・・・なるべく・・・」
「なるべくじゃダメ!ジュースとかでも良いから野菜も摂って」
「うん。・・・あぁ、じゃあさ」
「なに?」
「気が向いた時でいいからさ、愛理の手作りお弁当、食べたい
栄養いっぱいの。あ、愛情もいっぱいの」
「え?」
「ダメ?」
「作ったこと無い、よ」
「何でもいいから。気の向いた時で」
- 550. 名無し募集中。。。 2009/10/27(火) 23:03:28.35 0
- ・・・自信なさ気に頷いたよね
気の向いた時って、今日だったの?
何で、今日だったの?
正直、味なんてわかんなかった
ここで独りで食べてると、また立ち止まって、振り返ってしまう
急いで口に詰めて、飲み込んで
愛理の初めての手作りのお弁当
お腹も、胸もいっぱいになった・・・
部活、頑張るか
部室に荷物を置いて体育館まで、走った。
手紙は、ごめん。後で、読むよ
最終更新:2009年10月28日 19:27