597. 名無し募集中。。。 2009/10/29(木) 15:27:07.81 O
通い慣れたこの道
この先に愛理がいると思うと自転車をこぐスピードも自然と速くなる

時刻はちょうど九時を過ぎた頃
きっと愛理は宿題をしてるんだろうな・・・
そんなことを考えているとあっと言う間に家の前

二階を見上げると明かりが点いていて中に愛理がいることを教えてくれる

愛理、うちちゃんと考えた
でも答えは一つしかなかったよ

ただ愛理が好きなんだ・・・


『部屋にいるよね?
外出れるかな?』
うちはそれだけを打って送信ボタンを押した
669. 名無し募集中。。。 2009/11/01(日) 23:27:39.11 O
愛理の返事を待つ時間がすごく長く感じられた
この感じ・・・そう、あの時みたいだ・・・


『愛理のことが好きです。だから、うちと付き合ってください』


うちが愛理に告白してから愛理が返事をくれるまでのあの時間
きっと実際はそんなに長くなかったかもしれないけど、
あの時は愛理の沈黙が怖くて心臓が壊れるかと思ったっけ

そんなことを思い出していると門が開く音が聞こえてハッと顔を上げる

「みや」
「愛理、ごめん・・・何か・・・その・・・」
「・・・うぅん」
「・・・あの・・・さ・・・その・・・な、中とか入ってもいいかな・・・?」
「あ・・・うん」
716. 名無し募集中。。。 2009/11/03(火) 20:12:57.87 O
みやを部屋の中に通す
部屋に向かう間、二人とも一言も発さなくて・・・
きっとお互い何を言ったらいいかわからなかったんだと思う

「どうぞ」
「あ、うん・・・」

みやは中に入るといつも座るベッドに腰を下ろす
あたしはその光景をぼーっと見つめたまま・・・

「愛理・・・?」
「・・・へ・・・?」
「こっちおいでよ」
「う、うん・・・」

みやがあたしを手招きするからあたしはおそるおそるみやの隣に腰をおろした
718. 名無し募集中。。。 2009/11/03(火) 20:29:09.00 0
また沈黙…
自分でも何を話したらいいのかわからなかった
謝ったほうがいいのかな…とか
このままみやが何か話してくれるの待ったほうがいいのかな…とか
色んなことが頭をめぐっているとその沈黙を破るようにみやが口を開いた

「ごめん…」
「え?」
「突き飛ばしたりなんかして…」

しっかりと目を合わせ本当に申し訳なさそうにあたしを見ているみや
その目には少しばかし光るものが見えて
あたしは何も言わずみやの胸に飛び込んだ

「あ、愛理?」
「…好き…」
719. 名無し募集中。。。 2009/11/03(火) 20:38:05.82 O
胸に顔をひっつけるとみやの心臓の鼓動が速くなっていくのが分かる

ねぇ、みや・・・
この鼓動の速さはあたしのことを好きって思ってくれてるってことなのかな
あたし、みやに嫌われてないよね・・・?

不安になってみやにぎゅっと抱きつく
するとみやはあたしの背中にそっと腕をまわして優しく抱きしめてくれる

「うちも愛理が好きだよ・・・
ちゃんと伝えれなくてごめんね」
721. 名無し募集中。。。 2009/11/03(火) 21:56:17.30 0
小さく首を横に振った愛理をさらにぎゅっと抱きしめた
この温もりと匂い
絶対に離したいってそう思えた…

どれくらい抱きしめてたのかわからない
10分?20分?1時間?
例え短くてもそれはとても長く感じた
体を離すと瞳に涙を溜めた愛理と目が合う

「愛理…」
どちらからともなく唇が触れた
優しく触れたその唇から温もりが全身に伝わっていく
723. 名無し募集中。。。 2009/11/03(火) 22:08:16.48 0
離れた唇をうちはきゅっとかみ締めると
そばにあった愛理の手を優しく握り締めた

「ほんとにいいの…?」

最後の確認
本当はもっと大事にしたかった…
もっとかっこよくきめたかった…
でも愛理が望むことは叶えてあげたかった…

小さく頷いた愛理はそっとうちの手を握り返してくる
750. 名無し募集中。。。 2009/11/04(水) 19:10:00.15 0
愛理の小さな肩を持ち倒すとベッドが軋み音を立てた
真っ直ぐに向けられてる視線
そっと愛理の頬をなでると首筋にキスを落とす

「…っ」
うちの肩を持つ愛理の手に力が入った
「大丈夫?」
「うん…」
何度も何度もそう確認して愛理を傷つけないように傷つけないようにと
精一杯の気遣いを見せて行為を進めていく

ワイシャツのボタンに手を添えて外そうとする
それだけで手が震えて…
「ご、ごめん」
ボタン一つ外すのでさえこんなありさまなのに
愛理をちゃんと優しく抱ける自信なんて本当はなかった…
754. 名無し募集中。。。 2009/11/04(水) 21:06:11.13 0
震える手があたしのボタンの上を行ったり来たり
まるで泳いでるかのように空中を舞っている
「ご、ごめん…」
申し訳なさそうに何度もそう謝るみや

あたし本当にこれでいいのかな…
みやを困らせて、みやの気持ちも考えずに自分だけ突っ走ってる…

徐々に外されていくボタンが残り1個になったとき
急に自分の上に重みを感じた
「え…」
あたしをそっと包み込むように抱きしめているみや
顔は見えないけどその肩は微かに震えてた…

「ごめん愛理…」
「みや?」
「やっぱうちには出来ない…」
758. 名無し募集中。。。 2009/11/04(水) 22:08:26.12 0
「愛理が嫌いなんじゃないよ。大切だから…すっごい大切だから…だから…」
消えちゃいそうなくらい小さな声で囁くみやの声

あたしバカだ…
こんなにも大切にしてくれて
こんなにも優しく包んでくれて
なによりいつもそばにいてくれたみや…
どうして信じてあげられなかったんだろう…

「みや…ごめんね…」
「愛理?」
「ごめっ…ごめんなさい…」
ちゃんと謝ってみやとずっと一緒にいたいって言いたかったのに
涙がとめどもなくあふれて上手く言葉にできない

「愛理…、うち今はこのままでいいよ。朝一緒に登校して、お昼一緒に食べて色んなことはなして、
それから放課後部活終わったあとはたまには寄り道もして、そしてバイバイのキスして…。
うちそれだけで十分幸せだよ。愛理は違うの?」
みやの不安そうな瞳があたしに向けられる
違くなんかないよ…
あたしも本当はみやと一緒にいれるだけで幸せだよ…
大きく首を横に振ったあたしをみやはまたそっと抱きしめてくれた
763. 名無し募集中。。。 2009/11/04(水) 23:09:04.49 0
抱きしめ合ってるみやの体温があたしのと一つになってる、気がする。

Hもこんなカンジなのかな?
もっと熱かったり暑かったりするのかな?
それとも寒いのかな?・・・・・ほら、服脱ぐわけだし・・・

ちょっと、ほんのちょっと、拍子抜けしたってのも本音だけど、それ以上に幸せだった。
だって、みやはこんなにあたしを大切にしてくれてる、それがすっごく分かったから。

シなくても十分じゃん。
それどころか、めちゃくちゃ恵まれてるじゃん。
雑誌の悩み相談には、恋人が最初っからやたらシたがってるんだけど体目当てなのかな? なんてのがあったりするってのに。


みやの背中をゆっくりと撫でながら感じていたそんなあったかい気分は、なんとも場違いな音に掻き消された。
764. 名無し募集中。。。 2009/11/04(水) 23:10:23.21 0
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

いきなり鳴り響き始めた能天気な音に、飛び上がるほど驚いて、少し身を起こす。
『ダーリンI LOVE YOU』じゃないから、相手は愛理じゃない・・・・・当たり前だけど。

『なんちゅう恋』だから、バスケ部の子かな?

自分で設定したとは言え、余りにもKYな音に、我ながら呆れる。
つーかさ、この状況でかけて来るヤツが空気読めてないよね、と心の中で毒づく。
もちろんそんなこと相手の知ったこっちゃないんだけどさ。


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

無視を決め込むつもりが、呼び出し音はしつこく鳴ってる。
普通、こんなに鳴らさなくない? 7回とかじゃない? うちだけ?

愛理も眉を下げて困った笑顔。

見つめ合うこと数秒。
「・・・出たら?」
愛理が苦笑して言う。
「でも・・・・」
「こんなに鳴らすってことは、大事な用なんじゃない?」
「・・・・・・」
「あたしなら構わないよ。気にしないから」
「・・・うん・・じゃあ・・・」
765. 名無し募集中。。。 2009/11/04(水) 23:13:19.01 0
みやがベッドから降りて携帯を手に取る。
きっと大事な用なんだろうって本当に思ってたし、十分幸せだったから気にしてなかった・・・・

「梨沙子だ。なんだろ?」

みやのこの言葉を聞くまで。

766. 名無し募集中。。。 2009/11/04(水) 23:15:13.70 0
「・・・・り! ・・いり!  愛理!」
「・・・え?」

電話に出てからのみやの会話は耳に入らなかった。

気付けばあたしの前にみやの顔。

「梨沙子がさ、部室の鍵失くしたって!」
「・・・・鍵?」

そんなおおごと? 自宅じゃないし、たかが学校の鍵じゃん・・・
妙に冷静なのはなんでだろう。

「そう。持ってるのはマネとあたしだけ。
無闇に持たせられないからね。ほら、女子の部室って、泥棒とかに狙われるし」

あぁ・・・・。納得はするけれど、心のモヤモヤはちっとも晴れない。

「とりあえず、うち、帰るね。ごめんね! またゆっくり話しよ!」

バタバタと部屋を出て行くみや。
いつものように玄関まで見送る気にはならなかった。

なんでなのか、はっきりとはわからなかったけど。

きっと電話の相手が茉麻先輩だったら、こんな気分じゃなかったんだろうな、とは漠然とわかってた・・・
784. 名無し募集中。。。 2009/11/05(木) 14:35:16.46 O
『先輩っ……部室の鍵が…グス』
『え?鍵がどうしたの?』
『ないんです…ぅぅっ…どうしよう……』
『え!なくしちゃったの!?今どこ!?』
『今家です…』
『わかった。すぐ行くから待ってて』
『えっ…せんぱ…』

何か言い掛けた梨沙子を無視して電話を切った。
愛理の家を出るとチャリで全速力で梨沙子んちまで飛ばした。

「ったく。バカ梨沙子」

一人呟いて夜道を進む。
愛理には本当申し訳ないことをした。
だけど、泣いてる梨沙子をほっとくことは出来なかった。
だって、困った時は何でも言ってって約束させたのはうちだから。

それに、思わず電話してくるなんて、
梨沙子は今相当テンパってるんだと思う。
一人で部屋で泣いてる姿を想像すると自然にチャリを漕ぐスピードが上がった。

正直、鍵の行方より梨沙子が心配だった。
最終更新:2009年11月11日 20:55