- 790. 名無し募集中。。。 2009/11/05(木) 20:37:01.86 O
- その日遅くに、みやから電話がかかってきた。
「寝てた?」と訊かれて、ただ「ううん、まだ起きてたよ」って答えたけれど、
本当はベッドには入ってたけれど眠れなかっただけ。
2人で1度学校を往復してみたけど、暗いからか、やっぱり見つけられなかった
明日明るい時間にもう1回探してみるけど、それまでにもしものことがないように
お母さんに頼んでみやんちの物置の鍵を一晩拝借してつけておいた
みやの顛末報告を褪めた気分で聞いてた。
相槌が冷淡になってないかな? ってちょっと心配したけど、
興奮しているみやは気付いてないみたいだった。
「部活後じゃ暗いから朝探すから、明日は一緒に登校できないけど、ごめんね」
「うん、それは仕方ないから、気にしないで」
みやもあたしのこういう返事を予想していたと思う。
あたしも、これが梨沙子ちゃんじゃなくて他の人とでもこう答えていたと思う。
でも、自分で驚いた。残念そうに言ったけれども、少し演じていることに。
あたしはそれに気付いていた。
そして、もちろん気付いていないみやは、アッサリと爆弾を落とした。
- 791. 名無し募集中。。。 2009/11/05(木) 20:45:32.02 O
- 「もし明日も見つからなかったら顧問の先生に言って付け替えてもらうしかないなぁ。
そうなったら、うちが失くしたことにするつもりなんだ。
入ったばっかで叱られるのはかわいそうだからさ」
それを聞いた瞬間に心がざわめいた。
なんでそこまでするの?!
喉まで出掛かった言葉を必死で飲み込んで、ため息を、細く長く、それと気付かれないように吐く。
ねぇ、みや?
梨沙子ちゃんからの電話まであたしと抱き合ってたの、覚えてる?
ねぇ、みや?
梨沙子ちゃんを妹みたいな存在って言うけれど、あたしにはどうしてもそうは思えないよ。
この時ちゃんと口にしていたら。
昼の屋上でみたいに、素直に感情をぶつけてたら。
あたしたち、こうはならなかったのかな・・・・・?
・・・きっと違うね。
全部タイミングの問題。もう少し大げさに言うなら運命とか。
あんな時に梨沙子ちゃんの電話が鳴ったのも。
この後合宿になっちゃってみやとしばらく逢えなくなったのも。
そして、この後に鳴らした電話の結末も。
- 792. 名無し募集中。。。 2009/11/05(木) 20:50:58.31 O
- みやとの電話を終えて、ますます眠れそうじゃなくなった。
無性に、誰かと喋りたかった。
脳裏に優しい笑顔が浮かんだけど、もう深夜。
ただのトモダチに普通こんな時間に電話なんかできない。
だけど、あの人なら許してくれるような気がした。
携帯のディスプレイの時計を見つめる。
1回だけ。1回だけ鳴らさせて。それだけだから。
誰に弁解してるのかわからなかったけど、思い切ってボタンを押した。
トゥルッ!
ほんとに1回だけ。
トモダチにワン切りとか、何考えてるんだろう、あたし。
・・・もう寝てるかな? 音に気付かないかな? いたずらだと思うかな?
心臓がドキドキしてる。
トモダチにかけてこんなにドキドキしたことあったっけ?
なんでこんなにドキドキするんだろう?
よくわかんない・・・・。
なんか最近、よくわかんないことが増えた気がする。
- 793. 名無し募集中。。。 2009/11/05(木) 20:52:42.74 O
- 後になってわかった。
占いをしてたんだなって。
花びらを1まいずつ取っていくように、掛かってきたら・・・掛かってこなかったら・・・って。
そしてこの電話占いの結果は――――――――――正しかった。
- 794. 名無し募集中。。。 2009/11/05(木) 20:56:49.90 O
- 結局この鍵事件は、梨沙子ちゃんがかばんから自宅の鍵を出そうとした時に落としてて、
梨沙子ちゃんちの玄関脇の鉢植えにあったのを、
朝梨沙子ちゃんが家を出ようとした時に見つけたという、なんてことはないオチだった。
梨沙子ちゃんは慌ててみやに電話したけど、
必死で梨沙子ちゃんちに向かってたみやは気付かなくて。
汗だくで家に着いたら、申し訳なさそうに梨沙子ちゃんが立ってた、ってみやが笑いながら話してくれた。
そこに落ちてたなら誰かにスペアキーを作られたってこともないだろうから、
鍵を変える必要もないし、モウマンタイだよ、だなんて満足げな顔してたけど。
みや?
あたしにとってはこの事件は大問題だったんだよ・・・。
最終更新:2009年11月11日 20:56