- 512. 名無し募集中。。。 2009/06/27(土) 16:43:49.21 0
- 私は砂浜の上の流木に腰をかけるとずっと波の音を聞いていた
気づくと私の頬はまた涙で濡れていた
「愛理ちゃん!」
背中越しに誰かが私を呼ぶ声が聞こえた
でも遠すぎて誰だがわからない…
「愛理ちゃん!」
今度ははっきり聞こえた
夏焼先輩の声…
自分の空耳かと思ったけど夏焼先輩の走ってくる足音が聞こえ
気づいたときには夏焼先輩が着ていたパーカーが私の体にかかっていた
「1人でこんなとこでなにやってんの!親御さんもみんなも心配してたんだよ!」
「ごめんなさい…」
「キャプ達に聞いたらなんか誘拐とかなんとか言ってたけど大丈夫?なにもされてない?」
「こわかった…恐かったよ…」
私の震える手を夏焼先輩の優しい手が包みこんだ
- 513. 名無し募集中。。。 2009/06/27(土) 16:50:16.22 0
- なんで先輩が私を探していたのか、誰から聞いたのかわからない
でもそんなこと気にならなかった
それよりも先輩が助けてくれた
誰よりも助けられたかった先輩が本当に助けに来てくれた
- 514. 名無し募集中。。。 2009/06/27(土) 16:51:34.30 0
- 「大丈夫。もう大丈夫だから」
夏焼先輩の優しい声に私は力が抜けたようにへたりこんだ
そんな私を夏焼先輩はぎゅっと抱きしめるとずっと「大丈夫。大丈夫だから」って言ってくれた
腰が抜けて歩けない私の手を夏焼先輩は引くと静かに歩き出した
「キャプ達があっちの公園で待ってるから行こう」
「はい」
先輩の手はずっと私の手を握ったまま
どうせならこのまま時間が止まればいいのにって思った…
- 515. 名無し募集中。。。 2009/06/27(土) 17:01:46.35 O
- 夏焼先輩は優しい
でもその優しさが人を傷つける、その優しさが罪作りなのよ
優しくしないで・・・そんなに優しくされたらもっと夏焼先輩のことが好きになっちゃうじゃない
離れられなくなるわ・・・
りーちゃんには悪いけど
もっと夏焼先輩と一緒にいたいって現にそう思っちゃう私がいるんだから
- 516. 名無し募集中。。。 2009/06/27(土) 17:03:31.86 0
- 気づいたら私は先輩の腕をギュッと引っ張っていた
「うん?愛理ちゃん、どうした?」
優しく私の顔を覗き込む先輩
「ご、ごめんなさい・・・その・・・」
もうちょっと二人でいたいなんて言えるわけなくて口ごもっていると
「はい・・・」
私の前で背中を向けてしゃがむ先輩
「え・・・?」
「足まだちょっと震えてる」
- 519. 名無し募集中。。。 2009/06/27(土) 17:32:33.85 0
- 先輩におんぶされて公園まで行くと、清水先輩と熊井先輩がいてさらに安心した。
二人とも、よかったーと言って抱きしめてくれた。
しばらくベンチに座って気持ちを落ち着ける。
すると、公園に誰かが走ってきた。
街灯の明かりの下に照らされたのは、りーちゃんだった
「・・・・りーちゃん」
「え?梨沙子?」
りーちゃんはあたし達を見つけると、力が抜けたようにその場に座り込んだ。
呼吸が荒く、すごい汗をかいている
「・・ハァ・・ハァ・・愛理・・・?」
「・・・・りーちゃん」
「よ、かった・・・無事で・・・」
泣きそうに顔を歪めるりーちゃんは、いつものりーちゃんで
私が知ってるりーちゃんで
無意識にりーちゃんの側に駆け寄った
「・・・遅いよ」
「・・・ハァ・・・ハァ・・ごめ・・・ん」
まだ肩で呼吸をしているりーちゃんの正面に同じように座る。
「バカ・・・」
そう呟くと目からひとつ雫がこぼれた
- 520. 名無し募集中。。。 2009/06/27(土) 17:46:22.48 O
- りーちゃんを見て横に夏焼先輩を見て今日のことを思い出す
りーちゃん、私に何も隠し事してないよね?
なんて聞けるはずもなくて咄嗟に私はりーちゃんから顔を逸らす
「え…愛理?」
戸惑った表情のりーちゃん
ごめんなさい、今りーちゃんの顔を真っ直ぐみれないの
そんな私たち二人に流れる微妙な空気
そんなときに
「愛理ちゃん、今日は帰ろう
家まで送っていくから」そう言って私の腕を取る夏焼先輩
それだけで心臓がドキドキしてしまう単純な私
- 525. 名無し募集中。。。 2009/06/27(土) 20:37:45.17 0
- みやと愛理が帰っていく。
「また明日」
みやは残された3人にそう言って愛理を連れて帰った。
「さて、うちらも帰ろうよ」
ふと我に返ると隣にいた背の高い女の人がそう言った。
「梨沙子、ちゃんだっけ?」
「あ、はい・・・」
私は首を傾げた。あれ、誰だっけ?ん、もう一人わからない人が。
「えぇ、キャップおかしいよこれー」
「みたいだね」
「あ、あのさ知らない?私たちのこと」
「んっ・・・ごめんなさい」
でもどこかで見たことはあるような・・・。
「みやと同じバンドなんだ」
「あ!」
「わかった?よかった」
背の小さい方の人が言ってくれてようやく理解する。
そういえばそうだった。でもあのときはみやしか見てなくてあんまり覚えてない。
制服が違うから別の学校なんだろうか。
- 526. 名無し募集中。。。 2009/06/27(土) 20:45:28.94 0
- 「でね、帰りなんだけど『足』呼んであるから安心してね」
熊井さんはそう言って公園の外を指差した。
「あ、呼んだの?すぐ来てくれた?」
「みたい。さ、行こう」
熊井さんに腕を引っ張られて公園の外へと連れて行かれる。
「あ、えっと、あたし一人で・・・」
「何時だと思ってんの。素直に一緒に来なさい。
安心してよ変なことしないから、ね?
みやにも頼まれてるしさ。」
みやの名前を出されて断れない、そう思った私は素直に従った。
「ハイ・・・あ、ありがとうございます」
「よし、いい子」
熊井さんが私の頭を撫でる。
大きくて柔らかい手。
みやとは違う感触でなんだかすごく安心した。
「遅いよ熊井ちゃん」
「ごめん、まーさん」
「佐紀ちゃん久しぶり。」
「お久しぶり、まーさん」
公園を出てすぐのところに車があってその前に女性が一人立っていた。
背はそこそこ大きくて・・・・暗くて顔はよく見えないけど・・・・
なんとく、本当になんとなく・・・
ママみたいな人、そんな風に思った。
- 529. 名無し募集中。。。 2009/06/27(土) 22:18:06.76 0
- 家までの帰り道
先輩はずっと私の手を握ってくれた
手に汗をかいているのが自分でもよくわかる
「せ、先輩?」
「ん?」
「あの、な、なんで私のこと探してくれてたんですか?」
「キャプテンから連絡があったんだ、愛理ちゃんが家に帰ってないし心当たりはないかって
それで梨沙子にも連絡入れて探してた」
ズキッ・・・
先輩は自然とりーちゃんことを“梨沙子”って呼んだ
それだけで胸が苦しくなる
先輩が探してくれて嬉しいのに・・・
思わず先輩の手をギュッと握ってしまう
「愛理ちゃん、まだ怖い?」
先輩は私がまださっきの恐怖から力を込めたと勘違いしてるみたい
繋いでいた手を離すと私の肩をそっと抱き締めてくれる
- 535. 名無し募集中。。。 2009/06/28(日) 00:28:17.37 0
- 「もう大丈夫だから」
先輩の優しい声
それを聞いただけで安心する
「先輩」
「ん?」
「先輩はどうしてそんなに優しいんですか…?」
私の思いがけない質問に夏焼先輩は目をまんまるくして私を見つめた
「どうしてって…う〜ん。なんでだろ。1人になるのが恐いからかな」
「1人になるのが恐い?」
「うん。もう1人は嫌だから…」
切なそうで寂しそうな顔
「先輩?」」
「ううん。なんでもない。それより早く帰らなきゃ親御さん心配しちゃうし帰ろ」
先輩はそれ以上答えずにまた私の手を引いて歩き出した
前を歩く先輩の背中は今まで私が見てきた輝かしい背中とは違ってどこか寂しそうな背中をしていた
- 536. 名無し募集中。。。 2009/06/28(日) 00:37:12.11 0
- 愛理ちゃんの肩を抱いた。やっぱりまだ少し震えている。
それでもある程度は治まっているみたい。
今はっきりわかることは、愛理ちゃんは私を求めている。
でも、ご両親も心配しているそうなので、早く送ってあげよう。
私も今日は疲れたし。
もうすぐ期末テストが始まる。それが終われば夏休み。
キャプ、熊井ちゃんとのバンドをしっかりするためにも
夏休みの補習が課せられる赤点は避けなければ・・・。
久しぶりに部活に出て、汗を流すのもいいだろうし。
この間は少し梨沙子や愛理ちゃんとも距離を置いたほうがいいかも。
梨沙子を見る熊井ちゃんの目が少し気になるけど。
- 541. 名無し募集中。。。 2009/06/28(日) 01:24:31.27 0
- >>540
の前
先輩とふたりっきりの時間はあっという間で
「今日は眠れそう?」
心配して私を見る先輩
「大丈夫です、疲れてるのでベッドに寝転んだらあっという間です」
本当は眠れるはずがないと思ったけど咄嗟に笑顔を作った
「無理しないで」
そう言って先輩は私の頭を優しく撫でる
「あの先輩!」
「ん?」
「えっと・・・その・・・ありがとうございました」
本当はりーちゃんのこと好きなんですかって聞きたかったけど
そんなこと聞いて傷つきたくない
それにまだ先輩とりーちゃんがそういう・・・のは信じたくない
- 545. 名無し募集中。。。 2009/06/28(日) 01:31:16.02 0
- 名残惜しそうな愛理ちゃんと別れて私も家に急いだ。
部屋に戻るとベッドへ思い切り倒れこんだ。
「なんか、疲れたなぁ・・・」
久しぶりに思いっきり走った気がする。
だからかな。
なんだか今日はいろいろありすぎた。
いろんな人の顔が頭の中をグルグルと回っていく。
最後に出てきたのは梨沙子だった。
あの艶っぽい表情が頭から離れない。
昨日初めてまともに喋ってホテルへ連れ込んで泣かれて
今日「私のものになれ」と勝手なことを言ってカラダを奪った。
これでよかったのか。なんて普段は全然考えないのに。
流れるままに関係を持ってきたのに
何で今さら後悔するようなことを考えているんだろう。
- 546. 名無し募集中。。。 2009/06/28(日) 01:32:07.54 0
- でも、何度思い出しても梨沙子以外の人に「自分のものでいて」なんて言った覚えがない。
じゃあなんで自分はあの時あんなことを口走ったんだろう。
なんて独占欲なんだろう。
誰かに取られたくない?誰に?熊井ちゃん?
違う、そういうことじゃなくて・・・
「あーもう・・・」
思考に行き詰って携帯を手に取ると梨沙子にメールを打った。
女の子を誘うときみたく、用事だけのメール。
返事はなかなか来なくて私は携帯を持ったまま眠ってしまうのだった。
- 550. 名無し募集中。。。 2009/06/28(日) 01:36:31.27 0
- お母さんとお父さんにこっ酷く怒られて私は俯きながら自分の部屋へあがるとベッドに寝転がった
疲れているはずなのにどうも寝付けそうにない
今日の出来事がまた私の胸をくすぐり苦しめる…
携帯の電話を知らせる着メロが響き私は携帯を開いた
「もしもし?」
「あ、愛理ちゃん?」
「えっと…清水さん?」
「うん。ごめんね突然」
「いえ」
電話の相手は清水さんだった
「今日は眠れそう?」
夏焼先輩と同じことを聞かれた…
それだけで先輩の顔が私の頭を過ぎる
「私で良かったら寝付けるまで話相手になるよ」
優しくて暖かい清水さんの声は私に安心を与え心に暖かさをくれた
清水さんとの他愛ない会話をしている間だけはりーちゃんや夏焼先輩のことを思い出さなくて済んだ
気づいたら私は携帯を握りしめたまま眠りについていた
最終更新:2009年07月03日 01:14