420. 名無し募集中。。。 2009/11/26(木) 03:01:18.63 0
「…ん」
目が覚めるとすぐ目の前には天井
起き上がって目をこすりながら周りを見てみると昨日あったはずの自分の荷物がなくなっている
「え!?な、なんで?」
慌てて飛び起き部屋を改めて見回すと昨日泊まる予定だった自分の部屋じゃないことに気づいた
隣のベッドに目を移すと綺麗な寝相で寝息をたてているまぁが見えて「そういえばうち昨日…」

やっと思い出した
うち昨日、梨沙子ちゃんに振られてまぁさんの部屋に泊めてもらったんだっけ…
時計を見るとまだ夜が明ける前
うちはまぁを起こさないようにそっと部屋を出ると自分の部屋へと向かった

廊下を出てしばらくあると自販機などが置いてある休憩所のようなスペースにあるソファーに
腰をかけ携帯を険しい顔で見つめてる小春先輩を見つけた
「小春先輩?」
「あ、熊井ちゃん」
「こんな時間に何してるんですか?」
「ちょっとメールの返信を…って熊井ちゃんこそこんな時間に廊下うろつくなんていけない子だ〜」
「うちは部屋に戻ろうとしてただけです。昨日まぁの部屋で寝ちゃったから…」
「ふ〜ん…、あっ!だからか!」
何か思い出したかのように拳を手に平でぽんっと叩いた小春先輩
「なにがですか?」
「いや〜あたし達の部屋で梨沙子ちゃん寝てたから、なんでかなぁって思ってたの。
しかも、みやと一緒のベッドで寝てるんだよ〜。さっき布団めくってびっくりしちゃった」
「え…」
424. 名無し募集中。。。 2009/11/26(木) 09:53:02.69 0
え?なんで?梨沙子ちゃんはちーの部屋で寝てんじゃないの?
・・・まぁ、嘘ついたの?

「ほら。写メとっちゃった」
「・・・」

そこに写ってたのはみやに抱きしめられて眠る梨沙子ちゃん
それを見た瞬間うちの心に芽生えてきたのは、悲しみなんかじゃなかった
黒い黒い嫉妬心だった・・・
応援するよって言ったくせに、二人が寄り添って寝てることをちっとも喜べなかった
それどころか・・・

・・・むかつく。

色んな感情が混ざって、とにかくうちはイラついた

あまりに衝撃なその写メに、みやは梨沙子ちゃんの気持ちを知っててキープしてるんじゃないかとか
気持ち弄んでるんじゃないかとか、そんなことすら思ってしまった

まぁがどんな思いでうちに嘘をついたのかも
梨沙子ちゃんがみやの部屋に行くことになったワケも
この時のうちには考える余裕なんてなかった
439. 名無し募集中。。。 2009/11/27(金) 00:45:20.59 0
「部屋、そっちじゃないよー」
「・・・ちょっと、走ってきます」
「え?まだこの時間は外出禁止だよ。もうちょいしたらさ、明るくなるし」

って、言ったのに。熊井ちゃんは一礼して出てっちゃった
あー、いちおうあたしは止めた。何かあっても、久住小春はいちおう止めた
責任はもてないです

ま、熊井ちゃんなら大丈夫か

心底、真面目だなぁ〜と思いながら、再び携帯へ集中
こんなにメールに悩んだことは無い
いつもはけっこー淡白なメールだし
返信に時間を割くのは、亀井先輩くらいなんだけどな
そんなん、伝わるわけ無いんだけど

それにしても、みやはいつの間に梨沙子ちゃんとあんな仲に
愛理ちゃんってゆー可愛い可愛い彼女が居ながら、まったく

遊びまくってるあたしが言える立場じゃないことは
重々承知だけど“あの”みやが、ね。言わないし、見せないけど
やることやってんのかな、やっぱ
440. 名無し募集中。。。 2009/11/27(金) 00:47:19.03 0
宿舎を出て、まだ陽が昇らない海岸沿いを歩いた

本当は今すぐに、部屋へ行ってみやと梨沙子ちゃんを離したかった
殴り込みとか、そんな大袈裟なことじゃないけど

どんな気持ちで、どんな思いでみやが彼女の体を抱き寄せてるのか
そんなの、知らない。知ったところで・・・

もう、みっともないくらいの嫉妬
頭に血が上る、そんな感覚を味わった
荒ぶる呼吸。落ち着け・・・落ち着け・・・
知らない間に、爪を立てて拳を握っていた
この感情をどこにぶつけていいかわからなかった

だって、誰が悪いわけでもないから

正直なところ、みやにはちょっとガッカリした
でも、うちがそんなこと思ったところで
梨沙子ちゃんの気持ちが変わるわけでもない

自分の気持ちに嘘をつくのは嫌だけど
『応援するよ』って『普通に接して』って
自分の口から梨沙子ちゃんに伝えた言葉を
嘘にしてしまうほうがもっと嫌だった

だから、今はちょっと頭、冷やそう・・・
451. 名無し募集中。。。 2009/11/27(金) 12:01:54.77 0
朝、目を覚ますと、起き上がるよりも先に自分の唇を触った。

うち、熊井ちゃんにキスしたんだよね・・・?

我ながらすごいことしたなって朝から自分に驚いてる。
そして思い出せば思い出すほど顔が熱くなっていくのが分かった。

・・・だけど、そんなことは一瞬にして吹き飛んだ。
なぜなら隣に熊井ちゃんがいなかったから。

「・・・・!!」

洗面所にもトイレにもいない。
ならば、と部屋を飛び出した。
なんとなく、嫌な予感がしたから。
廊下を進むと自販機の前のソファーで小春が携帯をいじっていた。

「小春!」
「あ、茉麻〜。おはよ〜早いね!」
「熊井ちゃん見なかった!?」
452. 名無し募集中。。。 2009/11/27(金) 12:16:21.55 O
「いや、小春は止めたよ!絶対止めた!!」
まぁのものすごい剣幕に小春は慌てて応える
だってまぁ、怒ったら超怖いんだもん!
しかも小春に対してはみんなの100倍は怖いね!
よし、小春は止m・・・
「だからどこに行ったかきいてんの!?」
「ひ、ひぃぃー!!」
453. 名無し募集中。。。 2009/11/27(金) 12:33:00.22 0
しばらくぼーっと波を見ていた。
するとうしろに人の気配を感じた。

「・・・まぁ?」
「うわ、さすがだね、熊井ちゃん」

うちが振り向かずに当てたもんだから当てられた本人はびっくりしてた。
分かるよ。そんぐらい。
こんなとこまで探しに来るの、世界中でまぁしかいないよ。
いつも、まぁしか・・・


「何しにきたの?」

なのに、うちの口から出たのは可愛げのない言葉だった。

まぁは何も言わずにうちの隣に座った。
うちはずっと海を見ていた。
454. 名無し募集中。。。 2009/11/27(金) 12:41:19.08 O
あの後小春の胸倉を掴んで軽く首を絞めた
「ぎぶ!ぎ、ぎぶ!そ、そと!外行った!」
「外!?なんで?」
「は、はしって・・・ゴホッはしってくるって!」

それを聞いて私は小春を離して外へと駆けだした

後ろで小春が尻餅をついて咳込んでたけどそんなこと知ったこっちゃない
455. 名無し募集中。。。 2009/11/27(金) 12:59:52.27 0
「帰ろう?」

しばらくの沈黙のあとまぁが呟く。うちはその思いを踏みにじるように首を振った。

「今、みやに会ったらぶん殴っちゃいそうだから」
「・・・そう」

まぁはそれしか言わなかった。
ガキっぽいとか思ってるのかな?我儘だって思ってるのかな?
みやに嫉妬なんてしてバカみたいって・・・まぁはそう思ってるのかな?

「ねえ、なんで嘘ついたのさ」
「なにが?」
「梨沙子ちゃんがちーの部屋で寝てるって」
「・・・それは」
「うちに気なんて遣わなくていいよ。もう子どもじゃないんだから」
「・・・」
「・・・余計なお世話だよ」

夕べあんなに慰めてくれた相手に対して。
ずっと側にいてくれた相手に対してこんなことを言うなんて、うちは最低だ。
イライラしてるからって友達に八つ当たりするなんて、ホントうち、最低。

好きな人に振られて、まぁにも嫌われた・・・そう思った。
456. 名無し募集中。。。 2009/11/27(金) 13:19:54.74 O
ポン…ポン、ポン

膝に埋めたうちの頭を優しく…柔らかく触れる…
何も言わずに…………。
まぁは、大人だ。
うちは「子供じゃない」なんて言いながら全然ガキで。

「………まぁの、仕事取らないでよ…」
「え…?」
「お世話焼くのが、まぁの仕事だから…それ取られたら………困る」
「…何それ」

普段のまぁより可愛い言葉に少し驚いたのと
きっと考えて言った「困る」って台詞を恥ずかしそうに言うまぁについ吹き出して顔を上げた。

「だって困るし」
「そうなの?」
「………」
顔を上げるといつも頼りになるまぁが拗ねたような顔。
でも、うちが顔を上げたからか少し安心したような…。
長い付き合いだけど、うちってあんまりまぁのこと知らないのかな?
457. 名無し募集中。。。 2009/11/27(金) 13:20:40.09 O
そう思ったのに・・・
まぁはそんなうちをそっと抱きしめてこう言った

「ごめんね?熊井ちゃんの気持ちわかったような振りして・・・
傷つけちゃってごめんなさい」

違うのに・・・まぁは何も悪くないのに
悪いのは振られたのに諦めめきれなくて勝手に嫉妬してるうちなのに・・・

うちはまぁの言葉にただ首を振ることしかできなかった
462. 名無し募集中。。。 2009/11/27(金) 14:02:22.70 0
まぁに抱きしめられてると、すーっと心の隙間が埋まっていくような感覚になった。
「ごめん」勇気を出してそう言ったらまぁはもっとぎゅっと抱きしめてくれた。

そしてうちは気付いた。いや、思い出した。
うちの心が氷みたいに冷たくなった時、溶かしてくれるのはいつだってまぁだったってことに。

「・・・みやの優しさは残酷だよ」
「ははっ。言えてる」
「思わせぶりしてんじゃないかとか・・・思っちゃって・・・」
「うん」
「うち嫌だったんだ。梨沙子ちゃんが傷つくのが・・・」
「うん」
「でも、それ以上に・・・みやに敵わない自分が、嫌だった」

さっきまであんなに荒れてた気持ちが、いつの間にか素直な言葉となって口から出ていた。
やっぱりまぁは凄いと思う。一瞬でうちを変えてくれる。
お世話を焼くのがまぁの仕事なら、お世話をかけるのが自分の仕事かな、なんて思ってしまった。
するとまぁが耳元で囁いた。

「熊井ちゃんのどこがみやに劣ってるのさ」
「・・・え?」
「熊井ちゃんはみやにならなくていい。そのままでいいじゃん」
「・・・」
「梨沙子はみやを好きでも、熊井ちゃんのことを好きで好きでしょうがない子が、必ずどこかにいるから」
「えー?そんな子いないよお」
「・・・いるよ。どっかで絶対、待ってる」
511. 名無し募集中。。。 2009/11/30(月) 08:29:26.53 O
「熊井ちゃんが好きになってくれるのを、待ってる」
まぁは続けてそう言った

うーん、そうなのかな?
うちなんかを好きでいてくれる人なんているのかな?
でもまぁがそう言ってくれるならそうなのかもって気もしてくる

「じゃあその“待ってくれてる人”ってのを探しにいかなきゃだね」
「そうだよ。早く探してあげて」

まぁはやさしく微笑んでうちの背中をポンと叩いた

あのね、まぁ
まぁには言ったことないけど、うちまぁのその笑顔好きなんだ

この時なんとなく、まぁの笑顔を守っていかなきゃなって、
分かんないけどそんなことを思った
最終更新:2009年12月01日 14:57