- 633. 名無し募集中。。。 2009/12/04(金) 16:52:41.37 O
- 午前の練習が終わってみんなで外にでる
今日は天気もいいので外の空気を吸いながらのお弁当だ
あたしはママと一緒にお弁当を配る
みんなおなかが空いていたのか、渡すなりフタを開けて歓声をあげている
もも先輩なんてまだ配っている途中から余りがでるか数えてる
先輩だし、せっかく手伝いに来てくれてるし、こんなこと言いたくないけど
ちょっとは手伝ってほしい・・・
そんな中、一人輪からはずれてぼーっとしている夏焼先輩
あたしは先輩の後ろに立つと一つ深呼吸をしてからトントンと肩を叩いた
「先輩、お弁当」
「あ、ありがと。めっちゃお腹空いてたんだよね」
なんてどうみてもそうは見えない顔で言う夏焼先輩
「先輩、食い意地はりすぎー」
「梨沙子には言われたくないでーす」
なんでもないようにいつもの言い合いを交わすあたしたち
先輩はそれからあたしの頭を撫でると、さぁ食べるぞーってみんなの元に寄っていった
- 662. 名無し募集中。。。 2009/12/06(日) 00:59:17.11 0
- 何事もなかったように帰ってきたみやと梨沙子ちゃん
何があったのかわからないけど帰ってきた2人の雰囲気はいつもとは少し違って
よくは言えないけどまるで2人だけしか知らない秘密を握ってるようかに見えて
それだけで胸が苦しくてなんだかもやもやした気持ちになる…
「熊井ちゃん。次試合」
まぁにゼッケンを渡されたコートに入る
今はそれよりも練習に集中しなきゃ…
そう思うのに足は思うように動かないし味方のみやに変な対抗心が芽生えて
上手くチームプレーも噛み合わない…
それを察した清水先輩がゲームを止めると一気に体育館の空気が変わる
「みんなバラバラなの気づいてる?バスケは一人じゃ出来ないんだよ。
5人が協力して1つのゴールを生み出すのがバスケでしょ。今のこのチームすごいバラバラだよ」
「うん。あたしもそう思う。佐紀の言った通り個人プレーも大事だけどもっと周りも見なきゃ」
「とりあえず、いったんお昼休憩しよっか。ね、みや?」
先輩のそんな問いに何も答えずぼーっと遠くを見つめてるみやにみんなが視線を送る
「みや?」
「え…?あ、うん!」
「よし、じゃあ休憩!」
- 663. 名無し募集中。。。 2009/12/06(日) 01:06:36.98 0
- 休憩中もうちの視線は気付いたらみやと梨沙子ちゃんへ
少し離れたところにいるみやに梨沙子ちゃんがお弁当を持っていく
二人は何かを言葉を交わしていて
そしてみやはとても慣れた手つきで梨沙子ちゃんの頭を撫でた
その二人の姿がすごく・・・すごく・・・綺麗で・・・
うちは見たくない光景なはずなのに目を離すことができなかった
するとみやが先にこっちにやってきて、梨沙子ちゃんもそのあとに続いたから
うちはあわてて手元のお弁当に視線を移した
- 664. 名無し募集中。。。 2009/12/06(日) 03:06:40.70 0
- みやはうちの横の開いたスペースに腰をかけると久住先輩や徳永先輩と談笑を始めた
ちらっと梨沙子ちゃんのほうへ顔を向けるとすごく切なそう顔でみやを見つめてる…
なんでそんな顔すんの…
なんでみやなの…
うちなら絶対あんな顔させないのに…
「梨沙子、みんなのお茶配るの手伝って」
「う、うん」
まぁに肩を叩かれ体育館に戻っていった梨沙子ちゃんの悲しげな背中を
見つめることしか今のうちにはできないんだね…
胸が苦しすぎてお弁当もあまり喉を通らない…
「はぁ…」
出したくもないため息もこぼれてしまう
「みやさ、最近っていうより前から思ってたんだけどさ、梨沙子ちゃんのこと好きなの?」
隣から聞こえてくる唐突すぎる徳永先輩の質問
「ぶっ…!急になに?」
「あ、それ小春も思ってたんだよね〜。今朝だってなんか2人だけの世界だったし」
たしかに気になるみやの気持ちにうちは無意識に会話に耳を傾けていた
- 665. 名無し募集中。。。 2009/12/06(日) 03:22:39.25 0
- みやは二人の質問にきょとんとした後なんともあっさりと答えた
「それはないよー!うち、彼女いるし。それに愛理しか好きじゃないし」
「えー?そんなの関係ないじゃん!好きな人は一人じゃなくても全然おかしくないよー!!
小春なんていっぱい好きな人いるもん」
「いや、小春は多すぎー!
でもさ、別にいいんじゃないの?彼女を他に作ったって。みやモテるのに真面目すぎ」
能天気な3人の会話を聞いた瞬間、うちは怒りを覚えた
何それ?徳永先輩の彼女を他に作ったっていいっていう発言も
好きな人は一人じゃなくてもおかしくないっていう久住先輩の発言も
なにより・・・
梨沙子ちゃんの気持ちを一言で切り捨てたみやの言葉
好きじゃないならなんで優しくすんの?
彼女がいるのになんで抱きしめて寝ちゃってんの?
ふざけるな・・・
- 666. 名無し募集中。。。 2009/12/06(日) 03:51:12.53 0
- 「なにそれ…」
「え?」
「ふざけんな!」
うちは思わずみやの胸ぐらを掴み壁にその体を押し付けていた
「いっ…た…」
「ちょっ…!熊井ちゃん!」
近くにいたチームメイトが一斉に止めに入って胸ぐらにあったうちの手はみやの体から引き離された
「なんで…なんでみやは人の気持ち考えようとしないの!
勝手だよ…あんなに傷ついて泣いて苦しんで…なのになんでみやなの…」
「熊井ちゃんごめん…話が読めないんだけど…うちなんかした?」
首元を手で押さえながら困ったような顔で近づいてくるみや
溢れる涙が地面に落ち悔しさで拳を握り締める力も強くなる
「みや…うちと勝負して」
「勝負?」
- 669. 名無し募集中。。。 2009/12/06(日) 08:51:46.96 O
- それは突然の出来事だった。
一瞬何が起きたのか分からなかった。
だけど、小春やちーの慌てる姿や背中の痛みですぐに理解した。
うちは熊井ちゃんにむなぐらを掴まれ、壁に押しつけられたんだってことに・・・
状況は理解したものの、こんなことされる理由はさっぱり分からなくて
熊井ちゃんが言ってることもさっぱりで・・・
恐る恐る熊井ちゃんにうちが何かしたのか聞いてみたけど涙を溜めて睨まれるだけだった。
そして言われた言葉・・・
「みや…うちと勝負して」
「勝負?」
何、勝負って・・・
「何言ってんの。仲間なのに勝負って」
「へー、また逃げるんだ?」
「逃げる?」
「みや、いつもそうやって逃げるよね」
「…はぁ?何が?」
「さっきも逃げてたじゃん。プレー中。“過去”から」
- 670. 名無し募集中。。。 2009/12/06(日) 09:18:00.42 O
- そう言われた瞬間、
カッと顔が熱くなって頭に血が昇っていくのが分かった。
そんなの言われなくても分かってるよ!っていう逆ギレと
見抜かれてたんだという動揺。
触れられたくないことに触れられてしまった焦り。
まるで、注意されて拗ねる子供みたいに
うちは睨みをきかせて熊井ちゃんに詰め寄った。
すぐにちーと小春に止められたけど、
熊井ちゃんは一歩も怯むことはなかった。
- 676. 名無し募集中。。。 2009/12/06(日) 13:31:43.50 O
- いつも温厚なみやに初めて睨まれて今まで感じたことのない恐怖感がおそった
だけどここで引き下がるわけにはいかなくてうちもみやから目をそらさなかった
そんなうちらを黙ったまま抑える部員たち
「二人ともなにしてんの!?」
そんな時にお茶の入った袋を両手に持ったまぁが戻ってくる
その後ろで梨沙子ちゃんが心配そうな目でみやのことを見つめていて
それが悔しくてやるせなくて、うちは下を向いた
- 702. 名無し募集中。。。 2009/12/07(月) 17:33:08.03 O
- 「はいはい!二人共そこまで!!」
様子を見ていられなくなってあたしはパンパンと手を叩きながらみやと熊井ちゃんの間に入った。
熊井ちゃんは急に下を向いちゃったし
みやは熊井ちゃんの言葉で完璧にキレてるみたい…。
心で一つ溜め息を吐いてあたしは決めた。
「チーム内での競い合いは悪いことじゃないと思う。
だから、みやと熊井ちゃん…何で勝負するかはまだ決めてないけど…
勝負しちゃお。
でも、少〜し二人共クールダウンしてからにしよっか。
今のテンションでやったら勝負にも練習にもならないから」
そう言って二人にタオルを渡して引っ込んだ。
熊井ちゃんの言ったこと、図星だから。
みやはそう思ってなくても今のままじゃ逃げたまんま。
逃げ腰のヘタレキャプテンで終わらないでほしい。
みやは戦える人なんだから………
- 704. 名無し募集中。。。 2009/12/07(月) 17:40:03.30 O
- 「…わかった。勝負の内容決めといて」
それだけキャプ…清水先輩に言うのがやっとだった。
タオルを乱暴に受け取りうちは体育館の済みでしゃがみ込む。
逃げ…か。
そんなつもりじゃないのに……。
熊井ちゃんには、みんなの目にはうちは”逃げてる”って思われてるのか。
わからないことで混乱した頭をクールダウンさせてくれたのは心配そうな梨沙子の顔だった。
またスポーツドリンクを持ってきてくれて何も言わずにうちの側に置き。
何か言いたげな顔をした後にうちの頭を梨沙子が撫でた…。
- 708. 名無し募集中。。。 2009/12/07(月) 18:42:12.17 0
- 「・・・ちょっとー。頭撫でるのはうちの役目なんだから・・・」
笑って言おうと思ったのになぜか泣きそうになって、咄嗟にタオルで顔を隠した
それでも梨沙子は何も言わずにうちの頭を撫で続けた
その手つきがなんだか凄く優しかった
「・・・うち、弱いよね」
「・・・・」
「・・・もっと・・・強くなりたいのに・・・」
悔しすぎて本当に涙が溢れてきた
後輩である熊井ちゃんにあんなことを言わせてしまった自分が情けなくて・・・
いつまでもあのことを引きずってる自分が情けなくて・・・
自分の態度も含めて、本当に悔しかった
すると梨沙子が撫でる手を止めてポツリポツリと話しだした
- 709. 名無し募集中。。。 2009/12/07(月) 18:45:28.15 0
- 「あたし、先輩に何があったのかよく分かんないですけど・・・」
梨沙子はうちの目の前にしゃがむと、子犬のような目でうちを覗き込んだ
「強くなろうとしてる人は、弱くなんてないと思う」
そしてはっきりと、うちの目を見てそう言った
その言葉に驚いて何も言えないでいると、そっとうちの手を梨沙子が握った
「一人で頑張らないで、一緒に頑張りましょ?」
「・・・」
「あたしも、熊井先輩も、みんな先輩の仲間なんですから」
「・・・梨沙子」
「みんなで、乗り越えていきましょう」
- 712. 名無し募集中。。。 2009/12/07(月) 19:47:22.21 O
- 溢れた涙はタオルに染み込んだ。
もう涙は流れていない。
うちはスポーツドリンクを取って少しだけ飲んだ。
――――大丈夫。
「ありがと」
俯いてた顔を上げて梨沙子の目を見て言えた。
もう心配そうな顔はしていなくて
いつもみたいに「いひぃ〜っ♪」て笑う梨沙子になんだかドキッとした。
その胸の痛みはこの時まだよくわかんなかった。
後で胸がもっとずっと痛くなるなんて思わなかった。
過去の自分と出来事に今なら立ち向かえるって…
それだけに必死だった。
- 727. 名無し募集中。。。 2009/12/07(月) 22:51:17.36 0
- 先輩には何も聞かなかった、いや聞けなかった
でも本当は先輩に何があったのか知りたかった
先輩のことが好きだからもっといろんなことを知りたい・・・
だけど今のあたしにはそんな事を聞けるわけがなくて、
ただ先輩に元気を取り戻してほしくて、あたしは下手な笑顔を見せた
ねぇ、先輩・・・あたし、先輩のことが好きなの・・・
もっと先輩の力になりたいの・・・
この時、あたしは愛理ちゃんになりたいって今までで一番強く願った
最終更新:2009年12月11日 23:23