572. 名無し募集中。。。 2009/06/28(日) 03:31:10.80 0
結局放課後になっても梨沙子に会う決心は着かず
授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると同時に教室を後にした
「ちょっとみや!今日掃除当番でしょ!」
後ろから千奈美のそんな叫び声が聞こえたが今日はとてもじゃないが掃除をする気分じゃない
「千奈美、よろしく〜」
「え、ちょっと!」

校門の前まで来ると見覚えのある影が一つ
「キャプ?」
「あ、みや。良かった」
「なんでいるの?」
「ねぇ、みや。本気で梨沙子ちゃんのこと好きなの?」
会っていきなりそんな質問をされた私は思わず吹き出した
それよりもキャプはなんで私と梨沙子の関係を知ってるのだろうか…

「ははっw梨沙子ちゃんのこと好きとかなんの冗談?w」
「みやが…」
「え?」

「みやがそんな中途半端だから愛理ちゃんも梨沙子ちゃんも傷ついてんだよ!」

いつも優しくあまり怒らないキャプの怒声が響いた
今まで見たことないその怒りに満ちたキャプの顔に私は不安になる
なにが悪いのかまだ自分でもわかっていなかったから…
573. 名無し募集中。。。 2009/06/28(日) 03:39:21.60 0
「キャプどうしたの?」
「もういいよ。みやがそんなんだと熊井ちゃんが本気で梨沙子ちゃんのこと奪い去っちゃうんだから」
熊井ちゃんが奪い去る?
そんなことを言われて理解するのに少し時間がかかった

熊井ちゃんも梨沙子のこと…
「梨沙子ちゃん今熊井ちゃんといる。みやがぐずぐずしてるたら本当に梨沙子ちゃんは熊井ちゃんのものになっちゃうんだからね…」

キャプはそれだけ言うと私の顔を一瞬見つめ小走りで駆けていった

梨沙子が熊井ちゃんのものになる…
それは嫌だ…
梨沙子のことを本気で好きかどうかはまだ自分でもよくわからない
でも梨沙子が熊井ちゃんのものになるんてすごく嫌だと思った
すると私は無我夢中で走り出していた
591. 名無し募集中。。。 2009/06/28(日) 09:48:57.81 0
熊井ちゃんに連絡を入れても留守電につながる
学校は違うしバンド以外であまり関わりがない私たち
だから熊井ちゃんが行きそうなところの心当たりも思いつかない

途方に暮れたうちはもどかしい気分のまま気づいたらライブハウスにいた

今日はライブの予定もないから誰もいない
マスターに一言言って中に入れてもらう

ステージの床に座ってそばに置いてあるギターを手に取る
うちは何がしたいんだろう・・・

色んなことを忘れたくてただギターを弾き続けた
592. 名無し募集中。。。 2009/06/28(日) 10:56:03.03 0
「あいかわらず寂しそうなギターを弾くのね」
後ろから声をかけられギターを弾く手を止める
「いつからいたんですか?」
「いつからってここは私の家よ、別にいつでもいておかしくないでしょ」
「それはそうですけど・・・塾の時間じゃないんですか?真野先輩」

そう言うと隣に座ってギターの弦をおさえているうちの手に自分の手を重ねる
「パパから聞いたの、みやが一人で来てるって」
「そうですか」
「だから飛んできちゃった・・・」
うちにもたれかかってくる先輩

真野先輩はここのマスターの一人娘
今のバンドに入ったのも先輩に誘われ
急にここに連れてこれられ一方的にメンバーを紹介された
気づいたら一員になっていた

そして・・・お互い初めての相手・・・
605. 名無し募集中。。。 2009/06/28(日) 17:11:14.11 0
ギターを横に置くとうちの膝の上に向き合うように座る先輩
「何があったの?みやが一人でここに来るなんて」
「別に何もないですよ」
「・・・じゃあ部活行きなさいよ」
口調とは反対に優しく頬を撫でてくれる先輩

「今日は行きたい気分じゃない」
「気分って・・・何でも気分って言葉で逃げてばかり
ももがいなくなってからずっと」

先輩の口から出てきた“もも”という名前
「・・・・・・」
「・・・ごめん、言い過ぎちゃったね」
先輩は泣きそうな顔を一瞬見せて俯いてしまう
先輩は気づいてたから・・・うちが自分の気持ちに気づく前から
先輩はうちのももへの想いに気づいていた・・・

「先輩は何も悪くないでしょ」
そういって先輩の頭をそっと抱き締める
「みや・・・」
「先輩、今日はあの部屋で一人になりたくない・・・そばにいて」
626. 名無し募集中。。。 2009/06/29(月) 00:05:56.08 0
いつもは一人で帰ってくるこの広い部屋
今日は一人じゃない・・・それだけでうちは安心できる

「相変わらず綺麗にしてるよねぇ
散らかってたら片付けようと思ったのに」
真野先輩は部屋をきょろきょろしながらも頬を膨らませている
「真野先輩がすると余計散らかすから結構です」
「ちょっと!何よ、その言い方―!確かに部屋は・・・綺麗・・・とは言え・・・ないけど」
最後の方はボソボソと口ごもる先輩にくすと笑ってしまう

「まぁ女の子連れ込むんなら部屋は綺麗にしておかないとねぇ」
「・・・そういうことです」
「生意気ー!!」
ぎゃーと騒いでうちの頬をつねってくる先輩

先輩といるとホッとするんだ・・・
どことなくももに似ていて・・・顔じゃなくて雰囲気が・・・
だからももといたあの時みたいにうちは自然体でいられる
641. 名無し募集中。。。 2009/06/29(月) 01:14:21.75 0
久しぶりに抱き合った後、みやはそのままあたしを抱きしめて眠ってしまった
昔から寝顔だけは変わらない、無邪気で可愛くて・・・

「みや、あたしに相談してよ・・・一人で抱え込まないでよ・・・」
頬を撫でてるとなぜかあたしが泣けてくる
こんな広い部屋で一人で暮らすみや

ももがいなくなって寂しさで潰れてしまいそうになった時、
あたしたちは結ばれた
いや、違う・・・あたしがみやの隙に付け込んだんだ

今でもももを想って泣いてるの?
そんな時はいつでもあたしがそばにいてあげるから・・・
だからみや・・・幸せになって?
647. 名無し募集中。。。 2009/06/29(月) 01:58:48.63 0
いつの間にか寝ていた。
目を覚ますと真野先輩が小さく寝息を立てて横で寝ていた。
また感情のはけ口に真野先輩を使ってしまった。
女性と寝るときは、求められたら拒まないという姿勢を通してる。
例外は梨沙子と・・・真野先輩。
真野先輩にだけはうちからも求めていくことが多い。
でもそれは好きっていう感情とは違って・・・枕の相性が近いからというのが大きい。
ごく稀に、うちが下になるときもある。
「・・・・んん・・・あれ?」
「おはようございます、先輩」
「おはよ・・・いつから起きてたの?」
「10分ぐらい前ですかね」
「ずっとうちの事見てたの?」
「あまりにきれいだったんで」
これは本心だった。
「何言ってんの、一回一緒に寝たら何日もほったらかすくせに」
「すいません・・・」
こういう冗談が言い合えるのも真野先輩のいいところだ。
梨沙子とは・・・・・・・・・比べられない。
651. 名無し募集中。。。 2009/06/29(月) 02:05:20.33 0
朝ご飯を一緒に食べて、真野先輩を見送った。
今日は珍しく朝、だるさが感じられない。
シャワーを浴びて、学校へ行く身支度をする。
「梨沙子・・・・・・・・」
急に梨沙子のことを思い出した。
昨日は熊井ちゃんと一緒にいると聞いた。そしてキャプのあの言葉。
ギターと真野先輩でうやむやにしてきた事が、いっきに頭に浮かんできた。
やっぱり梨沙子を失いたくない。まして熊井ちゃんに奪われるなんて・・・。
とりあえず、今日は梨沙子に会わないと。会って確かめないと。
適当に身だしなみを整えると、やけに軽い鞄を持って学校に向かった。
最終更新:2009年07月03日 00:10