912. 名無し募集中。。。 2009/12/12(土) 19:34:42.36 0
体育館に入るとみんなの視線が一斉にうちや梨沙子に集まる
あの時と一緒…
あの時もこんな風に色んな人からの視線を…
そう思うと足が体育館の中へと向かおうとしない

「先輩、ほら。みんな待ってますよ」
「え…」
たじろいでるうちの背中を優しくぽんっと叩き笑った梨沙子
「ほら」
梨沙子が体育館を見て笑顔を見せている
それに促されるようにおそるおそる体育館のほうへもう一度視線を向けてみた

「みや遅いよー!せっかく練習の時間さいてんだからね!」
「とか言って、ちぃさっき「練習なくなるかな〜」なんて喜んでじゃん」
「ちょっ!小春それは言わない約束じゃん!」
いつも通りのみんなの笑顔がそこにはあってうちは思わず笑顔をこぼした
そうだった
うちにはみんながいるんだよね
素敵で大切な仲間がいてくれるんだ
そして、横を見ると笑顔で微笑んでいる梨沙子もいる
うち一人じゃなかったんだ
917. 名無し募集中。。。 2009/12/12(土) 22:07:08.03 0
「みや、負けると思って逃げ出したのかと思った」
意地悪そうにそう呟きながら「早く続きしよ」と背を向け歩き出した熊井ちゃん

「熊井ちゃ〜ん」
「な、なに?」
「素直じゃないんだから〜。さっき体育館の隅で体育座りしながら泣いてたくせに〜」
「う、うるさい!徳永先輩!」
顔を真っ赤にして照れてる熊井ちゃんについつい釣られて笑顔になる

「ありがとう、熊井ちゃん」
変われるきっかけをくれた熊井ちゃんにお礼を言うと恥ずかしそうに俯いて
「別にお礼言われるようなことしてないし…」
「さっ、始めよっか」
気合いを入れ直しコートに向かう途中、梨沙子と目が追ってニコっと笑うと
梨沙子もニコっと微笑んだ
梨沙子の笑顔見るだけでなんでこんなに心が暖かくなるんだろ…
920. 名無し募集中。。。 2009/12/12(土) 22:26:38.54 O
夏焼先輩と熊井先輩の試合の続きが始まる…
思い出したように痛む膝。
あたしケガしてたんだった!
そんなあたしを見透かしたように安心させる声がした。
「り〜さこっ!足、見せなさい」
「ママ…」
「わっ!すごい血…。あ、でも傷は深くないね。
皮がめくれて血が吹き出ちゃったみたい」
「痛っ!優しくしてよ〜」
ママは手際良く膝のケガを消毒してくれる。
でも細かい説明は怖いから聞きたくない…。
めくれ……貧血起こしそう。

「梨沙子ありがとね」
「え?」
「みやを連れ戻してくれて、ありがと」
「戻ったのは夏焼先輩の意志だもん」
「そっか。」
「うん」
「はい、手当ておしまい!
試合見よっ!!」

話してる間にママは綺麗にあたしの膝に大きな絆創膏を貼ってくれていた。
「後で薬塗り直して絆創膏貼り替えするからね!」
ママは付け足すように言った。

さすがママ…頼もしいなぁ。
929. 名無し募集中。。。 2009/12/12(土) 23:24:02.57 0
「ねぇ、みや…」
「なに?」
「まっすぐきてよ。まっすぐ」
そう言った熊井ちゃんの目はさっきまでとは違って力強く
でもすごく優しい目をしていた
応えなきゃ。熊井ちゃんの、みんなの、そして梨沙子の気持ちに…

「…うん。もう逃げない。絶対負けないから」

ふーっと息を吐く
大丈夫。足は震えてない。
大丈夫。前を見れてる。
あの子が信じていてくれるから…大丈夫。

「いくよ!!」
953. 名無し募集中。。。 2009/12/13(日) 00:53:55.88 0
ピピーっと笛が鳴って、我に返るともううちらの対決は終わっていた。
あんまり思い出せないくらい、濃くて深いものだったと・・・思う。

結局、負けた。
やっぱり、・・・みやには敵わない。速さと技術が違いすぎた。
ちょっとうちに、いや、体が接触することに怯えみたいなものを感じた。
あぁ、まだやっぱり無理なんだってそう思ったけど、
でも・・・これをきっかけにみやが克服してくれたら、うちも嬉しい。

「・・・熊井ちゃん、ありがとう」
「うん・・・」
「なんか、吹っ切れた」
「・・・そりゃ、よかった」

やけに清々しいみやの顔。
うちも、なんかいろいろ晴れた気がする。心を覆っていた、なんかが。
954. 名無し募集中。。。 2009/12/13(日) 00:59:44.50 0
熊井ちゃんの右へのフェイントをかけて、左に抜けた。

向かってくる熊井ちゃんの目は真剣で、かっこいい。
でも、負けないぞ。ってそういう気持ちになれてた。

抜けた瞬間、熊井ちゃんがしまったって顔したのがちょっと心地いい。
そのままドリブルでレイアップシュートを決める。
精度はバッチリ、外さない。

笛が鳴って、対決は終わった。
長いような、短いような・・・不思議な感覚だった。

やっぱり体が近づくと少し怖かった。
でも、なんとかしなきゃって、うちのそばにいてくれるうちを応援してくれるみんなのためにって
そう思うと少しだけ、恐怖感も和らいだような気になった。

「先輩、かっこよかったです」

そう言ってタオルを渡してくれる梨沙子の笑顔は眩しくて、可愛いくて・・・・
微かに・・・・本当に微かに、愛おしいと思った。
967. 名無し募集中。。。 2009/12/13(日) 17:53:56.11 0
「梨沙子」

梨沙子、ちゃんと見ててくれたんだね。
うち、勝ったよ。熊井ちゃんに、というよりは『弱かった自分』に。
まだまだ課題はあるけど、少しは成長できた気がするよ。
あの時、梨沙子と一緒に戻ってきてよかった。
『ありがとう』はもう言わないって決めてたけど、この一勝は梨沙子と勝ち取ったものだから
うちは元気に笑顔で言った。

「梨沙子!ありがとね!」
「へへっ。やったね先輩!」

梨沙子と両手でハイタッチをした。
それを合図に、みんな一斉にうちと熊井ちゃんの元へ走ってきた。
まるで試合に勝った後のように、みんなで抱き合って大声で笑った。
熊井ちゃんも、キャプテン達も笑ってた。

あれだけ迷惑かけたのに温かく接してくれるみんなに
梨沙子に、そして熊井ちゃんに
うちは感謝の思いでいっぱいだった。

「よし!じゃあ全体練始めよう!顧問が戻ってきちゃう!」

まぁの一言で練習が再開した。
ボールを追いながら、やっぱうちはバスケが好きなんだって思った。
968. 名無し募集中。。。 2009/12/13(日) 18:59:20.94 O
コート上でいつも以上に動きまわる先輩。
その姿はあたしが好きな、心の底からバスケを楽しんでる姿。


先輩のプレーはまだぎこちなくて、フェイクも一歩目の速さもまだまだ。
本来の先輩ならもっと…
少し前のあたしだったら「へたくそ」なんて言っちゃったのかな。
でもね…先輩かっこいいよ。すごく、すっごくかっこいい。

先輩、気付いてますか?
あたし変わったみたいです。
素直に「かっこよかった」って言えるようになったんです。

先輩が変えてくれたんですよ!その優しさと明るさで。
こちらこそ…ありがとう。


次はあたしが…
………ううん。先輩は変わらないでいてください。
いつまでもその優しさでみんなを…愛理ちゃんを包んであげてください。

あたしが支えますから。
バスケットボール部マネージャー、菅谷梨沙子として…
最終更新:2009年12月23日 23:43