20. 名無し募集中。。。 2009/12/31(木) 19:08:24.74 0
夏焼先輩の姿が見えなくなってから、あたしは大きく息を吐いた

何が大丈夫なんだろう・・・
あたしは1人で大丈夫?
もう慣れたから大丈夫?
・・・信じてるから大丈夫?

そんなこと考えてると今度は久住先輩があたしのところに走ってきた
だけど、いつもとは全然違う雰囲気の久住先輩
その顔にはらしくない“必死さ”が

「梨沙子ちゃん!亀井先輩見なかった?」
「亀井先輩なら向こうの方に走って行きましたけど・・・」
「あっ、ありがとう」
「どうかしたんですか?」
「ごめん。なんでもないから」

亀井先輩達のいる方へ走っていく久住先輩の背中には
“焦り”みたいな、やっぱりらしくないものが映っていた

夏焼先輩、亀井先輩、久住先輩
あたしはなんにもわからないけど、
もし先輩が困ってるんなら力になりたいなぁ
22. 名無し募集中。。。 2009/12/31(木) 20:46:57.34 0
砂浜を弄っているうちにあたしは無意識に『みや』って書いていた
「ははは、あたし先輩のこと好きすぎだし」
独り言をつぶやきながらもその横にりさこって書こうとする

りー・・・さー・・・「だーれだ!?」
「ひゃぁ!!」

最後の『こ』を書こうとした瞬間に誰かに後ろから目隠しされる

「梨沙子、だーれだ?」
え、ま、待って!この声って・・・うぅん、この掌の感触・・・
いつもあたしの頭を撫でてくれるあの感触・・・

「もしかして・・・夏焼先輩・・・?」
「せいかーい!!」
先輩はぱっと手を離すとニコニコ笑いながらあたしにジュースを手渡してくれた

「待たせちゃったお詫び」
「あ・・・ありがとうございます」
中身はあの日、初めて先輩がおごってくれたのと一緒のコーラだった
43. 名無し募集中。。。 2010/01/01(金) 23:55:35.96 0
「あの・・・先輩」
「なに?」
「亀井先輩と久住先輩は?」
「あぁ・・・・・・梨沙子は心配しなくていいよ。きっと・・・大丈夫」

その「大丈夫」はすごい力強くて
久住先輩と夏焼先輩の絆の強さを再確認できた
少し・・・羨ましかったり

「それより!梨沙子何書いてたの?」
「えっ、あ、えぇっ?」
「ほら、砂に何か書いてたじゃん。見せて!」
「だだだだだだめです無理です出来ないです!!!」

見せられるわけないでしょ!だって「みや」と「りさ」・・・
消せばいいんだけど何故か消したくはなくて・・・
って先輩無理矢理!
見ようとする先輩を体で必死にガード。がんばれ、あたし!
44. 名無し募集中。。。 2010/01/02(土) 00:15:57.38 0
「だめですって」
「もう!それなら・・・こうだ!」
「あっそれは・・・アッハッハ!」
「ほらほらぁ、見せないとやり続けるよ」
「アハッ、アヒ、イヒイィィィ!」

脇腹やめてくださいぃ!そこ弱いんですからぁ!
持っていたコーラが自然にシェイクされる
先輩がそう来るなら・・・

「イヒッ、イヒッ、もう!」
あの日と同じ。コーラの噴水が先輩に降り注ぐ

「うわっ!菅谷!!」
「イヒィ!先輩が悪いんですよーだ」
「このヤロー・・・やったな!」

そう言ってまた脇腹に腕を伸ばしてくる先輩
先輩ごめんなさーい!
51. 名無し募集中。。。 2010/01/02(土) 15:37:16.84 0
体をよじったり腕を振り回してなんとか先輩の攻撃から逃げ切ったあたし
「はぁはぁはぁ・・・せ、先輩!はぁはぁ・・・しつこすぎ」
「あはは、ごめんごめん」
先輩は全然悪びれることもなくにこっと笑うとそのまま砂浜に大の字に寝転んだ

「あー・・・でもほんといい天気だよねー」
「ふふ、そうですね」
「梨沙子も寝転がってみ?気持ちいいから」
「はい!」
先輩の隣で同じように大の字になると真っ青な空が目の前に広がった

「この景色持って帰りたいな・・・」

ふと隣からの声に反応してちらっと見ると
先輩は指をカメラのフレームのように空にかざしてとても優しく微笑んでいた
73. 名無し募集中。。。 2010/01/04(月) 00:50:38.34 0
晴れ渡る空を見てただ一つ思った


―――愛理に見せてあげたいな・・・

結局今朝も愛理から返信メールは来ていなかった
こんなことは付き合ってから初めてだ
いつも愛理はどんな時でも丁寧なメールをくれる子だ
たまに寝ちゃっててすぐに返信がない時もあるけど、
その時は朝にちゃんと返事をくれていた

だからとても心配になる

もしかして風邪を引いちゃってるんじゃないか、とか・・・

なんで愛理のそばにいないんだろう・・・って仕方ないんだけど
こんな時はそれがすごくもどかしいんだ

ねぇ、愛理?うちさ、愛理がほんと好きなんだ・・・
この気持ちって重いかな・・・?
118. 名無し募集中。。。 2010/01/06(水) 12:52:51.88 0
先輩は空に向かって揚げていた腕をゆっくり下ろした。
なぜだか辛そうな横顔が見える。
何考えてるのかな……想像もつかない私は
まだまだ先輩のこと、知らないんだなあと思う。
でも、先輩が悲しいときや落ち込んでるときは、
私に分けて欲しい。彼女でもないくせに、
そんなふうに思う。だって先輩は笑ってるのが
一番似合うんだ。周りの空気までキラキラしてみえるくらいなんだ。

そんな気持ちから私は素早く立ち上がって、うつ伏せのままの
先輩に馬乗りになる。両肩を掴んで顔を近づける。
119. 名無し募集中。。。 2010/01/06(水) 13:09:13.42 0
なに?なに?っ感じで驚いて目を見開いている先輩に、
いつもより声を低くして、告げる。

「なんでも願いをかなえてやる。」

「唐w突wwなにそれwww」

思いっきり吹いた先輩はシェンロン?シェンロンなの?とか
言いながら砂浜をのた打ち回った。
……作戦成功!夏焼先輩の笑顔を取り戻したぞ!
なんか違う気もするけど、背中を震わせて笑い転げる背中を見ていたら
今だけは辛いこと忘れてるだろうなって思えて、嬉しかった。
120. 名無し募集中。。。 2010/01/06(水) 13:17:33.65 0
しばらくして笑いが収まったらしい先輩はよし、と呟いて立ち上がると、
こちらに振り返って砂浜にぺたりと腰を下ろしたままの私に右手を差し出す。

「そろそろ集合時間だ、いこっか」

そのときの先輩の顔は、逆光でよく見えなかったけど、
私がいつかどこかで、心の奥の奥のどこかで、
独り占めしたい、そう願っていた穏やかな笑顔に良く似ていて――


「……はい」

私はまた、自分の気持ちを確認させられる。
121. 名無し募集中。。。 2010/01/06(水) 13:57:31.29 0
「先輩、あたしはシェンロンじゃなくて『魔法使い』ですから」
先輩の差し出した手を掴み立ち上がりながら言ったら
先輩はキョトンとした顔をした。

「何でも願いを・・・って、さっきの。」
「ふ・・・あははは!梨沙子は魔法使いなの?」
「まだ卵ですけど『魔法使い』です!」
「ふ〜ん・・・じゃあ、その内お願いします・・・ふふふっ」
含み笑いで先輩はあたしの髪をいつものようにクシャっと撫でる。
この瞬間がすごく好き。
あたしの髪に触れて笑う先輩。


夏焼先輩なんか―――――――大好き
最終更新:2010年01月15日 19:30