302 :名無し募集中。。。2010/01/13(水) 23:41:26.94
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部屋に入るとすぐさま先輩はベッドに向かって飛び込んだ
「ぐぁー・・・疲れたぁー」
あたしはまだやっぱり緊張しておそるおそる隣のベッドに近づいた
だって・・・二人っきりなんだよ?
昨日は一緒に寝たとはいえ隣には小春先輩いたし・・・
でも今日は同じ部屋で二人だけで過ごす夜・・・
あー!何考えてるの!?梨沙子!バカバカ!
「あ、梨沙子先にお風呂入りな?」
「ふぇ?あ、え、いいですよ!先輩先に」
「いいからいいから!うち、ちょっとやることもあるしさ」
そういう先輩の言葉に甘えてあたしはお風呂の用意を持ってバスルームへ
よし、お風呂に入っている間に今日のこれからどうしようか考えよう・・・
340 :名無し募集中。。。:2010/01/16(土) 03:23:51.12
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梨沙子がお風呂に入ったのを見届けると、
うちはまた携帯を片手にベッドに沈み込んだ
やっぱり連絡はナシ・・・か・・・
こうなるともう心配で心配で仕方なくて
いや、そうじゃない、愛理の声が聞きたいんだ
聞いて、安心したいんだ・・・愛理、うち今すごく不安なんだ
連絡はないけど、だけど・・・いいよね?愛理・・・。
そして、うちは愛理のページを開くと意を決して発信ボタンを押した
349 :名無し募集中。。。:2010/01/16(土) 18:19:35.20
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えりかちゃんとバイバイして一人になった瞬間心がずしっと重くなる。
ベッドに横たわって携帯画面を見つめる。さっき受信した、みやからのメール。
いつも通りの、優しい文。
「夕飯終わったら電話するね、か・・・」
もうとっくに食べ終わってる時間だと思う。
だけどみやからの電話はない。
って、当然か・・・あたしメール返してないんだもんね。
今度こそ愛想尽かされたかも・・・
あたし、ホントに何やってるんだろう・・・
メールを返さない理由なんてないけど
なんて返事を打てばいいのか分からなくて
さっきから打っては消しての繰り返し。
・・・メールってこんなに難しかったっけ?
「はぁ・・・」
何度目かのため息をついた時、あたしの部屋に聞きなれた着信音が鳴り響いた。
驚いてベッドから落ちそうになった。
350 :名無し募集中。。。:2010/01/16(土) 18:38:46.37
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「もしもし・・・」
「・・・!愛理!?」
何度目かのコール音。
諦めて切ろうかと思ったその時、愛理は出てくれた。
発信ボタンを押して数秒、すでにうちの心臓はバクバクと暴れていた。
「あ、その・・・みやび、だけど・・・」
「・・・うん」
「えっと・・・うん、よかった・・・繋がって・・・」
ぎこちない会話。
言いたいことはたくさんあるのにうまく言葉に出来ないヘタレなうち。
肝心な時はいつもこう・・・せっかく愛理と繋がったのに・・・
354 :名無し募集中。。。:2010/01/16(土) 23:08:59.81
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やっと聞けたみやの声・・・
ってあたしがこんなこと言えるわけじゃないよね。
だってメールを返さなかったのはあたしの方なんだもん・・・。
「あのさ・・・その・・・」
「ん?」
「あ、うんっと・・・大丈夫・・・?」
「え・・・?」
なに?大丈夫って・・・?
「いや、その・・・ずっと連絡なかったからさ・・・
風邪とか事故とか・・・すごい心配でさ」
「!!!」
みやのその言葉を聞いた瞬間、あたしはとんでもない罪悪感に襲われた
えりかちゃんと遊んでいる時間、ずっと心配してくれていたみや
なのにあたしはなんて返したらいいかわからなくてメールも返さなくて・・・
あたし・・・何やってるんだろう・・・
355 :名無し募集中。。。:2010/01/16(土) 23:27:09.44
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「みや…」
「ん?」
無意識にほんとに無意識に出てきた言葉
ううん…たぶんずっと思ってた言葉…
「会いたい…会いたいよみや…」
その言葉のあとにみやは優しく返してくれる
「うん。うちも会いたいよ」って
「今すぐ会いたい…。会いたい…会いたいよ…」
「愛理?泣いてるの?」
困らせてるってわかってるのに止め処なく溢れる涙を抑えることも
声を押し殺すこともできず携帯をただただぎゅっと握り締めてた
356
:名無し募集中。。。:2010/01/16(土) 23:43:26.92
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電話の向こうで愛理が泣いてる
うぅん、違う、うちが愛理を泣かしたんだ
またうち、約束破った
絶対愛理を悲しませないって言ったのに・・・
「うぅ・・・みや・・・グスツ・・・ごめんなさい」
愛理が涙を必死でこらえている
「謝るのはうちの方だよ。愛理、ごめん・・・」
「そんなことない・・・みや・・・悪くない・・・」
うち、今、なんで愛理のそばにいないんだろう・・・
357 :名無し募集中。。。:2010/01/16(土) 23:59:48.53
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「愛理いまどこにいる?」
「お家…」
「空見える?」
空?
不思議に思いながらも部屋の窓のカーテンを開け空を見上げた
「見えるよ…」
「月見える?」
「うん。今日は満月だっ」
「こっちも満月」
一瞬の沈黙の後みやがボソっと囁いた
「どんなに離れてても同じ空の下にいるんだよね、みんな」
358 :名無し募集中。。。:2010/01/17(日) 00:07:39.00
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みやの言葉が胸の奥にスーッと入ってくる
どんなに離れててもみんな同じ空にいるって
すごく、すごくみやらしい優しい言葉だと思った
綺麗な満月を見上げてそっと目を閉じる
浮かんでくるのはみやの優しい笑顔とあたしの名前を呼ぶ声
「ねぇ、愛理?」
「うん・・・」
「好きだよ・・・」
「みや」
「愛理が好き・・・大好き・・・」
364 :名無し募集中。。。:2010/01/17(日) 03:25:16.12
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「明日…帰ってきたら一番に会いに行くから」
「うん…、待ってる」
「おやすみ、愛理」
「うん、おやすみ」
いつものようにあたしが切るまで待っててくれるみや
心の中でもう一度「おやすみ」と囁いて携帯を耳から離そうとしたとき
みやの無言の先に梨沙子ちゃんの声が聞こえた
「先輩、次お風呂どうぞ」
確かにそう聞こえた
「え…?」
「…ん?愛理?どうした?」
「え、あ、うん。なんでもない。おやすみ」
「うん、おやすみ」
確かに聞こえたの
梨沙子ちゃんの声が…
374 :名無し募集中。。。:2010/01/17(日) 16:09:52.61
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脱衣場でパジャマに着替えて頭にタオルを巻きつけて出ようとした時、
「ねぇ、愛理?」
「好きだよ・・・」
「愛理が好き・・・大好き・・・」
先輩の声が聞こえて足を止める
電話・・・してるんだ・・・愛理ちゃんと・・・
わかってたのに実際先輩が愛理ちゃんと話しているのを聞くのは初めてで
自分の好きな人が他の人にあんな優しい声で愛を囁いているのを聞くのはやっぱりツライ
きっついなぁー・・・
あたしは脱衣場の壁にもたれて先輩の電話が終わるのを待った
目の前の鏡を見ると酷い顔をした自分がいた
「どうしてこんな顔なんだろ・・・」
明日目が覚めた時には美しくなってたらいいのにな・・・
って場違いにどこかで聞いた歌の歌詞が頭の中をぐるぐる回っていた
「おやすみ、愛理」
先輩のその言葉で電話が終わっただろうと思ってあたしは部屋に戻った
「先輩、次お風呂どうぞ」
375 :名無し募集中。。。:2010/01/17(日) 16:13:13.35
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「愛理?切らないの?」
そのまま体が固まって電話を切れずにいるとみやが不思議そうな声を出した
どうしよう・・・なんでもないって言ったけどやっぱり気になるよ・・・聞いていいかな?
別に大丈夫だよね・・・自然に、自然に聞けば・・・
「愛理?ホントにどうしたの?」
「・・・あのさ、みや。今、誰といるの?」
「え?あぁ、梨沙子といるよ」
それがどうかした?と言わんばかりにあっけらかんと答えるみや
「そ、そうなんだ。あとは?」
「ん?梨沙子だけだよ。二人部屋だから」
「・・・そっか」
やっぱり、あの声梨沙子ちゃんだったんだ・・・
二人部屋・・・梨沙子ちゃんとみやが、二人部屋・・・
377 :名無し募集中。。。:2010/01/17(日) 16:18:38.67
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心拍数が上がっているのが自分でもよくわかる
わかってる・・・二人には何もないって・・・あるわけないじゃない・・・
だけど・・・
同じ部屋で一晩二人っきり
きっとこれが梨沙子ちゃん以外の誰かだったら・・・
なんで?なんで梨沙子ちゃんなの?
学年も違うし、ましてやキャプテンとマネージャーなんだよ?
みや、あたし・・・わかんないよ
376 :名無し募集中。。。:2010/01/17(日) 16:14:37.04
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「ちょっと色々あってさ、うちと梨沙子だけ空き部屋に追放?みたいな。もー、小春が超ありえなくってさ!」
言葉のわりに全然嫌そうじゃない
むしろ楽しそうに話を続けるみや
でもあたしはそれどころじゃなくって話なんて半分も聞いていなかった
相槌を打ってたかすら覚えてない
「あ、梨沙子に代わる?ちょうどお風呂上がったみたいだから」
「えっ、いいよ・・・梨沙子ちゃんだって疲れてるだろうし・・・」
「そう?多分大丈夫だよ?」
「ほんとにっ!・・・ほんとに、大丈夫だから・・・」
思わず大きな声が出た
今のあたしに梨沙子ちゃんと話す余裕なんてなかった
自分の黒い部分が出ちゃいそうで、怖かった
「・・・あ、うん。分かった。ごめんね?おやすみって言ったのに延ばしちゃって・・・」
「ううん、そんなことないよ。電話ありがとね。また明日」
380 :名無し募集中。。。:2010/01/17(日) 16:29:22.36
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先輩が愛理ちゃんと話しているのを気にしないふりをしながら
あたしは音を立てない様に明日の準備をした
気にしないふりだけど本当はしっかり耳をダンボ状態で聞いてたり
先輩は電話を切ると携帯を充電器にさしてこちらを振り返る
「梨沙子、おかえりーお風呂気持ちよかった?」
「あ、はい、先に入らせてもらってありがとうございました」
「いえいえ、愛理と話せたしよかったよ
じゃあうちもちょっと入ってこようかなー・・・あ、先に寝てていいからね」
そういうと先輩は着替えを持って脱衣場に消えていった
あたしはテレビをつけてそのままベッドに寝転ぶ
ベッドサイドのテーブルを見ると充電器にさされた先輩の携帯
そこにつけられた“A”のストラップとさっきの会話を思い出してあたしは一つため息をういた
382 :名無し募集中。。。:2010/01/17(日) 16:50:10.43
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電話を切ってベッドにダイブした
あたし・・・嫌な女・・・
自分はえりかちゃんと楽しく遊んでたくせに、みやにだけヤキモチやくなんて・・・
「二人部屋・・・みやと梨沙子ちゃんが二人部屋、か・・・」
改めて言葉にすると余計に切なくなった
うちと梨沙子だけ追放された、みたいなことを言ってたけど
その言い廻しが凄く親しげに聞こえてしまった・・・
こんな考えダメなのはわかってる
みやは浮気するような人じゃないし
それにあたしだってえりかちゃんとお泊りしたんだから、みやを責める資格はこれっぽっちもないけど・・・
だけど・・・
「えりかちゃーん・・・眠れないよぉ・・・」
みやはあたしを責めるどころか、心配してくれたし好きとも言ってくれた
なのにあたし、たぶん全然可愛くできなかった・・・
せめて、もっと笑って“また明日”って言ってあげればよかったな・・・