168 :名無し募集中。。。:2010/01/27(水) 23:44:36.29 0

ブーブー、ブーブー
「んー・・・」
目覚まし代わりに使っている携帯のバイブが震えて目を覚ます

目の前には夏焼先輩の気持ちよさそうな寝顔
二日続けて一番に先輩の顔が見れるあたしはきっと幸せ者だ

そしてさっきの夢は現実じゃないかって錯覚してしまう

・・・そう・・・あたし、夢を見た・・・

夢の中で先輩とあたしはいわゆる・・・恋人同士ってやつで・・・

「あー、そんな無駄な妄想してる場合じゃないっつーの!」
夢の続きを考えようとする自分を慌ててストップ

現実、ちゃんと見なくちゃ・・・

181 :名無し募集中。。。:2010/01/28(木) 00:28:03.15 O

ん・・・?
そういえば・・・右手が・・・
なんかいつもと違う感じが・・・

「!!!!!!」

起きてきた頭がようやく状況を理解した
違和感の正体はこれだった
あたしの手は先輩にしっかりと握られていた

「・・・・・ばか。こんなんだからあんな夢見るんだよ・・・」

あたしはそれを振りほどかずに「はぁ」と大きくため息をついて
まだ眠ってる先輩のおでこに自分のおでこをこつんとぶつける

先輩・・・
もうちょっとしたらちゃんと現実見るから・・・
だからもう少しだけ
先輩が起きるまで・・・
このままでいさせて・・・

あたしは先輩の体温を感じながらそっと目を瞑った

183 :名無し募集中。。。:2010/01/28(木) 00:35:03.24 0

自分のおでこに暖かい感触があってゆっくり目を開ける
「うぅ・・・なにぃ・・・ん?・・・へ?」
目の前には梨沙子のドアップの顔
いきなり現れたそれにただ目をパチクリさせるしかないうち

な、なに?どういう状況?

「あ、あのー・・・梨沙子ちゃん?」
おそるおそる声をかけると
「ふぇ?・・・!!せ、先輩!!!ご、ご、ごめんなさい!ごめんなさい!!」
梨沙子はぱっと体を離すとベッドの上で土下座してものすごい勢いで頭を下げた

189 :名無し募集中。。。:2010/01/28(木) 01:39:40.11 O

「いやいや・・・そんな謝んないでいいから・・・顔あげよ?」

梨沙子の頭をぽんと叩く
別に嫌だったわけじゃないし、謝ってもらう必要はどこにもない
ただ・・・
少しびっくりしただけだから・・・
ほんのちょっとドキドキしただけだから・・・

「あ、ははは!うちら暑いのにひっついて寝てたんだねぇ!」

動揺を隠すためにわざと明るく言ってみる
梨沙子は複雑そうな顔で「そうですね・・・」と一言だけ答えた

249 :名無し募集中。。。:2010/01/29(金) 12:52:00.88 O

「ほ、ほらっ!いい天気だよ梨沙子!こっちおいで!」
「…………」
「見て見て!空がきれいだよ~!」
「…ほんと?」

梨沙子が窓際に立ってるうちの隣に来る
二人で窓から空を見上げる

「快晴ですねー」
「そうだねー」
「朝の空っていいですよね。なんか、清々しくて」

ようやく梨沙子に笑顔が戻った
うんうん、梨沙子はやっぱり笑顔が可愛いよ
……………あっ、

「……ふふっ」
「え?なに?」
「梨沙子、寝癖やばい」

あちこち跳ねてる梨沙子の髪を指さす
慌てて髪を手でおさえる梨沙子の姿が幼くてまた笑みがこぼれる

「直してあげるよ」

うちは鞄からヘアアイロンや櫛などを取り出すと梨沙子をベッドに座らせた

261 :名無し募集中。。。:2010/01/29(金) 21:56:31.89 O

「アイロン温まるまでちょっと待ってね」
「は、はいっ」

背中から先輩の声
髪を整えてもらうだけなのに、先輩の顔が見えないと、何されるかわからない時のドキドキした緊張感が襲ってくる。




なんて思ってたら、首筋を襲われた

262 :名無し募集中。。。:2010/01/29(金) 21:59:12.30 O

「ひゃっ」
「梨沙子の髪いいにおーい。なに使ってるの?」


この人はホントに・・・。
私の寿命をどれだけ縮めたら気が済むんだろう。
そばに居るだけで心臓がうるさく打ち続けているのに。

263 :名無し募集中。。。:2010/01/29(金) 22:03:47.32 O

「先輩のと・・・一緒です」
「へっ?そうなの?っていうか、なんでうちのシャンプー知ってるの?」

夏焼先輩が部室で他の先輩たちとシャンプーの話してたの盗み聞きして同じの買いましただなんて言えない。

「もしかして」
「へっ?!」
「毎日こっそりうちの髪の毛の匂いかいでたんでしょ?」


よかった・・・先輩がアホで。

264 :名無し募集中。。。:2010/01/29(金) 22:06:27.44 O

でも髪の毛の匂いを何気に気にしちゃうのはホント。
その香りに癒されて1日テンションが上がっちゃうのもホント。


「こんな匂いなんだぁ。自分じゃわかんない。」
自分の髪の毛を鼻の下まで持ってきて嗅ぐ先輩

「ちょっと梨沙子嗅いでみて」
「えぇっ!!」
そんな大サービス!!!

265 :名無し募集中。。。:2010/01/29(金) 22:09:39.44 O

頭を傾けて私の前に出す夏焼先輩。
息が荒くならないように呼吸を整える。
私の鼻が当たるか当たらないかのところでゆっくり匂いを嗅ぐと、いつもより近い夏焼先輩の香り。

あぁ・・・いい匂い。

266 :名無し募集中。。。:2010/01/29(金) 22:12:59.63 O

「同じだった?」
不意に先輩が顔を上げた。

「ふえっ」
「ぷっ。梨沙子っ・・・なにその顔!!なんかいろいろ垂れ下がってたよ?」
「なっ!垂れ下がってなんか無いです!!」

身を乗り出す私。


ジュッ!!

「あっつ・・・!!!!!!!!」
「梨沙子っ!!!!」

267 :名無し募集中。。。:2010/01/29(金) 22:16:51.41 O

そばにあったアイロンは既に高温になっていて、私の手の平に思い切りふれてしまった。

「熱いっ熱いっ!」
「梨沙子っ!早く冷やさなきゃっ」

先輩は私の手を引いて部屋の洗面台までいくと、蛇口から冷水を勢いよく出して私の手を冷やした。

268 :名無し募集中。。。:2010/01/29(金) 22:20:58.98 O

「よかった・・・跡は残らなそう」
「すいません・・・先輩。」
「謝るのはこっちだよ!あんな近くにアイロン置いて・・・ホントごめん。梨沙子、すごく綺麗な手なのに。」


先輩が私の手を綺麗と言ってくれただけで胸がいっぱいになる。
先輩がつけた跡なら、ずっとこの手の中に残していたい。

269 :名無し募集中。。。:2010/01/29(金) 22:24:53.94 O
「氷・・・無いですよね」
「いや、火傷の時は冷水を流してた方が傷にはいいんだよ」
「へぇ。先輩詳しいですね。」
「うん。愛理に教えてもらった」


へへ。と、照れくさそうに笑う先輩を見てなんだか泣きそうになった。

既に手の平は冷水で麻痺しているというのに、先輩が握りしめる私の手の平は芯から痛みを訴えているようだった。


だめだ私。やっぱり浮かれすぎてた。

287 :名無し募集中。。。:2010/01/30(土) 12:54:04.44 O

「梨沙子・・・?大丈夫?」

そんなことを考えてたら自然に顔に出ちゃってたみたい
先輩は心配そうにあたしの手の甲をさすった

「痛む?」
「いえ!全然平気です!」
「ほんと?」
「うん。先輩、それより、髪の続きやってくださいよ」

心配させたくないから元気いっぱいに先輩の手を引く

が、それが少し強引すぎたみたい・・・

「うわっ」
「え?」

288 :名無し募集中。。。:2010/01/30(土) 12:55:27.68 O

振り向いたと同時に先輩が倒れこんできた
たぶん何かに引っ掛かって躓いたんだと思う
あたしはそれに巻き込まれる形で先輩の下敷きになってベッドに倒れた

「ちょっ!せんぱーい、足腰弱ってますよぉ」

おちょくりながら、『あんたがひっぱるからでしょ!』という突っ込みを待ちつつ
咄嗟に瞑ってしまっていた目をゆっくりと開ける


そして自分の置かれている状況に驚愕した

289 :名無し募集中。。。:2010/01/30(土) 12:56:35.10 O

仰向けになってるあたしと、覆いかぶさるようにして重なってる先輩
先輩の髪があたしの顔にかかるぐらい二人は密着している
どう考えても近い
どう考えても顔が近い
なんか・・・これって・・・・
ってバカ!!何考えてんのあたしの変態!!

「・・・」
「・・・」

お互い言葉を失ってるようだった
でも沈黙より何より気になるのは、じっとあたしを見つめる先輩の瞳

何秒だったかは分からない
本当は一秒もなかったかもしれない
あたし達はこの態勢のまましばらく真顔で見つめ合っていた

290 :名無し募集中。。。:2010/01/30(土) 12:57:44.55 O

ふと我に返ったようにはっとする先輩
「ごめん梨沙子!」
慌ててあたしの上からどくと、腕を引っ張って体を起こしてくれた

「痛かったぁ、先輩のバカ」
「いやいや痛くはないでしょベッドなんだから。
てかあんたが引っ張るからでしょうがぁ!菅谷ぁ!」
「あれぐらいで転けるなんて、足弱ってます。鍛えてください」
「なんだとお!」

291 :名無し募集中。。。:2010/01/30(土) 12:59:04.34 O

いつも通りのあたし達
そうだよね、今野はただの事故だもん・・・
変なこと考えたのはあたしだけで、先輩は何も気にしてないよね
あたし、意識されてないもんね・・・

「時には運!」
「いたっ」

先輩と気まずくなるのは嫌だ
だからあたしは精一杯元気に振る舞う
あたしが普通でいれば先輩も普通に笑ってくれるから
今のこの関係を壊したくはない

あたしは近くにあった枕を先輩に投げ付けた
先輩も楽しそうに投げ返してきた
いつものあたし達だった
最終更新:2010年02月11日 20:40