308 :名無し募集中。。。:2010/01/30(土) 22:53:11.30 0

小鳥のさえずりとカーテンの隙間から射す日差し
「ん…」
重い体を起こし隣のベッドに目をやると掛け布団は綺麗にたたまれ
昨日寝ていたはずのキャップの姿がなかった

「キャップ?」
洗面所、トイレ、お風呂、ベッドの下
ありとあらゆる場所を探してみたけど部屋にキャップの姿はない

昨日の夜中のメール…
そしてあの時の動揺した顔…
あれはきっと怪盗系のメールに違いない!
キャップは事件に巻き込まれて…!
「キャップ!」
慌てて部屋を出て行こうとドアノブに手をかけたところでキャップの声がドア越しに聞こえまわそうとした手を止めた

309 :名無し募集中。。。:2010/01/30(土) 23:06:02.64 0

朝いつもより早く目が覚めた
昨日の真野ちゃんからのメール…
もう一度見返してみてもやっぱり夢じゃなかった…

「ん…キャップ…」
隣のベッドですやすや眠る桃の顔を見ると胸が締め付けられる
静かに隣のベッドの枕元に腰をかけると桃の頭をそっと撫でた
「可愛い寝顔」
自分で言って自分で笑う
いつもはこんなこと言わないのに今日に限ってさらっと言えるのはきっと桃に対しての罪悪感…

それ以上こんな幸せな顔で寝ている桃の顔が見れなくて起こさないようにそっと部屋を出た

「佐紀?」
「舞美」
部屋を出たところで舞美に会い引き止められた
「なにしてるの?こんな朝早くから」
「舞美こそ」
「あたし?あたしは日課の朝のランニングに行こうと思って」
「そっか。元気でいいね」
やばい…
今のあたし上手く笑えてる自信ない…

340 :名無し募集中。。。:2010/02/01(月) 12:50:12.37 0

「なんかあったの?」
あたしの顔を覗きこみ心配そうにしている舞美
中学から一緒の舞美はあたしと真野ちゃんのことを知っている…
話すべきだよね…

「うん…実はさ、真野ちゃん日本に帰ってきた…」
「え!?そのこと桃は…!」
「言ってない…。っていうか高校から入ってきた桃に真野ちゃんのこと話してもきっとわからないと思うし…」
「そっか…、そうだよね」
いつもヘラヘラ笑ってる舞美もこの事の重大さにいつになく真剣な顔つきになり
不安そうにしている

「それで…今日合宿の後会わないかって誘われてて…」
「会いに行くの?」
「わかんない…。でもケジメはつけなきゃって思ってる…」

「桃に言わないで行くの?」

その舞美の言葉にあたしは何も言えず言葉を詰まらせた

343 :名無し募集中。。。:2010/02/01(月) 18:45:57.51 0

「うん…」
「佐紀、もし桃に真野ちゃんと会ってたこと…」
言いかけていた舞美の言葉を遮りあたしは舞美の両肩を持つと
玄関のほうへ体を向けた

「ほら、早く走ってこないと朝ご飯の時間になるよ」
「え?あ、佐紀!」
舞美のそう呼ぶ声が聞こえたけどあたしは振り返らずに部屋へと戻った

わかってる…
桃に言わなきゃってことぐらいわかってるのに
あの…あの幸せそうに笑う桃の笑顔を奪いたくないんだ…

355 :名無し募集中。。。:2010/02/02(火) 02:32:42.20 0
真野…ちゃん…?
ドア越しに消える二人の会話
時折出る真野ちゃんという単語と舞美が桃のことを気にかけているということ
キャップの戸惑いを隠せない声…
1つ1つが桃の耳に入ってくる

「ほら、早く走ってこないと朝ご飯の時間になるよ」
「え?あ、佐紀!」

急に途切れた会話とドアを開ける音に急いでベッドのほうに戻ると
そのままベッドにダイブして布団を頭まで被った

「桃?まだ寝てるの?早くしないともう朝ご飯の時間になるよ」
さっきの深刻な会話が嘘のようにいつもどおりのように振舞っているキャップ
ねぇ キャップ…
桃に何隠してるの…?

396 :名無し募集中。。。:2010/02/04(木) 21:36:27.43 0

「地震だー!」
起きているのに寝たフリをしている桃のことを知ってか知らずか
キャップは子供のようにベッドを揺らした

「きゃっ!」
「はははは。桃のその驚いた顔ウケる」
人の気持ちも知らずにイタズラしてお腹抱えて笑ってるなんて信じらんない!
キャップのバカ!
そう心の中で叫ぶと言葉には出さずそのままもう一度ベッドに潜り込んだ

「ほらー、早く起きなきゃ遅刻するってばー」
もう知らない!キャップなんか…!キャップなんか!
「早く起きなきゃキスするよ。昨日みたいに濃厚なやつ」
ふーんっだ!やれるもんならやってみろ!
頭まで被った布団をぎゅっと握り締めどこからも攻められないようにそのままくるまった

397 :名無し募集中。。。:2010/02/04(木) 21:45:46.70 0

「へぇ~、そう。いい度胸じゃん」
頭上から聞こえる不適な声とギシっとなったベッドの軋む音
そっと布団にキャップは手を添えると指先を器用に動かし桃のわき腹をピンポイントでアタック
「うりゃー!」
「きゃっ!やめ…っ!くすぐったい!」
「ほらー、早くしないと苦しくなるよー」
で、出た…!Sキャップ!

ベッドの暴れまわる桃をわき腹だけで攻めてくるキャップ
もう無理…!
「っぷは…キャップ…!」
布団から顔を出し息の荒くなった呼吸を整えながら乱れた服も一緒に直していると
キャップがそっと頭を優しく撫でた
「おはよう」
いつもの優しい笑顔
そして近づいてくる唇に目を瞑った

416 :名無し募集中。。。:2010/02/05(金) 20:03:25.32 0

目を瞑って数秒
触れない唇と唇に桃は目を開けた
「キャップ…?」
キャップは無理して作った笑顔を浮かべ桃の頭を優しくなでると
「早く支度しな」って背を向け洗面所へ歩いて行った

なんで…?
なんでキスしてくれないの…?
真野ちゃんって誰なの…?
キャップはなにを隠してるの…?
なんで…?

聞きたいことは山ほどあるのにあんな無理した笑顔のキャップを見たら
そんなこと聞けなくて…嫌われたくなくて…
枕に顔を埋めるとキャップに聞こえないように声を殺して泣いた
昨日までの幸せだった日々が脆くも崩れ去っていくその様を桃はただ見てることしかできないんだ…
最終更新:2010年02月15日 21:46