- 426 :名無し募集中。。。:2010/02/06(土)
02:06:03.31 0
それからキャップとは一言も口が聞けないまま合宿は終わってしまった
3年生最後の合宿
初めて好きな人と過ごす合宿
楽しいまま終わると思ってたのになんでこんなに胸が苦しいんだろう…
「じゃあ、舞美また学校でね」
「うん」
そんな桃の気持ちを知ってか知らずかみんなの前で普通に振舞うキャップ
一頻りみんなに挨拶を交わすと一人隅で佇む桃のほうへとキャップは歩み寄ってきた
「帰ろ」
小さなキャップの手が桃の手に重なりぎゅっと握り締められる
桃が帰ったらキャップは真野ちゃんに会いに行くのかな?
そう思うとどうしても一歩が踏み出せない…
「桃?帰んないの?」
- 427 :名無し募集中。。。:2010/02/06(土)
02:13:18.25 0
「あ、あのさ…。寄りたいとこあるんだけど…」
「うん、いいよ。どこ?」
「えっと…うんと…ほ、ほら!桃携帯新しく替えたいって言ってでしょ?だからどういうのがいいか見に行きたくて…」
「今、19時か。もうお店閉まってると思うよ」
「い、いいの!」
キャップの困った顔…
わがままなのはわかってる…
でも、今このまま素直に帰ってしまったらキャップはきっと真野ちゃんっていう子のとこに行ってしまう…
「べつに今日じゃなくても…」
「今日がいいの!今日が…」
「桃?」
崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込みキャップの腕にしがみついた
「行かないで…」
「え?」
「キャップ行かないで…。桃を一人にしないでよ…」
この声と性格のせいで中学のとき友達という友達もできなくて
いつも一人ぼっちだった…
だから高校は中学とは遠く離れたここに来た…
やっと…やっと見つけた桃の居場所…
心地よくて安心できる桃の居場所…
一人になるのはもう嫌だよキャップ…
- 447 :名無し募集中。。。:2010/02/07(日)
01:35:10.14 0
「キモっ」
「き、き、キモイ!?」
目の前でこんなに可愛い子が涙流してお願いしてるのに
キモイって言い放ったわこいつ!
心の中で何度も「キャップめ~!」と地団駄を踏んでいるとおでこにデコピンされた
「いたっ」
「あたしがまるで明日死ぬみたいじゃん」
「なっ!だって…」
「だってもなにもないよ。ほら、帰るよ」
差し出されたキャップの手を握り起き上がると
そのまま引っ張れるようにして学校を出た
無言が続くけどこのままのまんまでいいのー♪
って、よくない!
何も言わずに家の方向へ歩いていくキャップの後ろをただひたすら着いていく
このまま本当に帰ったら…
「桃、今日空いてる?」
「え?」
「もし良かったら…うち来る?」
「え…」
急な誘いとまさかの展開に桃はその場に立ち止まり空いた口が塞がらない状態になってしまった
- 449 :名無し募集中。。。:2010/02/07(日)
01:47:03.59 0
「来るの?来ないの?」
「い、行くっ!」
その答えだけを確認するとキャップはまた前を向いて歩き出した
なんだかよくわからないけどたぶんこれって桃の勝利?
桃、真野ちゃんって子に勝ったの?
心の中でガッツポーズを決め
「キャップ~」っと擦り寄るように腕にくっついた
「なに急にこの子は」
「ん~そんなに照れなくてもいいのにぃ~」
「うわ…」
「引かないでよ~キャップぅ」
キャップの家路への道
たかだか7分の時間で
それでも昨日のことが嘘のようにこうやって腕を組んで歩けることがすごく幸せだった
- 465 :名無し募集中。。。:2010/02/08(月)
00:04:33.14 0
「ねぇキャップ」
「ん?」
「お家の人に言わなくていいの?桃が行くこと」
「うん。家族みんな仙台のおばあちゃん家行ってるから明日まで帰ってこないし」
平然な顔でそう言ったキャップ
え、ちょっと待って、ってことは家に二人っきりってこと!?
「え、あ、うそ…えー!」
「なに急に」
「な、なんでもない…。そうなんだ…」
「変な想像でもしてたんでしょどうせ」
「ち、違うもん!キャップのバカ!」
キャップの家に上がることなんて初めてなのにいきなり二人っきりなんてハードル高すぎるよ…
で、でも…一緒にいれるならそれでもいい…
「もうすぐで着くから」
大通りから住宅街の狭い道に入っていくといかにも高そうな家がびっしり並んでる
もしかして今まで知らなかったけどキャップってお金持ちなの?
っていうことは…ピーチ姫を迎えにきた王子様はやっぱりキャ…「いたっ!」
せっかくそんな妄想に浸ってのに急にキャップが立ち止まるからそのままキャップの背中にぶつかり顔を強打した
- 484 :名無し募集中。。。:2010/02/08(月)
19:17:12.35 0
「ちょっと急に立ちど…「清水さん!」」
桃の言いかけた言葉を遮り聞こえた「清水さん」とキャップを呼ぶ声
「真野…ちゃん…」
「久しぶりー!元気だった?」
近寄ってきた女の子は桃より少し背が高くて髪の毛もさらさらのロングヘアで綺麗な黒髪
電灯に照らされた笑顔は太陽に眩しい
そしてなによりキャップに甘える仕草が桃と似ていることにびっくりした…
この子が真野ちゃん…
「たまたまね、向こうで長い休みが出来てこっちに帰ってこれたの!」
桃のことなんてまるで見えてないかのようにキャップの腕を掴み嬉しそうに話す真野ちゃん
それをキャップは振り払う
「今更なんの用?」
「清水さん…」
「桃、行こう」
「え、あ、うん…」
キャップは桃の手を取ると荒々しく家へと入った
- 89 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金)
15:32:59.44 0
「上がって」
「う、うん…」
二人がどういう関係でなにがあったのか桃にはわからないけど
このままでいいわけないことくらいわかる…
たとえ元恋人同士だったとしても桃だったら…桃だったら…あのままじゃきっと嫌だと思う…
「桃?」
「…いいの?」
「だから気にしなくていいって、家族みん…「違うよ!真野ちゃんって子のこと…」」
その言葉にキャップは一瞬驚いた顔を見せるとすぐに
不機嫌そうな表情を浮かべた
「桃には関係ない」
冷たく突き放すようにそう言い放ったキャップ
関係ない――
ズキンと痛む心と桃の知らない二人の過去が
昨日まで近かったはずのキャップとの距離に壁ができたように感じた…
- 148 :名無し募集中。。。:2010/02/13(土)
01:25:53.10 0
「そう…だよね…。ごめんね…」
泣いたら困らせるってわかってるのに溢れてくる涙を堪え切れなくて
涙の雫が頬を伝った
「はぁ…。またそうやって泣く」
キャップは呆れた顔で桃の頬にそっと触れると優しく涙を拭ってくれた
「だってぇ…グス…関係ないって言うからぁ…」
「それは…桃には心配かけたくないから…」
「なんでよ!キャップはいつもそうだよ!本当は弱いくせに強がって
勝手に全部背負い込んで、桃はなんのための恋人なの」
「桃…」
「少しは桃にも甘えてよ…。役に立たないかもしれないけど、キャップが辛いとき
傍にいて寄り添ってあげられるくらいはできるもん…!」
何度も何度も拭っても落ちてくる涙
きっと今泣きたいのはキャップのほう…
なのになんで桃が泣くのよ!バカバカ!桃のバカ!
涙よ静まれ!
- 149 :名無し募集中。。。:2010/02/13(土)
02:45:54.84 0
そんな奮闘を頭の中で繰り返しているとふいに暖かいものが桃を優しく包んだ
そして広がるキャップの匂い…
「ありがと…」
聞こえるか聞こえないかの小さな声だけど
確かに聞こえたその声に桃は頷くと同じようにキャップの腰に手を回した
本当は聞きたいことがたくさんあった
真野ちゃんって子との間になにがあったのか とか
二人は付き合ってたのか とか
桃は真野ちゃんの代わりでしかなかったのか… とか…
たくさんたくさんあったのに今まで大きく見えていた背中がこんなに小さくなってしまったキャップに
そんなことを聞ける勇気もなくてただただ抱きしめうことしかできなかった…
どれくらいそう抱き合ってただろう…
「桃…部屋行こう」
「え?」
それってつまり…そういうことだよね…
え、でも、まだこんなに心モヤモヤしてるのに…
心の中の葛藤に整理がつかないまま桃はキャップに手を引かれキャップのお部屋にお邪魔した
綺麗に片付いた部屋ですごく広い
桃の部屋は大違い…
- 175 :名無し募集中。。。:2010/02/14(日)
02:46:05.98 0
部屋に入るなりキャップはいきなりベッドに腰をかけると
「ここ座りなよ」と自分の座ってる場所の隣をぽんぽんと叩いた
それに促されるようにキャップの横に腰を下ろす
この状況ってつまり…昨日の続き的なことで…
さっきまであんなことあったのにそんなこと…
でも…キャップのこと大好きだしそういうことしたいけど…でも…
色んなことが頭を巡り混乱している桃とは正反対に
落ち着いた様子で何も言わずただ前を見据えてるだけのキャップ
重たい空気…
どうにかこの空気を換えたくて面白いことを言おうとしても
今のこの状況ではどうもKYすぎるし…いくら桃でもそこまでの勇気はない…
そんな重たい空気をさくようにキャップがふいに口を開いた
「あたしと真野ちゃんさ、中等部の頃同じクラスになって。初めは風紀委員とかなんとかで
すごいうるさくて、やたらとあたしに突っかかってくるし、正直ウザイやつとしか思ってなかった」
ぽつりぽつりと話始めた真野ちゃんとの過去
初めて会った日
仲良くなっていった日々
キャップから告白したこと
初めてのデート
そして…中学卒業と同時に何も言わずにアメリカに行ってしまったということ…
キャップは1つ1つ鮮明に教えてくれた
- 22 :名無し募集中。。。:2010/02/15(月)
02:34:53.39 0
「だからさ…始めは桃と真野ちゃん重ねてた…。やたらあたしに突っかかってくるし、
正直ウザイと思ってた時期もあったし…」
う、ウザイ…
その言葉チクリときたよキャップ…
不機嫌そうな顔を浮かべる桃に気付きキャップは慌てて弁解を始める
「で、でも!桃は真野ちゃんは違うものたくさん持ってたし、付き合うって決めたのは桃だったからだよ…」
「ほんとに?」
「うん。あたしが好きになったのは真野ちゃんに似てる桃じゃない。嗣永桃子そのものに惚れたんだよ。
だから真野ちゃんはもう関係ない」
桃の頭を優しくなでニコっと笑ったキャップ
好きって言ってくれたことはすっごく嬉しい
嬉しいよ…嬉しいけど…
頭に過ぎるのはさっき家のまで繰り広げられた光景…
キャップの怒った顔と真野ちゃんの泣きそうな顔…
もしも桃が真野ちゃんだったらきっと…
「それでいいの?キャップ」
- 121 :名無し募集中。。。:2010/02/19(金)
20:09:07.24 0
「…なに言ってんの?」
「だって…このままじゃダメだよきっと…」
「桃あたしはもう…「キャップがよくてもきっと真野ちゃんは良くないよ!」」
何時に帰ってくるかもわからないのにずっと家の前で待ってた真野ちゃん
きっとキャップに話したいことがあるから…
そしてあのキャップの切なそう顔…
傍から見れば二人がまだお互いに引きずりあってることくらいわかる…
「桃…」
困った顔で桃を見つめるキャップ
桃にできることは
「キャップ…真野ちゃんのところ行ってあげて…」
キャップを真野ちゃんのところに向かわせてあげること…
- 124 :名無し募集中。。。:2010/02/19(金)
21:58:32.53 0
「は?何言って…」
「桃は大丈夫だから。一人は慣れてるし」
「でも…!」
「行って!今行かなきゃもう一生に真野ちゃんに会えないかもなんだよ!」
堪えてたはずの涙があふれて頬を伝う
キャップは握ってた拳をさらにぎゅっと握ると桃の額にそっとキスをした
「絶対…絶対戻ってくるから…」
そう言ってキャップは切なそうな顔を浮かべ桃の頭をくしゃくしゃと撫でた
目が合った瞬間に触れた唇
そして背中にはベッドの感触
「キャップ?」
離れた唇は今度は桃の首筋へと落ちる
「っん…」
「絶対戻ってくるから」
ベッドから起き上がり部屋を急いで出て行ったキャップを桃は静かに見送った
心の中で「さようなら」を告げて…
最終更新:2010年03月12日 02:16