450 :名無し募集中。。。:2010/02/07(日) 02:08:52.21 0

音楽室、久しぶりの部活。
引退したえりかちゃんも顔を出してくれていつもの練習がにぎやかになった。
練習が終わった今は帰る人もいればまだまだおしゃべりに夢中な子もいて
みんな思い思いの時間を過ごしている。

あたしは今日初めて歌った新しい合唱曲の楽譜を見て一人鼻唄。
メロディーがとても綺麗ですごく好き。
練習してもっとうまく歌えるようになりたいな。

そんなことを思っているとなんだか急に外が騒がしくなった。
ドサドサと荷物が降ろされる音、人の話し声。

「なんだろう?」

あたしは窓に近づいて外を見降ろすと、一台のバスと見慣れたジャージを着た集団の姿。

みやが帰ってきたんだ・・・。

そう思った瞬間、自分の心臓の音が早く大きく打ち始めた。

507 :名無し募集中。。。:2010/02/08(月) 23:48:50.59 0

みやどこだろう・・・みやを見つけるのが得意なあたしだけど
なぜだかみやが見当たらない

「あっ」
みや降りてきた!


―――え?????


あたしは咄嗟にうしろを向いて座り込んでしまった
見たくない、信じられない光景を見てしまったような気がして・・・

しばらく呆然と座り込んでいると、ポケットに入れてた携帯が震えた
なんとなくだけど、みやだって思った

『愛理に会いたいです』

508 :名無し募集中。。。:2010/02/08(月) 23:49:42.79 0

この一文を見た瞬間さらにあたしの心臓は暴れ始める
嬉しさや緊張や不安が混ざってワケ分からなくなったあたしの感情が
胸のドキドキとなってあたしを襲う
なんでだろう、携帯を持つ手が震える

「愛理」
「えり・・・梅田先輩」
「ナツヤキさん?」
「あ、うん・・・バスケ部帰ってきたみたい」

窓から校庭を指さす
えりかちゃんはバスケ部の集団を眺めながら呟いた

「そっか。じゃあ、下まで一緒に行こうか」

511 :名無し募集中。。。:2010/02/09(火) 00:27:26.04 0

えりかちゃんに手をひかれて中庭に向かう
もうすぐみやに会えるはずなのにあたしの足は鉛のように重い

みやだってあたしに会いたいって言ってくれてるのに
あたしだってみやに早く会いたいのに

会いたいのに会いたくない・・・あたしってなんでこんなに面倒なんだろう・・・

「あ、愛理じゃん!?」
俯いて歩いているといきなり遠くから名前を呼ばれる
「ふぇ?」
きょろきょろと声の主を探していると急に目の前ににょきっと顔があらわれる

「と、徳永先輩!!」
「やぁやぁ、熱いねぇー!みやのお出迎えですかぁ?」
「あ、えっと、別にそういうわけじゃ・・・」
「またまたぁ!みやもうすぐ来るよ、さっき部室に向かってたから」

4 :名無し募集中。。。:2010/02/10(水) 22:55:30.73 0

「部室、ですか・・・」
「うん。梨沙子ちゃんと一緒だったから、マネージャーの手伝いじゃないかな」

梨沙子ちゃん、という単語に心がざわめく
また梨沙子ちゃん・・・?
マネージャーの手伝いって・・・何それ

「愛理、夏焼さんにメールしたら?」
「・・・」
「愛理?」
「・・・やっぱり帰るよあたし」
「え?なんで?」
「・・・忙しそうだし、いいや」

そんなのは口実
ホントは、梨沙子ちゃんといるみやをこれ以上見たくないから・・・
子どもっぽい我儘だって分かってる
だけど・・・だけど・・・あたし、これ以上何かあったら壊れそうだよ・・・

6 :名無し募集中。。。:2010/02/10(水) 23:36:40.04 0

唇を噛んで弱っちい自分への悔しさを噛みしめる
どうしてあたしは心が狭いの
どうして心から笑えないの
どうしてみやを想えば想うほどつらくなるの

「愛理」

背中にえりかちゃんの手の温もりを感じる
昔から変わらない、泣いた時や眠れない時にいつもさすってくれたその手
思わず泣きそうになる

「待ってた方がいいよ」
「えっ?・・・・でも」
「愛理が待っててくれたら、絶対彼女喜ぶって」
「・・・・」
「それに、思ってることは伝えなきゃ」

そう言ってえりかちゃんはそっとあたしから手を離す
途端にまるで置いてかれた子どものようにひどく寂しい気持ちになる
えりかちゃん、行っちゃうの・・・?
そう目で訴えると、静かにあたしの方を振り返って微笑んだ

「ゆっくり先帰ってるから。何かあったらすぐ私のとこおいで」

8 :名無し募集中。。。:2010/02/10(水) 23:49:37.49 0

そういって去っていくえりかちゃん
「あ…」
引きとめようと体は動いたのにそれを遮るように誰かにふいに呼ばれ振り向いた

「あ、愛理ちゃん」
「久住先輩」
「こんなところでなにしてんの?もしかしてみや?」
「いや…あの…」
言葉を詰まらせていると久住先輩は嬉しそうにあたしに携帯の画面を見せた

これ…
「みや合宿中に梨沙子ちゃんにうつつ抜かしてたよ~。ちゃんと叱っときなよ!」
ぽんぽんとあたしの肩を叩き隣にいたOB?の先輩の手を引き歩いていく久住先輩
久住先輩の携帯に映ってたのは紛れもなくみやと梨沙子ちゃんだった…
そして二人の寝顔…
今まで張っていた糸がプチンと切れたかのように涙が溢れて止まらない…
声にならない思いがすべて涙となって流れていくかのように

9 :名無し募集中。。。:2010/02/11(木) 00:15:00.69 0

堅く目を瞑ってみる
髪もくしゃくしゃにかきあげてみる
だけどすぐに浮かんでくる。みやと梨沙子ちゃんと同じベッドで寝てるあの画像が・・・
梨沙子ちゃんを抱きしめて眠るみやの姿が・・・

分かってるよ・・・みやは浮気するような人じゃないってこと・・・
悪気だってないと思う、ただ、梨沙子ちゃんを可愛がってるからその延長で・・・深い意味は・・・

「うっ・・・」

ダメ・・・涙が止まらない
こんな所で泣きたくないのに、どうしても止まらない・・・

この場に居れなくなって俯いたまま走り出す
正門を抜けて勢いよく右に曲がる
けどあたしはすぐに足を止めた・・・なぜならあの人がすぐそこの壁に寄り掛かって空を見ていたから

「・・・・・・帰るんじゃなかったの?」
「梅さんはもう歳だから歩くのが遅いのよ」

待っててくれたくせに・・・・・・・・

涙でぐしゃぐしゃになった顔を隠すこともせず、えりかちゃんの胸に飛びついた

最終更新:2010年02月15日 22:33