13 :名無し募集中。。。:2010/02/11(木) 02:08:27.34 0

愛理、愛理、愛理…
そう何度も胸の中で叫びながらあの面影を探す
風に黒い髪をなびかせながら「みや」って笑顔で呼んでくれるあの面影を…

「愛理どこだろ」
体育館の前を通り校庭に出てみてもその姿はない
念のためと愛理の部活の部室を見上げてみても明かりは消えている
「もしかして!」
いつもうちが部活で遅いと正門の前で待っててくれる愛理を思い出し
正門まで一気に走り出す
早く会いたい
一目でもいいから会いたい
こんな気持ちのまま会ったらきっとうちは愛理をぎゅっと抱きしめて
愛理が「苦しいよ」っていうくらいに抱きしめて
そして…

「あい…り」
だけど愛理を抱きしめてたのはうちじゃなかった…

25 :名無し募集中。。。:2010/02/11(木) 18:22:16.03 0

何あれ・・・どうして・・・?一体何が起きてるの・・・?
状況を理解できずその場に立ちすくむことしかできないうちに、愛理じゃない方の人が気付いた

「あ」

その人とばっちり目が合う
愛理はその人の胸の中にいたまま肩を震わせ、その人は愛理の背中を撫でながらうちを見つめる
胸の鼓動が激しくなっていく一方で、ギリギリ残ってる冷静なうちがその人が誰かを思い出す

――えりかちゃんは幼馴染でね、小さい頃から仲いいんだ

いつだったか愛理が楽しそうに話していた人、梅田先輩・・・
間違いない、梅田先輩だ・・・

26 :名無し募集中。。。:2010/02/11(木) 18:36:56.49 0

私の胸で泣きじゃくる愛理の背中を抱きしめてさすっているとどこからか感じる視線
ゆっくり顔を上げると少し離れたところで立ち尽くしている誰か

あれは・・・、もしかして・・・

ばっちり目があったまま反らすことができない鋭い目つき

「・・・愛理、大丈夫?」
私はナツヤキさんの視線を感じながらも背中を撫でて愛理に声をかける
「・・・ん・・・だいじょう・・・ぶ」
私の問いかけに首を縦に大きく振る愛理

それを見て私は愛理からそっと体を離した

28 :名無し募集中。。。:2010/02/11(木) 19:01:48.69 0

ホントは今すぐにでも家に連れて帰りたい
だけど愛理がナツヤキさんのことで苦しんでるってことぐらい私にも分かるから
だったら本人に思いをぶつけた方がいい
だから私は一歩、そしてもう一歩と愛理から離れた

心配そうに私を見上げる愛理
大丈夫だよ、そんな思いを込めて小さく頷く

ナツヤキさんがゆっくりうちらの方へ歩いてくる
私はそれをなんとも言えない気持ちで見つめていた

――もし愛理を傷付けるようなことをしたら引っ叩いてやる――
そのぐらいの覚悟はあった


 31 :名無し募集中。。。:2010/02/11(木) 20:00:37.78 0

わけがわからないままなのに、うちの足は自然と愛理の方へ

なんで泣いてるの?なんで梅田先輩と抱き合ってるの?なんで?なんで?
いっぱい聞きたいことがあるのに、
愛理の目の前に立って、愛理の顔を見た瞬間、
やっと愛理に会えた、ってそんな気持ちが高まって

「ただいま、愛理」

その一言しか出てこなかった

33 :名無し募集中。。。:2010/02/11(木) 20:44:54.62 0

えりかちゃんに縋って泣いてるところをみやに見られた・・・
怒られる・・・そう思っていたのに

「ただいま、愛理」

みやは何も聞かずにそれだけ言った
あたしもおかえりって言おうとしたけど涙ばかりが流れて言葉にならなかった
そんなあたしを責めることもなく、手をあたしの頬に添えて悲しそうな目であたしを見つめるみや
やめてよ・・・そんな目で見ないで・・・胸が苦しくなる

――どうして梨沙子ちゃんと抱き合って寝てたの?

――どうして梨沙子ちゃんと手つないでたの?

――みやにとって梨沙子ちゃんってなんなの?

聞きたいことはたくさんある
でも聞けないんだよ・・・そんな簡単に聞けないんだよ・・・

34 :名無し募集中。。。:2010/02/11(木) 20:46:58.52 0

「愛理・・・どうして・・・」
「・・・・・」
「どうして・・・」

簡単に聞けないのはみやも同じみたいだった
みやの言葉の続きはなかった
『どうして泣いてるの?』『どうしてあの人に抱きついてたの?』『どうして何も言わないの?』
どれかだと思うけど、言ってくれなきゃ結局あたしには分からない

そう・・・・・・あたしだってちゃんと言わなきゃみやに伝わるわけがない・・・

お互い聞きたいことすら聞けなくて
怖くて相手の心に踏み込めなくて

そんな二人の間に見えない壁を感じた

36 :名無し募集中。。。:2010/02/11(木) 20:55:29.92 0

聞きたいことはたくさんあるのにうまく言葉にできない

うちは愛理が泣いているのを見たくなくて
その涙の原因がうちじゃにだれかならその人を殴ってやりたい
もしも、うちのせいならちゃんと愛理に謝りたい

やらなきゃいけないことはわかっているのに、
どうやって愛理に伝えたらいいのかがわからなくてもどかしい

だからうちは愛理の手を取って両手をぎゅっと握りしめることしかできなかった
44 :名無し募集中。。。:2010/02/11(木) 21:40:04.84 0

夏焼さんが愛理の手を握る。お互い何も言わず、ただただ見つめあうだけ
でもあの時の、家の前でちゅーしてた時の二人の雰囲気とは全然違う
なんて言うか・・・・・重い!まっ、当り前か・・・
でもあとは二人の問題。あたしが口をはさめる問題じゃない

「じゃあ愛理。あたしは帰るから」
「えっ・・・」
「じゃ!お二人さん仲良くねー」

「あ、そうだ!」
これぐらいは・・・これだけはいいでしょ?

「夏焼さん。あんまり愛理を泣かせないでね♪」

46 :名無し募集中。。。:2010/02/11(木) 21:46:50.59 0

「え?」
えりかちゃんの言葉にびっくりした顔になるみや
その間にえりかちゃんはもう遠くまで行っていて残されたあたしたち

「愛理、大丈夫?」
「・・・うん」
「ごめんね?愛理」
「・・・うぅん・・」
何がごめんなの?悪いのはみやだけじゃないのに
なんでみやはいつもすぐに謝るの?

「かえろっか。うち、お腹すいちゃった」
「・・・うん」
「なんか食べて帰ろうよ」
みやはさっきまでのことをなかったかのようにわざと明るい声を出した

58 :名無し募集中。。。:2010/02/11(木) 22:09:07.91 0

だけど、いくら表面上で明るくしたってさっき感じてしまった違和感・・・
心の壁は取り除けない・・・
何もなかったように接すれば前みたいに素直になれるの・・・?
普通にしてれば時間が解決してくれるの・・・?

「愛理ー。何食べたい?」

分かんない・・・分かんないよ・・・
こんな気持ちを抱いて付き合ってても・・・いつか・・・

「・・・みや」
「ん?」

いつか・・・壊れるよ・・・

「愛理?どした?」
「・・・・・・・みやの家、行ってもいい?」

59 :名無し募集中。。。:2010/02/11(木) 22:15:29.16 0

あたしの言葉にきょとんとするみや
きっとみやはあたしのこの言葉の意味がわかってないんだと思う
だから、そんな簡単に・・・

「うん、いいけど・・・ちょっと散らかってるかもよ」
「大丈夫」
「そう?わかった」

あまりにもあっさりとOKしてくれるみや

みやはあたしといてそういうこと意識しないのかな?
あたしは・・・ただみやを感じたい・・・

63 :名無し募集中。。。:2010/02/11(木) 23:40:13.00 0

愛理と手をつないでうちの家へ
何度か家に遊びに来たこともあるから家族も喜んで出迎えてくれるはず

だけど家までの道のりでうちらにあまり会話はなかった
普通に話そうと思ってるんだけどなんだかうまく話せなくてぎこちなくなる

久しぶりだから?
さっきのことがあるから?

―――きっとどっちも正解

お互いがお互いに気を遣ってる気がする・・・

そんなことを考えていると気づいたら家の前に着いていた

ドアを開けてもらおうとインターホンを押す
「・・・」
「・・・」
「・・・あれ?」
何度も押したけど家の中からは全く反応がなくて
うちは仕方なしにカバンの中から鍵を取り出してドアを開けた

66 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 02:36:21.00 0

「あっれー・・・おっかしいな。誰もいないみたい」
「・・・」

カギを開け、家の中に入っても人の気配がない
この時間帯なら大抵誰かいるはずなのに・・・
リビングに行くと、机の上に置手紙
『外食してくるからご飯は適当に済ませて!』

・・・

「合宿から疲れて帰ってきたっていうのに・・・」
「はは・・・」
「と、とりあえず、部屋行こっか」

68 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 06:20:25.18 0

みやに手を引かれ、部屋まで向かうほんの数十秒の間、いろんなことを考えた
梨沙子ちゃんとのこと、さっきのえりかちゃんとの出来事、私たちの関係のこと・・・
でも、考えれば考えるほど頭の中は混乱してきて、目頭が熱くなる
そして―

「ごめんねぇ、ちらかってて・・・えっ!」

部屋のドアが開いた瞬間、みやの背中に抱きついた。
みやが合宿中、溜め込んでいた不安や寂しさが全て弾けちゃったみたい。

69 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 06:41:50.85 0

部屋を空けた瞬間、背中に重みを感じた
と、同時に涙をすする声も

「愛理・・・?」

振り返り、愛理の方に向きなおると、胸の中に飛び込んできた。

小刻みに震えて、泣いてる
顔は胸にうずめてよく見えないけど、大粒の涙がじわっと染みた。

ずっとこうして抱き締めたかったのに
ずっと愛理のぬくもりを感じたかったのに

―こんな形で抱きしめたくなかった

70 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 06:54:55.48 0

愛理をこんなに悲しませてるのはうちなの?
だったらちゃっと理由を聞いて、謝りたい。
やっぱり、うち、鈍感だから・・・愛理の些細な気持ちの変化とか気付けなかった・・・

この状況でどれくらい経っただろう
もしかしたらほんの1分も経ってないのかもしれない
ゆっくりと愛理が顔を上げた。

頬は涙でぐっしょりと濡れていて、頬は赤く染まっていた。
そんな愛理に上目づかいで見られて、ドキッとする

ドサッ

気付くと、愛理に押し倒されるようにベットに横になっていた。

「愛理・・・?」

74 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 09:14:45.48 O

「愛理…!」
押し倒されたままのうちに愛理からのキス。
今までにない強引で愛理らしくないキス。
うちは目を閉じる間もなくて涙に濡れた愛理の顔を見ていた…。

気づけば愛理に組み敷かれてる状態……
強引なキスは徐々に、手探りで深いキスになっていく気がした―――

75 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 09:24:52.80 O

…―――――らしくない

違和感のある強引なキス
こんなの愛理らしくない
そう思ったから
「愛理…どうしたの?なんか、なんかいつもの愛理らしくないよ…」
倒されたままだけど力はうちのが上。
細い愛理の肩を掴んで強引な行為を止めて出た本音。

愛理は真っ赤な目で尽きない涙は溢れたまま…
いや、さっきよりも勢いが増したように声をあげて泣いた……。


―――違う、泣かせたいんじゃない
愛理を解りたいの
うちは、うちは愛理を泣かせたいんじゃ―――…


「…グス……何が?」
「あ…愛理…?」
「あたし”らしい”って……何?」

76 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 09:36:04.01 O

気持ちを抑えられなくて
みやが好きなのに!
みやが解らなくて
キスで伝えられたらなんて甘いこと考えてたワケじゃない
でも、でも…これが、今のあたしの精一杯の行動だった―――


『愛理らしくない』


みやにはあたしを解らない
あたしらしいって何?
どんな『愛理』ならみやの『愛理』なの?

自分の行き場の解らなくなった想いに
あたしは声をあげて泣いた。
みや、今みやが求めてるのはあたしじゃないんじゃないかな?
今、みやの心いにるのは――――

77 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 09:43:17.26 O

「あ…ごめん!うち、バカなこと言った」
みやは体を起こしながらあたしの背中をさする。
優しい手



…―――誰にでも

彼女以外にも
友達にも
部員にも
マネージャーにも

みやは優しい…
でも、みんなに優しいみやは好きだけど嫌。
あたしだけのみやじゃない。

みやの頭や背中を優しく撫でる手に悲しくなった…。

78 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 09:53:05.50 O

「愛理は愛理だもんね」

「みや…」
あたし多分、ううん絶対みやが思ってるような良い子じゃない
涙で濡れた頬に軽いキスをくれるみや
でもね、あたしそんな軽いキスじゃ足りない
もっと、ちゃんと…あたしを解ってほしいし
みやをもっと知りたい

80 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 10:59:46.31 O

「…みや」
「ん?」
困ってるハズだけど笑顔を作って伺うみや。
こんな笑顔も他の…ううん!梨沙子ちゃんにも見せてるの?

「あたし……みやが欲しい…」
「何言ってんの。うちはとっくに愛理の―んっ!?」

そういうのじゃない
そういうことじゃないってわからせたくてみやの唇を塞いだ。
こんなに近くにいるのになんだかみやとの距離がすごく感じる。


あたしは焦ってた
また前みたいに屋上でしたことの繰り返しをしようとしていた。
あの時との気持ちは全く同じとは言えないだろうけど。

ただ、みやが欲しかった

81 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 11:28:08.32 0

唇を塞いだままみやを押し倒す
そしてそのままTシャツを捲り上げる
驚いて固まってるみやを無視して顔を首筋に埋める
みや、これが愛理なんだよ・・・
みやの理想の愛理じゃないかもしれないけど・・・これが今のあたしなんだよ・・・
受け止めてよ・・・みや・・・

「愛理!やめて!」
「・・・・・・」

放たれたみやの言葉に全身から力が抜けていくのが分かった
そっとみやの上からどくとベッドの隅へ行き壁にもたれかかった
みやは服を直しながら起き上がると「一回落ち着こう?ね?」と不器用に笑顔を作った

「・・・みやは、優しいけど優しくない・・・」
「え?」
「口では愛理は愛理だよとか言っても、本当のあたしを見てくれない」
「愛理・・・何言って・・・」

82 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 11:38:04.90 0

「あたしは・・・ずっと・・・」

むなしくてまた涙が溢れた

みや、あたし、ほしかったんだよ
前までは抱きしめられたり手をつないだりするだけで嬉しかった
でも・・・抱きしめられるのも手を繋ぐのもあたしだけの特権じゃなかったから・・・だから・・・
あたしはみやの特別だって胸張って思えるような何かが、あたしずっと欲しかったんだよ・・・

「愛理・・・ほんとにどうしたのさ・・・合宿行く前は普通だったじゃん・・・」

普通じゃなかったよ。全然普通じゃなかったよ
不安で仕方なかったよ
必死に普通を演じてただけだよ
あたしが、どんな思いで合宿に見送ったか・・・
なんでこんなことをするのか・・・みやは全然分かってない

85 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 13:25:11.23 O

「ねぇ…みや、ダメ?」

みやの首に腕を回しながら問う。
お願い。
言葉じゃ信じられない。
せめて、身体だけでも…ううん!
身体が繋がればもしかしたら―――


「今…愛理と、そういうことしたくない…」
「!」
「大事にしたいんだ…
うち本当に、本当に愛理が好きだから…」

―――無邪気で無神経
今じゃなくていつ?
これって大事にされてるの?
こんなのただの箱入り娘じゃない…

「やっぱり…みやはあたしをわかってない
わかろうともしてない
あたしも…みやがわかんない…」

もう涙の雨は止まってたけど心は隙間風のような
悲しさ、虚しさを背負った気分。

87 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 14:41:58.16 0

「そんなこと言わないでよ・・・なんか頭が混乱してきた・・・」

みやは悲しそうな顔で俯いて、苦しそうに目を閉じた
あたしもつられて下を向く
気まずい空気が部屋中に流れる
視界の隅に左手につけてるリストバンドをさするみやが見えて
みやってリストバンド触るの癖だよなぁって逃げるように考えた

90 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 17:29:16.01 O

「…みや、そのリストバンドお気に入りだね
今までは練習以外はしてなかったのに」
「あー…合宿中にずっとつけてたかな
そういえば」
すっごく気まずい雰囲気の中、愛理が口を開いた。
なんとなく機嫌?気分かな?直ったのかと思ってうちは普通に話せた。

「みやに似合う赤…」
「そうコレね梨沙子がくれたんだけど
結構良いんだよね」


余計な発言だったなんて気づかなかった。
鈍感で無神経なうちは敏感で繊細な愛理の心を踏みにじったんだ。

愛理の表情は一変して
「…え?その…リストバンドって…」
「あれ?言わなかったっけ。
前に梨沙子からもらったって…!痛っ!!」

愛理の肩に置いた手を凄い勢いで叩かれた。
「…あたし、聞いてないよ」
泣きそうな、怒りが弾けそうな迫力のある目で愛理は呟いた。


うちは馬鹿だ―――――

101 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 19:42:48.83 0

あたしに触れたみやの手を引っ叩いたのは無意識だった

あたし、みやに本音をぶつけるのが怖かった
だから色んなこと我慢してた。でも・・・

――最近のみやは梨沙子ちゃんのことばっかり・・・

――みやの・・・優しいところが・・・好き・・・だけど・・・不安になる・・・


それでも、大事なことはちゃんと言ったじゃん・・・
何度か気持ち伝えたじゃん・・・
なのになんで・・・?なんで何も考えてくれないの?
あたしの伝え方が下手だから?
あたしが我儘だから?子どもだから?

103 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 20:15:19.81 0

「・・・みや、あたし、もう・・・」
「え・・・?」
「もう、無理だよ・・・」

もう無理だよ
好きだけじゃ無理なんだよ

みやが梨沙子ちゃんを大切に思う気持ちは変わらなくて
あたしはそれを認められなくて

気持ちの伝え方が分からなくなって

気持ちの受け取り方も分からなくなって

本音をぶつけ合えないあたし達は、きっとこの先も『好き』と言っては
心の奥の気持ちを隠し続けて
嫌われないように怯えながら過ごしていく

「・・・もう、みやといるの、つらい・・・」

107 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 20:38:38.17 0

「愛理…」
うちといることに辛いと感じてた愛理に気付くこともできなくて
いつの間にか二人の間に出来た隙間にも気付けなくて
うちってどんだけ鈍感なんだろう…
自分の不甲斐なさに拳をぎゅっと握り締めた

「みやは…優しすぎるよ…。優しすぎるから余計辛いの…」
「愛理…うち…」
泣いている愛理にかける言葉も見つからず
抱きしめようと出した手も宙を舞って止まったまま

「…あたしたちもう別れよう…」

110 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 20:52:12.82 0

「はっ?ちょっ・・・愛理何言って」
「みやはっ……――っ」
「何??」

『梨沙子ちゃんが好きなの?』
『あたしと梨沙子ちゃんどっちが大事?』
『あたしはみやの何?』

結局ぶつけたい言葉は出せなかった。
答えがわかってしまうから…
きっとまた無邪気に

『梨沙子?好きだよ。妹みたいで可愛いし』
『どっちって愛理に決まってるじゃん。』
『愛理はうちの大切な彼女だよ。』

そんな方程式みたいな答え欲しくない―


「…うち、言ってもらわなきゃわかんないよ・・・」
ううん、みやは言ってもわかんない。
あたしの空虚な心にポツンと浮かんだのは
いつもあたしを解ってくれる幼なじみの顔だった……

114 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 21:05:45.15 0

「ごめん・・・あたし、帰る」
「うちのチャリで送る・・・」
「・・・ありがと。でもいい、じゃ・・・」

あたしはカバンを持ってみやの部屋を
みやの家を飛び出した
みやがどんな表情をしてたかわかんない
だって

今のあたしの頭の中
心の中
えりかちゃんのことでいっぱいだから


『大事』とか『好き』とか
言葉よりも・・・
今、あたしが欲しいのは
あたしが会いたいのは・・・
速い足じゃないけど走って向かうあたしの顔に
ポツリと雨が一粒当たった。

115 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 21:15:42.56 0

別れようと言う愛理の言葉が刃物のようにうちに刺さった
夢だったらいいのにとか聞き違いだったらいいのにって思うけど
これは紛れもなく現実の出来事だった

愛理を傷付けた自覚はあるけど
自分が何をしたのか結局分からないまま
愛理を止める術もなく、彼女はうちの部屋を出て行った

そっか・・・うち、ふられたんだ・・・

117 :名無し募集中。。。:2010/02/12(金) 21:28:10.02 0

外から聞こえる雨音に気づいたのはどれくらい経ってからだろう?
結構な量・・・大雨だ・・・
無理にでも送れば良かった
いや、無理にでも止めれば良かったのかな?


何でだろう?
こんなにうちは愛理が好きなのに
愛理もうちを・・・
なのに何で?
どこで間違えた?


グス・・・・・・


鼻をすする音で自分が泣いているんだと気づいた。
本当に?
本当に別れるの?
誰もいない部屋で溢れ出る涙をぬぐった

最終更新:2010年02月15日 23:24