- 189 :名無し募集中。。。:2010/02/21(日)
18:11:12.68 0
――みや・・・
愛理・・・なんでそんな目で見るの・・・?
――あたしたちもう別れよう・・・
嫌だよ・・・そんなの嫌だよ!だめだよ・・・!嫌だ嫌だ嫌だ!!
愛理待って―――!!
「っは!!・・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」
叫んだところで目が覚めた
上半身を起こし、頭を抱える
手はありえないぐらい汗でびっしょり濡れてる
恐る恐る部屋を見渡すと隣で眠る梨沙子が見えて、ようやく今が現実だと納得した
「はは・・・嫌な夢・・・」
夢というかは現実だけど・・・
いまだバクバク暴れてる心臓を抑えてベッドを出る
早く愛理の家行かないと・・・
- 190 :名無し募集中。。。:2010/02/21(日)
18:12:51.88 0
「梨沙子、起きて・・・」
「ん・・・」
「お願い・・・起きて・・・」
「んー・・・先輩・・・?」
「うち、行くね・・・」
黙って出て行くわけにもいかないので可哀相だけど梨沙子を叩き起こす
梨沙子は眠そうに起き上がると携帯を開いて眩しそうに目を細める
そして、立ち上がろうとするうちの手を優しく掴んだ
「先輩、まだ5時ですよ」
「えっ?5時?」
「愛理ちゃん、まだ寝てますって」
寝起きのふにゃふにゃした笑顔で梨沙子が言う
あ・・・そっか・・・まだそんな時間だったんだ・・・
愛理に会いに行くことしか考えてなかったから気付かなかったけど、そうだよね・・・まだ部屋薄暗いもん
- 191 :名無し募集中。。。:2010/02/21(日)
18:23:09.03 0
「あー、ごめんね、うち、寝惚けてたみたい・・・」
「うん」
「起こしちゃってごめんね?」
「うん」
梨沙子の言う通り、さすがにこんな時間に愛理んち行くわけに行かない
もうちょっと寝て、起きたらすぐ愛理に会いに行こう・・・
再びベッドに戻ろうとしたその時
「わっ」
梨沙子がうちの腕を引っ張った
え?何?
思考が追いつかないまま、梨沙子はうちの後頭部に手を添えて、うちの顔をぐいっと梨沙子の方へ寄せた
びっくりして思わず目を瞑った
おでこに少し冷たい感触がしたのはすぐあとのことだった
- 192 :名無し募集中。。。:2010/02/21(日)
18:29:55.10 0
「先輩、まだ熱ある」
「・・・・・・え?」
「行っちゃだめ」
寝惚けてるような甘い声で梨沙子が言う
ゆっくり目を開けると梨沙子が自分のおでこをうちのおでこに当てていた
あまりに顔の距離が近いので理解するのに時間がかかった
「でもね?うち、このままじゃ・・・」
「体は?だるくないですか?」
「いや、うーん・・・」
正直だるいし少し頭も痛いけどそんなこと言えない
「先輩、体、大事にしてよ・・・」
「・・・え」
「先輩がこれ以上辛そうにしてるとこ、あたし、見たくないよ・・・」
「梨沙子・・・?」
- 193 :名無し募集中。。。:2010/02/21(日)
18:47:27.95 0
なんでこの子はこんなに・・・うちのことを・・・
「っ、もー梨沙子は心配性なんだから!大丈夫だよ」
「・・・そうじゃないもん」
「え?」
「先輩・・・いつも誰かを優先して自分を大事にしないから・・・」
「・・・・」
「だからあたしが・・・代わりに・・・先輩を、大事に・・・」
眠さの限界なのか梨沙子の声はどんどん小さくなっていった
けどはっきり聞こえた梨沙子の思い、優しさに
胸がじわっと熱くなった
思わず視界が揺れた
「ありがと」
「・・・うん」
「でもね、お願い。今日だけは、どうしても愛理に会いに行きたいんだ」
「・・・ん」
「何言っていいかとか正直分かんないんだけど・・・でもこのままじゃ諦められないから・・・」
「・・・・」
「もう一回、気持ちを伝えたい」
- 198 :名無し募集中。。。:2010/02/21(日)
22:15:46.95 0
言い終える前に梨沙子の寝息が聞こえうちは思わず笑った
「って、聞いてないじゃん」
無防備な顔で寝る梨沙子の頬にそっと触れると
梨沙子はうちの手をぎゅっと掴んだ
起きてるのかと思って顔を見てもやっぱり寝てる
「寝ぼけてんのかな?」
確認のためにほっぺを数回つつく
「…ん…」
梨沙子は嫌そうな顔でそれを振り払う
「やっぱ寝てんじゃん」
離してくれない右手を梨沙子に添えたままうちはその場に座り込んだ
目の前にあるのは梨沙子の寝顔なはずなのに
やっぱり愛理と重ねてしまう…
うちってどんだけ残酷な女なんだろう…
- 199 :名無し募集中。。。:2010/02/21(日)
22:39:50.10 0
目を閉じれば数時間前のあのやりとりが鮮明に思い出される
愛理をあんなに追い詰めて、泣かして・・・愛理に別れを告げられて
いつから?愛理はいつからうちのこと・・・。
合宿に行く前日に二人でおそろいで買ったイニシャルのストラップ
『これ可愛い!』
『じゃあ二人で着けよ?お互いのイニシャルのものをさ』
『・・・うん、ありがとう、みや』
あの時、愛理はすでに・・・?
わからない、愛理、うちわかんないよ・・・
だってあんなに二人で色んな事話して、色んな事で笑いあって
すごく楽しかったんだ・・・愛理との思い出なんて楽しいことしかないんだよ、うち
雨の日に乗るバスの中で初めて愛理を見て
矢島先輩に連れられて行った合唱コンクールの会場で名前を知った
愛理の方はうちのことを前から知ってたみたいだけど
話せば話すほど愛理のことが好きになって・・・恋なんてしたことなかったからよくわからなくて・・・
ただ愛理の笑顔を見るだけで幸せで・・・
うち、ダメだ・・・やっぱりこんなにも愛理が好きだ・・・
- 235 :名無し募集中。。。:2010/02/24(水)
07:56:48.03 0
梨沙子の寝顔を眺めながら、愛理のことを想っていたら、外がうっすら明るくなってきた
朝になったら愛理の家に行こう・・・
家の前で待ってれば、会える
そうだ、そうしよう
もし、ダメでも
このまま終わるよりはよっぽどいい
- 239 :名無し募集中。。。:2010/02/24(水)
09:20:28.83 0
先輩が悲しみを必死で抑えているのがよくわかった
だけど先輩はそれをきっと見られたくないと思うからあたしは寝たふりをした
愛理ちゃん、なんで先輩をフッたの?
先輩、合宿中もずっと愛理ちゃんのことばっかり考えてたんだよ?
あんなに大事に思われてるんだよ?
あたし、愛理ちゃんのことずっとずっと羨ましいなって思ってたのに・・・
ねぇ、愛理ちゃん・・・先輩を悲しませないで?
- 268 :名無し募集中。。。:2010/02/26(金)
05:10:28.60 0
梨沙子の手から右手を取ろうとしてもなかなか離してくれない
「梨沙子、起きてるんでしょ?」
その問いにゆっくりと目を開けた梨沙子
「梨沙子、行かせて。お願い。うちこのままじゃいけないと思うから」
うちの目を真っすぐに見つめ何か言いたげにしている梨沙子の手をぎゅっと握ると
優しく頭を撫でた
ごめん梨沙子…
心配で言ってくれたのにそんな気持ち踏みにじるようなことして…
「昨日はありがとう。また学校でね」
ぎゅっと握られてた右手はいつの間にかすっぽり抜けるくらいゆるく握られていた
部屋を出る前に後ろを振り返り布団を頭まで被っている梨沙子に
「本当にありがとね」と、だけ伝えるとうちは部屋を出た
- 281 :名無し募集中。。。:2010/02/26(金)
23:08:46.93 0
先輩は寝たふりをしていたあたしを見透かし
愛理ちゃんのところへ行きたいと告げた
その時思った…
どんなに頑張ってもあたしじゃ愛理ちゃんの代わりになれないんだって…
そして掴んでいた先輩の手を離し
溢れる涙を見られぬように毛布を頭まですっぽり被った
「本当にありがとね」って最後にそう言って出て行った先輩
ありがとうって本当は言われて嬉しい言葉なのに
なんで今のあたしにはこんなにも切なく感じるんだろう…
ねぇ先輩、あたしじゃダメなの?
あたしなら先輩にそんな顔させないよ
あたしなら先輩を幸せにしてあげられる
そんな儚い想いもきっともう先輩には届かない…
- 322 :名無し募集中。。。:2010/02 /28(日)
21:52:52.68 0
梨沙子の家を出たら朝日が昇っていてすっかり外は明るかった
そこから何度も通った愛理の家を目指す
小高い丘の上にある愛理の家
いつも自転車で上ったこの丘
ちょっぴり大変だけど、ここを登りきったらいつも愛理が待っていて
その笑顔が見たくてペダルに籠める力も強くなったっけ
愛理の家の前に着くと家の中は真っ暗だった
まだみんな眠っているんだろう、うちは門の前に腰かけて携帯を取り出す
『今、愛理の家の前にいるんだ
起きたら出てこれないかな』
- 25 :名無し募集中。。。:2010/03 /09(火)
23:45:24.85 0
愛理からの連絡を待ちながら携帯の画像フォルダを開ける
「・・・ははは・・・愛理ばっか・・・」
愛理の笑顔、愛理のふざけた顔、愛理の膨れた顔、愛理の幸せそうな顔
愛理、愛理、愛理・・・。
うちはあの日から愛理への思いは何も変わってないよ?
ねぇ、愛理・・・お願いだから戻ってきて
- 51 :名無し募集中。。。:2010/03/12(金)
10:35:48.24 0
―・・・やっぱ愛理、まだ寝てるかな?
返事来ないし・・・
でも、もうちょっと待とう。
昨日のことは何かよくわかんないまま
あんな風になっちゃったけど・・・
ちゃんと、ちゃんと向き合って話せばお互い解り合える。
うち、愛理大好きだし。
きっと愛理も昨日今日でうちを嫌いなんて・・・
お、思ってるのかな?
だから返事もない?
え、え~っと・・・いや、例えばね!
例え話、もし愛理がうちを嫌いに・・・なってたとしてもさぁ!!
ここに来てるってメールを無視するようなコじゃないんだよ。
絶対。
うん、そう・・・だからうちは待つ。
気づいたらきっと「みや」って近づいてきてくれると思うから―――
最終更新:2010年03月15日 19:04