127 :名無し募集中。。。:2010/02/19(金) 23:37:39.40 0

真野ちゃんに会って何を話すなんか決めてない…
ただ桃が言ったように今のままじゃいけない気がして
本当はすごく会いたくて…
でもきっとそれは昔とは違う

「清水さん!」
降り出した雨で真野ちゃんの家についたころにはずぶぬれになっていた
「とりあえず中入って」
「ここでいい」
「え?でもそんなに濡れて」
「帰らなきゃいけないところあるから、あんまり長居したくないんだ」
あたしの言葉に真野ちゃんは呆れたようにほほ笑むと
そっとあたしの肩に手を回した

「いいから入って。このまま濡れて帰って風邪でも引いたら
待っててくれる子が悲しむでしょ」
「…うん」

138 :名無し募集中。。。:2010/02/20(土) 02:36:25.41 0

バスタオルを渡され部屋に通される
昔と変わらない部屋
そしていろんな思いが詰まった部屋

ベッドの傍の床に腰を下ろすと濡れた髪をタオルで拭った
「はい、暖かい紅茶」
「ありがとう」
入れたての温かい紅茶を口に含む
「この部屋変わってないでしょ?お母さんがね、あたしがアメリカ行った後も
そのままにしといてくれたの」
「そうなんだ」
「うん。だからこの部屋に帰ってきたとき一番に清水さんの顔が浮かんだの。
あの日初めてここで…「あのさ!」」
真野ちゃんの言いかけた言葉をさえぎった
思い出しくない過去くらい誰にでもあるっていうけど
今まさにあたしは思い出したくない過去を思い出そうとしていた…
あの日ここであたしたちは…

「あの…さ、アメリカは楽し…」
ドサっという音と共にあたしはベッドに倒れこんだ
正確にいうと押し倒された?
「あの日ここであたしたちは初めて結ばれたんだよ?覚えてる?」
「…もう忘れた」
「嘘。だって清水さん、あの日も同じようにベッドの前に腰かけてた。いつもはベッドの上なのに」
「なに?どうしてほしいの?」
優位逆転といった形で体を起こすとそのまま真野ちゃんの上に覆いかぶさった

142 :名無し募集中。。。:2010/02/20(土) 09:59:00.96 O

「清水さん…ちょっと、痛…っ!?」
口を塞ぐにしても乱暴なキスだったかもしれない。
自分らしくない荒々しいキスで言葉を止めさせる。

「…これが、最後。
真野ちゃんとキスするの最後だから…
じゃあ、うち帰る…」
立ち上がってドアに手をかけようとした瞬間
後ろから抱きしめられた…

「…わかった……でも…
清水さん…キスは最後…
じゃあ……他は?」
真野ちゃんのうちを抱きしめる手が強くなる。

153 :名無し募集中。。。:2010/02/20(土) 19:24:42.05 0

背中に感じる温もりと感触があの日の出来事を思いださせる…
目をつむって気持ちを落ち着かせようとすると昨日感じた桃の温もりと
真野ちゃんの温もりが交差する…

「いたっ…」
あたしは真野ちゃんをベッドに押し倒すとその上に覆いかぶさった
そして優しく髪に触れると首筋に顔を埋めた
真野ちゃんのシャツの裾に手をかけたとき頭の中で交差していたはずの二つの思いが
いつの間にか一つになってた…
頭に過るのは桃の笑った顔…怒った顔…泣いてる顔…

「…桃…」
154 :名無し募集中。。。:2010/02/20(土) 19:36:27.59 0

「え…?」
昨日桃に触れたときのように優しく真野ちゃんに触れる
背中に回した手で背中のホックを外すとその胸に顔を埋めた

「桃…」
「清水さん…?」
「桃…」
「…いや」
事を進めていく間あたしはずっと桃の名前を呼び続けた
誘惑という呪縛から我を忘れてしまわぬように…

「桃…」
「やだ…!」
「桃…」
「あたしは桃じゃない!ちゃんと名前呼んでよ!」
真野ちゃんは事に及んでいたあたしを突き飛ばした

180 :名無し募集中。。。:2010/02/21(日) 02:20:35.63 0

打ちつけた腕をさすりながら起き上がり
ベッドに座っていた真野ちゃんを見下ろした

「これでわかったでしょ。今のあたしは昔とは違う。
もう過去のことは忘れたい…」
「清水さん…」
「あの日、真野ちゃんを失ってぽっかり空いた心の穴を埋めてくれたのは
友達じゃない、親でも兄妹でもない。…真野ちゃんでもない。
あたしの心を埋めてくれたのは桃だった」
衣類の乱れた真野ちゃんのそっと毛布をかけた
そして恐る恐る頭にそっと手を添えると優しく撫でた

「あたしに恋を教えてくれてありがとうね」
ほほ笑んだつもりなのに上手く笑えてる自信はない
でも本当の最後くらい笑顔でいさせてよ…

唇を震わせ涙の粒をこぼす真野ちゃんをそっと抱き寄せた
「ばいばい…」

181 :名無し募集中。。。:2010/02/21(日) 03:18:09.94 0

初めての人を好きになって
初めて人をこんなにも愛しいと思って
初めて体重ねて
その思い出を忘れることはきっとできないと思う…
でもそんな思い出もいつか新しい思い出で埋まっていく…

「3年前の後悔もこれでなくなったかな」
「え…?」
「今度はちゃんとお見送りできた」
そう言ってニカっと笑うとつられるように真野ちゃんもクスクスと笑った

昔のあたしだったら泣きじゃくって文句いっぱい垂れて押し倒されたとき
無理矢理にでも真野ちゃんを抱いていた思う
でもここまで強くなれたのはきっと桃がいたからだよね
桃が傍にいてくれたから…

真野ちゃん家を出ると降り出していた雨も止み
いつの間にか明るくなってきていた
あたしは桃の待つ家へと全速力でかけだした
早く桃に会いたい
会って抱きしめて「ありがとう」って言いたい
最終更新:2010年03月12日 02:21