154 :名無し募集中。。。:2010/02/13(土) 08:22:06.54 0

みやの家を飛び出してとにかく走った
最初は走っていたんだけど、私の体力なんてたかが知れていて、結局こうして歩いてる
当てもなく、途方もなく
そして気付いた

――終わっちゃった

寂しさ、不安から一気に解放された
と、同時に、とてつもない失望感

さっきから降り出した雨は、容赦なく身体を濡らした
頬を伝う涙も、今まで沸いていた黒い感情も、洗い流すように雨は強くなっていく

155 :名無し募集中。。。:2010/02/13(土) 08:42:45.45 0

途方もなく歩いてるつもりだったけど
結局、辿り着いた
こうなることは薄々分かってた

制服も、鞄も、雨でずぶ濡れ
いくらえりかちゃんでも、こんな格好で会いに来たって言ったらきっと軽蔑される

そりゃ、そうだよね
あんなに私のことを好きって言ってくれるみやをフっちゃったんだもん
嫌われてもおかしくないよ

そう思うと、家の前から動けない
すぐそこにえりかちゃんがいるのに

161 :名無し募集中。。。:2010/02/13(土) 14:02:34.65 O

部屋着に着替えて、さてゆっくりしようと思っても、考えるのはあの二人のことばかり。

愛理は泣いてないかしら?とか
もう今頃は仲直りして、あの頃のように仲良く・・・

そう思うと少しの嫉妬心てやつ?に襲われるけど。
それでも、愛理は泣き顔よりも、笑ってる顔のほうがからいいから。
笑顔になれるならそのほうがいいに決まってるわ!

一人の家でずっと考え込んでたら、外からはいつの間にか雨の音が。
愛理は傘を持ってたかしら?
ふと、部屋の窓から外を見てみた。


・・・愛理、どうしてそんなところで、そんな顔をして立ってるの・・・?

164 :名無し募集中。。。:2010/02/13(土) 18:06:26.52 0

心配するあまりに脳が見せた錯覚?
それにしちゃあリアリティ溢れる愛理・・・

あら?
もしかして・・・本当にあれは愛理なのかしら!?

部屋のドアを蹴飛ばすように開けて玄関までまっしぐら
いくら何でもバスタオルの準備まではしてないわよ!
ドアを開けてどしゃぶりの中で立ち尽くしてる愛理に駆け寄った。

「どうしたの・・・なんて理由はいいからとにかく家に入りなさい!」
「・・・・・」

何か言いたげな顔をしたけど無言な愛理ちゃん
手を引くと氷のように冷たい・・・
いったいいつからこの雨に打たれて?
ナツヤキさんと何かあったのかしら・・・・・・

165 :名無し募集中。。。:2010/02/13(土) 18:14:11.69 0

ずぶ濡れになった服を脱がしてバスタオルで拭いてあげる。
されるがまま、おとなしい愛理ちゃん・・・
寒いのか少し震えてる。

あぁ、もう・・・バカ!このバカ梅さん!!
なんで早く気づかなかったのかしらっ?
そんな自分にプンプンです!

「体冷えちゃってるね、お風呂で温まる?」

無言で首を横に振られてしまったわorz
あたしったら使えないわ・・・・・・あ!
ホットココアでもこしらえて差し上げましょう。
愛理もこれでバッチシ温まるわ♪


あたしの部屋着を貸してあげて大分マシにはなったかしら。
寒さで青くなった唇・・・・・・あら?
目が・・・・・赤い気がするわ・・・
これは、これは不穏な空気ですぞ!

73 :名無し募集中。。。:2010/02/17(水) 22:15:38.57 O

なんだかずっとここじゃない、どこか遠くを見ている愛理が目の前にいて。
熱かったはずのココアも、いつの間にか猫舌の愛理にも飲み頃の温かさに。
何があったのかはうちにだってなんとなくわかるし?
「どした?ナツヤキさんと何かあった?」なんて聞ければいいんだけど、
そんなことうちが聞けるはずもないじゃない!

ただ、このままだと壊れてしまいそうな愛理はなんとかしてあげたいのよねぇ。

「愛理、暖まるからココア飲んで。せっかくうちが愛情込めていれたんだから。とか言ってw」
「ん、ありがと」
そう言って微笑む顔は、なんだか痛々しくて。

74 :名無し募集中。。。:2010/02/17(水) 22:16:36.79 O

だめよえりか!あなたが望む愛理の笑顔は、あんなのじゃないでしょ!

「やっぱりお風呂入ろう、うち久しぶりに髪洗ったげるから」
「・・・」
ここで筋肉バカなら、「入る!とか言ってw」て返すだろうし、
頭脳なら「一人で入って」と切り返すだろうし。
ぶりっ子なら「や~だ~」って体くねくねさせるだろうなぁ。
でもここに居るのは愛理なのよえりか!
しかも、なにかしらあって落ち込んでるのよ!
こんなことに乗ってくるわけないじゃない!
落ち着いてえりか!なかったことにするのよ!

「なんて「うん」
「ね、ってえ!?」
「うんって言ったの」

そんな赤い目をしてうちを見上げないでよ愛理・・・

107 :名無し募集中。。。:2010/02/19(金) 13:00:41.79 0

ドアの向こうにいるのは同性、しかも年下の幼なじみ。裸の付き合いも何度かした仲
なのにあたしはちょっと緊張しております、柄にもなく

理由?きっとそこにいるのが“鈴木愛理”だから
いろんな人と出会って、いろんな人と触れ合って、そして一人の人に真剣になって
もう昔の愛理ちゃんとは違う、少し前の愛理とも違う、あたしも知らない“鈴木愛理”
大人になろうともがいてる“鈴木愛理”

だからちょっと怖い。だけどすごく興味深い

さて。そろそろ覚悟決めようかね
あの変わってない笑顔が見たいからさ
自然に。ごく自然に

「あ、愛理ぃ?はり、入るよー」

195 :名無し募集中。。。:2010/02 /21(日) 20:20:43.29 0

いざ入ってみると、なかなか緊張しちゃうわね。
肝心の愛理はと言うと、ちょうどシャワー浴びてるところでうちに背中を向けていて。

ふむ、こうやって見てみると最後に入ったときよりもなかなか成長してるわね。
胸は・・・だけど、こう、身体全体が丸みを帯びてきてると言うか、女の子から女性の身体に変わってきてると言うか。
やましい意味じゃなくて、身体の成長にどきどきしちゃう。

そして、身体だけじゃなくて心も成長してるのよね?
だってほら、今だってうちに背中を向けて頭からシャワーを浴びて、なんでもないようにしているけど。
それでもね、愛理。
肩が震えてるのは隠せないんだよ?
今うちの前にいるのは、ひとつの恋を終わらせたらしい愛理。
子供のころから知っているけど、うちの知らないところでまたひとつ心が大人になったらしい愛理。
さて、ひっそりと泣く愛理ちゃんに、うちはどうしたものかしらね。

197 :名無し募集中。。。:2010/02 /21(日) 21:10:04.59 0

「えりかちゃん・・・?」
っと、悩んでいるうちに聞こえた愛理の声。
はいはい、うちは何にも見ていませんよっと。

「いやぁ、水も滴るいい女っていうの?梅さん思わず愛理の背中に見とれちゃったわぁw」
「ちょ、恥ずかしいから」
そういってうちのほうを振り返る愛理。

あれ?今のは冗談のつもりだったのに。
なんだか本当に見惚れちゃうわよ?
恋ってばこんなに女の子を成長させちゃうものなのかしら?
なんだかちょっと顔が熱くなるのを自覚しちゃう。
うちをこんな気持ちにさせるなんて、やるわね愛理ちゃん。

237 :名無し募集中。。。:2010/02/24(水) 08:13:33.23 0

愛理の身体に見とれながら湯船に浸かる。
はぁ~・・・女は恋して綺麗になるっていうけど、失恋した時の女ってのもまた、画になるわねぇ。
なんてまたバカな事を考えてたわ。

「ねぇ、えりかちゃん」
「っ・・・えっ?何っ?」
「さっきから視線が刺さってるんだけど・・・」

バレたか・・・
でもシャワーしながらも感じる視線って、私どんだけじっくり眺めてたのさ。
ただの変態じゃんか・・・まぁ否定は出来ませんよ

291 :名無し募集中。。。:2010/02/27(土) 15:28:57.90 0

「それよりさ」
「ん~?」
「髪、久しぶりに洗ってくれるんでしょ?」
「なぁに?甘えん坊愛理ちゃんだ?w」
「そんなんじゃないけど・・・だめ?」

そんな眼で言われて断れる人がいるなら、ここに連れてきてほしいわ。
いや、やっぱり裸の二人だしこられても困るけど
愛理の悲しみを流すことは、うちに出来そうもないからせめて、ね。
せめて髪と身体は綺麗に流してあげましょうかね。

もこもこの泡を作って、愛理の頭を優しく撫でるように洗ってあげる。
肩が震えてるのも、鼻をすする音も今は気付かない振りをしてあげるわ。
だから今は、思う存分涙を流して、心から悲しみを流して。

311 :名無し募集中。。。:2010/02/28(日) 15:58:51.88 O

愛理の髪を流し終わる頃には、落ち着いてきたようで。
気持ち良かったぁ、なんて呑気な言葉といつもよりも、ほんの少しだけぎこちない笑顔を見せる愛理。
本当はまだ、うちの眼をみて話せないんだよね?
それじゃあもう少しだけ・・・

「じゃあもっと気持ち良くしてあげようかしら?グフフ」
「怖いよ、えりかちゃん・・・」

あら、ちょっとやり過ぎたかしら?

「冗談よ、冗談。そのままうちに背中向けて?洗ったげる」
「ありがと」

なんて、言ったはいいけど。
やっぱり・・・子供のときと比べると成長したわね。
子供でもない、大人でもない愛理の背中になんだかドキドキしてしまって。
なんかこう、しっかり意識もってないとよけいなこと言ってしまいそうだわ。
今は愛理の背中を流すことに集中するわ!
白い肌に赤い跡を残さないように、そっと優しく。
この身体を包む悲しい空気が少しでも落ちるように。
「はいお終い。前は自分でね。梅さんはその間に髪を洗うわよ。」
「えー、洗ってくれないの?」

ちょっ!なにこの展開!
「なんてね、ありがとえりかちゃん。」
・・・イタズラっ子な笑顔を見れたのはいいけど。
何故かちょっと残念に思ってるのは何故なのかしらね。

323 :名無し募集中。。。:2010/02/28(日) 22:28:55.84 O

「流したらちゃんと温まるのよ。肩まで浸かって100まで数えてね。」
「でもその前に、えりかちゃんの背中洗ってあげる」

なんて言いながらうちのタオルを奪いとる愛理。
背中を優しく洗ってくれる。
あー極楽極楽。なんて言葉が漏れそうになったとき、突然柔らかいものが背中に。
驚いて正面を向いたうちは、鏡越しに愛理と目があってしまって反らせなくなる。

「愛理・・・?」

いつもの愛理からは想像出来ないくらい強く抱きしめられる。
いつもよりも強い目で射抜かれる。
そんな目が出来るようになったのね。

324 :名無し募集中。。。:2010/02/28(日) 22:30:32.44 O

・・・なんてカッコつけたこと考えてみても、背中に当たる柔らかい感触になんだかちょっと心持っていかれそうになるわよ?
しかも、柔らかいだけじゃなくて、異質な硬さも。
いっそこのまま流されてしまえばって、そんなことは思わないけど。
でもそれも・・・

「私らしいって、なにかな?えりかちゃん。」
「え?!」
「私らしいって・・・ごめん、何でもない


そう言って、離れていく腕をただ見守る。
何があったのか聞くなら今なのかしら?
聞いてもいい?愛理。
聞いたらもう、後戻り出来ないかもしれないけど。
それでもうちは・・・

331 :名無し募集中。。。:2010/03/01(月) 01:11:57.55 0

ついえりかちゃんにこぼしてしまった言葉
あたしはなに言っちゃってるんだろ・・・
そんなこと聞いてもえりかちゃんを困らせるだけなのに・・・

目をそっと閉じると浮かんでくるみやのやさしい笑顔・・・
なんでだろ、なんで笑顔ばっかりが思い出されるの?

思わず涙がこぼれそうになった瞬間、えりかちゃんが今までにない真剣な声で聞いてきた
「ねぇ、愛理?」
「・・・なぁに?」
「愛理、ナツヤキさんと何があったの?」

79 :名無し募集中。。。:2010/03/14(日) 14:10:04.17 0

今までにない、その真剣な声に今まで抑えていたものを我慢できなくなってしまって。
言うつもりのなかったことを話してしまっていた。

みやが誰にでも優しいことへの不安、梨沙子と抱き合って眠っていたことへの怒り。
それに我慢できなくて、またみやに迫ってしまったこと。
・・・・・・そしてやっぱりまた拒絶されてしまったこと。

そんなことを話していたら、どんどんと涙が溢れてきて。
悲しみも溢れてきて、お湯のなかにどんどんとこぼれていく。

そんなあたしのことをえりかちゃんは、ただ優しく見つめてくれていた。

80 :名無し募集中。。。:2010/03/14(日) 14:10:50.65 0

うちの前で涙をこぼしている愛理。
そんな愛理を見ていると、愛理への愛おしさと、ナツヤキさんへの怒りがこみ上げてくる。
うちなら、うちだったら愛理が望むなら、愛理だけに優しさを注ぐし、大事にしたいと言いながら、傷つけるようなことはしない。
そんなことを思っていたら、気が付いたらうちの腕の中に愛理を収めていた。

「どんな愛理だって、愛理は愛理だよ」
「え?」
「そんな愛理だからうちは・・・」

少し顔を離して、愛理の顔を見つめる。
お湯につかっているせいか、泣いたせいなのか。
うちの顔を見上げる愛理の顔は上気していて、我慢出来そうになかった。

81 :名無し募集中。。。:2010/03/14(日) 14:11:49.46 0

えりかちゃんの顔が近づいてくる。
その顔を見つめたまま、そっと瞼を落とす。
そのまま受け入れるのもいいかもしれない。
もしかしたら、あたしはそれを望んでいたのかもしれない。
だって、みやに拒絶されたときに、あたしの頭の中に浮かんできたのはこの人だったから。

そんなことを思ってるうちに、瞼に優しい感触。
えりかちゃんの唇の感触。
おでこや頬に落とされる唇の優しさに、胸の中にあったどす黒いものが流されていくような。
もっと欲しいと思ってるのに、唇には落とされない。
唇の端ギリギリにしか落としてくれない。
それを不満に思って、目を開けてえりかちゃんの腕をそっと掴む。

82 :名無し募集中。。。:2010/03/14(日) 14:12:32.80 0

そっと瞼を開けた愛理と眼が合う。
あぁ、拒絶されるのかしら?

「ごめんね?弱いところにつけこむ気じゃなかったんだけど。」
「愛理があんまりかわいかったから、ついw」
なんて、軽く言ってなかったことにしてしまおうとか、考えてしまううちがちょっと嫌だ。

「答えは今じゃなくていいから。って、振られるのなんてわかってるんだけどねーw」

そう、うちはこれから先近いうちに愛理に振られる。
それでもうちは抑えられなかったんだよ。
だから、最後になるならちゃんと言ってしまおう。

「好きだよ、愛理。」

83 :名無し募集中。。。:2010/03/14(日) 14:17:10.42 0

「好きだよ、愛理。」
そう言われたとき、なんだかえりかちゃんの唇に触れたくなって。
そっと手を伸ばして触れた唇がとても柔らかくて。
不安そうに揺れる眼とあったとき、衝動的にキスをしていた。

何度も何度も角度を代えて、啄ばむようなキスを繰り返す。
そっと唇を舐めて、隙間から舌を。
それに身体を強張らせるえりかちゃんに気が付いたけど、止められない、止まらない。

「待っ・・・待って愛理・・・」
「ごめんね、えりかちゃん・・・」
「だめ、このままじゃうちのぼせちゃう・・・んっ」

そんな言葉が耳に入るけど、それでも止められずに耳や首筋、肩へとキスを落とす。
気が付いたら、えりかちゃんは本当にのぼせていたようで、くったりとしていてあたしはちょっと焦った。

さすがにその後部屋に戻ってからは、そんな雰囲気にはならなかった。
というか、えりかちゃんがそんな雰囲気にはさせてくれなかった。
ただ、一緒の布団の中で眠って、そっと手を掴んでくれていた。
ただそれだけなんだけど、ひどく安心してぐっすりと眠れたあたしがいた。
そのことに少しの驚きと、あぁやっぱりなという思いがあった。

ありがとう、えりかちゃん。

最終更新:2010年03月15日 18:56