95.名無し募集中。。。2010/03/14(日) 19:50:44.57 0

部屋に 駆け込んでベッドに背をもたれるように床に座り込んだ
少しズキズキする手首を見ると赤くなっているみやが掴んだ跡

あんな風に 力強く触れられたのは初めてかもしれない
みや、力あるんだ・・・って今さらそんなことを思ったり・・・
なんだかそれが情けなくて、み やのこと本当は何にも知らなかったんじゃないかって悲しくなった

101.名無し募集中。。。2010/03/14(日) 23:51:37.23 0

あたし はベッドの上に寝転んで携帯を取り出す
そこで嫌でも目に入るのが“M”のストラップ
合宿前に不安で仕方なかったあたしが少しでもみや と繋がっていたくて・・・
きっと物欲しそうな顔をしていたんだろう
みやはお揃いで買おうって言ってプレゼントしてくれたっけ・・・


・・・ ダメだ・・・ダメだ・・・思い出しちゃ・・・ダメだ・・・
みやとの思い出・・・涙出ちゃうから・・・ダメだよ、愛理・・・

―――――― 初めて見たのはバスの中

学校からほど近いバス停から乗ってくる人
毎日じゃなくて、雨の日だけ乗ってくる綺麗な人・・・
そ の整った顔をあたしはいつも遠くから見ていたっけ

知っていることと言えばその人の友達がいつも呼んでいる「みや」っていう名前だけ

初 めはきっと「恋」じゃなくて「憧れ」

でも友達が何かを言った時にあの整った顔がくしゃっと柔らかくなるあの瞬間、
なんだか自 分の胸が優しくきゅっと握られたような感覚になったっけ・・・


108.名無し募集中。。。2010/03/15(月) 17:16:06.08 0

あたし はちょっとだけ雨の日が好きになった
髪の毛がくねくねしちゃうのは相変わらず嫌だけど、
それ以上にこのちょっとしたドキドキが気持ち よかったんだ


―――――――ただの偶然?それとも・・・運命?

どっちにしてもあの日のことは否定できない事 実
雨だったのも、入口に一番近い席に座ったのも
あの子が、一年の時に同じクラスだったあの子がバスに乗ってきたのも

「おっ、 愛理じゃーん!おっひさー!!」

あの日チッサー、岡井千聖ちゃんが乗ってこなければ、今こうして泣いてないかもしれない
・・・ 今もまだ見つめているだけだったかもしれない・・・

115.名無し募集中。。。2010/03/15(月) 22:31:39.13 0

元気良 く乗ってきたチッサー
あたしの隣の席が空いてるのを見つけて嬉しそうに座ってきたっけ

「愛理ぃー元気だったー?」
「あ、 うん、元気だよー!チッサーは?部活どう?」
「めっちゃ頑張ってるよー!そうだ!先輩で超かっこいい人がいてさぁ!
その人に追いつき たいんだぁ!」

あいかわらずチッサーは元気というか・・・ちょっと騒がしい・・・というか・・・
あたしはへぇーって相槌を打 ちながらも周りを・・・
うぅん、あの人を見てうるさくないかな?てちらちら気にしたり

そうこうしている間にバスは学校の前 へ・・・
みんなに続いてあたしたちも後ろのドアに向かう
すると急に後ろから声が聞こえて心臓が跳ねた

「チッサー、 朝から声大きいっつーの」
「な、夏焼先輩、おはようございます!」
声の主はあの人だった・・・チッサーと仲よさげに話すあの人

「あ はは、おはよ!早くしないと練習遅れるよー」
その人はチッサーの頭をポンポンとするとそのまま軽い足取りでバスを降りていった

――――――― ナツヤキ・・・先輩・・・って言うんだ・・・

135.名無し募集中。。。2010/03/17(水) 02:57:29.17 0

「はー い…って、愛理見すぎ!」
「え…?いや、全然見てないし!見てない見てない」
自分の気持ちをチッサーに見透かされそうになって慌てて 弁解
でも心臓がうるさいくらいに跳ねて周りの人に聞こえてるんじゃないかという恥ずかしさにとらわれる

「待ってよー愛理」
先 に行ってしまったあたしを追いかけるようにチッサーが走ってくる
そして下駄箱に向かうとそこには黒山の人だかり

「なに?あ れ」
「あ〜、ナツヤキ先輩のファンの人でしょどうせ」
「ファン?」
「知らないの?ナツヤキ先輩ちょ〜モテんだよ。まあうち らみたいな中学生じゃ相手にもならないし無縁だね」
チッサーはそういうと上履きに履き替え教室へ向かった

あたしはその黒山の 人だかりのに目を向ける
中心に見えるナツヤキ先輩のその姿は本当にキラキラしていて
あたしみたいな子が憧れをもってもきっと話すこと も目を合わすこともないのかもしれない
その時はそんなふうに感じてた

136.名無し募集中。。。2010/03/17(水) 03:27:11.11 0

それか らのあたしは周りから見たらかなりおかしかったと思う
高等部の校舎を教室の窓からじーっと見つめたり・・・
先輩の姿がちらっと見えた 時にはちょっと嬉しくて・・・

そう、これはただの「憧れ」・・・きっとそう・・・


―――――――だけどあた しには神様がいたみたい・・・
そう、あれはあたしが所属する合唱部のコンクール
あたしの学校は結構強豪と呼ばれていて
あの コンクールもこの街で一番大きいホールで行われる大きな大会だった

「あー・・・愛理緊張するね」
「うん、あたしもすっごいド キドキ。あ、えりかちゃんは誰か呼んだの?」
「うち?うちはねぇ・・・同じクラスの筋肉バカを呼んだよ!
でも一人だと恥ずかしいから 後輩も連れてくるって言ってた」
「へぇー・・・」
ってか、筋肉バカって誰?なんかここには場違いな気がしないでもないんだけど・・・


それから本番が始まって、さっきまでの緊張はどこへやら
みんな生き生きとして、それでいて気持ち良く歌うことができ て

結果は「優勝」

だけど、その日一番のサプライズはそんなことじゃなかった

137.名無し募集中。。。2010/03/17(水) 03:47:43.60 0

コン クールを終え会場から出て来るあたしたちを親や友達が迎えてくれる
「えり!」
ふいにえりかちゃんを呼ぶを声が聞こえあたしもそっちの ほうへ顔を向けた
そこにはスラっとした体形で黒髪がとても似合う女の人
「舞美!ねぇ!見てた!?あたしの!」
その人に嬉し そうに駆け寄っていくえりかちゃん
「あの人が筋肉バカ…?」
どう見てもそんなふうには見えないのに…

そう思いなが らふとその人の隣に目をやるとあたしはあまりの衝撃の
開いた口が塞がらない状態になった
だっていつも遠くで見ていたあの人が…
ナ ツヤキ先輩がいたから…

「あ!」
一瞬目合った
思わず逸らしたけど絶対目合った!
恥ずかしさとあまりの衝 撃にあたしの心臓はうるさいくらいに脈を打ち
手は異常なほどに震えていた

「愛理ちゃんだよね?」
「え…?」
顔 をあげると目の前にはニコニコ顔で佇むナツヤキ先輩
「え、あ、は、はい」
「チッサーからよく聞いてる。歌、上手いんだね」
「い、 いや…あたしなんか全然…」
「なんで?上手いじゃん。それにソロもらえるなんて相当上手い証拠だよ。うち好きだよ。愛理ちゃんの歌」
「え…」
まぶしいくらいの笑顔とうれしいくらいのほめ言葉
その澄んだ目に今にも心が吸い込まれそうだった

144.名無し募集中。。。2010/03/17(水) 16:54:11.87 0

俯いて るあたしの顔をのぞきこんでるナツヤキ先輩
それ以上見つめられたらあたし…
スカートの裾を掴んで恥ずかしがってるあたしのことを知っ てか知らずか
舞美?先輩がナツヤキ先輩を呼んだ

「みや、これから学校戻るけどどうする?」
正直助かった…なんて 思ったのに
「先行っててください。後から追いかけます」
とだけ言うと舞美先輩とえりかちゃんを見送ったナツヤキ先輩

え、 え、ちょっと待ってよ
二人っきりなんて気まずいよ…
「今度うちにだけ聞かせて。愛理ちゃんの歌」
「え…、そ、そんなあた し…」
「それじゃあうち行くね」
「え、ちょっと…!」

ナツヤキ先輩があたしの歌を聴きたいなんてなんの冗談かと 思った
夢なんじゃないかと何度かほっぺをつねってみてもやっぱり痛い…
でもあんなに人気のある先輩だもん…
きっと冗談に決 まってる…

154.名無し募集中。。。2010/03/17(水) 23:16:06.07 0

―――――― でもそれは冗談じゃなかったんだよね

初めてナツヤキ先輩と話した次の日、幸運にも雨が降った
朝から雨の音が聞こえたあたしは 慌ててくねくねの髪をアイロンでセットしてバスに乗り込んだ

バスがもうすぐあの停留所に到着する
あたしは内心そわそわしなが ら入口のドアを見つめる
いるかな?いるかな?

「あ・・・いた・・・」
やっぱり先輩は乗ってきた・・・
だ けどいざ先輩を見つけると急に恥ずかしくなって思わず俯いてしまうあたし
あたしってなんていくじな・・・「ねぇ、ここ座っていい?」
「へ?・・・!!! あ、えっと、、、は、はい!」
「おはよ、愛理ちゃん」

あたしの隣に座ってきたのはまさかのナツヤキ先輩だった
突然 の出来事に真っ赤になった顔を隠すことすら忘れているあたしに
先輩は色んな事を話しかけてくる

「雨ってなんだか鬱陶しいよ ね」
「そ、そうですか?」
「うん、うちさ、いつも自転車通学だから雨降ると不便なんだよね」
「へぇー・・・」
そっ か、だからいつもは乗ってこないんだ

ナツヤキ先輩?あたし、前までは雨が嫌いだった
だけどね?今は雨が降るのが待ち遠しいん です

156.名無し募集中。。。2010/03/17(水) 23:31:16.47 0

「でも 雨でも良いことってあるんだね」
「え…」
綺麗で真っすぐなナツヤキ先輩の瞳があたしに向けられる
それって…

「あー! 愛理!なんでナツヤキ先輩の隣座ってんのさ!」
「チッサー」
あたしをとナツヤキ先輩を見つけチッサーがこっちに近づいてきた
ちょっ と大きなチッサーの声にバスの中でみんなの視線がこっちに注がれる…
ちょっとチッサー…

「ごめんごめん」
そう言っ て先輩は椅子を立つそっとあたしに囁いた
「明日の放課後って暇?」
「へ…あ、は、はい!」
笑顔で答えたあたしにナツヤキ先 輩を優しく微笑むと出口のほうへ歩いて行ってしまった

157.名無し募集中。。。2010/03/17(水) 23:41:34.47 0

「何な に?いつの間に夏焼先輩と仲良くなっちゃってんのさ」
そう言ってぶすっと膨れるとチッサーはさっきまで先輩が座っていたところに腰かける
「べ、 別に・・・ちょっと話してただけだよぉ」
「ホントに―?夏焼先輩って結構人見知りだから意外!
うちも部活入ったばっかりの時、先輩と あんまり話せなかったもん」

そうだ・・・ナツヤキ先輩ってバスケ部なんだ・・・
きっとバスケしている姿もカッコいいんだろう な
一度でいいから見てみたいな

そんなことを思いながらドア付近にいる先輩をチラチラ盗み見しちゃったり
当のナツヤ キ先輩は同じクラブバッグを持った人たちに囲まれて楽しそうにしている

それにしてもさっきの言葉・・・どういう意味だったんだろう?

158.名無し募集中。。。2010/03/17(水) 23:51:00.16 0

学校の 目の前のバス停につくとたくさんの生徒が降りて行く
あたしたちもバスを降り下駄箱へ向かうといつものようにナツヤキ先輩のファンの人たちが
ナ ツヤキ先輩を囲む

「相変わらず朝からすごいね〜」
呆れたように笑い上履きに履き替えたチッサーはとことこと歩いて行く
あ たしもあんな風にちゃんと話せたら…
そう思うと胸が締め付けられたように苦しくなる…

159.名無し募集中。。。2010/03/18(木) 00:03:58.77 0

肩を落 としてトボトボと歩いていると後ろからチョンチョンと背中を突かれた

「ねぇねぇ、もし時間があったらこれ持つの手伝ってくれない?」
後 ろを振り返るとそこにはジャージなのに妙にキャピキャピした小さい黒髪の女の子
「あ、あの・・・あなた?あの」
「もぉね?こんなたく さん持てなくてぇ―・・・なのにみんな手伝ってくれなくて・・・シクシク・・・シクシク」
ってわざとらしい泣き真似をし始める女の子

あ の・・・だから・・・誰ですか?
なーんてあたしが聞けるわけもなくて「手伝うくらいなら」って思わず口にした瞬間
その子はぱあっと笑 顔になったかと思うと・・・なんと!!
持っていた荷物をすべてあたしに押しつけて歩きだした

「ほらほら、早く―!こっちこっ ち!」

160.名無し募集中。。。2010/03/18(木) 00:20:18.54 0

「ちょっ、 ちょっと…!」
そう叫んでもその子はまったく聞こえないフリ
なんであたしが…

「こっちこっち」
連れてこ られたのはバスケ部と書かれた所謂部室ってところ
ここバスケ部の…
部屋に広がるちょっとカビくさい匂いと洗いたてのユニフォームから 漂う洗剤の匂いがすごく心地良い

「あ、それはこっちに置いて、このゼッケンはそこに置いてくれる?」
「は、はい」
言 われた場所に言われた物を置いて行く
ふと並べられたロッカーに目をやると「夏焼」と札のついた一つのロッカーに目が止まった
なつや きってああいう字なんだ
また一つ夏焼先輩を知った気がして思わず笑みがこぼれる

「みーやんのロッカー気になるの?」
「え? あ、いや違います!」
「そっかー。君もみーやんのファンの子の一人なんだ」
「ち、違います!」
「まあまあ、そんな恥ずかし がらなくてもわかるよ〜。みーやんモテモテだもん」

「ちょっと何やってるんですが、桃子先輩」
「すーちゃん!もうどこ行って たの!桃一人であの荷物運んだんだからね!」
部室に入ってきたのは長いサラサラの髪の毛をなびかせた
瞳の綺麗な女の人
すご い綺麗…

161.名無し募集中。。。2010/03/18(木) 00:35:56.22 0

そうい えば部活に入ったばっかりの時にチッサーが言ってたっけ
「バスケ部の先輩ってみんなかっこいいんだよ!
それに綺麗な人ばっかり!!」

うん、確かにそうだ・・・
このすーちゃん?さんって人もすごく綺麗だし・・・大人っぽい

ってあれ?今、桃 子先輩って言った?
すーちゃんさんの先輩?ってことは・・・まさか・・・結構年上??

頭の中がハテナでいっぱいになっている と、急に部室の外が騒がしくなった
「あ、あの3バカが来た」
すーちゃんさんは小声でぼそっとそう呟いた

する と・・・
「やぁやぁ!みんな!おっはよー」
「おはよー!あーもー!オナカペコえもんだよー!」
「おはようございます!!」
甲高い声のポニーテールの人、ちょっと色黒で元気いっぱいの人、そしてその後ろから
・・・

夏焼先輩が部室の中に 入ってきた

162.名無し募集中。。。2010/03/18(木) 00:46:56.56 0

「あ れ?新入りちゃん?」
ポニーテールの人があたしに気付き声をかけてきた
「ちがっ…」
「えーなになに!超可愛いんですけ どー!」
今度は色黒でスラっとした人があたしに近づきぎゅっと両手を握った
「え…!」

振り払うこともできず固まっ ているあたしの肩を抱き手を握ったその人を突き飛ばしたのは夏焼先輩…
「こらこら。恐がってるじゃん」
「ぶー…」
「その子 は新入りじゃないよ。桃子先輩の気まぐれに付き合わされちゃったの」
すーちゃん?さんがそういうとみんなは納得したように頷いた

「な んでそこでみんな納得するのよ!」
「だって桃ならやりそうだし」
「桃じゃなくて桃子先輩でしょ!それかももち!」
「あ〜は いはい」

163.名無し募集中。。。2010/03/18(木) 00:58:48.93 0

「も も、いいからその子解放してあげな」
みんなに囲まれて少し怖くなってきたところで突然後ろから声が聞こえた

「キャップー!! おはよー!もぉね、キャップにすっごく会いたかったよ」
そういって桃子先輩はその声の主である小柄な女の人に向かって駆けていく

そ こでみんなの意識があたしから離れたところであたしは慌ててお辞儀をすると部室から飛び出した
「び、びっくりした・・・」
自分でも何 があったのかがはっきりとわかってなかった

「ちょ、ちょっと待って!」
するとあたしを呼びとめる一人の声
「な、夏 焼先輩!?」
「さっきはごめんね?なんか嗣さんに無理やり連れてこられちゃったんだよね?」
「嗣さん・・・?」
「あ、えっ と、桃子先輩のこと」
「あ、あー・・・ちょっとびっくりしちゃったけど大丈夫です」
そう言って頑張って笑顔を作ってみる
「ホ ント?それならよかった」

164.名無し募集中。。。2010/03/18(木) 01:12:22.77 0

「は い。それじゃああたしはこれで…」
「あ、ちょっと待って。携帯借りていい?」
「携帯ですか?」
「うん」

緊 急の用事なのかな?
不思議に思いながらも制服のポッケから出した携帯を夏焼先輩に渡した
夏焼先輩は携帯を開くと何かを打ちあたしに返 した
「これ、あたしのアドレス」
「アドレス?」
「うん。メールして」
「で、でも…!」
急な展開に頭が 真っ白になる
だってアドレスってそんな急に…

165.名無し募集中。。。2010/03/18(木) 01:22:00.37 0

「約 束。覚えてない?」
「やく・・・そく・・・?」
「うん、ほら、愛理ちゃんの歌・・・うちに聞かせてっていうやつ」
そう言っ て照れくさそうに笑う夏焼先輩

でも・・・それって・・・

「ダメ・・・かな?やっぱり・・・」
「そ、そん な・・・だ、ダメじゃないです!」
思わず大きな声を出してしまって慌てて俯く

「よかった・・・あのさ・・・えっと・・・」
「は い」
珍しく言葉に詰まっている先輩をぼーっと見つめるあたし

「じゃあさ、あの・・・明日!明日さ、部活休みなんだ
も しよかったら放課後、カラオケ行かない?」

まさかの夏焼先輩からのお誘いだった


―――――ねぇ、みや?あの 時、あたしは自分のことでいっぱいいっぱいだったけど
みやも、実はあの時すごく顔真っ赤だったんだよね?

166.名無し募集中。。。2010/03/18(木) 02:09:32.13 0

それか らのあたしは授業なんて上の空で
明日の放課後のことで頭がいっぱいだった
携帯を見ると夏焼先輩って登録されてるアドレス
そ れを見てまた実感する

「んふふ」
「愛理どうした?なんか気持ち悪いよ」
「うーんちょっとねぇ〜」
「なに それ!教えてよ!」
チッサーもみんなも知らない二人だけの約束
それも何だかうれしくてまたニヤけちゃう

「ねぇ聞い た!?」
「なにが?」
「夏焼先輩ってご両親共働きだから朝ごはんいっつもコンビニなんだって」
「そうなの!?じゃああたし お弁当作ってあげようかな〜」
【夏焼先輩】そんなフレーズにもいつの間にか反応してしまう自分がいて
ついついクラスの女の子たちのそ の話題に耳を傾けてしまった

「チッサー」
「ん?」
「夏焼先輩って朝ごはんコンビニで買って食べてるの?」
「え、 あ、うん。前はそうだったけど今は須藤先輩が…って聞いてないし」
よし!受け取ってくれるかはわからないけどさっき助けてもらったお礼がした かった
ううん…それは口実
本当は少しでも先輩に近づきたかった

167.名無し募集中。。。2010/03/18(木) 02:24:36.54 0

次の日 の朝、あたしはいつもより二時間も早く目が覚めた
緊張して眠れなかったし、それに・・・

家族に内緒で静かに階段を下りてキッ チンに入る

夏焼先輩にお弁当・・・料理なんて全く自信ないけど・・・
それでも・・・お母さんがいつも作ってくれたのを思い出 しながら進めていった

外は昨日の天気が嘘のように晴れ渡っている
ってことは先輩は今日は自転車の日・・・校門の前で待ってい たら会えるかな?

バスの中で会えないのは残念だけど仕方ない
それに昨日と今日とであたしと先輩の関係はかなり変化した

だっ て、「校門のところで待っています」ってメールを送ることだってできるんだから・・・

って、緊張してメールなんて送れる自信なんてない けどね

169.名無し募集中。。。2010/03/18(木) 02:43:37.66 0

学校に つくと下駄箱の前には黒山の人だかりができていた
まだ夏焼先輩が来てないことを知らせてくれた
「良かった」
あたしもみんな と同じように下駄箱で待っているといつものように
バスケ部のみんなと下駄箱に入ってきた

「あ、あの!」
そう声をか けたのに先輩の耳には届かなくて周りに人が多すぎて
近づくことすらもできなかった
どうしようこのままじゃ…

「み や」
「まぁ!おはよう」
「おはよう。はい、これ」
「お〜いつもごめんね」
「いいよ、自分の作るついでだし」
すー ちゃん先輩が差し出したのは可愛い巾着袋
中身はきっとお弁当…

ははっ…あたしバカみたい…
そうだよね…
夏 焼先輩はモテるってわかってたのにアドレスを教えてくれたり
歌を褒めてくれたり、放課後誘ってくれたり自分だけは特別なんじゃないかって
勘 違いしてたのかもしれない…
あたしはお弁当を抱えたまま先輩に気付かれないように駆けだした

170.名無し募集中。。。2010/03/18(木) 02:52:35.85 0

廊下を 抜け誰も使わない新校舎の階段を駆け上がったところで躓き踊り場にお弁当が散らばった
「…グス…なんで泣いてんの…あたしのバカ…」
ま た…
胸が締め付けられるように苦しい…

「…愛理ちゃん?」
誰も通らないはずの新校舎の階段
それなのにな んで…夏焼先輩…
「愛理ちゃん!大丈夫?ケガしてない?」
転んで起き上がれないでいるあたしの顔をのぞきこみ
目の前に散ら ばったお弁当の中身を拾ってくれる

その中に落ちてた一枚の手紙の先輩は目を止めた
「もしかして…このお弁当うちに?」
昨 日書いたお礼の手紙…
夏焼先輩へって書いた手紙…

「うん。美味しい」
「え…?」
先輩は拾っていた卵焼き を一個口に含むとニコニコ顔であたしを見つめた
「先輩それ汚い…!」
「なんで?せっかく愛理ちゃんが作ってくれたのに捨てるなんて もったいないもん」
優しい笑顔と優しい言葉


そうだった…
いつでもみやはあたしが欲しい言葉をくれた…

171.名無し募集中。。。2010/03/18(木) 03:10:06.31 0

「あり がとね、愛理ちゃん」
そう言って先輩はあたしの頭をポンポンと撫でた
その時の先輩の手が温かくて、笑顔が優しくて・・・

あ たしは自分の「恋」を自覚した

「好きだ」
あたし、この人が「好きだ」

そう思ったらいつも以上に胸がきゅっ と締め付けられた

「愛理ちゃん、立てる?」
「・・・はい」
そう言って差し出してくれた先輩の手をそっと握る
す ると先輩はその手に少し力を入れて握り返してくれた

「先輩、朝練は?」
「んー今から行くとこ。ちょっと教室に忘れ物して取り に行こうと思って」


みやはいつからあたしのことを特別に思ってくれてたんだろう
思えばあたしたち、そんな話今まで一 度もしてこなかったね・・・

172.名無し募集中。。。2010/03/18(木) 03:44:35.70 0

先輩は あたしを中等部まで送ってくれた
「あの…ありがとうございました」
「いいよ。それよりさ…お弁当…」
「お弁当?」
「う うん、なんでもない!じゃあ放課後ね」
先輩はバイバイと手を振ると急いで行ってしまった

先輩の優しいところ
可愛い ところ
かっこいいところ
1日1日先輩の色んなことを知っていく
それがすごい嬉しくて先輩の笑顔を思い出すたびに
う るさいくらいに心臓がとび跳ねた
あたし本当に先輩が好きなんだ…

「愛理?教室の前でつっ立って何してんの?」
「う うん。なんでもない」
「それよりさ〜昨日の宿題の答え見せて!」
「え〜またやってないの?」
「だって昨日すごい眠くて さ〜」
いつものように流れる時間も今日だけは特別早く感じた
それはきっと早く先輩に会いたかったからそう勝手に感じたのかも

193.名無し募集中。。。2010/03/19(金) 00:27:33.24 0

――――― あの日初めて乗ったんだっけ?みやの自転車の後ろに・・・

早く先輩に会いたくて仕方なかったのに終了のチャイムが鳴った途端、
あ たしの心臓はびっくりするくらい暴れだした

「わぁー・・・緊張してきた」
震える手でカバンに教科書を詰め込んで携帯を確認す る

『校門の前で待ってるから』

夏焼先輩からのメールに「今から行きます」と返して下駄箱に向かう
靴を履き 替えて前を向くと少し遠くの正門の前で先輩が自転車にまたがっているのが見えた

その姿さえなんだか様になっていてあたしは思わずかっこ いいな・・・って呟いていたっけ

194.名無し募集中。。。2010/03/19(金) 00:33:57.73 0

「すい ません遅れて…」
「ううん。それより早く行こ」
笑顔で後ろの荷台部分をぽんぽんと叩いた先輩
え…それってもしかして二人乗 りってこと?

「愛理ちゃん?」
「あ…は、はい」
ゆっくり荷台部分に腰をかけると手の位置をどこに置こうかで少し 迷った
先輩の腰を掴むのはいきなりすぎるし
だからと言って先輩の服の裾を掴むのもちょっと恥ずかしい…
とりあえず荷台部分 の空いてるところ掴んだ

195.名無し募集中。。。2010/03/19(金) 01:42:16.31 0

「う ち、あんまり運転うまくないよ」
「へ?」

「だからさ」
突然あたしの手を掴む先輩

え?え?
あ たしがあたふたしているのをよそに先輩は自分の腰にあたしの腕を回させた

「ちゃんと掴まってて?」
「あ、えっと、は、は い!!」
あたしはおそるおそる先輩の腰に掴まる
その瞬間、先輩の体がびくっとした気がしたけど・・・気のせいだよね?

196.名無し募集中。。。2010/03/19(金) 01:51:15.63 0

あたし の落ち着かない心とは反対にゆっくりと走り出した先輩
先輩の背中越しに感じる風がすごく心地いい

先輩って意外と華奢なんだ
あ たしにはあんなに大きい存在見えたのに
先輩の腰は細くて背中もあたしと同じくらい
また一つ夏焼先輩のこと知れた
そう思った らついつい笑みがこぼれた

「はい、到着!」
ついたのは駅前にある歌○場
先輩は自転車を置くと子供のようにはしゃぎ ならあたしの手を掴んで
「早く早く」と中へ入っていった

198.名無し募集中。。。2010/03/19(金) 02:01:20.60 0

なんか こういうところってあんまり来ないから緊張する
あたしがきょろきょろしている間に先輩は手続きを済ませてくれていた

「412 号室だって。ほら、行こう」
「あ、はい」
先輩の後ろをついて部屋まで歩き、中に入る

その時、あたしはあることに気 づいたんだ・・・
カラオケって二人っきりじゃん!ど、どうしよ?
あたし、先輩に誘われたことに浮かれててこんな状況考えてなかったよ

199.名無し募集中。。。2010/03/19(金) 02:09:38.73 0

「カラ オケって初めて?」
「い、いえ!でもあんまり来たことなくて…」
「そっか。じゃあ緊張しちゃうかな?」
申し訳なさそうな顔 をしてる先輩に悪くて
あたしは思いっきり首を横に振った
今の緊張はたぶん夏焼先輩と二人っきりっていうこの状況に…

あ たしは先輩の隣じゃなく向き合う形で先輩の前のソファーに腰をかけた
だって先輩の隣に座ったらドキドキしちゃって上手く歌える自信がない…
「何 歌う?」
先輩はあたしに曲を入れる機会をくれ履歴とか最新の曲とかを見せてくれた
先輩が身を乗り出して話してくれるからそのたびに先 輩の髪があたしに触れる
少し匂うシャンプーの良い香りにあたしは思わず目を逸らした

200 :名無し募集中。。。:2010/03/19(金) 02:24:04.24 0

みんなの前で歌うことは慣れているはずなのに
先輩に聞いてもらうとなるとドキドキして歌う曲もなかなか決め切れない
あたしは先輩の話に頷くことしかできなかった

「じゃあ、うちが初めに歌っていいかな?
その間に愛理ちゃん、好きな歌決めててよ」
あたしの様子を見て気を遣ってくれたのかな?
先輩はあたしの頭をぽんぽんと撫でると慣れた手つきでリモコンを操作してマイクを持った

232 :名無し募集中。。。:2010/03/21(日) 14:48:35.56 0

イントロが流れ始めて先輩は画面に目をやる
マイクを構えて真剣な表情の先輩の横顔に目が離せなくなるあたし

歌っている間に曲決めててって言われたけど・・・
そんなの無理だよ・・・だって先輩・・・かっこいいんだもん・・・

それに、すっごく歌うまい

結局あたしは先輩が歌っているのを最後までじっと見つめ続けてしまっていた

238 :名無し募集中。。。:2010/03/21(日) 23:58:20.52 0
>>232

「愛理ちゃん?」
「…へ?」
「次愛理ちゃんの番」
先輩があまりにも綺麗な歌声で歌うからあたしはすっかり
聞きいってしまっていた

「あ!はい!え、えっと…」
考えてみても急すぎて出てこない…
焦っていると先輩は立ち上がりあたしの横に腰を下ろした
「よし、じゃあ一緒に歌おう」
「え…」
「急に誘って歌ってなんて、愛理ちゃんの気持ちも考えずにごめんね」
「そ、そんなこと…!」
「でも、あの時本当に愛理ちゃんの歌声聞いて初めてあんなに人の歌声にドキドキしたんだ。
だからどうしてももう一度聞きたかった」
隣に座った先輩はあたしの目を真っすぐ見て言葉一つ一つを丁寧に伝えてくれる
そんな顔で見つめるなんて先輩反則だよ…

「…あたしも…」
「ん?」
「あたしも先輩に聞いてもらいたい…あたしの歌…」

239 :名無し募集中。。。:2010/03/22(月) 00:16:35.31 0
>>238

勇気を出したあたしの言葉にばあっと先輩の顔が明るくなる
そうだ、あたし、先輩のこの顔が見たかったんだ

あまり最近の歌をよく知らないあたしだけど、なんとか知っている歌を入力する
音楽が流れてあたしはすぅっと大きく深呼吸

歌っている間のことはちゃんと覚えてない
ただ、先輩の視線を感じて、少しでも先輩に気持ちが届け・・・って必死だった

240 :名無し募集中。。。:2010/03/22(月) 00:25:56.81 0
>>239

歌いきってひと息つくと先輩はあたしの頭をそっと撫でた
「ありがとう」
そう言って笑った先輩の笑顔は優しく
なんて綺麗に笑う人なんだろうって思った
屈託のない笑顔と決して外さない力強い眼差し
すべてがあたしの胸をきゅっと締め付けドキドキの音を早くする

「また愛理ちゃんの歌聞けて良かった」
そんな嬉しい言葉先輩に言われたらあたし泣きそうに…
「ごめんなさっ…グス」
「えっちょっ、愛理ちゃん!?」
「…自分の歌こんなに褒められたことなかったから…だから…」
あたしのバカ…!
先輩困ってるのになんで泣くのよ!
泣き虫愛理!
胸の中でそう自分を責めてみてもやっぱり溢れだした涙は止まらない

241 :名無し募集中。。。:2010/03/22(月) 00:43:16.88 0
>>240

「愛理ちゃん、泣かないで?」
先輩はそっとあたしの涙を指で拭ってくれる
そしてそのまま先輩はあたしの手をぎゅっと握った

先輩に手を握られた驚きで思わず先輩の顔を見つめて茫然とするあたし
「あ・・・・・・」
「え?・・・・・・・・!あっ、ご、ごめんっ!」
先輩は目があった途端、慌ててあたしの手を離した

242 :名無し募集中。。。:2010/03/22(月) 00:57:31.74 0

「嫌だったよね」
って先輩は笑って目を逸らすと
「次は何歌おっかな~」
とリモコンを手に取った

「いやじゃ…!」
「え?」
「嫌じゃなかったです…」
恥ずかしくて俯いたあたしは先輩がどんな顔をしてるのなんてわからなかった
違う…引かれてるかもって思って先輩の顔が見れなかった…

するとスカートをぎゅっと掴んでいたあたしの手にそっと先輩は触れた
「じゃあもう少しだけ…握っててもいい?」

243 :名無し募集中。。。:2010/03/22(月) 01:09:09.24 0

「・・・・・・はい」
そう言って先輩の手を少しだけ、ほんの少しだけ力を込めて握る
すると先輩はあたしの手をさっきよりも強く握り返してくれた

それからあたしたちはずっと手を握り合っていた
何かをするときに少し手を離す時があっても、
お互い何かに惹かれあうように気づいたら手を繋いでいた

でも・・・

きっと、先輩はあんなにモテるんだから誰かと手を握るなんて、大したことないんだよね?
あたしなんて、先輩にとってただのファンの一人って感じだし・・・

あたしは否が応でも期待してしまう自分にブレーキをかけるためにも
すっと自分にそんなことを言い聞かせるのに必死だった


245 :名無し募集中。。。:2010/03/22(月) 01:57:31.52 0
>>243

「手…冷たくない?」
「え?」
「いや…うち緊張すると手冷たくなるんだよね…」
照れた笑顔でそう笑った先輩
確かにさっきから少しずつ冷たくなっていってるような気がする
でも慣れてるはずの先輩がなんで緊張?

「先輩でも緊張…するんですね」
思わず出た本音にやばいと思って口をふさいでみたがもう遅い…
「はははっなにそれー、まるでうちが慣れてるみたいじゃん」
噴き出して笑い始めた先輩に開いた口も塞がらない状態になった

「え…違うんですか?」
「慣れるもなにもこんなに誰かの手握ったの初めてだよ」
初めて…
そう聞いたとき先輩の顔がみるみるうちに真っ赤に染まり
照れくさそうに視線を逸らすの見て嘘じゃないんだって思った
それよりも先輩が嘘を言う人には見えなかったから…
きっと本当にこれが初めてだったのかも…
そう思うと顔がゆるんでついついニヤけてしまう

「なんか愛理ちゃんといると初めてなことばっかりだなぁ。あんな風に歌声に心動かされたのも、
自転車の後ろに誰か乗せるのも、こうして二人っきりでカラオケに来るのも、今こうやって誰かの手を握るのも、
全部愛理ちゃんが初めてだよ」

246 :名無し募集中。。。:2010/03/22(月) 02:05:18.84 0
>>245

あたしは先輩の意外な発言に驚きと嬉しさでいっぱいになった
だから、あたしも先輩にこんなこと言えたんだと思う

「あたしも!あたしも・・・初めてです・・・
誰かの自転車の後ろに乗ったのも、二人っきりでカラオケに行くのも、手を握るのも・・・」
「・・・そっか・・・じゃあ・・・初めて同士だ・・・」
「はい・・・」
「なんか・・・すごく・・・」
「すごく?」
「へへ、嬉しい・・・」
そう言って先輩は顔真っ赤にしながらも笑顔を見せてくれた

247 :名無し募集中。。。:2010/03/22(月) 02:13:24.02 0

初めて…
本当にみやはたくさんの初めてをあたしにくれたよね…
いつもあたしの傍で寄り添ってくれてたのも
泣いてるときすぐに駆けつけてくれたのも
あたしを優しく包んでくれるのも
全部みやだった…
なのにどうして今はこんなにも苦しいんだろう…


あれから何曲か歌ってカラオケ店を出ると先輩は家の前まであたしを送ってくれた
「今日はごめんね、急に誘ったりして」
「いえ!すごい嬉しかったです!」
「良かった」
先輩の嬉しそうな笑顔
それを見れただけでも行ってよかったって思えた

「じゃあまた明日学校でね」
「はい」
先輩はあたしの頭を優しく撫でるとバイバイと手を振り自転車を走らせた
撫でられた部分にそっと自分の手を置いてみる
さっき撫でられた感触がまだ残っていて笑みがこぼれた
「先輩…こんな気持ちになったのも先輩が初めてですよ…」
そっと星が綺麗な夜空に呟いてみた

248 :名無し募集中。。。:2010/03/22(月) 02:27:57.38 0

それからあたしたちは色んなところに行ったよね?
みやの部活帰りにゲームセンターに行ったり
あたしの塾が終わるのを待っててくれてご飯を一緒に食べたり

いつもあたしを自転車の後ろに乗せてみやは色んなところに連れて行ってくれた
みやと会うたびにどんどんみやに惹かれていって・・・

お互いの呼び方も「みや」「愛理」になって・・・
って言ってもみやは恥ずかしがってなかなか呼んでくれなかったっけ

そんなときにみやが言ってくれたあの言葉
『うちさ、愛理以外ここ乗せないよ』

249 :名無し募集中。。。:2010/03/22(月) 02:46:57.53 0

その言葉がどれだけ嬉しかったかみやにはわかってた?
モテるみやにあたしってどんな風に映ってるんだろうとか
本当はあたしだけ舞い上がってみやは何とも思ってないのかなって思ったり
好きじゃないなら優しくしないでとも思ってた

なのに愛理以外乗せないと言ってくれた
その時初めてあたしはみやの特別なんだって思えたんだよ

だから本当はあの時泣きたいくらい嬉しくて
抱きつきたいくらい大好きだった…

250 :名無し募集中。。。:2010/03/22(月) 03:05:11.91 0

きっとお互いなんとなく「好き」って思っているのがわかっていて
だけど、その二文字がお互い言えなくて・・・
二人で過ごす時間は増えていくのに、二人の関係を表す言葉は曖昧なままだったあの頃

少しだけ外も寒くなってきたあの日・・・あたしたちはいつものように遊んだ帰り道のことだった
みやはあたしをいつも家まで送ってくれるんだけどその日だけは違ったんだっけ?

「あれ?みや、道こっちじゃないよ」
「あ、うん・・・まぁ・・・その・・・いいじゃん」
そう言ってあたしの家じゃない方向に自転車を走らせるみや
あたしはみやの考えてることがよくわからなくて、不安になってみやに抱きついた

330 :名無し募集中。。。:2010/03/26(金) 02:53:01.94 0

みやに連れられてきた場所はフェンスに囲まれたバスケットコート
勝手に入っていいのかななんて思いながらみやの後に続く

「ここ、うちの秘密の場所」
「秘密・・・?」
「そう、練習で上手く行かなかったときとか、悩んでる時にここでコソ練してるんだ」
「コソ練?」
「こっそり練習」
みやは「へへ」と軽く笑った後、転がっていたボールを手にした
何気なく地面に突いているボールを眺めながらやっぱり上手いなぁ・・・なんて

そんなことを考えているとみやがボールを突くのをやめてシュートの構えをする
「ねぇ、愛理」
「ん?」
「・・・これ・・・決まったら・・・愛理に言いたいことあるんだ・・・」
「・・・」
「聞いてくれる・・・?」
「うん・・・」

あたしの返事を聞いた後、一瞬みやの顔がゆるんだかと思うとすぐさま真剣な表情になる
あたしはその時「決めてほしい」って願った

きっと・・・きっと・・・期待してたから・・・

41 :名無し募集中。。。:2010/03/31(水) 21:46:37.21 0

あの時のことは今も鮮明に覚えてる。
シュートを決めたみやから告げられた愛の言葉。
私はそれが嬉しくて、涙を流して頷いたっけ。
ボールがリングに吸い込まれる瞬間を、私は映画のワンシーンのような感覚で見つめていた。

私はみやのおかげで、両想いであることの幸せを心の底から感じることができた。
みやの為なら何でもしてあげたいって思った。
みやが側にいてくれるなら他に何もいらない、とすら思った。

それが、時間が経つにつれて
与えることより求めることの方が多くなっていったのはどうしてだろう。
私のせいなのか、みやのせいなのか、それとも時間のせいなのか。今となっては分からない。

ベッドから起き上がってそっと窓の外を覗いた。
みやがまだいたらどうしよう、なんて少し心配だったりしたけど
家の前にはもうみやの姿はなかった。

53 :名無し募集中。。。:2010/04/01(木) 21:32:39.22 0

朝、こんな風に窓から顔を出すとみやは元気に
「おっはよー!」って手を振ってくれたっけ

・・・・・・

そっか、もう朝窓の外を確認する必要はないし
みやの朝練に付き合って早起きする必要もないんだ・・・

はは、明日からの朝の予定が真っ白になっちゃった・・・

そっとMのストラップを触る
コレ、もう外そうかな・・・
そう思った瞬間携帯が鳴った
びっくりして開くと、メールの差出人はえりかちゃんだった

『今日はおうちでゆっくり休むのよ~。昨日雨でいっぱい濡れちゃったし、無茶すると体壊すわよ~』

最終更新:2010年04月12日 23:05