- 59 :名無し募集中。。。:2010/04/02(金)
10:39:31.90 0
梨沙子が帰ったあとは、残ったお粥を食べてシャワーを浴びて
言われた通りちゃんと寝た。
正確に言えばベッドに入っただけでしばらくは眠れなかったんだけど
それでも体は限界だったみたいで気付いた時には朝だった。
体が重く感じたけど体調がよくなってないんだ、とはあんまり思いたくなくて
寝起き特有のだるさか、寝不足のせいだって無理やり納得して体を起こした。
顔を洗って朝ごはん食べて制服に着替えて、梨沙子が届けてくれたジャージを持って
そうだ忘れちゃいけない、リストバンドもちゃんとつけて
朝練に間に合うように家を出た。
つい習慣で愛理の家に向かおうとしたけどもうそんなことしちゃダメなんだって思うと
また涙が溢れそうになった。
行っちゃおうか・・・いや、迷惑に決まってるか・・・。
- 60 :名無し募集中。。。:2010/04/02(金)
10:41:06.45 0
結局、朝早いってこともあってそのまま学校へ向かった。
部室に入る前に深呼吸。うち、普通に出来るかな・・・。
頑張らなきゃ、キャプテンなんだし。
「おはよう!!」
自分でもびっくりするぐらい元気よく扉を開けた。
いつも通りおはよー!と笑顔で返してくれる部員たち。
その中に、唯一心配そうにうちを見つめる梨沙子がいた。
目が合った瞬間すぐにふわっと微笑んでくれる。
精神的にも体力的にも倒れそうだったうちを必死に支えてくれたのは間違いなく梨沙子だ。
なぜだか今、改めてそう感じた。
うちは大丈夫だよって意味で頷くと、梨沙子も小さく頷いた。
「ちょっとみやー。あんた大丈夫なの?」
「あ、まあさ。おはよー」
「おはよっ。きのう何回電話しても出ないし、めっちゃ心配したんだからね!」
「え?」
そう言えば携帯にまぁからの着信残ってたな。
色々あって掛け直せなかったけど・・・
- 61 :名無し募集中。。。:2010/04/02(金)
10:42:29.42 0
「え?まぁ、なんで?」
「よく分かんないけど・・・みやに何かあったみたいな連絡入ったからさ」
「はい?」
え、確かにきのうは色々ありましたけど・・・ありすぎましたけど・・・
なんでまぁが?え?てゆーか連絡ってなに?うちの頭はハテナだらけ。
だけどよくよく話を聞くうちにピンときた。矢島先輩経由って聞いてなんとなくピンと来た。
たぶん・・・あの人が連絡したんだよね。理由は分かんないけど・・・
「で?何があったのよ。平気?」
「あ、うん。平気だよ。ごめんね?心配かけて」
別れたことを隠したいわけじゃないけど、そんなことを口にしたらボロボロに崩れちゃいそうで怖かった。
もしかしたらこの時点では少し期待してたのかもしれない。
まだ希望があるんじゃないかって。
梨沙子の言う通り、想いがいつか届くんじゃないかって。
だから言わなかった。
- 62 :名無し募集中。。。:2010/04/02(金)
10:44:09.43 0
「まぁいいけど・・・あ、そうだ!きのう梨沙子に会った?」
「ん?会ったよ。なんで?」
「あーやっぱりね。梨沙子にも『なんか知ってる?』って電話かけたんだけど
すぐ電話切られちゃったからさ。きっとみやを心配して飛び出してったんだなって思ってさ」
「えっ」
「いい後輩持ったね~」
背中をバシっと叩かれる。
思わず梨沙子の方を見た。
―――これっ。届けに来た!
洗濯物届けにきてくれただけだと思ってた・・・
もしかして、それは口実でわざわざ心配して来てくれたのかな?
うちに何かあったって知ってたから・・・家の前でずっと待っててくれたのかな?
よく考えれば分かることだったのかもしれないけど
うちは自分にいっぱいいっぱいで気がつかなかった・・・
視線の先にはちぃと肩揉み合って騒いでる梨沙子。
目が合うとまた優しく微笑んでくれて、心の奥がジワっとした。
バカ梨沙子・・・ほんっとバカみたいにいい子なんだから・・・
- 81 :名無し募集中。。。:2010/04/04(日)
18:54:17.03 0
「頑張れ―!あと3本ですっ!!」
今日の先輩の動きはやっぱり体調が良くないせいかいつもより重そうだった
だけど先輩はそれでも必死でそれを見たら思わず涙が出てきそうで
あたしは大きな声を出し続けた
「りーさこっ!朝から元気だねー」
練習が終わった後、水道場で片付けをしていると夏焼先輩が後ろから声をかけてきた
「当り前じゃないですかっ!もうすぐ練習試合なんですよ?
先輩も気を抜いていちゃダメですからね」
「わお、鬼マネージャーの本領発揮だ」
夏焼先輩はイヒヒとあたしをからかうように肩をすくめる
「も、もうー!!」
「あのさ」
そういって先輩は手を洗っていた蛇口を止める
「はい」
「色々ありがとね」
「え・・・?色々・・・?」
「うん、色々・・・うちさ、梨沙子がいてくれてホントよかった」
- 92 :名無し募集中。。。:2010/04/06(火)
00:19:21.30 0
「な、何言ってるんですが」
動揺を隠すように片づけをしていたものを手いっぱいに持つと
逃げるようにしてあたしは歩きだした
そのあとを追いかけてきた先輩は手にいっぱい持っていたあたしの荷物を
少し取ると笑顔を向けた
「本当にありがとうね」
「ありがとう…なんて言わないでください…」
「でも…」
「あたしが好きで先輩のそばにいるだけですから…」
「え…?」
硬直したように固まる先輩と目が合いあたしは思わず自分の口走った言葉を
思い出し慌てて否定をした
「ちがっ!別にそういう好きとかじゃなくて…!あ、えっと…、なんて言えばいいんだろ…、うーん」
「ぶっ、あっはっはっは」
いきなりお腹を抱えて笑いだした先輩に今度はこっちがびっくりして固まった
- 93 :名無し募集中。。。:2010/04/06(火)
01:16:20.71 0
「梨沙子っ・・・ハハハ、焦りすぎ!アハハ」
先輩はもう少しでその場に蹲りそうなくらい体を折っている
「そ、そんなに笑うことないじゃないですか!!」
「だって・・・ヒャハハ・・・ツボ!ツボに入った!!」
「も、もういいです!!」
あたしはなんだか恥ずかしいやら悔しいやらで良くわからなくなって
先輩をその場に残して背中を向ける
「ごめんごめんってば!今日、なんか奢るから許して」
先輩は両手を合わせて完璧なウィンクをしてみせた
- 94 :名無し募集中。。。:2010/04/06(火)
01:35:40.24 0
先輩はずるい
そんな顔されたら許しちゃうよ…
「じゃあ、フランス料理でも奢ってもらおうっと~」
「え!?それは酷くない!?」
「なんでもって言ったじゃないですか」
「いや、ほらマックとかサイゼとかあるじゃん」
「ふ~ん、先輩のうそつき」
べーっと舌を出して走り出すと先輩はそのあとを必死で追いかけてきた
先輩を好きな気持ちはきっと変わらないし、これからもきっとそう簡単には諦めきれないと思う…
でも…こうやって先輩が笑ってくれるならあたしはこのままの関係でもいいよ…
先輩が辛いときにだけ頼ってくれる女でもいい…
- 95 :名無し募集中。。。:2010/04/06(火)
02:06:52.43 0
「すぅー・・・はぁー・・・」
教室に入るとき、一回深呼吸をした
そうじゃないとあたしは隣の愛理ちゃんを意識そうだったから
大丈夫・・・あたしは何も知らないって事にしたほうがいいよね
意を決して中に入るとすぐに愛理ちゃんが目に入ってきた
そっと近寄っていくと、愛理ちゃんは授業の予習なのか、教科書をじっと読んでいる
「あ、お、おはよ」
ば、ばか!どもったら不自然じゃん、あたしのばか!
「ん?あ・・・お、おはよ」
あれ?なんか・・・目そらされた・・・?
- 96 :名無し募集中。。。:2010/04/06(火)
02:17:43.85 0
二人の間に漂う嫌な空気…
「あ、あのさ!宿題やってきた?」
そんな空気を断ち切るために無理矢理話かけると
愛理ちゃんは教科書を見たまま「うん」とだけ答えた
うーん…
もっと違う話題違う話題…
「あ!昨日のテレビでさー」
「そういうご機嫌とりみたいなことやめてよ」
「え?」
「なんか見てるこっちが疲れる」
表情一つ変えずそう淡々と話す愛理ちゃんにあたしはそれ以上何も言えなくて口ごもった
なんか怒ってる…?
でも先輩の話じゃ愛理ちゃんから別れようって言ったはずなのになんで…
あたしなんか愛理ちゃんに怒られるようなことしたっけ…?
考えても思い当たる節はなくてあたしは意を決して愛理ちゃんに話しかけた
「あの…さ…、あたしなんかした…?悪いことしたなら謝りたいし…それに…」
話ているあたしの言葉を最後まで聞かずに愛理ちゃんは席を立つと教室を出て行ってしまった
- 112 :名無し募集中。。。:2010/04/07(水)
02:48:59.79 0
愛理ちゃん、大丈夫なのかな・・・
もうすぐHR始まっちゃうのにどこ行っちゃったんだろ・・・
愛理ちゃん、ごめん・・・あたし、気付かないうちに愛理ちゃんに悪いことしてたんだよね?
ちゃんと謝る・・・そしたら、また今までみたいに仲良くできる?
あたしは携帯を取り出してメール画面を開ける
その時は、自分のこんなことで・・・
うぅん、今までしてきた色んな事であんなに人を傷つけてたなんて気づかなくて・・・
『先輩にこんなこと言うのは間違ってるかもしれないですけど
愛理ちゃんが教室を飛び出して行っちゃったんです』
- 123 :名無し募集中。。。:2010/04/07(水)
23:49:08.79 0
「やっぱあたしのせいだよね…」
そう思うと自然と足が教室の外へ向き走り出していた
もしあたしのせいならちゃんと訳を話して
先輩とは何もないってそうはっきり愛理ちゃんにそう言って
先輩は愛理ちゃんしか見てないよってちゃんと伝えてあげたい
そしたらきっと愛理ちゃんは笑って…
あたしはただ当てもなく学校の色んな場所を探し回った
トイレ、屋上、美術室、理科室…
「もしかして…音楽室」
最後の希望という感じで愛理ちゃんの部活、合唱部が使う音楽室へ向かった
- 126 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
00:40:44.13 0
「はぁ…はぁ…」
階段を登りきったころには息切れをしていて
あたしはフラフラになりながら音楽室のほうへ歩るいて行った
「…?先輩?」
音楽室のドアの前で立ち尽くし微動だにしない先輩を見つけて声をかけたけど
何か様子が変であたしは恐る恐る先輩のほうへと歩み寄った
先輩の見据えるほうに目をやるとそこには愛理ちゃんと
背中越しにしか見えない知らない人
そしてあたしと先輩の目の前で二人は抱き合いキスをした…
「え…」
- 130 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
05:51:18.09 0
なんで?なんで?なんでキスなんかしてるの?
そう思ったらあたしは無意識に二人に詰め寄っていた
あたしは関係なのに・・・
あたしには二人のことをとやかく言う立場でもないくせに・・・
「愛理ちゃんは・・・愛理ちゃんは先輩の彼女なんでしょ!?
なのになんで他の人とキスなんかしてるの!?」
- 133 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
09:15:44.86 O
「…みやとは、みやとはもう…終わったし…
何で、梨沙子ちゃんがそんなこと言うの?」
驚いて大きく見開いた目から溜まっていた涙が零れ落ちるのとほぼ同時に言われた。
確かに、あたしなんかが口出しすることじゃ……
でも、でも!
「終わったって…先輩は、夏焼先輩は愛理ちゃんのこと――!」
一瞬、頬に衝撃が走った。
熱い…愛理ちゃんにぶたれたと気づかなかった。
「言わないで!あなたがそんなこと言わないでよ!
何も知らないくせに…」
知らないよ
あたし何も……ううん、夏焼先輩が苦しんでるのはきっと今は一番わかる
それだけは知ってる…
- 134 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
09:31:26.51 O
梨沙子ちゃんが涙を浮かべた目で真っ直ぐ睨みつけてくる
「わ、わかるもん…」
「え?」
「あたしだってわかるもん!
先輩が愛理ちゃんのことが本当に大好きなこと…
あたし、ずっと近くで聞いてきたからわかるもん!」
- 137 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
10:31:03.09 O
「っ、そんなの…だから!梨沙子ちゃんが言わないでよ!!」
みやはあたしに梨沙子ちゃんの話を沢山してきたよ…
今までそういう特定の誰かのこと話すことなかった…
梨沙子ちゃんにだけはみやとのこと、言われたくない!
…なのに何で突っかかってくるの?
もうそっちはそっちで勝手にすればいいじゃない……
正にそう言おうとした瞬間
あたしの肩に手が触れる
「梨沙子ちゃん…よね?バスケ部のマネージャーさん。
そんなに怒ってるのはあたし達のしたコト見てたのよね?
―なら、ココにアナタ『達』がいるのはお邪魔虫じゃない?」
えりかちゃんは後ろからあたしを抱きしめながら…
まるで、みやに見せつけるように梨沙子ちゃんに言ったことにあたしは驚いた……
―そして、そんなやり取りを見て何も言わない
何も言えないみやの姿に、自分勝手なあたしは悲しくなった。
- 138 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
10:50:36.29 O
梅田先輩の言葉で夏焼先輩がうしろにいたことを思い出した
振り向くと、先輩はさっきと同じ
時が止まったように固まっていた
「っ先輩!何つったってんですか!」
「・・・・」
「なんで何も言わないんですか!」
悔しくて思わず叫んだ
あたしは完全にイライラしていた愛理ちゃんにも、先輩にも・・・
- 141 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
11:57:06.15 O
「―んで…っ、何でみやにならともかく
あんたに言われるのよ…
みやがあたしのこと話してたって言ってたけど…」
言いたくない
気持ちを自覚させたくなかった
―――――みやに…でも、もういい
「梨沙子ちゃんが転校してきてから、みやね
あたしといる時に
よく話してたよ。
梨沙子ちゃんのこと…みやは自覚ないみたいだったけど…」
あたしはそれがすごく嫌だった
そう付け足した後に梨沙子ちゃんに目をやると
みや同様固まっていた。
…別れる原因は――
―何かわかった?
- 143 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
12:49:35.96 O
愛理ちゃんの言葉を聞いて全身の熱がさぁっと引くのを感じた
待って…今の愛理ちゃんの言ったことって…
嘘…そんなはず…
先輩と愛理ちゃんが別れたのって
「あたしが…原因なの…?」
- 144 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
13:08:08.91 O
「全部が全部、梨沙子ちゃんのせいだなんて思ってない…
でも、梨沙子ちゃんがいなかったらきっと…
みやと別れることはなかったのかも……」
気づかなかった。
知らなかった。
夏焼先輩があたしのこと話してくれてたこと。
何より先輩を苦しめる原因があたし自身だったなんて…
「あ…あたし、あの…」
言葉が出てこない
何か言う資格なんてない
あたしはKYP…空気の読めないピエロだ
「梨沙子は悪くないよ…
結局、うちが愛理の気持ちをわかんないのがいけなかった。
だから…梨沙子は悪くない」
少し掠れた夏焼先輩の声があたしを包み込む…
先輩は優しい…
でも、先輩を愛理ちゃんを苦しめてたのはあたし…
あたしが原因―――――
- 145 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
13:20:37.92 O
「―っごめんなさい!」
深く愛理ちゃんに頭を下げ、音楽室から飛び出した。
夏焼先輩があたしを呼ぶ声がしたけど
あのまま原因の元凶の疫病神のようなあたしがいちゃいけない…
あたし最低
夏焼先輩も愛理ちゃんも傷つけて
あたし最低だよ!
- 146 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
13:30:11.22 O
梨沙子が音楽室を飛び出した。
梅田さんはため息をついて愛理に絡めていた両腕を離した。
「追わなくていいのかしら?」
「まだ…愛理に言うことあるから」
「あたしはもう!……あ、あたしもある」
「じゃあ梅さんはお邪魔虫ね。退散するわ。
夏焼さん、うちの愛理をこれ以上泣かさないでくださいね」
「えりかちゃん?待ってよ!」
「…二人きりで最後くらい逃げないで話しなさいな。
この梅さんは愛理ちゃんを信用してますもの」
梅田さんはそそくさと音楽室から出て行く。
二人きりの音楽室、少しの沈黙を破ったのは愛理だった。
- 147 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
13:41:18.97 O
「…ねえ、みや別れを選んだけど
みやとの時間は永遠にあたしの宝物だよ。
あたしが今好きな人がみやじゃなくても変わらない。
大切な宝物…」
もう泣いてない真っ直ぐな瞳で話す愛理。
「愛理はあの人、梅田さんのこと…」
「うん、好き」
「………」
「みやが気づかせてくれた、のかな?
でも―――」
『いい加減みやも自分の気持ちに気づいた?』
シンと静まり返った音楽室にハッキリと愛理の声が響いた。
うちの気持ち…
「梨沙子ちゃん、追っかけなくていいの?」
「あ…」
きっとまたどこかで転んでたり…
うちの心配や愛理の言葉で泣いているのかもしれない―――
「みや、追っかけたいって顔してるよ」
「そんなこと…」
あるのかもしれない……
うちの気持ち?
愛理にとってうちはもう完璧に過去の人だ…
- 154 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
14:21:41.40 O
立ちすくむうちに愛理が呟いた。
「・・・最後まで怒らなかったね」
「え?」
「あたし、梨沙子ちゃんを傷付けたのに」
泣きそうな顔で愛理が言う。
自分でも梨沙子に酷いことを言ったと自覚しているんだろう。
「・・・愛理にあんなことを言わせたのはうちだよ」
愛理を追い詰めたのはうちだ。
梨沙子とのことでそんなに傷付けてたなんて知らなかった。
いや、違う・・・考えようとしなかったんだ。
愛理が出してたSOSに気付かなかった。
- 156 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
14:45:35.91 O
「で、みやは追っかけなくていいの?」
眉をハの時にして笑う愛理。
うちいつも愛理に甘えてたんだなって気づく
「梨沙子は足が遅くてドジだから
すぐ追いつくよ」
「…あたし、梨沙子ちゃん嫌いじゃないよ。
すごーく憎い!って思ったこともあったけど
真っ直ぐな所が…なんかやっぱり憎みきれない。」
真っ直ぐ所がみやとダブって見えたことは言わない
やっぱり悔しいから。
「うち愛理を好きだよ。
でも愛理を好きな自分が好きだったのかもしれない。
わかりにくいけど…自分自分ばっかりになってた、ごめん」
「ううん、あたしも同じようなもんだし」
みやを好き。
でも気持ちがすれ違い過ぎたかな…
サヨナラ、あたしの初恋―――――
- 157 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
15:01:36.94 O
「愛理」
みやがあたしの名前を呼ぶ
きっとこうやってみやに特別に呼ばれるのはこれで最後…
「ん?」
「最後に抱きしめていいかな?」
その言葉とともにあたしの返事を待たずに抱きしめるみや
こうやって強引に抱きしめてくれたのは最初で最後だね
- 158 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
17:21:40.62 O
「ありがとう。バイバイ」
みやはそれだけ言うとそっと体を離し音楽室から出ていった
あたしはそれを見届けると、力が抜けたかのようにその場に座り込んだ
「えっと、そろそろ入ってもいいかしら~?」
「・・・・えりかちゃん、どこに潜んでたの?」
「ふふふ、隣の音楽準備室よ」
「盗み聞きしてたわけじゃないから安心しなさ~い」
なんて言いながらあたしの隣に来るえりかちゃん
帰ったと見せ掛けて待ってるなんてやっぱりヒーローだよ
あっ、そういえば前にも似たようなことあったっけな
「愛理、頑張ったね」
「・・・別に頑張ってないよ。感情的になって本心を言っちゃっただけだし」
「でも梅さんには、ナツヤキさんの為にわざとはっきり言ってあげてるように聞こえたわ」
そっと髪を撫でられて泣きそうになった
だから「やっぱ盗み聞きしてたんじゃん」って言いながら笑った
- 163 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
20:30:43.48 0
- >>160
「こんなところで何してんのさ」
泣いているあたしの横に同じように誰かがしゃがみこんだ
顔をあげるとそこには笑顔の夏焼先輩がいた…
「先輩…」
「ありがとう梨沙子」
「え…?」
あたしが悪いのになんでお礼なんか言うの先輩…
あたしのせいで愛理ちゃんと…
「梨沙子がいなきゃ愛理の気持ち聞けないまま本当にお別れするところだった」
「でもあたし…」
「梨沙子のせいだなんて思ってないよ。はっきりしないうちのせい…」
一瞬俯き静かに微笑んだ先輩はあたしの頭をそっと撫でた
- 164 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
21:11:21.67 O
「あー…、ねぇ梨沙子?」
「はい」
「難しいね、恋愛って」
先輩はそう言って空を見上げた
「はい」
「あれ…?梨沙子にもわかるの?」
先輩はあたしをからかうような口調で覗き込んで聞いてくる
「わかるもん…」
「いやいや、これは失恋したことがある人しかわかなんないぞ?」
だったらあたしの方が恋愛の先輩…うぅん、失恋の先輩だよ
だってあたしなんて好きになったときには先輩に失恋してたんだから
「失恋くらいしたことあるもん」
「そっか…」
てっきりまたおちょくってくると思ったのに先輩はどこか遠くに視線を向けていた
「じゃあ梨沙子はうちの失恋の先輩だ」
- 165 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
21:20:31.77 0
「ふふっそうですね」
そう言って笑うと先輩も笑った
そして一緒に空を見上げた
一面透き通るくらいに綺麗な青空が広がり
まるで曇った心を溶かすかのようだった
「授業行こっか」
「はい」
歩きだした先輩の後ろに続くと先輩の背中は会ったばかりのころのように
広くて輝いてた
最終更新:2010年06月05日 03:18