- 170 :名無し募集中。。。:2010/04/08(木)
23:54:18.01 O
放課後、ギリギリの時間に梨沙子は部室に来た。
愛理とクラス一緒だけど大丈夫そう?とか
愛理に叩かれたほっぺは痛まない?とか
聞きたいことはたくさんあったけど聞ける雰囲気ではなかった。
そして部活中も。
いつも通りだけどどこか梨沙子が遠慮しているような気がして
うちはそれがたまらなく嫌だったし、
寂しかったし、申し訳なかった。
『梨沙子がいなかったら別れながったかも』
愛理はそう言ったけど、じゃあ梨沙子と出会わなければよかったなんてうちは思わない。
むしろ、うちは今梨沙子のために何をしてあげられるんだろうって
不思議なほどにそればかりを考えていた。
「梨沙子お疲れ」
「あっ、お疲れさまです」
「このあと時間ある?ちょっとうちに付き合ってよ」
- 171 :名無し募集中。。。:2010/04/09(金)
00:17:36.94 0
「え・・・?え・・・?」
梨沙子はうちの言葉に明らかに戸惑っている
「朝約束したじゃん、うち、なんか奢るって」
「でも・・・その・・・」
「なんか予定でもある?」
「・・・特にそういうわけじゃ・・・」
「じゃあ決定!これ、先輩命令!!待っとくから」
うちは一方的に言い放って梨沙子にデコピンをしてやってから小春達との輪に混ざった
- 175 :名無し募集中。。。:2010/04/09(金)
02:46:44.52 0
部活が終わりみんなが部室で着替えてる間あたしとママは後片付け
夏焼先輩に誘われたもののあんな出来事があってからすぐだったから
あまり乗り気じゃなかった…
「梨沙子いいの?」
「え?何がですか?」
「みやと何かあるんでしょこの後」
「なんで知って…!」
「だって顔に出てるよ。みやの事で悩んでます~って。それに今日みやもなんかソワソワしてたしね」
さすがママ…
あたしやみやのことをよく見てる…
「後はあたしがやっておくから着替えてきな」
「でも…」
「その顔は行こうか迷ってる?」
やっぱりママには何でもお見通しだ…
「うん…」
「ふーん。そっか…。何があったかはあたしは梨沙子が話してくれるまで聞かないし探らないけど、
こういうのって逃げてちゃいけないんじゃない?」
ママはそっとあたしの頭を撫でると優しく微笑んだ
「あたしは何がってあっても梨沙子の味方だよ」
- 180 :名無し募集中。。。:2010/04/09(金)
09:14:44.06 O
「おっ!みや今日は梨沙子ちゃんとデート?やるねぇー!」
着替え終わり、梨沙子を引っ張って部室を出ようとすると小春にからかわれた。
一瞬どきっとしたけどいつもの小春の悪ふざけって分かったから
うちは気にせず流そうと思ったんだけど
梨沙子はすごい勢いでうちの手を離した。
「ばーか!お疲れー!」
それでも無理矢理梨沙子の腕を取って部室を出た。
正門を出るまで梨沙子はうちから少し離れてとぼとぼ歩いていた。
「梨沙子、何食べよっかぁ」
「なんでも」
「梨沙子、犬がいるよ」
「かわいー」
「梨沙子、猫もいるよ」
「そうですね」
「ねぇ、なんでさっきから棒読みなの?」
「・・・先輩はなんでそんなに普通なの?」
- 181 :名無し募集中。。。:2010/04/09(金)
09:17:38.77 O
横を見ると梨沙子は何か言いたそうな目でうちをじっと見ていた。
「普通じゃダメ?」
「そうじゃないけど・・・あたしに気を遣って普通にしてくれてるのかなって」
「そんなんじゃないよ。逆に梨沙子はなんで余所余所しいの?
あのことは気にしないでいいってうち言ったよね」
出来るだけ優しく諭すように言った。
気にするなって方が梨沙子の性格上無理だとは思うけど
うちは本当に気にしてほしくなかった。
「・・・あたし思ったんですけど」
「うん」
「あたしと話さなくなればもしかしたら愛理ちゃん、また先輩のこと・・・」
「梨沙子」
立ち止まって梨沙子の肩をつかむ。
じっと怒ったように見つめて梨沙子の言葉を止める。
「変なこと考えないの」
「でもっ」
「うち、愛理のことは諦めたから」
- 183 :名無し募集中。。。:2010/04/09(金)
12:42:20.98 O
「そ、そんな…」
すぐに諦められるものなの??
だって先輩、あんなに愛理ちゃんのこと好きだったじゃん…
あたしなら…あたしなら、すぐに諦められない…
先輩のこと諦めきれないよ…?
「愛理さ、あの人、梅田さんのことが好きなんだって…
うちじゃあ、もうダメみたい」
「うち、当分恋愛はいいや…
もっと自分に自信をつけて、強くなるまで…
まだうちには早かったのかな」
そう言って先輩は寂しそうに笑ってみせた
- 186 :名無し募集中。。。:2010/04/09(金)
14:19:40.05 O
――当分恋愛はいいや
思わず口から出たこれは本心だった。
自分の無神経な行動に気付くことも出来ず
愛理をあそこまで追い詰めて
梨沙子まで傷つけてしまって
こんなうちが恋愛する資格なんてないと思った。
今まで簡単に好き好き言い過ぎてたのかなあ・・・
人を好きになるって
誰かを大事にするって
こんなに難しいことだったっけ・・・。
- 201 :名無し募集中。。。:2010/04/10(土)
02:56:50.20 0
――当分恋愛はいいや
そう言った先輩の言葉を聞いてあたしは察した
先輩にはやっぱりあたしは映ってないんだって…
「梨沙子?」
「…え?」
「ほら早く乗って」
先輩は自転車にまたがり後ろの荷台をポンポンと叩いた
「あ、はい…」
言われた通りにその後ろに座ると先輩の服の裾をきゅっと掴んだ
「もっとちゃんと掴まないと落ちるよ」
「大丈夫です」
「梨沙子が大丈夫でもうちが心配なの!」
先輩はあたしの両手を掴むと自分の腰に回した
先輩の背中に顔がくっつき腕からは体温が伝わって
心臓の音は聞こえそうなくらいに飛び跳ねていた
「行くよ」
「はい…」
- 216 :名無し募集中。。。:2010/04/10(土)
19:40:10.18 O
「あ……―――梨沙子ごめん!やっぱり、歩こう」
「え?」
「あの、なんか…その「まだ体キツイんですよね?高い熱出したばっかりだし無理しないでくださいよ」
「あ、はは…うん…ありがと」
梨沙子はサッと自転車から降りた。
この優しい勘違いのおかげで
うちの…もうきっと有効じゃない”約束”は守られた。
自転車を押して歩くうちに平行して梨沙子が歩く。
何だろ?
今まで普通だと思ってた
変わらないと思ってたことは
失ってからとても大切なモノだったって気づく…。
うち、バカだな。
愛理はうちより繊細で敏感な心の持ち主だから
鈍感で無神経なうちはきっと沢山傷つけたんだろうと…
今更、痛感した。
- 219 :名無し募集中。。。:2010/04/10(土)
20:17:20.62 O
先輩に歩こうと言われて慌てて自転車から降りた
なんだかほっとしたような寂しいような、
そんな複雑な気持ちを抱えながら並んで歩く
「どこ行こっか」
「えっと…あの…」
「カラオケでも行く?」
そう言いながら先輩はゆっくり自転車を押していく
- 233 :名無し募集中。。。:2010/04/11(日)
19:21:53.51 O
「カラオケかぁ」
「あんま好きじゃない?」
「いや、好きですけど、久しぶりだなって」
転校する前はよく友達と行ってたけど、こっち来てからは一回も行ってない。
部活ばっかりだったし。
「じゃあ行こうよ。ご飯もそこで食べれるし」
「・・・先輩はカラオケ好きなの?」
「うん。結構よく行く」
そうなんだ、と小さく呟いた。
先輩とカラオケなんて嬉しい。
でも、やっぱり前みたいには無邪気に喜べない自分がいる。
「歌うとすっきりするし、歌詞に勇気付けられたりするし」
「そっか」
ふと考える。
あたしは先輩の為に何が出来るんだろう、と。
- 234 :名無し募集中。。。:2010/04/11(日)
19:23:39.49 O
支えてるつもりが先輩と愛理ちゃんを苦しめてたあたし。
前のように先輩の側にいていいのか正直分からない。いくらいいって言われても。
だけど、このままうじうじしてたって先輩はきっと喜ばない。
あたしが悲しんでたら先輩も悲しむ。先輩はそうゆう人だだから。
だからあたしは小さく頷いた。
何もなかったように接するのは最低かもしれない。
だけど、自惚れかもしれないけど、あたしまで離れたら先輩は悲しむと思ったから・・・
結局あたしに出来ることは、自然に寄り添うことかなって思った。
- 235 :名無し募集中。。。:2010/04/11(日)
19:41:42.49 0
先輩に連れられて駅前のカラオケ屋に入る
先輩は入るなり受付の人と親しげに話し、あっという間に手続きを済ませてくれた
「お待たせ!じゃあ行こっか」
「はい、それにしてもあの人、知り合いなんですか?」
「あぁ、友達だよ。ちょっとサービスしてもらっちゃった」
そう言ってニコニコと笑顔を見せてくれる先輩
「梨沙子の歌、ちょー楽しみ!」
「あ、あたしより先輩の方がいっぱい歌ってくださいよ!!」
「んーどうしよっかなぁー」
- 263 :名無し募集中。。。:2010/04/13(火)
19:46:40.53 0
部屋に入るとカラオケ独特の匂いがした
梨沙子とテーブルを挟んで向かい合って座る
「先輩、先に歌って」
「ん。梨沙子も入れてよ?」
梨沙子に念を押してからピッピッとデンモクをいじって曲を探す
あー何歌おっかなー
・・・・・・・・・ん?
「・・・梨沙子、いきなりフードメニュー見るのやめて」
「だって美味しそうなんだもん、このラーメン」
「たはっ!カラオケまで来てラーメン食べてる人見たことないからぁ」
「あ、これ飲みたーい。マンゴーなんとか・・・」
「バカ、それお酒だよ」
梨沙子が面白すぎていつの間にか席を立って隣に行ってた
一緒にメニューを見てあーだこーだ言い合って
とりあえず時間がもったいないので適当に曲を入れて歌った
歌い終わってさりげなく梨沙子を見ると梨沙子はうちをじっと見つめていた
- 264 :名無し募集中。。。:2010/04/13(火)
20:13:54.50 O
あたしは先輩が歌う横顔から目が離せなかった
だって、少し細めた先輩の目元がすごく綺麗だったから
だって、少し高い先輩の声が切なかったから
「ん?」
「…へ?」
「どうした?うちの顔なんかおかしい?」
「あ、や、そ、そうじゃなくて
せ、先輩歌うまいなぁなんて…」
愛理ちゃんにも歌ってあげたの?って…そんなこと聞けるわけがなかった
- 265 :名無し募集中。。。:2010/04/13(火)
20:39:57.81 0
「え?そう?」
「うん。上手いとは聞いてたけど・・・想像以上だった。超上手です」
まっすぐな目でそう言われてなんだか照れくさくなった
照れくさいけど、でも梨沙子に褒められるのは嫌じゃない
てゆーか嬉しい
心がポッとあったかくなる
だけど次の瞬間、脳裏にあの日のことが思い浮かんだ
―――…自分の歌こんなに褒められたことなかったから…だから…
あの日・・・はじめて愛理とカラオケ来た日・・・
愛理の歌を褒めたら愛理泣いちゃったっけ・・・
懐かしいな・・・
愛理の歌が聞きたくて必死に誘ったんだよなぁうち・・・
- 268 :名無し募集中。。。:2010/04/13(火)
21:06:41.93 0
「先輩・・・?」
今度は先輩がぼーっとする番のようだった
「ん?あ、ごめん。なんかちょっと思い出しちゃってさ」
「え?」
「はは、そういえばさ、初めて愛理と遊びに行ったのがカラオケだったんだよね
うちにとって初めてのデートだったな・・・って」
「そうなんだ・・・」
やっぱり先輩の心の中はまだ愛理ちゃんでいっぱいなんだ・・・
そう思うと胸が苦しくてあたしは思わず制服の袖を握りしめた
- 266 :名無し募集中。。。:2010/04/13(火)
21:03:55.29 0
「先輩?」
「・・・・・え?あ、ごめん!!ほら梨沙子も好きな歌いれなよ!」
「う、うん」
慌てて曲を入れる
最近よく聞いてる曲・・・
切ないけど歌っちゃおう
しんみりしちゃうかな・・・?
でもいっか・・・今はこれが浮かんだし・・・
- 267 :名無し募集中。。。:2010/04/13(火)
21:05:16.25 0
歌ってる梨沙子の顔が大人っぽくて
いつもの梨沙子じゃないみたいで思わず見つめてしまった
なんていうか・・・表情が凄い色っぽい
【好きで大好きで 涙が出て止まらないけど
君をね 失いたくない そばにいられるならこのままでいいよ】
そして柔らかい歌声
聞いてて心地よくてうちは手拍子するのも忘れて真剣に聞き入っていた
感情がこもってて、梨沙子の歌の世界に吸い込まれそうになる
【小さな声で泣いたとき 一人きり淋しかったとき
誰よりも優しく心配してくれた いちばん大切な人なんだ】
なんか・・・なんか・・・
梨沙子の歌、いいなあ・・・
- 273 :名無し募集中。。。:2010/04/13(火)
21:32:46.06 0
「梨沙子!めっちゃよかったよ!」
「え、いや、別にそんな・・・・」
「なんか感動しちゃった!」
乱暴に頭を撫でられる
ちょっとー!髪ぐちゃぐちゃになるんですけど!
・・・・って言おうとしたけどやっぱ言わない
乱暴でも髪撫でられるのは嬉しいから
「このこのー。誰を思って歌ったのさー」
あたしがこんなにドキドキしてるのにもかかわらず
あっけらかんととんでもない質問をしてくる先輩
ちょっと冗談ぽく
「先輩ですよ」って言ったら
「え!梨沙子の好きな人って先輩なの!?」
って言われた
なんかもう色々通り越してお腹抱えて笑っちゃった
- 274 :名無し募集中。。。:2010/04/13(火)
21:39:34.47 0
その後はお互い順番に歌いあったり、一緒に歌ったりして盛り上がった
やっぱり先輩と一緒にいるとすごく楽しい!
ちょっとしたことでも笑っちゃって幸せな気持ちになる
そうこうしているうちに食べ物もどんどん運ばれてきて
今度はそれをじゃれあって取り合ったりしながら食べた
といっても先輩はあたしにさりげなく気を遣ってくれて大目に残してくれたり
そういう優しいところも大好きなんだよ、先輩
- 292 :名無し募集中。。。:2010/04/13(火)
23:30:29.84 0
あっという間に時間は過ぎて
今はカラオケ終わりの帰り道
行きと同じようにうちは自転車を押して、梨沙子はその隣を歩いていた
楽しかったーって笑う梨沙子を見てたらなんだかほっとする
こんなうちでも誰かを笑顔に、って・・・
「・・・・あのさ、梨沙子」
「はい?」
「梨沙子はうちから・・・」
――うちから、離れたりしないよね?
言いかけたところでハッとして言葉を止めた
・・・うち、今何言おうとした?
後輩に何言おうとした?
「先輩、なに?」
「え?あぁ、なんでもない・・・梨沙子、またカラオケ行こうね!」
「え、う、うん!」
- 293 :名無し募集中。。。:2010/04/13(火)
23:44:19.09 0
- 先輩とたわいのない話をしながら家路を歩く
今日だけは、このままずっと家に着かなければいいのにって思った
「そういえばさ、もうすぐ練習試合あるじゃん?」
「あー、ありますね。朝比奈学園でしたっけ」
「うん・・・」
「・・・?先輩、どうかした?」
「・・・・実はさ」
「うん」
「合宿の時話したじゃん?うちが、夏の大会でケガさせちゃった子がいるって・・・」
「えっまさか・・・」
「うん・・・朝比奈なんだ・・・」
- 294 :名無し募集中。。。:2010/04/14(水)
00:15:18.31 0
先輩のハンドルを握る力が一瞬強まった気がした
「めぐがいない朝比奈・・・」
「・・・」
「なんか・・・全然想像できないな・・・
うちがこんなこと言うなんて不謹慎だと思うけど・・・」
「先輩・・・」
「絶対負けられない・・・」
先輩は自分に言い聞かすようにそう言葉にした
- 310 :名無し募集中。。。:2010/04/15(木)
01:42:15.92 0
絶対に負けれない…
ううん…
負けちゃいけないんだ…
「先輩」
「…ん?」
「あたしに何かできることってありますか…?」
「え?」
「いや、ほら!先輩が負けられないって意気込んでるのにあたしは
ただマネージャーとしてサポートすることしかできないし…」
落ち込んだように下を向いた梨沙子の頭をうちは
優しくぽんぽんと叩いた
「それで十分だよ。それだけでうち…バスケ部のみんなは安心してコートに立てるんだから」
「でも…」
「まぁ、しいていうなら…そばに居てくれるだけでもいいんだけどさ…」
「ん?なんですか?」
「う、ううん!なんでもない。さぁ、帰ろうっか」
そう言って歩き出したうちの横を不思議そうについてくる梨沙子
うち何か変だよね…
さっきから梨沙子に離れないでほしいって思ってる…
- 311 :名無し募集中。。。:2010/04/15(木)
01:50:29.22 0
『まぁ、しいていうなら…そばに居てくれるだけでもいいんだけどさ…』
聞き間違いかと思った。
先輩がまさかそんなこと言うなんて。
だからもう一回聞き返したけど、先輩は何でもないって首を振った
うん、さっきのは聞き間違いだよね?
でも、それでも、やっぱり嬉しかったから聞き間違いでも忘れなくていいよね?
「あ・・・」
そんなことを考えながら隣を歩いていると、急に先輩が立ち止まった。
「ん?先輩?」
なぜかコンビニの前で中をボーっと見つめている先輩
「花火・・・あそこ、花火まだ売ってる」
- 312 :名無し募集中。。。:2010/04/15(木)
01:58:31.90 0
「ほんとだ。こんな時期に珍しいですね」
先輩は物欲しそうにそれを見つめた後、あたしのほうへ顔を向け満面の笑みを浮かべた
「ねぇ、やらない?花火」
「今からですか?」
「うん!」
先輩はあたしの返事も聞かずに自転車を止めるとあたしの手を引きコンビニ入っていく
「え、ちょっ」
ロケット花火、ねずみ花火、噴出花火…
色んな種類の花火が陳列されていて先輩は小さい子供のように無邪気にはしゃいでいた
「ねぇ、どれやる?どれやる?」
「先輩…あたしより年上ですよね?」
「え、うん。それがどうかした?」
「いえ、なんでも…ないです」
こんな時期に花火?
なんて思ったけど先輩の楽しそうな笑顔を見るとこっちまで楽しくなるから不思議
- 315 :名無し募集中。。。:2010/04/15(木)
08:18:42.78 O
「合宿で出来なかったしねー。この機会逃したら今年はもう花火できないよ」
あ、そっか。
そういえば合宿で花火やる予定だったんだよね。
・・・・・・。あれ?
もしかして?
――仕方ないから、向こう帰ったらやろうか
色んなことがありすぎて忘れてたけど
もしかしてあの約束を果たそうとしてくれてるのかな?
帰ったら一緒に花火やろうねって約束・・・
だとしたら・・・
いや、たぶんそうだよね・・・
どうしよう、嬉しい・・・
- 318 :名無し募集中。。。:2010/04/15(木)
13:26:13.84 O
先輩のその優しさがうれしくてあたしは自然と笑顔になった
「ほーら、梨沙子は選ばないの?」
「あ!あたしこれがいい!!」
お会計を済ませて今、先輩の自転車のカゴにはたくさんの花火と、
それに負けないくらいたくさんのお菓子
「梨沙子買いすぎだよー」
「全部食べるもーん」
「いやいやそんなに食べたらまた太・・・な、なんでもないです」
- 325 :名無し募集中。。。:2010/04/15(木)
20:02:35.22 O
公園に行く前に梨沙子の家に寄ってお母さんに挨拶をした。
こないだのお礼と、今から花火していいかの許可も貰った。
梨沙子はそこまでしなくていいのにって渋ってたけど、一応ね。
まだ中学生だから。
++++
「先輩、最後にこれやろう」
散々はしゃいで笑って花火を堪能したあと、
梨沙子が最後に渡してきたのは線香花火だった。
「よしっ。やろやろ」
二人寄り添ってしゃがんで火をつける。
お互いの線香花火にシュッと小さな華が咲く。
さっきまでと違い静かな空気が二人を包んだ。
- 326 :名無し募集中。。。:2010/04/15(木)
20:42:51.61 O
線香花火に灯った小さな光が梨沙子の顔を照らす。
梨沙子は花火を、うちは梨沙子を見ていた。
「綺麗ですね」
「・・・うん」
優しく笑う梨沙子。
つらかったこの数日間、この笑顔にどれだけ救われたんだろう。
梨沙子の笑顔は色んな人を笑顔にすると思うけど、
一番笑顔にしてもらったのは間違いなくうちだと思う。
それぐらい、梨沙子はずっと側にいてくれた。
「梨沙子」
「え?」
「絶対幸せになるんだよ?好きな人と。うち何でも協力するからさ」
- 327 :名無し募集中。。。:2010/04/15(木)
21:35:11.80 0
先輩の言葉に胸がずきっと痛くなった
もう、先輩を好きになってから何度も経験しているこの痛み
「ん・・・」
でもやっぱり慣れなくてあたしは曖昧な笑顔でそれに答えた
「梨沙子の恋がうまくいきますように・・・」
先輩は線香花火の光を優しい笑顔で眺めていた
あたしはその笑顔が欲しいんだよ・・・
その笑顔をあたしに向けて欲しいんだよ・・・
きっと無意識だったんだと思う
気づいたらあたしは先輩の肩に頭を乗せていて・・・
すると隣からそっと先輩がその頭を抱き寄せてくれていた
- 328 :名無し募集中。。。:2010/04/15(木)
22:41:40.95 O
先輩の行動に少し驚いたけど、そのままゆっくり目を閉じた。
「ありがと、先輩」
こんなあたしに優しくしてくれて。
こんなあたしを大切にしてくれて。
ほんとにありがとう、先輩。
- 330 :名無し募集中。。。:2010/04/15(木)
23:01:05.08 0
肩に重みを感じて目をやると梨沙子の頭がちょこんと乗っていた
その梨沙子の表情が寂しげに見えてうちは思わず抱き寄せた
片想いって辛いよね?
泣きたくなることもいっぱいあるよね?
だけどね、梨沙子
きっときっとその恋は梨沙子を幸せにしてくるはずだから
うちはそう信じてるから
だから頑張れ、梨沙子
「ありがと、先輩」
お礼を言うのはうちの方だよ
「うちの方こそ・・・ありがとう」
- 338 :名無し募集中。。。:2010/04/16(金)
12:35:52.80 O
先輩とバイバイして部屋に入ると
そのままベッドに倒れこんで枕を抱き締めた。
さっきまでのことを思い出すだけで顔が熱くなる。
胸に手を当てるとまだドキドキいってる。
『帰ろっか』
先輩がそう言ったのは線香花火が地面に落ちて随分経ってからだった。
あたしが情けない顔でもしていたのか、先輩はずっと髪を撫で続けてくれていた。
「会いたいよぉ・・・」
さっきまで一緒にいたのにもう先輩に会いたくなってる。
つい何時間か前までは先輩の側にいていいか躊躇ってたくせに。
今じゃこんなにも先輩に会いたくなってる。
どんなに理由をつけても、どんなに自分を抑えても
結局あたしは『すき』にたどり着いちゃうんだ・・・
最終更新:2010年06月05日 03:27