- 350 :名無し募集中。。。:2010/04/17(土)
10:50:40.09 O
あまり眠れなかったけど今日も朝練だ
あたしは重い体を起こして準備を始める
その時、携帯が光っているのが見えてぱっと手に取る
《おはよ☆
昨日はありがと♪♪チョー楽しかったねぇ☆
今日から練習試合まで頑張ろうね》
夏焼先輩からの朝のメール
それだけでテンションが上がるあたしはかなり単純な奴だ
- 18 :名無し募集中。。。:2010/04/19(月)
23:56:17.71 0
いつも通りの時間にボーっと歩いていたら少し離れたところに夏焼先輩の後ろ姿
先輩は耳にイヤホンをつけて音楽を聴きながら自転車通学
そして先輩の後ろに誰も乗っていないのを見て、
あたしは愛理ちゃんと先輩が別れたことを改めて思い知らされた
「あたし、頑張ろう」
よしっと気合いを入れてあたしは先輩を追いかけた
といっても結局最後まで追いつかなかったけど。
- 19 :名無し募集中。。。:2010/04/20(火)
00:03:36.11 0
先輩が門に入った途端やっぱり周りの人たちが驚いたように先輩を見つめて
ヒソヒソと話したり嬉しそうに飛び跳ねたりしてて…
やっぱり先輩はモテるんだってことを思い知らされたような気分になる…
「よっ」
ふいに後ろから背中をたたかれびっくりして振り向くと光井先輩が立っていた
「なんや元気ないやん、どうかしたん?」
「べ、別になんでもないです」
「そう…、ならええんやけど。ってか早くしないと遅刻すんで」
光井先輩はあたしの腕を掴むと走り出した
「え、ちょっ」
- 20 :名無し募集中。。。:2010/04/20(火)
00:23:26.81 0
学校が休みの日以外で久しぶりに一人で通学した
いつもより自転車が軽くて、これからはそれが普通になっていくんだって思った
後ろにいた愛理の温かさ・・・忘れたくないけど・・・慣れなきゃいけないんだよね
校門に入るとなんだか周りが騒がしくて
今日って何かあったっけって首をかしげながら部室に入った途端、ちーと小春が駆け寄ってきた
「み、み、みや!!」
「な、なに?おはよ、ちー、小春」
「あ、あ、あ、今日・・・ひ、ひ、一人で登校したってホント?」
そう言ってうちにおもいっきり顔を近づけてくる二人
その後ろで他の部員もじーっとうちの顔を見つめている
あちゃー・・・ってか情報回るの早くない?
- 22 :名無し募集中。。。:2010/04/20(火)
00:58:09.14 0
「あぁ…まぁ…ね」
「なんで!?」
いやいや…そこ聞く?
「いや…ほら…別れた…的な?」
そう言ってわざとおどけて見せたのにちーと小春は開いた口も塞がらないと言った状態で固まっていた
「おはよーさん」
そんな変な空気を打ち切るように愛佳が部室のドアを開けた
その後ろには梨沙子もいた
「なんやみんなして辛気臭い顔して」
「いや…衝撃的すぎて…」
「また体育のあいつがウンコ漏らしたとかしょうもない話やろ」
「愛理ちゃんとみやが別れた…って…」
「はぁ!?」
愛佳まで眉間にしわを寄せたまま固まった
その後ろで梨沙子が俯いてるのが見えてうちは思わず立ち上がり明るくふるまって見せた
「そんな驚くことじゃないでしょ!ほら、出逢いもあれば別れもあるって言うじゃん?」
「でも…あんなに好き合ってたじゃん…」
「そんなの人間いつ気持ちが変わるかなんてわかんないって。いつ死ぬかもわかんないだし。
だから別に気にしてないようち」
- 24 :名無し募集中。。。:2010/04/20(火)
01:22:37.13 0
みんなの動揺した表情を見てうちはベンチの上によっ!と立った
「えー、みなさん!わたくし夏焼雅は昨日、正式に鈴木愛理ちゃんとお別れしました!
まぁ・・・うん、色々あったけど・・・楽しい思い出もいっぱいあるし・・・
忘れることは簡単にはできないんですけど・・・
しばらくそういう恋愛はいいかなって思うんで、
これからはバスケに青春を捧げて頑張ります!!!」
なるべくみんなを暗くしないように明るく宣言してみせると
あの二人が左右からわぁーっと抱きついてきた
「みやぁー!!大変だったねぇ」
「小春、言ってくれたら相談乗ったのにー!!」
「これでフリー同士、うちと仲間だよ、みやぁー!」
「小春は彼女いるけど仲間だからねー」
- 25 :名無し募集中。。。:2010/04/20(火)
01:33:07.74 0
「みんなぁ」
二人に抱きついて感動の再会といった感じ寸劇を繰り広げていると
「っで、気は済んだ?」
部室のドアに寄りかかっていたまぁが低い声で呟いた
「ちょっと、まぁ!今感動の1シーンの最中だよ!」
「はいはい、今何時だと思ってんの?」
慌てて時計を見ると朝練まであと5分
「やばっ!」
急いで着替え出すみんな
そして部室の影で俯いていた梨沙子にうちはそっと声をかけた
「りーさこっ。何そんな暗い顔してんのさ」
「だって…」
「ほら~マネージャーでしょ~。うちらを支えるマネージャーさんが俯いてたら
みんなも元気無くすよ~」
「先輩…」
「サポートお願いね」
そう言ってうちは梨沙子の頭を数回ぽんぽんと優しく叩くとみんなの輪に入り着替えを始めた
- 26 :名無し募集中。。。:2010/04/20(火)
01:43:47.49 0
先輩は愛理ちゃんと別れたことを明るく振舞ってみんなに報告した
あんなに泣いてたのに・・・
あんなに辛そうだったのに・・・
先輩はそんな素振りを一切見せなかった。
「梨沙子もはやく準備!」
ぼーっとし過ぎたせいかママに背中を叩かれてはっとする
「あ、ごめん!ママ」
「みや、別れたんだね」
慌ててジャージに着替えて追いつくとママはいきなりこんな言葉を口にした
「あ、うん・・・」
「もしかして梨沙子、知ってた?」
「・・・えっと・・・あの・・・・・・うん」
「そっか。やっぱり知ってたかー・・・」
- 28 :名無し募集中。。。:2010/04/20(火)
03:45:26.37 0
「あの時悩んでたことってみやのことだったんだ?」
「…うん」
ママは納得したように頷くといつもの優しい表情とは違う真剣な顔つきであたしを見つめた
「梨沙子はみやのこと絶対離しちゃダメだよ」
「え…?」
「みや、ああやってみんなに心配かけたくないからって平気なフリしてるけど本当は傷つきやすい子なんだ」
昨日の先輩の表情を見ればそれはすぐにわかった…
たくさんたくさん傷ついたことをあたしも間近で感じたから…
「でも昨日梨沙子がみやの傍にいてあげた…だから、あんな風におどけたり笑ったりできるんだよ」
そんなママの言葉に昨日のカラオケでの出来事とか花火のことが脳裏を過り
そこには先輩の笑った顔がたくさんあった…
「言ってる意味わかる?梨沙子」
「…うん」
「みやのこと頼んだよ」
ママはあたしの頭を優しくなでると体育館へ歩いて行ってしまった
- 31 :名無し募集中。。。:2010/04/20(火)
13:55:25.23 0
それから毎日、先輩は弱った素振りを見せることなく部活に打ち込んでいた
元気に振舞い、元気にコートを走り回る
それが逆に痛々しく映ることもあったけど、本気でバスケを頑張ろうとしているのは分かった
あたしはというと、あれ以来愛理ちゃんとまともに話すことも出来ないまま
どこか気まずい関係が続いていた
というか、あたしが愛理ちゃんを避けていた
嫌われてると思ってたし、
『先輩の側にいていいのか』ってまたネガティブに考えてしまいそうで怖かった
- 32 :名無し募集中。。。:2010/04/20(火)
13:56:11.48 0
「梨沙子、ポカリちょーだい」
「あ、はい」
朝比奈学園との試合を3日後に控えた今日、先輩はいつも通り一人で自主練をしていて
あたしはそれに付き合っていた
と言っても大したことは出来ないけど・・・
それでも毎日先輩と一緒に体育館に残っていた
『みやのこと頼んだよ』っていうママの言葉を密かに守っていた
最初の方は『暗くなるから先に帰んな』って言い続けてた先輩も
今じゃあたしが待ってることに抵抗がなくなったのか
自主練が終わると笑顔で『帰ろ』と言ってくれる
その顔が好きだった
- 33 :名無し募集中。。。:2010/04/20(火)
13:58:37.76 0
「ついにくるぞ~練習試合!」
部室で着替えながら先輩が大声出して寝っ転がる
あの、服ちゃんと着てください・・・
なるべく先輩の方を見ないで呟いた
「朝比奈、強いんですよね」
「強いよー。だって・・・・・・」
何か言いかけていた先輩の言葉が止まる
しまった!と思った時には遅かった
あの人のことを思い出させちゃったのかもしれない
「ごめんなさい・・・」と言うと「なんで梨沙子が謝んの」って笑われた
「勝ちたいな」
「勝てますよ」
「ほんとに?」
「うん。あたしは信じてる」
「そっか」
ちらっと見ると先輩はもう着替え終わっていて、寝っ転がったまま寂しそうな顔で天井を見上げていた
- 34 :名無し募集中。。。:2010/04/20(火)
14:02:14.31 0
「あのさ、梨沙子」
「うん?」
「あの、さ」
「えー?なんですかー?」
「うん・・・・あのね?もし、試合のコートにも、ベンチにも、応援席にも、めぐがいなかったら・・・
うちどうすればいいのかな・・・」
「・・・・え」
「色んなこと怖いよ。でも、めぐのいない朝比奈を見るのが一番怖いんだ
・・・・ってうち何言ってんだろ!ごめんごめんごめん!どうかしてた!」
「・・・・・・」
「ダメだー、最近。梨沙子にすぐ情けないこと言っちゃうわ。ははっ!」
そう言って腕で顔を隠す先輩
先輩の言う通り、前よりは弱音を吐いてくれるようになったけど、やっぱり涙は見せたくない人みたい
あたしはそっと先輩の隣に座った
- 35 :名無し募集中。。。:2010/04/20(火)
14:04:02.98 0
「・・・・ねぇ先輩、明日の放課後、めぐさんに会いに行きませんか?」
「え!?」
「気になってるんでしょ?ずっと」
「そうだけど・・・」
「じゃあ一緒にもう一回謝りに行きましょう」
「・・・・・でも、めぐは会ってくれないよ。きっとまた追い返される」
「それでも、行かないよりは行った方がいいと思う」
「・・・・・迷惑だよ。めぐはもううちの顔見たくないって言ったんだよ?」
自嘲的な笑いをしながら先輩は起き上がって頭を抱えた
あたしはなんとなく、愛理ちゃんから逃げてる自分とめぐさんから逃げてる夏焼先輩が重なった
- 40 :名無し募集中。。。:2010/04/20(火)
21:27:59.28 0
「・・・確かに、追い返されたり酷いこと言われたら辛いです・・・
でも、このまま何もしなくても苦しいままです。試合に勝ったって、きっとすっきりしない」
「・・・・・」
「だったら、勇気出して会いに行ってみませんか?
何か分かるかもしれないし、何か変わるかもしれない」
「・・・りさこ」
「いざとなったらあたしも一緒に怒られますから」
先輩の手をぎゅっと握った
あたしに出来る精一杯のことだった
会いに行こう、なんて
当時のこともめぐさんのことも全然知らないあたしが簡単に言えるセリフじゃないかもしれない
だけど、先輩は充分ひとりで苦しんだもん
それだけでもめぐさんに分かってほしかった
勝手かもしれないけど・・・
- 41 :名無し募集中。。。:2010/04/20(火)
21:40:40.08 0
先輩は俯いたまま少しの間悩んでいるように見えた。
その後小さな声で「ん・・・」って頷いた。
「ありがと、梨沙子」
「うぅん」
「うち・・・頑張るよ」
「うん」
それから先輩といつものように一緒に帰った
先輩が自転車を押して、あたしはその隣を歩く
自転車に乗って帰った方が早く着くはずなのに
先輩はあたしに合わせて歩いてくれた
最終更新:2010年06月05日 03:38