- 66 :名無し募集中。。。:2010/04/22(木)
20:03:37.60 0
次の日、約束通り梨沙子と一緒にめぐの所へ向かった
何回深呼吸しても鼓動は収まらない
めぐは今どうしてるんだろう
ケガの調子は?バスケはどうしてる?そもそも、無事に退院した?
それらを確かめに行くというのに、問わずにはいられなかった
こんなうちの足を動かしてる原動力は、勇気とかそんなんじゃない
心の奥に仕舞ってた『めぐに謝りたい』っていう気持ちと隣を歩く梨沙子の存在
それだけだ
梨沙子はうちに気を遣ってるのか、さっきからあまり話しかけてこない
それでも目を合わすと優しく微笑んでくれる
普段は頼りない奴だけど、梨沙子は本当はすごい強い子なんだって思う
だって、隣にいてくれるだけでこんなにも心強い
- 77 :名無し募集中。。。:2010/04/22(木)
22:12:22.63 0
朝比奈学園に向かう間、先輩はいつもみたいに話さなくて
ゆっくり自転車を押しながら歩いた
あたしはそんな先輩にどんな言葉をかければいいのかわからなかった
ねぇ、先輩?
あたしね、先輩がもしめぐさんと話をすることができたら・・・
あたしも愛理ちゃんから逃げないように頑張るよ
それからね?愛理ちゃんにちゃんと言おうって思ってるんだ
「夏焼先輩のことが好き」って。
- 83 :名無し募集中。。。:2010/04/23(金)
12:31:07.41 0
朝比奈の正門前に着いた
放課後の校庭にはまだ学生がたくさんいて、違う制服を着てるうちらは当然好奇の目で見られる
その視線に耐えれなくて思わず俯いた
この学校の生徒全員がうちを憎んでるんじゃないか・・・・
そんなことまで考えてしまい、もの凄く怖くなった
でもうちはもう逃げない・・・逃げないって決めたんだ
めぐが許してくれるかは分からないけど
どうしても伝えたいことがあるから・・・
「先輩、バスケ部の部室どこにあるか知ってる?」
「前に試合で来たことあるから分かるけど・・・他校にズカズカ入るのはあれだよね・・・」
- 84 :名無し募集中。。。:2010/04/23(金)
12:32:22.57 0
どうしようかと困っていると、
少し離れた水道場からジャージを着た女の子がこちらをじっと見ているのに気付いた
目が合った気がしてうちはすぐに逸らしたけど
もう一度ちらっと見るとその子はまだうちらを見てる
え・・・なに?誰?
考えてる間にその子はうちらの方に歩いて来た
「あの、もしかして・・・夏焼さんですか?」
その子はうちらの前まで来ると遠慮がちにうちの名前を呼んだ
梨沙子が小声で「知り合いですか?」と聞いてくるけどうちはびっくりしすぎてそれどころじゃない
大きな目、小さな背、黒髪、整った顔
頭をフル回転させて考える
この子・・・確かどこかで見たことある・・・
確か・・・確か・・・
- 85 :名無し募集中。。。:2010/04/23(金)
12:34:06.00 0
「・・・・あ!!確かっ、バスケ部の!!」
「はい。マネージャーの有原です」
思い出した
この子、朝比奈バスケ部のマネージャーさんの、有原さんだ
めぐと仲良い後輩で・・・うちは話したことないけど、いつもめぐの側にいた子だから覚えてた
有原さんはうちと梨沙子を交互に見て
驚きつつも笑顔を向けてくれた
「びっくりしましたよー。こんなところで何してるんですか?」
「あ、えっと・・・」
言わなきゃ・・・聞かなきゃ・・・拳をぎゅっと握りしめる
隣から「がんばれ」って梨沙子の声が聞こえた
- 101 :名無し募集中。。。:2010/04/24(土)
14:48:52.90 0
うちは有原さんの目をちゃんと見た
「あのさ・・・めぐ・・・村上さんに会いに来たんだ」
「あー・・・」
うちがそう言った瞬間天を見上げる有原さん
「ごめん、ただ、めぐにもう会って話がしたくて
今週の練習試合の前に一度だけ」
「・・・めぐさん、今日はここにいないです」
「え・・・?」
「病院です」
有原さんは持っていたノートを一枚破ると住所と病院の名前を書いて渡してくれた
- 106 :名無し募集中。。。:2010/04/24(土)
23:03:07.89 0
―――病院・・・
その言葉がうちの胸に突き刺さる
まさか今も・・・あれからずっと・・・めぐは入院してるの・・・?
嫌な予感が胸をよぎる
「ありがとう・・・行ってみます」
とりあえず行ってみないと分からない
有原さんに頭を下げて病院に向かおうとしたその時
有原さんが小さい声で呟いた
「・・・あなたを、ずっと待ってましたよ」
「え?何か言った?」
「いえ何も。それじゃ」
有原さんはそれだけ言うと中へ戻ってしまった
聞こえるようにもう一度お礼を言うと、振り向いて笑ってくれた
- 108 :名無し募集中。。。:2010/04/24(土)
23:27:44.25 0
「行こっか」
先輩はじっとそのメモを見つめた後、顔を上げるとあたしを促した
「はい」
あたしは小さく返事をして先輩の隣を歩く
「ねぇ、梨沙子?」
「はい?」
「なんかごめんね。付き合わせちゃって」
「いえ、そんなことないです」
「病院も遠いみたいだからきっと帰るのすごく遅くなっちゃうよ」
そう言って先輩はあたしにすごく気を遣ってくれる
やっぱり優しい夏焼先輩・・・
あたしの大好きな夏焼先輩・・・
あたしが大丈夫ですって答えると、とりあえず家の人にちゃんと言わなきゃって
先輩はあたしの携帯からお母さんに了承を取ってくれた
- 122 :名無し募集中。。。:2010/04/26(月)
01:54:32.98 0
定期の検診は問題なし・・・か。
でも、復帰まではまだかかる。そう、簡単じゃないよね。
焦ったってしょうがない。気長に行くしかない。
そうだ、冬の大会には出なくちゃ・・・それまでになんとか・・・・。
「はぁ。戻って顔だけ出すか、もう帰るか・・・どうしよう」
診察を終えて、名前が呼ばれるまでの間、私はロビーで考えていた。
みんなの顔見たい気もするけど、戻ってもどうせ練習は終わりかけの時間だし。
素直に帰ろうかな。
「・・・めぐ」
後ろから呼ばれた気がした。でも、勘違いかな?
・・・いやでも呼ばれたかな?
首を傾げながら振り向くと、そこには見覚えのある人が立っていた。
私がここに来なければいけなくなった理由を、作った人。
「みや・・・」
と、その隣に同じ・・・いや、ちょっと違うか?制服を来た可愛らしい子がいた。
みやのブレザーの袖をぎゅっと握ってる。なんて、可愛い子だろう・・・。
みやより、そっちが気になってしばらくぼーっとしていた
- 123 :名無し募集中。。。:2010/04/26(月)
02:52:15.43 0
気が付いたらみやが目の前まで来ていた
「めぐ・・・久しぶり」
「・・・うん、そうだね」
みやは気まずそうな表情をあたしに見せた
まぁ、そうだよね。あたし、みやにあの日、かなりひどいこと言ったし・・・。
「あのさ、その・・・めぐが・・・こっちの病院に来てるって聞いたからさ」
「そうなんだ」
「うん」
やっぱりお互い気まずくてなかなか会話にならない
そんなあたしたちの会話中ずっとみやのブレザーの袖を握って泣きそうな顔をしている女の子
みやの彼女・・・?いや、愛理ちゃんはこんな顔じゃなかったはず・・・
じゃあ誰?
- 124 :名無し募集中。。。:2010/04/26(月)
03:22:02.01 0
「そっちの子は?」
「あ、あぁマネージャーの…「菅谷梨沙子です」」
言いかけたみやの言葉をさえぎりそう答えた女の子
やっぱり愛理ちゃんではなかった
「そう…。っで、何の用?」
「あの日…あの日のことちゃんと謝りたくて…」
謝りたい?
今更?
それにあれは自分のせいじゃないことくらいみやだってわかってるのになんで?
そんな思いが募りあたしは思わずみやを突き放した
「なにそれ…今更?」
「ごめん…なさい…」
「あたしは…!あたしは…謝ってほしいなんて思ってない…」
「めぐ…?」
「あたしはただ…あの日のリベンジがしたいだけ…。だから、みやにはバスケ続けてて貰わなきゃ困るんだよ…」
- 133 :名無し募集中。。。:2010/04/26(月)
22:05:41.83 0
「めぐ…」
そういって背を向けためぐの肩は少し震えていた…
悩んでたのはうちだけじゃないんだ…
大好きだったバスケが出来なくなって
部活でも見てるだけの辛さ…
きっとうち以上に心も体も傷ついてた…
「めぐ。足はもう大丈夫なの?」
「え、あ、うん。次の試合にはたぶん間に合うだろうって…」
「じゃあ次の試合待ってる…」
うちがめぐに償えるのはきっともう一度試合をすること…
それしかないんだ…
そう呟いたうちの声にめぐは小さく微笑んだ
「次は絶対負けないから」
- 134 :名無し募集中。。。:2010/04/26(月)
22:41:15.79 0
「うん」
「だから、あんたも頑張んなさいよ?
次試合した時、あたしをがっかりさせないでよね」
めぐはそう言って不敵な笑顔を浮かべた
やっぱりめぐは変わってない
いつでもうちより少し大人で、うちより少し前を歩くめぐ
「あ、それから今週の練習試合。あたし見に行くから」
「ホント?」
「当り前でしょ?あたしは朝比奈の部員なんだから」
「そっか」
「あんたも彼女、愛理ちゃんだっけ?あの子連れてくるんでしょ?
バスケは半人前のくせに恋人だけは一人前に先に作るんだから、もう嫌になっちゃうよね」
はぁーっとため息をつくめぐをうちは苦笑いで見るしかなかった
- 135 :名無し募集中。。。:2010/04/26(月)
22:54:20.46 0
「先輩…」
その話を聞いていた梨沙子がうちの服の裾を引っ張り
心配そうな顔で見つめていた
「それなのにこんな可愛い子引き連れて、余計ムカつくよ」
めぐは笑いながらうちの後ろに隠れてた梨沙子に近づくと
そっと手を差し出した
「あたし村上愛よろしくね」
「あ…、よろしくおねがいします!」
- 136 :名無し募集中。。。:2010/04/26(月)
23:02:18.25 0
あたしの手を握る菅谷梨沙子ちゃんはやっぱりすごく可愛かった
みやにははっきり言ってもったいなすぎる程素敵な女の子だと思う
「でもホントめぐと話せてよかった」
みやはソファーにどさっと腰を下ろした
「あたしも、あんたにひどいこと言ったから謝りたかった」
梨沙子ちゃんの手を離してそばの松葉杖を手に取る
「今はこんなんだけどあたし、バスケ諦めてないから
だから、あの時はごめん」
あたしがそう言った途端みやの瞳から一粒涙がこぼれた
- 137 :名無し募集中。。。:2010/04/26(月)
23:21:31.21 0
「・・・・あたしは大丈夫だよ、って。
心配すんなよって、ホントはずっとみやに言いたかった。
けどあたしこんな性格だし、あんなこと言ったあとだからあたしから会いに行くことも出来なくて・・・
だからリハビリ頑張った。元気な姿見せることが一番みやを安心させれるんじゃないかって思ったから。
あたし言葉にするのとかさ・・・ほら、苦手だから・・・」
「・・・・・・」
「だから、さっきも言ったけど・・・みやはもう謝んないでいい。
その代わり、あたしが復帰するまで、強いみやのままで待っててよ」
静かに涙を流していた夏焼先輩が、顔を手で覆って泣き崩れた
それを見てなぜかあたしも号泣した
めぐさんはそんなあたし達を見て思いっきり吹き出した
今日初めて会っためぐさんの印象
口調はぶっきらぼうで、少しきついけど、笑うと可愛い人
陰で夏焼先輩のことをちゃんと考えてくれてた、とっても優しい人
- 138 :名無し募集中。。。:2010/04/26(月)
23:33:20.93 0
涙が溢れて止まらない
心に引っかかってた棘が抜けたような気がした
めぐは松葉杖を使ってうちの横に来ると、隣に座って小さく呟いた
「あんたに勝つ!ってこと目標にしたらさ、不思議とリハビリきつくなかった」
きつくないはずないのに・・・
絶対つらかったはずなのに・・・
そう言ってくれるめぐに余計涙は止まらない
ホント、めぐ変わってないや・・・
口調はきついけど実は優しくて・・・超が付くほどの負けず嫌い
うちがうじうじしてる間にも、めぐは前に進んでたんだね
- 139 :名無し募集中。。。:2010/04/26(月)
23:35:53.96 0
「ほーら、いつまでもこんなところで泣いてたらあたしが泣かしたって思うでしょ」
めぐさんは先輩とあたしの頭を両手でガシガシと撫でた
「いた・・・めぐ、力強いよ・・・」
「ごめんごめん、足の代わりに上半身は強くなったからね」
「梨沙子ちゃんもいつまでも泣いてちゃ可愛い顔が台無しだよ」
「えっ」
いきなりのめぐさんの言葉に思わず顔を上げるとめぐさんの優しい笑顔
「なぁんてね」
「梨沙子、めぐはとっても悪い奴だから騙されちゃダメだよ」
「みやに言われたくありませーん」
- 146 :名無し募集中。。。:2010/04/27(火)
19:57:42.61 0
それから3人でしばらく話してて、あたしも帰るわというめぐと一緒に病院を出た頃には
外はすっかり真っ暗になっていた。
「それじゃ、試合で」
別れ際、痛いぐらい強くハイタッチをしたうちらに多くの言葉はいらなかった。
「ねー先輩」
「んー?」
「星が綺麗」
「ほんとだ」
いつも通りうちは自転車を押して歩く。梨沙子もいつも通りうちの左隣りを歩く。
もう遅い時間だけど、梨沙子のお母さんには遅くなるって言ってあるし、
今日ぐらいこうやってのんびり星を眺めながら歩くのも悪くない。
めぐと仲直り出来て気分は最高。もうちょっとこの余韻を堪能していたい。
すると梨沙子が隣でゴソゴソし始めた。
「あーんして」
自転車のせいで両手が塞がってるうちの口元に何かを持ってきた。
- 147 :名無し募集中。。。:2010/04/27(火)
19:59:43.40 0
「飴だ」
「あげる。先輩がんばったからご褒美」
舌を転がせば口に広がるりんご味。
どっちかと言えばうちが梨沙子にご褒美あげたいぐらいなのに逆に貰っちゃった。
どうしよう、うちも梨沙子に何かあげたい。
ポッケを探ると一個キャラメルが入ってた。これでいいや。
「りさ・・・「先輩、あたしも頑張るね」
「・・・・何を?」
「あたしも、喧嘩?っぽいことしちゃった子がいて。あ、先輩は知らない子ですよ?
その子とちゃんと話してみようかなって。その子、とってもいい子だから、仲直りしたいの」
「そっか・・・」
梨沙子はうちの手からキャラメルを奪うと口に放り込んだ。
梨沙子の横顔は、笑ってるけど少し切なさを含んでるようだった。
153 :名無し募集中。。。:2010/04/27(火)
23:09:51.55 0
今日の先輩とめぐさんのことを見てあたしは決意した
明日、ちゃんと愛理ちゃんと話そうって
いつまでも逃げてちゃダメなんだ
ちゃんと先輩のこと好きって愛理ちゃんに言おう
応援してくれるってことはないだろうけど、
あたしは本当に先輩のこと大好きだし、
それに愛理ちゃんのこと大切な友達だって思ってるから・・・。
だから、正々堂々と自分の気持ちを伝えたいんだ
- 16 :名無し募集中。。。:2010/05/05(水)
20:10:28.33 0
「今日はありがとう。梨沙子がいてくれてよかった」
「そんな、あたしなんて・・・」
いつものようにあたしを家の前まで送ってくれる先輩
「うち、バスケ頑張るよ。だからさ、梨沙子もその・・・ケンカ?っぽいことしちゃった友達とさ、
仲直り、頑張れ」
そう言って先輩はあたしの頭を優しく撫でてくれた
「じゃあまた明日、学校でね」
先輩は自転車に乗ると少し行ったところで振り返って軽く手を振って走って行った
あたしはその先輩の背中を見えなくなるまで見送った
- 67 :名無し募集中。。。:2010/05/09(日)
13:35:13.16 0
部屋に入るとそのままベッドにごろんと寝転がった
制服に皺がいっちゃうって思ったけど体は思い通りにいかなくて
目を閉じて今日のことを思い出していた
勇気を出してめぐさんと話し合った先輩
バスケ頑張れって先輩に厳しいけど優しい言葉をかけためぐさん
二人の関係がお互いを認め合っているようでとても羨ましかった
あたしも明日頑張るから
先輩が頑張れって言ってくれたから・・・
最終更新:2010年06月05日 03:45