- 217 :名無し募集中。。。:2010/05 /18(火)
22:44:51.48 0
りーちゃんに背中を押されてあたしは久しぶりにみやの目の前に立った
「み や・・・」
「久しぶり、愛理」
そう言ったみやはあたしの大好きな優しい笑顔を浮かべていた
「うん」
「元気だっ た?」
「うん」
「ならよかった」
「さっきさ、梨沙子から聞いたよ」
「え?」
「仲良くなったんだって?梨 沙子と。」
「・・・うん・・・あたし、あんなひどいこと言ったのに・・・許してくれて・・・」
「それは愛理のせいじゃないでしょ?うちに だって責任あるんだし」
みやは少し苦しそうに顔を歪めた
- 232 :名無し募集中。。。:2010/05/19(水)
22:18:59.21 0
「ねぇ ママ・・・」
「んー」
「あたし、夏焼先輩も、愛理も大好きなんだ・・・」
「うん」
「なのにどうしてこんなに切ないのか なぁ・・・」
しばらく泣き続けていた梨沙子がぽつりぽつりと話しだした
あたしは本当のお母さんのような気分でそれを聞いていた
「分 かるよ、梨沙子の気持ち」
みやの恋、愛理の恋、自分の恋
重なることのない3人の幸せ
どれかが叶えばどれかが崩れる
そ れがつらいんだよね
ホントは全部叶えばいいんだけどね、
誰も傷付かない恋愛ってないのかもしれないね・・・
「あたし、ど う頑張っても愛理にはなれないけど・・・・・・」
「愛理にならなくていいんだよ」
「え?」
「梨沙子は梨沙子のいい所があるんだか ら。愛理と違くていいんだよ」
- 233 :名無し募集中。。。:2010/05 /19(水)
22:35:24.06 0
二人の間に少し重い空気が流れる
「ね、ねぇ!みや?」
あた しはそれが耐えきれなくて話題を変えるようにわざと明るく声を出してみた
「ん?」
「バスケ!楽しい?」
「何?いきなりー」
「だっ てみやといえばバスケじゃん?」
「何それ?うちはバスケ以外なんもないって言いたいのかー!このこのー」
みやはあたしの頬を両手でぐりぐ りしてくる
「痛い!痛いってば!」
「ごめんごめん。頑張ってるよ」
「そっか」
「そういえば今週の土曜日、練習試 合あるんだよね
だから最近は遅くまで練習。
梨沙子なんてまだ中学生だからあまり遅いと心配なんだけどね、
いつも最後まで残ってく れてる」
そうやってりーちゃんのことを話すみやの顔はやっぱり優しい
「ちゃんと送ってあげてる?」
「まぁね。家が割と近 いからさ」
「自転車・・・後ろ・・・乗せてあげたり・・・?」
その言葉にみやは一瞬固まったけど、すぐにうぅんと苦笑した
- 242 :名無し募集中。。。:2010/05/20(木)
17:48:39.12 0
「なんかね、空けちゃってるんだ・・・ってごめん、重いよねこんなこと言われても」
そ う言ってまた寂しそうにみやが笑う
自分を責めているように
あたしは今日、いや今日までの間にどれだけこの悲しい笑顔をみやにさせたんだろ う
ほんとは『みやは悪くないよ』って
『もう、何も気にしないでいいよ』って言いたい
でもそんな、優しさとは程遠い言葉をかけるこ とはやっぱり出来ない
受け止めるなら受け止めて
突き放すなら突き放す
中途半端な言葉はみやを余計に傷付けるかもしれない
み やだけじゃない・・・りーちゃんも、えりかちゃんも・・・
「みや、聞いて?」
「ん?」
「もうあの約束忘れて」
驚 いた目をするみやを見つめて、もう一言ぶつけた。無理やり微笑んで
「あたしはもう、あそこには乗らない」
- 244 :名無し募集中。。。:2010/05/20(木)
17:59:21.96 0
みやはしばらく無言だったけど、その後受け止めたかのように小さく頷いた
「分かっ た」
そう言って笑うみや
あたしも小さく頷いて、もう一度みやを見つめた
「あたし、いっぱいわがまま言ったり、傷 付けたり・・・困らせてばっかりだったけど
みやと過ごせて本当に幸せだったよ」
「愛理・・・」
「だから、また誰かを幸せにしてく ださい」
そして・・・誰よりも幸せになってください
それが、自分勝手にみやを振り回したあたしに出来る最後の願いだか ら・・・
- 247 :名無し募集中。。。:2010/05 /20(木)
20:59:43.26 0
「じゃあうちからも愛理にお願い」
「なぁに?」
みやのお願 い・・・?あたしにみやがお願いするなんて
「朝比奈との試合、見に来て?」
「え・・・?」
「うち、頑張るから。夏のあの 日の試合みたいにかっこ悪いプレーはもうしない」
「みや・・・」
「愛理に見てほしい・・・」
- 248 :名無し募集中。。。:2010/05/20(木)
21:09:20.26 0
「・・・いいの?」
「いいも何も。来てくれたら嬉しいよ」
―――先輩絶対 喜ぶよ
りーちゃん・・・
りーちゃんが言ったこと、本当だった・・・
「分かった・・・約束、したもんね。応援に行 くって」
「うん」
「ありがとね、みや」
変わらず普通に接してくれて
優しく接してくれて
ありがとう、みや
- 249 :名無し募集中。。。:2010/05/20(木)
21:19:14.24 0
「お礼を言うのはうちの方だよ」
みやはうーんと両手を上にあげて伸びをする
「愛 理と付き合えてよかった。うち、最高に幸せだったから」
「みや・・・」
「うちさ、また恋愛頑張ってみるよ」
「え?」
「愛 理以上の子なんてなかなか見つからないと思うけどさ」
みやはいたずらっぽく笑って見せた
うぅん、みや、あたしよりももっと、もっ と素敵な子・・・ちゃんと近くにいるよ?
誰よりもみやのことを想ってて・・・
素直で、優しくて、頑張り屋さんで・・・
だ からね?その子にあたしの特等席だったみやの自転車の後ろを譲りたいんだ
- 250 :名無し募集中。。。:2010/05/20(木)
22:15:32.97 0
そ んなことを考えてると、みやの手が伸びてきてあたしの頭をぽんぽんする
「愛理、梅田さんと仲良くやるんだぞー」
「・・・っ!」
突 然出たえりかちゃんの名前にドキっとした
「で、うちとも仲良くしてよね」
「・・・・・」
「え?だめ?」
「・・・・ いや、みやって超がつくお人好しだよなって思ってさ・・・」
「そうかな?」
「そうだよぉ」
「だってせっかく出会えたのにさ。他人 に戻るなんて悲しいじゃん」
「・・・・・」
「愛理が普通に話してくれて嬉しかった」
- 251 :名無し募集中。。。:2010/05/20(木)
22:17:12.32 0
み やはそう言って照れくさそうに頭を掻いて、はにかんで笑った
あたしも胸が温かくなって思わず笑った
「ねぇ愛理?いいこと教えてあ げよっか」
「なに?」
「人ってね、悲しくて36回泣いても、64回笑えるんだよ」
「え?それなに?」
「あんね。一生が 100なら、はははって笑うことは64回あって、しくしくって泣くことは36回あるんだって」
「え?ははは?しく?・・・あぁ!4×9で 36・・・64・・・そうゆーことかっ」
「お。さすが頭の回転速いね~。
ま、何が言いたいかとゆーと、これからつらいことがあってもまた 笑えるようになるってこと!
・・・ってこれ、梨沙子が教えてくれたんだけどね」
- 252 :名無し募集中。。。:2010/05/20(木)
22:26:58.18 0
み やから聞くり―ちゃんの話。
あの頃はそれが嫌で仕方なかったのに、
今はなんだかそれが心地よく感じるのが不思議・・・。
「ねぇ? みや?」
「ん?」
「みやもちゃんと恋、してね?
きっとみやが好きになってくれた子は幸せ者だと思うから」
「えー、そうか なぁー・・・まぁ頑張るよ」
それからみやは飲んでいた紙パックを少し離れたゴミ箱にシュート
一発で中に入ったのを見届けてやっ たーって喜ぶみやが相変わらずで思わずあたしは吹き出してしまった
最終更新:2010年06月05日 04:01