86.名無し募集中。。。:2010/06/16(水) 02:25:30.34 0

「ママ!ごめん!あたし…」
せっせと片づけをしていたママの背中にそう叫ぶと
ママはゆっくり振り向き微笑んだ
「おかえり。大丈夫?」
「うん。あたしも片づける」
置いてあった給水器を持ち上げるとママはそれを優しく奪い取った

「今日はもう疲れたでしょ。先帰っていいよ」
「でも…!」
「大丈夫。あとこれとこれ片づけるだけだから」
そう言ってくれたママだけど朝からほとんど何もしてないのに申し訳なくて動けないでいると
ママはあたしの背中をぽんっと押して夏焼先輩を呼んだ

「みやー。もう暗いし梨沙子送ってあげてー」
「え!?ちょっ…!」
「梨沙子、あたしさ熊井ちゃんと一緒にいたいの。わかる?」
「…う、」
そう言われると言い返せないのきっとママは知っている…
だって邪魔しちゃ悪いって思っちゃうもん…
しぶしぶ後の仕事はママにまかせあたしは先輩のほうへ駆け寄った
「帰る?」
「はい…」
「じゃあちょっと待って。着替えてくる」
ぽんぽんと優しくあたしの頭を数回叩くと先輩は更衣室へと走って行った

 

98.名無し募集中。。。:2010/06/16(水) 22:25:29.41 0

「あー・・・なんかお腹減ったなぁー」
「そうですねー」
なんてことない話をしながら着替え終わった先輩と並んで駐輪場まで歩く

「あ、ちょっと自転車取ってくる。校門のところで待ってて」
「は、はい!」

先輩に返事をしてからあたしは校門にもたれかかる

ポケットから携帯を取り出そうとすると一緒に一枚のメモが手に当たる
「あ、そういえば・・・めぐさん・・・」

連絡してって言ってたっけ・・・?
まぁいっか・・・家帰ってからにしよう

「梨沙子、お待たせ!」
メモをポケットにしまったと同時に先輩が自転車に乗ってあたしの前まできた
106.名無し募集中。。。:2010/06/17(木) 14:48:53.25 0

「全然待ってないですよっ」
笑いながら先輩に応える

先輩はとても優しい顔であたしを促した
「梨沙子~・・・後ろ、乗って」
「はい?」
「だから・・・そこ。うちの後ろ」
「何、言って・・・?」

だってそこは・・・

「もーっ!いいから!!先輩命令!!うちの後ろに乗って!」
「え?でも・・・」

ここは愛理ちゃんとの大事な約束・・・・・

先輩は苦笑しながら
「あー・・・それ、さ・・・もう無かったことにしてほしいって」
少し淋しそうにでもなんだか吹っ切れたような顔。
「でも、だからって誰でも乗せるワケじゃないよ?」
「・・・」
「梨沙子だから乗せるんだからね?」

あたしだから?

「・・・いいから、ホラ乗る!」
「は、はい・・・」
107.名無し募集中。。。:2010/06/17(木) 14:54:50.70 0

「うちにしっかりつかまっててね」
「・・・は、はい!」

ドキドキする
先輩の自転車に二人乗り・・・
先輩を後ろから抱きしめるなんて・・・そりゃドキドキしちゃうよ~!!


先輩の漕ぐ自転車は凄い速さでグングン進む。
ずっと愛理ちゃんだけの特等席だった場所。


『梨沙子だから』


・・・どういう意味だろう?
あたしがドジだからって意味かな?
よくわかんないけど風が気持ちよかった。

「あー!」
「どうしたんですか先輩!?」
「どこ行くか決めてなーい!」

ガクッ!!

そうだこういう人だった・・・
でも先輩のそういうところも好き。

「あたしはどこでもいいですよー」
先輩と一緒なら・・・
112.名無し募集中。。。:2010/06/17(木) 20:50:21.95 0

結局行き先は先輩に任せて、あたしは周りの景色をぼんやり眺めていた。
・・・・なんてうそ。さっきから先輩の背中をガン見してる。
だって、もしかしたら乗れるの今日が最初で最後かもしれないし。
今のうちにこの場所からの先輩をちゃんと見ておこうって思う。

「いやー。それにしても日沈むの早くなったね」
「もう秋ですからねー。すぐ真っ暗になりますよ」
「ま、うちの後ろに乗ってれば帰り暗くても安心っしょ」

・・・・あれ?今さりげなく『これからも後ろ乗っていいよ』って言われたよーな気が。
気のせいかな?

「テスト期間中とかだと、うち補習とか追試多いから待たせるかもしんないけど」
113.名無し募集中。。。:2010/06/17(木) 20:52:22.89 0

えーっと。あれ?
なんか今の・・・あたしの耳には
『部活がなくても一緒に帰ろう』って風に聞こえちゃったんですけど・・・
さっきからどうしたんだろ。勘違い???
返事も出来ないまま数秒前の会話を脳内でエンドレスリピートしていると

「・・・梨沙子。今うちのことバカだって思ってるでしょ」
「んえ?いやバカなのはとっくに知っ「へぇーそゆこと言う」
「ちょっ!!危ない先輩!!」

わざと変な走行してあたしを落とそうとする2こ上のお姉さん。
ほんとに落ちそうになって一瞬先輩のお腹に回してた腕を離すと
「ほら、しっかりつかまってないと」
ばっとあたしの腕を掴んで強引に元の場所に戻した。
なんか矛盾してますよー。
でも文句を言う元気がない。心臓は元気だけど。
114.名無し募集中。。。:2010/06/17(木) 20:55:39.08 0

それよりも・・・さっきの話・・・

「あの・・・先輩」
「んー?」
「さっきの話ですけど・・・」
「うん」

「・・・・・・・部室で、待ってればいいんですかねぇ?」

先輩が補習の日とかは・・・

小さい声でそう続ける。
なんだなんだこの気分。合格発表待ちしてるみたいな気分だ。
ほんとに心臓壊れるんじゃないかって真面目に心配してるあたしに届いたのは


「うん」


先輩の優しい声だった。

あぁ。やっぱり勘違いじゃなかった。
115.名無し募集中。。。:2010/06/17(木) 21:36:20.85 0

先輩の声を聞いてあたしは思わずぎゅっと腰に抱きついた

あまりにも予想していなかった展開に頭がついていかない
だけど心臓はしっかりとドキドキしていて・・・

きっと、先輩はこれから暗くなるのが早くなるから心配してくれてるだけだと思う
だけど、それでも、これからずっとこうやって一緒に帰ってくれるって言った
どんな理由であってもそのことがすごく嬉しかった

「ねぇ、梨沙子ー?」
「はい」

「たこ焼き、食べにいこっか」
124.名無し募集中。。。:2010/06/18(金) 02:25:02.98 0

「たこ焼きですか?」
「うん。美味しい店知ってるんだ」
一瞬振り返ってそう微笑んだ先輩にあたしは「はい」と返事をすると
もう一度先輩のお腹に腕を回し少し華奢な背中にそっと寄り添った

背中感じるのは温もりと小さな心臓の鼓動
とくんとくんと脈打つその音はあたしの心臓の音と重なり
綺麗な音色をたてているようだった

愛理ちゃんはいつもこの背中を見て
この温もりを感じてこの鼓動を聞いてたんだよね…
あたしの知らない夏焼先輩をきっといっぱい知ってる
でもこれからはそれを少しでも見つけることができたらって…
ちょっとくらい期待してもいいんだよね?先輩…

「はい、到着!」
「あ、ありがとうございます」
慌てて自転車から降りたあたしに先輩は籠に入ってたカバンを渡すと
「いえいえ」と自転車から降りてすぐそばにその自転車を止めた
142.名無し募集中。。。:2010/06/19(土) 01:06:42.04 0

「梨沙子そこ座ってて」
あたしを席に促して先輩は一人おじさんのところに行こうとする
「え、いいですよ!あたしも行きます!」
「まぁまぁいいから」
そう言って先輩はあたしの頭にマンガをポンと乗せた

「おじちゃーん!たこ焼き2つ」
「おー!みやびちゃん久しぶりじゃないかぁー」
なぜかたこ焼き屋のおじさんと仲良しの先輩を見てふふっと笑みがこぼれた
最終更新:2010年08月11日 01:41