175 :名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 13:33:20.16 0

思わず大声を出して取り上げてしまった。
だってびっくりしたんだもん・・・先輩があの紙を持っていたから・・・

「あ・・・えっと」
「・・・・・・・」

なんて言っていいか分からず先輩の方を恐る恐る見ると、
先輩は何か言いたそうな目であたしを見ていた。
そうだよね・・・今のあたしの行動は明らかにおかしい。
でも、めぐさんに秘密って言われたから・・・なんとなく条件反射で隠しちゃったんだもん・・・

「・・・・・・いひ」
「いひじゃないよ。何、それ梨沙子のだったんだ」
「あー・・・はい」
「なんなの?それ」
「え?」
「番号とアドレス書いてあったじゃん」
176.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 13:52:53.50 0

「あー・・・まぁ・・えっとー」
「誰の連絡先?」
先輩はあたしを真っ直ぐ見つめてくるからどぎまぎしてしまう

「あーっと・・・その・・・知り合いの・・・その・・・」
「知り合い?・・・んーそうなんだ」
あたしの答えに先輩は納得したのかしてないのかよくわからない顔でたこ焼きに視線を移した

「はい・・・」
「ちょ、何で元気なくしちゃってるの?ほら、たこ焼き食べよ?冷めちゃうからさ」
177.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 14:33:53.22 0

梨沙子の様子がおかしいのでつい色々と突っ込んで聞いてたら
なんか気まずい雰囲気になっちゃって慌てて話題をたこ焼きに戻した。

梨沙子・・・なんでそんな必死に隠すんだろう。
知り合いとか言ってるけど、どう見ても誰かに渡されたんじゃん。そのアドレスと番号。

はぁ・・・どこの誰だよ・・・いつの間に渡したんだか・・・

・・・てか、本当にそうだとしたら
その「誰か」は梨沙子に気があるってことだよね。

・・・・・・・・。


なんだろう、モヤモヤする
182.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 19:00:58.48 0

「先輩?」
「…え?」
ふいに梨沙子に呼ばれ顔をあげると残り一つのたこ焼きを持ってニヤニヤとこっちを見つめていた

「ぼーっとしてるのがいけないんですからね」
「ちょっ!あー!」
大きく口を開けて残り一つのたこ焼きを頬張ろうとしている梨沙子の腕を
うちは咄嗟に掴むと身を乗り出しそのたこ焼きを頬張った
「あっ…」
「へへっ。残念でしたー…」

気付いたらすぐ目の前に梨沙子の顔があって
時間が止まったかのように二人で見つめ合っていた
「…っごめん」
慌てて梨沙子から離れ自分の席につくと梨沙子は
「いえ…」と小さな声で呟き俯いた
184.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 19:38:39.99 0

あたしが不自然にめぐさんのことを隠したせいで少し気まずくなっちゃったけど
先輩はすぐにいつもの調子で話しかけてくれた。

食べるのを再開してふと先輩を見ると、何か考え事をしてるみたいだった。
顔は真剣なのに片手にはたこ焼きを持っていて、なんだかアンバランスでニヤニヤしてしまった。

「ぼーっとしてるのがいけないんですからね」
「ちょっ!あー!」

でもそれがいけなかったのか、最後の一つを先輩に食べられた。
うー・・・それ食べたかったのに・・・。


でも次の瞬間、そんなことは綺麗に吹っ飛んだ。

先輩の顔があまりにも近かったから。

「…っごめん」

しばらく見つめ合ったあと先輩はそう言って離れて行った。
今食べたたこ焼きが全部出るんじゃないかってぐらい心臓がドキドキしてる。

・・・だって、キスされるかと思った・・・。
188.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 19:58:45.14 0

結局心臓のドキドキが治まらないまま、二人でたこ焼き屋さんを後にした。
お互い口数が少なくて、でも嫌な沈黙じゃなくて。
先輩は行きと同じようにあたしを自転車のうしろに乗っけてくれた。

「ねぇ、梨沙子」
「・・・はい」
「もうちょっと一緒にいよっかぁ」


辿りついたのは公園。
先輩と何度も来たことがある場所。
さっきのたこ焼き屋の賑やかさはもちろんなく、静寂に包まれている。

「ベンチいこ」
「はい」

街灯ひとつと、星の光ぐらいしかあたしたちを照らすものはないけれど、先輩が一緒だから怖くはなかった。
むしろ二人だけの世界みたいで心地よい。
なのに、怖いという理由をつけて手を繋いでもらうあたしは相当卑怯な奴だ。
192.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 20:36:48.03 0

先輩と並んでベンチに座った
だけどあたしは何を話していいかわからなくてずっと下を向いていて
こそっと隣を盗み見ると先輩はボーっと空を見上げていた

「明日も晴れそうだなぁー・・・」
「え?」
「星、超いっぱい出てる」
そう言った先輩の横顔がすごく優しくてあたしはつい見惚れてしまう

「もっと頑張らなきゃな、バスケ」
「・・・はい」
「もうすぐ大きな大会始まるし・・・クリスマスまで全力疾走だなぁー」

クリスマス・・・
去年まではちっとも興味がなかった
だけど・・・今年は・・・こうやって先輩と一緒にいられたらって思ってるだなんて
194.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 21:22:54.59 0

「でも、明日の休みぐらいは自主練しないでしっかり休んでくださいね?」
「はーい。・・・あっ。明日さぁ」

どっか遊び行かない?うちら休みの日に遊んだことないじゃん―――

そう言おうとしたけど、なんでだろう無性に緊張して言えなかった。
よく分かんないけどさっきからうちおかしいんだ。
胸の部分が切ないような、痛いような。とにかく変。

「明日・・・なんですか?」
「え?あーいや何でもない」

いいや。後で誘えたら誘おう。
てかなんでうちこんな緊張してるんだ?梨沙子なのに・・・
196.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 21:24:20.42 0

話を逸らすために、たこ焼き屋にいた時から気になっていたことを蒸し返した。

「・・・ねぇさっきの、番号書かれた紙のことだけど」
「えっ」
「うちがどうこう言う筋合いないけどさ・・・変な奴には気をつけなきゃダメだよ?」

どこのどいつか知らないけど・・・いきなり番号渡すとか軽いに決まってるし。
そうゆう奴に限って梨沙子のことちゃんと分かってなかったりするじゃん。
顔だけで近付いたとしたらマジ最低だし。
そんな奴に梨沙子を・・・・


・・・・・・。


・・・梨沙子を、なんなんだろう?

うち、今何を考えた?
201.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 21:37:36.88 0

「あ・・・流れ星!」
「え!」

うちが見上げた方向とは逆に梨沙子はうちの方を勢い良く振り向いた。
その瞬間、顔がさっきより近くなった・・・

・・・っていうか
唇に何か当たった・・・当たってる・・・


こ、これって―――――!!!!
203.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 21:40:06.25 0

な、なに?なに?
ちょ、ちょっと待って!えっと・・・
目を見開いたまま硬直する自分の体

触れていたのは一瞬だったと思う
パッと先輩の顔が離れて・・・だけどあたしはどうしたらいいかわからなくて

「あ・・・あ・・・」
あたしを真っ直ぐ見る先輩の瞳にただ目を奪われていると
急に先輩が目を閉じてあたしに近づいてきていて

気づいたらまた・・・

二度目はちゃんとわかった・・・

あたし、今先輩とキスしてるって・・・
210.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 21:49:24.62 0

「…っは…」
唇に残る感触と乱れた呼吸が現実だということをわからせる

「先輩…あの…これって…」
「ごめん。梨沙子見てたら抑えられななかった…」
「…え」
「うち…もしかしたら梨沙子のこと…」

そう言って真っすぐあたしを見つめ囁く先輩の声を遮るかのように
遠くからあたしと先輩を呼ぶ声が響いた
「みやー!梨沙子ちゃーん!」
「ち、千奈美!なにやってんのこんなところで」
「みんなで打ち上げだよ。二人もおいでよ」
「え?ちょっ待っ…!」
先輩の返答も待たずに先輩の腕を掴み歩き出す徳永先輩はあたしにも笑顔を向け
「梨沙子ちゃんも来るでしょ?」と問いかけた
「え…。あ、はい」
214.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 21:56:48.90 0

さっきの感触でボーっとした意識のまま先輩達の後ろをついていく
徳永先輩に肩を抱かれて強引に連れていかれている
先輩の背中を見つめて思わず唇を指でそっと触ってしまう

「ちょ、千奈美、痛い痛い」
「だって勝手に帰るんだもん!うちがどんだけ探したと思ってんのー!」
「いや知らないし」
「携帯も出てくんないしさぁー主役がいないと始まらないでしょ」
「えー!うちもう疲れた―」

徳永先輩と話す先輩はいつもと変わらなくてさっきのことがウソみたいに思える

だけど・・・

「みやの自転車見っけ―!後ろ失礼しまーす!っていたぁっ!!」
「誰が千奈美なんか乗せるかー」
そう言って徳永先輩を突き飛ばした夏焼先輩を見てまた心臓が高鳴った
215.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 22:05:49.85 0

「ちぇっ。みやのケチ。いいも~ん。梨沙子ちゃんと歩くから~」
「え…」
徳永先輩は遅れて歩いてきたあたしの手を取ると
夏焼先輩にその繋いで手を見せ不敵な笑みを浮かべていた
「ちぃー」
「ん?なにー?」
「ぶっ飛ばす!」
「きゃー!みやが怒った~怒った~」
あたしの前で繰り広げられる二人の追いかけっこ
そんな楽しそうな二人を見ながらもあたしはさっきのことを思い出してた…
先輩あのあと何言おうとしてたの…?
216.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 22:08:13.98 0

わいわいとバスケ部の集団が夜道を歩く。
前の方には相変わらず賑やかにしゃべってる夏焼先輩と徳永先輩。
その光景が普通すぎて逆にコワい。
隣で光井先輩が話しかけてくれてるけど正直あたしはそれどころじゃなくて・・・
いきなり戻された日常にやっぱり頭がついていかない。
あれ、夢だったのかな・・・?
もう一度唇を触るとさっきのことを思い出して頭が沸騰した。

「あのっ。すいません・・・あたし帰ります!」
「え!?なんでええ!?」
「あのっ親がうるさいんで・・・すいません!お疲れ様でした!」

これ以上ここにいるのは無理だと思って、家に向かって走り出した。
考えれば考えるほどあたしはテンパっていった。
帰り道を間違えるぐらい頭が真っ白だった。

「梨沙子!!」

後ろから夏焼先輩の声が聞こえたけどあたしは走り続けた。
217.名無し募集中。。。:2010/06/20(日) 22:20:13.51 0

梨沙子のあまりにも唐突な行動に全員が目を丸くして見送った

「ど、どうしたんだろ?急に・・・」
「さ、さぁ」
みんな首をかしげて立ち尽くす

「まぁ、梨沙子ちゃんまだ中学生だし・・・ね」
「じゃあチッサーも帰れ―」
「なんでですかぁー!?私も仲間に入れてくださいよー」
「あははは!」
小春と千聖のやりとりに一瞬にして空気が和む

「とりあえずさ、もう予約しちゃったしさ、行きますか」
千奈美の声でみんなはまたカラオケ屋に足を進めた
最終更新:2010年08月11日 02:12