491.名無し募集中。。。:2010/06/28(月) 14:45:13.32 O

どれくらい走り続けただろう。
手を引かれてたあたしの体力も底をつき、ついに足がもつれて転んだ。

「はぁっ、はぁっ」
「梨沙子だいじょ・・・」

歩み寄って来てくれた先輩の手を思いきり振り払う。
あたしの精一杯の抵抗だった。

「梨沙子・・・」
「なんで来たんですか」

自分じゃないような冷たい声が出た。
地面に膝をついたまま立ち上がることが出来なかった。
怖くて、悔しくて、悲しくて、切なくて
涙が落ちてコンクリートの色を変えた。

「あたしっ・・・先輩なんていなくたって平気ですからっ」
「・・・・・」
「先輩が誰と遊ぼうが・・・あたしには関係な」

「うちは嫌だったよ」

 

492.名無し募集中。。。:2010/06/28(月) 14:49:15.66 O

え・・・?先輩何言って・・・

「梨沙子がめぐと遊んでるの、嫌だった」
「・・・何言って」
「嫌なの。うちが梨沙子と遊びたかったのに」

やだ・・・やだよ。何言ってんの先輩・・・。
あんなに楽しそうに女の人と遊んでたじゃん・・・。
そんな言葉信じられるわけないじゃん・・・。

「・・・うそだ」
「うそじゃない」
「・・・・・・」
「梨沙子は、ほんとにうちがいなくて平気なの?」

あまりに悲しそうな声で囁くから思わず顔を上げた。
思ったよりも先輩が近くにいて言葉が出なかった。
494.名無し募集中。。。:2010/06/28(月) 16:20:11.07 0

「そんなこと…」
あるわけないじゃん…
先輩がいない未来なんて考えられないよ…
例えどんな形でもいいから、先輩とずっと一緒にいたい…

「ほら…やっぱうちがいなきゃダメじゃん」
先輩はそっとあたしを抱きしめた
優しく包みこむようなその温もりにあたしは身を委ねて先輩の背中に手を回した

「…んで?」
「…?」
「なんでめぐといたの…」
不安そうな先輩の声が耳元で響きあたしを包み込む先輩の腕に力が入る
まるでおもちゃを手放さない子供みたいにあたしをぎゅっと抱きしめて離さない先輩
495.名無し募集中。。。:2010/06/28(月) 16:59:07.12 O

「・・・だって遊ぼうって言われたから・・・」
「はぁ・・・ほんっとに梨沙子は鈍感」

めぐは梨沙子を狙ってるってゆうのに全然自覚ないんだから・・・。
ボソッと「先輩にだけは言われたくない」
って聞こえた気がしたけど、そこは流した。

「・・・先輩だって女の人に囲まれてデレデレしてたじゃん」
「し、してないよっ。あれはちぃに騙されて・・・」

疑いの目を向けてくる梨沙子に必死に今日の言い訳をする。
納得してくれたかは分からないけど
膨らんだほっぺを突くと少し表情が和らいだ気がした。

「やっぱ妬いてたんじゃん」

そう言うと梨沙子は顔が真っ赤になって
可愛くてまたぎゅーっと抱き締めた。
508.名無し募集中。。。:2010/06/29(火) 02:28:35.24 0

「先輩こそ…」
…?
でもなんで先輩がめぐさんに嫉妬するの?
あたしのことなんとも思ってないんじゃ…

「うっさい…」
抱きしめていた腕がゆっくり緩まり先輩と目が合うと
その顔はあたし以上に真っ赤に染まっていた
「ふふっ」
「な、なんで笑うのさ!」
「先輩顔真っ赤」
「う、うるさいなー!」
先輩はあたしのおでこを小突くと優しく頬に触れた
真っすぐに見つめられ逸らせない視線
近づいてくる先輩の顔に自然と目を瞑った

でも…
これでいいのかな…
あたし…先輩に好きって言われてないのに…
「ま、待ってください…」
咄嗟に先輩の口元を押さえて下を向いた
「梨沙子?」
「先輩は…先輩はどうしてキスするんですか…?」
509.名無し募集中。。。:2010/06/29(火) 02:48:06.93 0

あたしの問いかけに先輩は動きを止める
そして目を優しく細めた

「梨沙子のことが気になるから・・・」
「え・・・?気になる・・・?」
「気になって気になって・・・キスがしたくなる」

先輩は囁くようにそう言うとまたゆっくり顔を近づけてきた
514.名無し募集中。。。:2010/06/29(火) 10:01:05.78 O

そのまま触れた。
口じゃなく、ほっぺに。
なぜならあたしがとっさに横を向いたから。

「梨沙子・・・?」

物欲しそうにあたしの唇を指でなぞる先輩。
その手を取ってこっちに引っ張る。

「『気になる』程度じゃキスなんてしてあげないもん」

耳元で囁けば、先輩はみるみるうちに顔を赤くして照れるように頬をかいた。

先輩はずるいもん。
あたしの心奪うだけ奪っといて全然相手にしてくれなかったくせにさ。
最近急に変わるんだもん。
嬉しいけど、あたし頭がついていかないよ?
もっと誠意を見せてくれなきゃ、あたしは先輩を信じてあげない。

「ずるい先輩なんてキライだから、もう帰る」

わざと意地悪を言った。
帰るつもりなんてなかったけど帰る素振りを見せる。
すると強い力と真剣な声で止められた。
530.名無し募集中。。。:2010/06/29(火) 22:35:46.43 0

「キライなんて言わないで・・・うち、気づいたんだ」
あたしを捕まえた腕に力がこめられたのがわかった・・・

「ずっと――・・・梨沙子のことは妹としてしか見てないつもりだった」

「でもね、きっと妹にはキスしたいなんて思わないと思う」

「最近・・・梨沙子のことよく考えててさ、それで・・・気づいたんだ」


あたしはこの時の先輩の真剣な眼差しをきっと一生忘れないと思った
それくらい印象的で大きくて綺麗な瞳がまぶしかった―――・・・・・・
何より、次に発した言葉をあたしは信じられなかった
・・・・・嬉しすぎて

「うち、梨沙子のことが好きだよ
いつも隣で笑っててほしい、側にいてほしい・・・
色々あったけどさ、今は梨沙子が好き
大切にしたい・・・ううん、大切にするから、だからうちと付き合って」

真っ直ぐにあたしを見てそんなこと言ってくれちゃう先輩は今までで一番綺麗だった。
531.名無し募集中。。。:2010/06/29(火) 22:49:23.64 0

もっと場所とか、シチュエーションとかかっこいい場所で言いたかった

愛理の時みたいに・・・

だけど、うちは梨沙子に告白するなら今しかないって思った
というより、気付いたら梨沙子に想いを告げていて・・・

でも、これが本当のうちの気持ちなんだと思う
ずっと梨沙子に隣にいてほしい・・・
552.名無し募集中。。。:2010/06/30(水) 13:07:32.99 O

出た声は震えていた。

「先輩、それほんとにほんと?」
「うちが梨沙子に嘘ついたことある?」

あたしが首を振って「ない、かも」と言えば、
先輩は優しく笑って髪を撫でてくれた。


「でも先輩・・・なんで急に・・・」

――なんで急に好きになってくれたんですか?

――なんで急に妹じゃなくなったんですか?

しばらく恋愛しないって言ってたのに・・・。どうして?

あたしの問いにうーん・・・としばらく考えた先輩は、深呼吸してからこう言った。
553.名無し募集中。。。:2010/06/30(水) 13:11:48.15 O
「・・・急に、ではないかも。自覚したのは最近だけど」
「・・・・」
「なんだろ・・・突然急に好きになったとかじゃなくて・・・
梨沙子を好きになる準備はとっくに出来てたんだと思う。そんな気がする、うん」
「・・・先輩」

んあー!ダメだぁどう言えば伝わるかなぁ・・・?
不安そうに頭を抱える先輩を見て思わず泣き笑い。

「バカ」

我ながら可愛くない言い方。
でも気持ちは我慢出来なくて、先輩の首筋に顔を埋めた。

「・・・待ちくたびれたよ、バカ」
573.名無し募集中。。。:2010/06/30(水) 21:27:05.47 0

「待っててくれたの?」
「うん」
「それって、超遠まわしにうちのこと好きって言ってる?」
「うん」
「じゃあそう言ってよ」
「やだー」

素直なんだか素直じゃないんだか分からない梨沙子が可愛いすぎて頬が緩む
こうゆうとこも好きかも、なんて思ううちは多分相当イッちゃってる
ムードがない上会話も全然ロマンチックじゃないところがどこまでもうちららしくて
顔を見合わせて同時に笑った

「ねー先輩」
「んー?」
「・・・キス、してもいいですよ?」
576.名無し募集中。。。:2010/06/30(水) 21:53:21.35 0

梨沙子がそのつぶらな瞳をそっと細める
うちはそれに吸い込まれるように頬を撫でる

「梨沙子・・・」
「先輩」
「好きだよ」

ゆっくり顔を近づけていくと梨沙子が目を閉じるのがわかった

それを確認してうちは優しく梨沙子の唇に触れた
580.名無し募集中。。。:2010/06/30(水) 23:03:55.73 0

昨日とは違う長いキス
このまま時間が止まればいいのになんて思いながら先輩の温もりを感じていると
それを妨害するかのようにあたしの携帯が鳴り響いた
しばらく鳴り止まないところを見ると、誰かからの電話だろう

「出ていいよ」

唇を離して先輩が優しく言う
すいませんと小さく謝って携帯を開く

ディスプレイに映るその名前は・・・

「あっ」
「誰?」
「めぐさんだ・・・・・・ちょ、何するんです」
「出たいの?」
「出ていいって言ったじゃないですか」

取り上げられた携帯を素早く取り返す
先輩は不満そうに・・・いや不安そうにあたしを見る

「今日のこと一言謝ったらすぐ切りますから」
581.名無し募集中。。。:2010/06/30(水) 23:32:52.89 0

先輩に悪いかな?とも思ったけど
めぐさんにはどちらにしろ後で電話して謝ろうと思ってたからちょうどいい
先輩から目を逸らすようにして電話に出る

「もしもし」
『あ、梨沙子ちゃん?』
「っあの!さっきは本当にすいませ『梨沙子ちゃーん!!!千奈美だよー!!』
『ちょ!そこうるさいよ!』

ん?今のバカでかい声なに?
ちぃ先輩の声に似てたけど・・・って名乗ってるんだから本人か
なんだか後ろがザワザワしててめぐさんの声が聞こえずらい

「あの、今何して・・・」
『暇だからさっきの合コンに混ぜてもらってるー』

何でもないようにめぐさんは言ったけど
申し訳ない気持ちが押しあがってきて見えない相手に向かって思い切り頭を下げた

「あのっ!今日は本当にすいませんでした!!」
『ははっ、もう気にしなくていいよー。それより、そこにみやいるの?』
615.名無し募集中。。。:2010/07/01(木) 16:21:45.97 0

「はい一緒で――っ!ちょっ・・・」
先輩はあたしの手から携帯をすごく自然に取り上げて電話の向こうのめぐさんに

「梨沙子はうちのだから!手ぇ出しちゃダメっ!!」
それだけ言って先輩は携帯を切った・・・
なんてことするんだろう・・・
ポカーンとその様子を見てたら視線に気づいたみたいで

「・・・ごめん。なんかヤだったから・・・」

バツが悪そうにあたしに携帯を返した。
謝るくらいならしなきゃいいのに・・・
でも、そういうとこだって子供っぽくても可愛く思えちゃう。

「んー・・・っとホントはすごくヤなんだけど
でも一応、めぐと梨沙子いつのまにか友達?っていうか仲良くなってて・・・」
「そのきっかけは先輩じゃないですか」
「まぁ・・・そぉなんだけどさ・・・」
「本当にめぐさんとは何にもないですよ?
・・・あたしが好きなのはずっと、ずっと夏焼先輩ですから」

先輩はボンって音がしそうな勢いで顔を真っ赤にさせてから

「ん~~~~・・・それなら、いい・・・かな、うん」
って冷静を装いながら緩んだ口元がまた可愛らしかった。
先輩って年上なのにこういうとこがホント可愛いんだよね。
616.名無し募集中。。。:2010/07/01(木) 16:36:46.74 0

「・・・で、今日はめぐと何してたの?」
「え・・・っとご飯食べて、映画見て・・・カラオケってところで先輩が出てきたの」
「映画!?めぐと?二人で?はぁ?うちとは?」
「え?え?」

「ズルイ!うちまだ梨沙子と映画行ったことないじゃん」
「先輩だって今日―――」
「アレはちぃに騙されてお願いされて我慢に我慢を重ねていてあげたの!」

「じゃあ、今度一緒に映画行きましょ」
「ん~・・・でもめぐとの後じゃな・・・あ!梨沙子って遊園地好き?」
「・・・絶叫系以外なら多分大丈夫です」
「やっぱりそうなんだ」

待ち合わせで待ってる間に見た夢と同じ様な会話の流れでうちの不機嫌は飛んでった

「メリーゴーランド乗ろ。そんで観覧車も!」
「メリーゴーランド大好き!」
「梨沙子に似合うよ」

今日はもう遅いから今度早い時間に遊園地に行く約束をした。
映画はなんか悔しいからしばらくは行かない。
657.名無し募集中。。。:2010/07/02(金) 20:20:21.33 0

どれくらい梨沙子とギャーギャー言い合い・・・
じゃれあい?をしてたかわからない。

「―そろそろ暗くなるね、帰ろ」

立ち上がって梨沙子の方に手を差し出した自分に少し驚いた
これが普通だったっけ?
うちってこんなカンジだったっけ?

そんな風に頭の中でゴチャゴチャ考えてたら
梨沙子が笑顔でうちの手を握り返してくれて・・・
その笑顔が何も言ってないのに『嬉しい』ってオーラ満載で
ギューってしてチューってして頭くしゃくしゃって撫でてやりたくなった


・・・通行人がいるから次回までそれはガマンしようと思う。

「今日も送ってくね」
「先輩・・・」
「ん?」
「あの、あの・・・っ」
「アハハ!どした?」

梨沙子が遠慮がちに出した言葉にドキっとした―――
659.名無し募集中。。。:2010/07/02(金) 20:29:54.55 0

「みや・・・・・って呼んでもいいですか?」
「えっ!?」
「あー!やっぱダメですよね!!あたし後輩だし、他の部員にもシメシとか・・・」

「梨沙子」
「・・・・・はい」
「もっかい呼んで?」
「え?先輩?」
「~~~~っ違うじゃん!さっきみたいに!!」

「えっと・・・みや・・・?」
コレ!コレにうちはドキドキしまくっちゃって
だって今までずーっと『先輩』だったじゃん?
前に『みや』って寝言で言ったと思ったら『タタミやだ』だったじゃん?
切ないじゃん?

なんか、なんていうか人目があるにはあったんだけど
道端で梨沙子をギューってしてしまった。
いつもよりクルクルしてる柔らかい髪もくしゃって撫でちゃった。
だってしょうがないじゃん?

「嬉しい、梨沙子に呼ばれるの慣れてないからちょっと変なカンジ」
「先輩!人が見てる!!」
「だから~先輩じゃなくて~」
「っもう・・・みや、恥ずかしい・・・」
真っ赤な顔の梨沙子を見てちょっといじめちゃったかなって思って離れてあげた
もちろん繋いだ手は離さないけどね
661.名無し募集中。。。:2010/07/02(金) 20:39:34.35 0

「これからそう呼んでくれるの?」
「でもあたし一応部活の後輩だし・・・呼びたいけど、いいんですか?」
「いいと思うけど。あと敬語じゃなくてもいいし。」
「でも先輩は先輩ですもん!あ、みやは先輩だもん」
「梨沙子ってそういうの気にするタイプだったか」

・・・そういうとこ、可愛いくて好きだなーとか思ったり

「んじゃ二人の時だけ、それ以外は『先輩』でも許す」
「うわエラそう~」
「先輩で部長だからエライっちゃエライじゃん」
「わかりました、じゃ今はみやって呼んでいいんだね。みや」
「あ、あんまし連呼しなくていよ!」
「みや?顔赤いよ?みや」
「梨沙子うるさい!ニヤニヤしすぎ!!」

途中から形勢逆転したよーな気がしないでもないけど・・・
それはそれでいいのだ。
梨沙子の声で『みや』ってのは慣れなくてドキドキドキドキするけどね。
664.名無し募集中。。。:2010/07/02(金) 21:45:38.40 0

「ねぇみや?」
「なぁにー?」

ゆっくり歩いたのにすぐ着いてしまった梨沙子の家
そっと手を離して梨沙子と向き合う

「明日になって『やっぱ好きじゃなかった』とか言わないでね」
「言わないよ」
「ならいいけど」

強気な口調なわりに真っ赤な顔
梨沙子だって人のこと言えないじゃん

「明日の朝一緒に行く?」

てか行こ?
にっこり笑って言えば梨沙子もにっこり笑って頷く
あー幸せ
最終更新:2010年08月11日 03:05