325.名無し募集中。。。:2010/07/21(水) 23:45:01.53 0

・・・・・梨沙子の家に着いたのはいい。
でも大変なことに気付いた。
さっき携帯を愛理に返しちゃったから今うちは何も持っていない。
つまり、着いたよとかも連絡できない。

どうしよう・・・ピンポン押す?この格好で?こんな時間に?

うーんうーんと一人考え込んでると、梨沙子の家の玄関がそっと開いた。

「・・・・・・あ」
「・・・・・先輩、来たんだ」

やっぱり梨沙子だ。
警戒してるのか、顔をドアから半分だけ出してうちを見てる。
いつもと違う悲しそうな目で。

・・・てか呼び方が『先輩』になってる・・・うー・・・。

「先輩、ビショビショ・・・」

いつの間にかドアから出てきてた梨沙子がゆっくりとうちの方に歩いてくる。
・・・あれ?前にもこんなことあったっけ?

そうだ、愛理と別れた日・・・
あの日もこんな雨で、梨沙子の家に来たんだった。びしょ濡れで。

 

327.名無し募集中。。。:2010/07/21(水) 23:57:32.23 0

「みやはいつも雨に濡れてる」

梨沙子も同じことを思ったのかぼそっと呟いた。
あ、呼び方『みや』に戻ってる。
そのことに小さな喜びを感じていると、ふと体があったかい体温に包まれた。
足元に開いたままの傘が転がる。

「ごめんなさい」

うちを抱きしめた梨沙子は、泣きそうな声で、でもはっきりとそう言った。
突然のことにダブルで驚いた。

「・・・・なんで梨沙子が謝るの?」

髪をそっと撫でながら尋ねる。
率直な疑問だった。謝らなきゃいけないのはうちの方なのにどうして梨沙子が?

「・・・あたし、ワガママ言ってみやを困らせた」
331.名無し募集中。。。:2010/07/22(木) 00:29:24.82 0

その言葉の意味を理解するまで時間がかかった。
だってうちは今回のことを梨沙子のワガママだなんて思わなかったから。

「りさこ、それは違うよ」
「え?」
「思ったことは溜めないでなんでも言ってほしいな。恋人でしょ?」
「・・・・・うん」
「梨沙子はワガママじゃないよ。今日はごめんね、嫌な思いさせて」

体を少し離しておでことおでこをくっつける。
言い訳はあとでたっぷりするとして、今はこうしてくっついていたい。
雨も少し弱まってきたし。
梨沙子はうちの腰にそっと手を回して呟いた。

「・・・・あたし、こんなに人を好きになったのはじめてで・・・」
「・・・・うん」
「誰かと付き合ったのもはじめてで・・・」
「うん」
「いい彼女になりたいのに、なんかダメダメになっちゃう・・・」

ごめんね。
梨沙子が蚊の鳴くような声で言った。
338.名無し募集中。。。:2010/07/22(木) 03:32:18.25 0

「嫌いになった…?」
捨てられた仔犬のような目でうちを見つめる梨沙子
その頭を優しく撫でそっとキスをした

「なってないよ」
「ほんと…?」
「うん。むしろもっと好きになった」
「…え?」
「だってヤキモチ妬いた梨沙子可愛すぎ」
そう言ってからかうようにニカっと笑うと梨沙子は
「もう」って呆れたように笑った
自然ともう一度おでことおでこがくっつき笑顔を交わすと
一瞬の沈黙…

「好きだよ、梨沙子」
「あたしも好き」
358.名無し募集中。。。:2010/07/23(金) 16:32:07.26 0

なんか冷たい―――・・・・あ!

「・・・みや!早くウチん中に入って着替えて」
「え?」
「みやズブ濡れじゃん!風邪引いちゃう!!」
「あー・・・ごめん、梨沙子も濡れちゃったね・・・」
「あたしはいいから早く!」

あたしバカだ・・・自分の気持ちばっかで
こんな豪雨の中、走ってきてビショ濡れのみやをすぐに気遣ってあげれないなんて
これじゃ恋人どころかマネージャー失格だよ
374.名無し募集中。。。:2010/07/24(土) 21:40:56.98 0

「おじゃまします・・・こんな時間にすみません・・・」

申し訳なさそうにみやがお母さんに挨拶する。
こうゆう礼儀正しいとこ、結構すき。

適当な服とタオルを貸して、冷蔵庫にあったペットボトルのコーラとコップを部屋に持っていく。
みやはコーラを手にとって
「これ、振ってないよね?」
おかしそうに笑いながら言った。

「振ってないよ。部屋コーラまみれになるの嫌だもん」
「だよね」

コーラを見るとあの日のことを思い出すのはあたしだけじゃなかったみたい。
みやが公園で、転校してきたあたしのプチ歓迎会をしてくれた日のこと。
みやはその時のことを思い返すようにしみじみと言う。
375.名無し募集中。。。:2010/07/24(土) 21:42:04.12 0

「まさかあの頃は梨沙子と付き合うことになるなんて思ってもなかったなあ」
「そりゃー誰かさんは愛理に夢中でしたからねぇ」
「いやまぁそれもあるけどさ・・・・梨沙子妹みたいだったし」

まぁ今も妹みたいだけどね。
そう言ってみやはあたしの髪をタオルでふく。うん、やっぱりお姉ちゃんだ。
なんだか気持ちよくて頭をみやの肩に預けると、みやは小さくため息をついて

「そゆことされると帰りたくなくなるじゃん」

あたしの頬を手のひらで撫でるように包んだ。

「帰んなきゃ。みんないるんでしょ?」
「そうなんだよね。てゆかいきなり出てきちゃったから不自然だったかも」
「もうバレてそうだよね」
386.名無し募集中。。。:2010/07/25(日) 16:20:25.53 0

「バレてもいいんじゃない」

梨沙子が側に居てくれるならもうなんでもいいって思えてきた。
バスケ部に茶かされるのは嫌だけど、
よく考えたらうちの彼女だからって言っておいた方がちょっかい出されないだろうし。
まぁ今は恥ずかしがり屋の梨沙子の為に黙っといてあげるけど。
バレるのも時間の問題かもしんないね。

二人でベッドに寝っ転がって、色んなこと話して。
ふと梨沙子をぎゅーっとして目を閉じたらいよいよ離せなくなった。
何これ、超きもちい。
やばいんだけど。
このまま寝たい。

「み、みや?え?寝るの?」
「んー・・・」
「あの、ちょっと苦しいから腕ゆるめてほしいんですけど・・・」
「んんー・・・いや」
「ちょ、みやぁ。帰んないとみんな心配するよ?」
「そんなに帰ってほしいのかよー」
「え、違うけど、さ・・・」
387.名無し募集中。。。:2010/07/25(日) 16:46:26.95 0

元はと言えばあたしが拗ねたからみやはここにいるわけだけど。
そりゃ最初はみんなとじゃなくてあたしとお泊りしてほしかったわけだけど。
みやからちゃんと事のいきさつを聞いた今となっては話は別だ。

もちろん一緒にいたいし、このまま抱き合って眠りたいけど
みやが帰んなかったらみんな心配するだろうし、
朝起きて家主のみやがいなかったら絶対困るだろうし・・・。

みやをここに来させてしまったのはあたしだから
嬉しい半面ちょっと責任感じてどうしようか困っているのです。

「みやー・・・・・寝ちゃったか」

とは言ってもすでに眠りに就いてるみやを起こす気にはなれない。
幸せそうな寝顔を見てるとあたしだって離れたくなくなる。
目の前には愛しい恋人の顔・・・あたしはそっとその唇にキスをして

「・・・・来てくれてありがとう」

言えなかった言葉を夢の中のみやに呟いた。

最終更新:2010年08月11日 04:47