- 921. 名無し募集中。。。 2009/07/01(水) 22:58:11.34 0
- 「みやぁたすけてええええええ」
うちが中2の夏休みの終盤、ももからの悲鳴が夜7時ちょっと前に携帯にかかってきた
「ちょっともも、どうしたの!?」
「ご、ご、ご……」
「ご? ねぇもも?」
「ご、ご……きゃあああああああああ」
「ちょっと、ねぇもも、どうしたの、ねぇ!!」
通話が途切れた
いきなり何だろう
すごく切羽詰っていたのだけはわかる
かけ直しても、「おかけになった電話は只今……」の、
向こうの電源が切れているのが全くつながらない
- 922. 名無し募集中。。。 2009/07/01(水) 22:58:47.66 0
- こうしてなんかいられない
「ごめんお母さん出かけてくる!!」
「え、どこに?」
「つぐさん家!!」
Tシャツにデニムのショートパンツのうちは、
財布と携帯だけ持ってうちは玄関を飛び出した
サンダルは走りづらいけど戻る時間がもったいない
チャリでももの家まで10分弱
いつもはそれほど遠いと思わない距離がどれほど遠く感じたことか
「ご」ってなんだろう
ご……強盗?
うちはペダルを漕ぐ脚にさらなる力を込めた
- 923. 名無し募集中。。。 2009/07/01(水) 22:59:29.09 0
- ももの家にたどり着く
見慣れた住宅街の2階建ての一軒家、築10年と聞いた
夜7時を過ぎていて夏とはいえもうあたりは薄暗く、
家の電気がまったくついていないのが不気味だった
大事なことに気がついた
携帯でかかってきたのだから、家にいるとも限らないのだから
もし外出先で、それこそつぐさん意地汚いから誘拐だって……
だとしたら「ご」というのは地名の頭文字かも
都内で「ご」のつく場所……あー、五反田しかでてこない!
もも、どこ!?
うちが門扉の前で混乱していると、それは家の中から聞こえてきた。
「きゃああああああああああああああああ」
間違いなくももの声
次の瞬間、跨いでいたチャリを投げ捨て、門扉を開け玄関に駆け込んだ
- 924. 名無し募集中。。。 2009/07/01(水) 23:00:01.78 0
- 「もも!! いるんでしょ!!」
幸い、玄関が開いていた
といことは暴漢が中に……?
玄関先にちょうどあったゴルフクラブを右手に持つ
怖くないはずがない
けれどももに何かあったかと思うと、そんなことも言ってられない
「もも、どこ!?」
玄関の明かりをつけ、あたりを見回す
やっぱり一階から暗くて人の気配を感じない
ということは、ももの部屋がある2階か
階段を駆け上がると、ドアの隙間から明かりが漏れている
ここで間違いない
あとは、このゴルフクラブで……
もうクラブのグリップは汗びっしょり
でもやるしかない
だって、ももがうちを待っているはずだから
扉を蹴り開け、クラブを振りかざす!
……あれ、誰もいない?
フローリングには携帯が転がっていて、落としたのか電池パックが外れている
- 925. 名無し募集中。。。 2009/07/01(水) 23:00:37.22 0
- 「ちょっと、もも!! いるんでしょ」
すると、2段ベッドの上から物音が
グリップをさらに強く握る
得体の知れない物体がベッドから身をのり出す
うちはクラブを振り下ろし――
「……みやぁ?」
……途中で止まって本当によかった
だって得体の知れない物体は掛け布団を被ったももだったんだから
なぜか上下体操着のももは掛け布団を脱ぎ捨て、
2段ベッドの梯子をかけおり、うちの胸に飛び込んだ
「みや、みや、みやぁ……こわかったよぉ」
「ちょっと、どうしたの急に
それに、『ご』って何? まじわからないんだけど」
「あ……えとね、ご……」
「ご?」
「ご……キブリ」
- 927. 名無し募集中。。。 2009/07/01(水) 23:01:00.29 0
- 「……そんなことで、うち呼ばれたの?」
……ほんと呆れた
こっちは死ぬほど……
「そんなことじゃないよぉ
だって、だってあんなのもぉ一人じゃ捕まえられないよぉ」
「お父さんに頼めば?」
「もぉ以外の家族は一泊二日の家族旅行
受験勉強があるからって無理言って残った」
まったく女の子が一人で一晩越すなんて無用心
ももを胸からそっと引き離す
その瞳は潤んでいた
「他に頼む人いなかったの?」
「えっとねぇ……119番と110番してみた」
「……どうだった」
「すぐに切られた」
- 928. 名無し募集中。。。 2009/07/01(水) 23:01:44.35 0
- 「やっぱり……」
「でね、でね
こうなったら頼れるのはみやしかいないと思って、それで」
なんだかんだで頼りにされてるんだ
他の部員や友達よりも
悪い気はしない
「あ、もうわかったから。それで、どこにいるの?」
「窓の、カーテンの裏あたりに」
「あー、どれどれ」
うちはカーテンをバサバサやってみる
「ちょっと!! みやそんなことやったらゴキブリさんが飛び出してくる」
「大丈夫だって、うちに任せてよ」
とうちは威勢よくやっていたけれど
『きゃあああああああああああああああああああああああ』
その茶黒いヤツが勢いよく出てきたから二人して抱き合って叫んでしまった
よく考えたらうちはあれを見るのは生まれて初めて
警察や消防に通報するのは間違いだけれど、その気持ちはわからなくもない
- 929. 名無し募集中。。。 2009/07/01(水) 23:02:22.24 0
- うちがゴルフクラブでやっつけようか?
――だめ、飛び散る
ももの家に強力な掃除機あったじゃん
あの紙パックがいらないとか遠心力で粉々にするとか
――それを部屋に撒き散らすの?
だったら、家族が帰ってくるまでこの部屋を閉めておいて他の部屋で寝たら
――この部屋じゃないと落ちついて寝られないよぉ
結局、うちの漕ぐチャリの荷台にももが乗っている
自転車で5分ほどのホームセンターに防虫スプレーを買いに行くことになった
「みや、ありがとうね」
「いいよ別に。さっさとやっつけたらうち帰るからね」
「えー。よかったら泊まっていってよぉ」
「泊まりません」
こんなやりとりをしていたらすぐにホームセンターについた
- 930. 名無し募集中。。。 2009/07/01(水) 23:03:06.53 0
- え……と、これがいいかな
「ゴキジェット」、名前からいってやってくれそう
問題点は2本パックでしか売ってないこと
『お買得!!』て書いてあるならまずバラで売ってよ
そもそも2本も必要になる家ってやばすぎるし
そう毒づいていたら、気がつくとももが隣にいない
まったくいつもこうなんだから
ももと買い物すると、勝手に店内をうろつきはぐれてしまう
幼稚園児かっていうの、と今度はももに毒づいた
ももは花火売り場にいた
「スプレー見つかったからさっさと帰るよ」
「ねぇみや、花火しようよ」
「この前やったじゃん。ほら、部のみんなで
引退のときに学校の近くの公園でパーっと」
「そうだけどぉ……だめ?
夏といったら花火だよ? ね、ね?」
ももは何しに来たかもう覚えてないのかも
- 931. 名無し募集中。。。 2009/07/01(水) 23:03:32.15 0
- 「……まぁ自腹切るんだったら別に文句ないよ」
「やったぁ♪」
うちの持つかごにポイポイ花火を入れていく
打ち上げ花火、ロケット花火、ねずみ花火……
飛ばし系ばかり。なんか嫌な予感がするんだけど
「あと忘れちゃいけないのがこれ」
ももは最後に線香花火をカゴに入れた
買い物が終わってまた来た道を帰っていく
前カゴにゴキジェットと大量の花火、それに荷台にももで自転車が行きよりフラフラする
自腹を切ると言ったももだけど、花火が多すぎて足が出てその分はうちが支払った
花火代はうちとももで割り勘する程度の金額になった
- 932. 名無し募集中。。。 2009/07/01(水) 23:04:24.46 0
- 「花火代ごめんね、みやぁ」
「べつにいいですよ、つぐさん」
「あ、その言い方怒ってる」
「怒ってませんて、先輩」
「ほらぁ」
「だから――」
バン!!
突如お腹に響く大きな音
振り返るとおおきな打ち上げ花火が夜空に大輪の花を咲かせていた
チャリをとめ、すこしの間だけ見入る
- 933. 名無し募集中。。。 2009/07/01(水) 23:05:12.97 0
- 「見に行こう、みや」
「え、いまから? ゴキブリ退治するんじゃ」
「そんなのいつでもできるから。ほら、急がないと終わっちゃうよ」
「ったく。うちはタクシーじゃないっていうの」
肩をたたかれ、花火大会が行われている近くの海岸へと向かう
ももとたまに行く、近くの海岸
そういえば、こうやってももと過ごす(振り回される?)のって久しぶり
ももが引退して以来、およそ一ヶ月
うちはバスケ部の新部長として、ももは受験生として互いに異なる目標へ向け歩んでいた
二人の生活はクロスすることがなく、ももとは疎遠になっていた
メールだってたまにしかしないし
荷台から聞こえてくる鼻歌も、なぜか懐かしい
- 949. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:29:30.13 0
- 海岸近くになると人ごみがすごくなり、とてもじゃないけど二人乗りできない
チャリを降り、二人して人ごみの中を海岸線までゆっくり歩いていく
「このままじゃ花火近くで見るまでに終わっちゃうよぉ」
「仕方ないでしょ! こんな中かきわけて進むだけでも大変なんだから」
駄々をこねるももを諭す
ももの予想通り、海岸線に着くころには花火大会が終了して、
大勢の見物客が帰る中をふたりして立ち尽くす
ここまでこなくてもどこか高台をみつけて見物したほうがよかったのかも
「うちらも帰ろうか」
仕方がないので提案すると、何かひらめいたかの表情で返された。
「あっ、みや! さっきの花火、砂浜でやろうか」
「いや、ライターないし」
「ちかくにローソンあるじゃん。そこで買えばいいよ」
買えばって、ももお金尽きたじゃん
- 950. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:30:06.18 0
- 帰りの客で賑わうローソンの外でももを待つ
ももにお金がないならもちろんうちが払うわけで
500円硬貨を渡すと嬉しそうに店内へ駆けていった
そして3分後
「お待たせー」
お釣りは150円弱
ライター1本にしてはお釣りがおかしいのでレジ袋に入っているものを確認する
……なんでライター2本なの?
それに、なんなのこのキリン氷結(グレープフルーツ味)って
チューハイじゃん、お酒じゃん
「いいからいいから、夏休みなんだから硬いこと言いっこなし♪」
人の金で買ったチューハイを、これまた勝手に空けてももは飲み始めた
「ふはぁ、おいひぃ。みやもどぅ?」
正直なところ喉がカラカラだった
自宅マンションからももの家までダッシュし、ホームセンターに買出しに出ていまは海岸沿い
2時間以上何も飲んでない
……あ、おいしいかも
半分以上残っていたチューハイを一気に飲んだ
久しぶりの飲みまわしは、ピリッとしたグレープフルーツの味だった
- 951. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:31:16.92 0
- 15分後、砂浜で
「ちょっ、みや、あぶな!!」
「あたれえええええええええ」
線香花火以外の花火を等分に分け、互いに向かって打ち合っている
ロケット花火、打ち上げ花火でガンガンに
ねずみ花火は相手に向かって投げるけれど、
距離が出ずにどちらかというと投げた本人に向かってきた
ライターはそれぞれに手のひらに握られている
お酒の力ってすごい
こんな危険なこと、普段なら絶対にやらないのに
二人でハイになってるんだから
……当てるつもりで打ってたけど、当たらなくてよかった
互いの持ち花火がなくなると、ビニール片手に花火の片付けをした
残ったのは線香花火、ロケット花火1本、あとゴキジェットだけ
- 952. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:31:50.97 0
- 片付けの最中、うちの前に20前後の男3人組が寄ってきて遊ばないか声をかけられた
「うち、興味ないですから」
断ってもしつこく迫ってくる
ちょっと離れて片付けをしていたももが寄ってきた
「どうしたのみや、大丈夫」
「別に。ちょっと声を掛けられただけだから」
心配そうに小声で話しかけてくるももを落ち着かせる
「あれ、その子もお友達? ふたりともレベル高いね」
「みや、褒められちゃった」
……そう嬉しそうにしている場合じゃないのに
はっきり言って非常事態なんだから
街中みたいにひと気が多いわけじゃないし、向こうが力ずくでこられたら――
- 953. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:32:26.99 0
- 「ごめんなさい、うちら本当に帰りますんで」
「ちょっと待ってよ」
男の一人が、帰ろうと横を向いたうちの肩を掴んだ
軽く振り払おうとしたら
「みやに触らないで!!」
ももがその男の手を引っ掻いた
「ちょっ、てめぇ!!」
やばい
男たちの目つきが変わった
もう穏便にすませること、できない
「いたあ!!」
ももの髪が乱暴に引っ張られる
うちの中で何かが弾けた
- 954. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:33:24.85 0
- 次の瞬間、足元にあったゴキジェットのビニールを剥がし、
ポケットにあったライターを取り出した
そしてももの髪を掴んでる男に向かって――
一瞬、辺りが明るくなった
火を噴くゴキジェット
男のキャップのつばを焼いた
「もも、いまのうちに!」
「みやぁ、立てない……」
ゴキジェットに、男たちだけでなく桃も腰を抜かしていた
「あぁもう! 背中にのっかって!!」
ももを背中におぶる
そしてうち自身、サンダルなのに信じられないスピードで砂浜を駆け
チャリまで辿りついた
- 955. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:33:59.62 0
- 「みやぁ、追ってきてるよぉ」
こっちは女の子の二人乗り
向こうは野郎、それに一人につきチャリ一台
追いつかれるのは時間の問題……そうだ
うちは走りながら前かごのビニールから残り1本のロケット花火をももに渡す
「打っちゃって」
「え、いいの?」
「捕まったら、うちら終わりだよ。例え比喩でも何でもなくリアルに」
それ以上ももは何も言わず、10秒後、ライターをつける音がした
ヒュゥゥゥゥン!!
ロケット花火独特の高い音がすぐ後ろから聞こえる
その直後、かすかに後ろからガタガタンと何かがぶつかる音がかすかにした
「やった、ストライク♪」
もものその言葉でだいたい何が起きたか理解できた
あとでよくよく考えると、ゴキジェットで火炎放射なんて自爆行為だった
爆発しなかったのはホント運がよかったとしか……
- 956. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:34:42.59 0
- ももの家まで無事にたどり着けた
「よく無事に帰ってこれたね。大丈夫、もも?」
「……うん、みや」
お互いにホッとしたのかどっと疲れがきた
「みや、上がっていってよ。麦茶ごちそうするから」
「あ、ありがと」
二人してテンションの低いまま、ももの部屋に入る
あれ、なにか忘れているような?
部屋の明かりをつける
床を這うあの茶黒いのに二人してまた悲鳴を上げ、バランスを崩した
- 957. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:35:36.22 0
- 気がつくと、うちはももを押し倒す格好になっていた
ももはじっとこちらを見つめてくる
目線をそらすことなんてできない
しばらくするとももは静かに目を閉じ、すこし顎をあげた
これって……
別にうちとももはそういう関係じゃない
だけどもものこと嫌いなわけではない
むしろ嫌いというよりは――
まだ酔っ払っているのか思考回路が危ないほう危ないほうへと行ってしまう
でも、いいじゃん
「夏休み」なんだし
気がつくとうちはももとの距離を縮めていた
あとほんのわずかだった
- 958. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:38:20.60 0
- 「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああ」
その行為は床を這うあの茶黒いのが横切り、うちが絶叫したため未遂に終わった
チャリからゴキジェットをあわてて持ってきて思いっきり噴射した
……ゴキジェットってすごいね
ひと吹きでやっつけちゃうんだから
でも効き目が強い分――うちも桃も咳き込んだ
軍手をし、その上からビニールをかぶせ、新聞紙にくるんだあとにビニールを裏返しにしてきつく縛る
そしてでっかいゴミ袋の中に入れてその口をまたきつく縛る
握手会が終わった後のアイドルばりに(あくまでも噂だが)手をよく洗い、これで一件落着……とはいかない
ゴキジェットが強すぎて、ももの部屋が化学汚染されてしまったのだから
あんなに思いっきりやらなきゃよかった
いまは換気のために窓を網戸にしているけれど、深夜までそうしておくわけにもいかないし
……仕方ない
「もも、今日はうちに泊まりにきて」
「え、いいの?」
「だってしょうがないでしょ、部屋があの有様じゃ
それに一人にさせるわけにもいかないし。ということで、お泊り準備!」
「はーい」
ももが部屋に着替えを取りに行った
5分後、玄関で待っていたうちに、ももがトートバッグをかかえて降りてきた
- 959. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:39:23.11 0
- 「あのさ……夏焼ちゃん、さっきの続き……する?」
うちのマンションに向かう途中、すごく久しぶりに『夏焼ちゃん』て呼ばれた
うしろの荷台からただならぬ雰囲気を感じる
それってやっぱり……キスのことかな
でも、そういうのは
「続きって、線香花火? 今日はもう疲れたんでパス」
「あ……うん、そうだね。また今度にしよう」
うちは、はぐらかした
したいとかしたくないとかが問題じゃない
しちゃったら、ももとの居心地いい関係が壊れちゃいそうな気がして
それがたまらなく……怖い
- 960. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:41:37.36 0
- うちの家で「もちろん」別々にお風呂に入り、今はうちの部屋で二人して横になっている
ももはうちのベッド、うちは床に敷いた布団
こうやって横になってるとすぐに眠れそう……
「みや、起きてる?」
「……うん」
「あのさ……もぉね、朝礼学園ダメかもしれない」
ももが弱音を吐くの、初めてかも
模試の結果が散々だったこと、それなのになかなか勉強が手につかないこと
人並みに悩んでいるんだなって、ちょっと驚いた
「うちは、案外大丈夫だと思ってるけど」
フリースローがすごく上達したこと
最後の3ポイントシュートが決まったこと
あれだけ絶望的だった様々なことがどうにかなったのだから、どうにかなるよ
うちが非常に珍しく褒めてあげたら、ももは「うん、頑張る」と元気のいい返事をくれた
周りからあんまりにも「無理無理」いわれるから自信を無くしてたのかもしれない
誰かに背中を押して欲しかった、あくまでもうちの想像だけど
- 961. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:42:16.70 0
- うちもいつの間にか相談していた
人と接するのが苦手なうちが部長としてうまくやっていけるのか
ももと違って、ミスをすると強く注意してしまってよく泣かせてしまうこと
ももは自身のことを振り返って話してくれた
一番バスケが下手な自分が部をまとめられるかいつも不安で仕方なかった
うちと違って後輩に注意するのが苦手で、はたしてこれでいいのか悩んだこと
「みやはみやらしくやっていけばいいと思う。きっとうまくいくから」
すこしは年上らしいところあるじゃん、そう思いながら眠りに落ちていった
- 962. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:42:47.19 0
- 翌朝、目を覚ますとももが目の前にいた
「おはよ、みや♪」
「……おはよ。なんで目の前にいるの」
「みやの寝顔かわいかったから近くでみてた」
「そんなの、何も面白くもないのに」
「そんなことないよー……あ、そうそうこれ」
赤いフワフワしたタオル生地のものを手渡された
「みや、誕生日おめでとう!!」
あ、今日は8月25日
昨日はゴタゴタしてたからすっかり忘れてた
よくみるとももから手渡されたのはヘアバンド
桃が現役のときにしていたピンクのとお揃いだった
- 963. 名無し募集中。。。 2009/07/02(木) 01:44:22.19 0
- 「みやも朝礼学園に入学してぇ、もぉがフリースローでみやに勝って髪をショートにしてあげるまでそれで我慢して」
――だからうちは朝学は無理だって――
喉まででかかったその言葉を飲み込んだ
だって、ももとまたフリースロー対決している夢をさっきまで見てたのだから
もしかしたらどうにかなっちゃうかも――
「あ、それでね、プレゼントの代わりといっては何だけど……」
「何だけど?」
「お願い、夏休みの宿題手伝って!! まだ全然終わってないんだ!!」
「ごめん、無理」
「えぇ、なんでぇ?」
上級生のを手伝えなんて滅茶苦茶だ
それに……
「うちのほうは、夏休みの宿題まったく手をつけてないから」
最終更新:2009年07月05日 17:31