第十二章～Buono!～ - もしもみやびちゃんと梨沙子が同じ学校の先輩後輩だったら @ ウィキ

34. 名無し募集中。。。 2009/07/03(金) 01:30:29.62 0

今日は久しぶりにスタジオ練習。
ライブの後はたいてい一回練習を飛ばす。
しかし、今日のスタジオの空気は重い。
明るいのは熊井ちゃんだけ。なんでだろう、梨沙子ちゃんにフラれたはずなのにやけに上機嫌だ。
みやはいつもどおり、いや、いつもより数段無口で、ギターのチューニングをしている。
一方のうちはというと、例の話の決断を下せないでいた。
「じゃ、2週間ぶりだりだし、一回一通り合わせてみようか。」
「そうだね」
いつも通り、熊井ちゃんの3カウントから曲に入る。

35. 名無し募集中。。。 2009/07/03(金) 01:43:39.33 0

一通り曲を通してみた。
完成度がガクっと落ちてる・・・。
あのライブ以降、いろんな事がありすぎたから仕方無いと言えば仕方無いけど、これほど落ちるとは思わなかった。
みやのソロも、熊井ちゃんのドラムのフィルも、うちのベースのスラップも、ぐだぐだだった。
「・・・ひどいね。」
みやが口を開く。

潮時・・・・

頭によぎったふた文字。
もはやBuono!は潮時なのかもしれない。
HIGH-KINGの依頼・・・受けるべきか。
若干そっちに気持ちが偏りかけてた時、熊井ちゃんが口を開いた。

36. 名無し募集中。。。 2009/07/03(金) 01:56:40.88 0

「これってさぁ・・・技術とかじゃなくてみんなの気持ちの問題なんじゃない？」
気持ち・・・そうかも知れない。
3人それぞれが自分が抱える問題で頭がいっぱいいっぱいなんだ。
だから微妙にズレてるんだ。
「そう、だね。」
「スタジオに入ったらさ、全てを忘れてそこに打ち込もうよ。」
この言葉に、清聴を保っていたみやが口を開いた。
「そんなの、無理だよ。」
再び凍りつく空気。
「梨沙子を忘れるなんて無理に決まってんじゃん！！」
みやが急に叫ぶから、呆気にとられてしまった。が熊井ちゃんは、厳しい姿勢を変えていない。
「うちだって梨沙子を忘れるのは難しいよ！」
「は？何であんたが梨沙子の事・・・」
「あんたが適当に梨沙子を振り回すからうちが慰めてあげたの！」
「・・・・寝たの？」
「だったら何？」
みやは、なにも言い返さず、ギターをしまい、スタジオを出て行った。
残された熊井ちゃんの目からは、涙が流れていた。

雅目線

73. 名無し募集中。。。 2009/07/03(金) 23:27:05.78 0

まさか梨沙子が熊井ちゃんと関係を持っていたなんて・・・
全然予想もしてなかった分、うちのショックがでかかった
梨沙子は純真無垢で一途だと自分の中でキャラ設定とイメージ設定していたから、そんなイメージから外れることはしないと思い込んでいた
いつでも、自分だけを見て自分の側にいてくれる・・・なんて都合の良い考え、自惚れなの何様のつもり自分？

あれからキャプテンと熊井ちゃんと険悪になって別れてからどのくらいの時間が経ったのだろう？
どこからおかしくなったのだろう？最近、嫌な方に現実が転がっていく
誰が悪い？自分が悪い？何が悪い？・・・いや、そんな狭い考えしか出来ないようじゃ自分は幼稚

さっきから熊井ちゃんに抱かれる梨沙子の姿を想像してしまう
抱かれているとき何を考え、どんな表情をしていたのか・・・うちにも見せたことのない顔をしていたの？
そんなこと考えている自分が嫌・・・でも止められない妄執
認めたくないけど、うちのなかにもどす黒い部分がある・・・そのどす黒い部分が増幅される
何で？何で？熊井ちゃんなんかと？嫉妬しているの？憎いの？
グチャグチャなの私の頭の中グチャグチャなの

75. 名無し募集中。。。 2009/07/03(金) 23:41:45.76 0

裏切られたとか被害妄想しているの？独占欲しかなかったの？独り占めしたいんだって？

梨沙子に問い詰めたいけど・・・人のこと責める資格が自分にはあるの？
梨沙子のことが好きなのに、さびしいからって真野ちゃんやえりかと寝ていた自分には怒って責め立てる資格は無いでしょ？
他の子と寝ていても一人ぼっちだった・・・気分を誤魔化してただけ
もし梨沙子に他の子と寝ていたことがばれたら、その事を梨沙子に問い詰められたら何も言い返せない

自分が嫌いになりそうになる・・・分かってる、こんなことになったのは自分のせいだ
素直に梨沙子に愛してると言えず、梨沙子を離さないでおかなかった

許されない・・・梨沙子は許してくれないかもこんな自分

でも今とても梨沙子に会いたい・・・あってどうなるか分からない
会わせる顔がないって分かってる、それでもいい・・・

無茶苦茶なわがままだって自分でも分かってる・・・それでも会いたい
今、君がとても愛しい

89. 名無し募集中。。。 2009/07/04(土) 02:52:02.31 0

今、梨沙子に会ったとして、うちはどうするんだろう。
もし、その時うちのどす黒い部分が出てしまったら、梨沙子をめちゃくちゃに犯してしまうかも知れない。
そんなことしたら、今度こそお終いだ・・・。
気持ちの整理がつくまで会わない方がいいのかも・・・。
――――――――でも会いたい。

よく考えると、梨沙子の事をよく知らない。
普段どんなことをしているのか。趣味はなんなのか。よく行く場所は―――――。
愛理なら知ってるだろうけど、建前上、愛理にそんなこと聞けない。

結局、家に帰った。
スタジオ、抜け出しちゃった。今度入るときちゃんと詫び入れないと・・・。
ベットに横になる。でもなんだか落ち着かなくて、出かけることにした。

91. 名無し募集中。。。 2009/07/04(土) 02:59:12.39 0

夕暮れ時の街は好きじゃない。
活気のある街並みも、行き交う幸せそうな人々も、鼻をつくいい香りも。
全部うちからしたら無縁の世界のようで嫌いだった。

あてもなく歩く。
ふと気付くと、例のファーストフードの前にいた。
あの日も確かこんな感じだったような気がする。
何の気なく入ったこの店に、梨沙子がいたんだ。

・・・・まさかね。
そんな偶然2度も続くわけない。
もし、またここで梨沙子に会えたら、運命だって信じちゃうかも。
自分でもバカだと思うが、期待して店に入った。
おなかが空いてるわけじゃないから、コーヒーだけ買って例の席に向かう。

98. 名無し募集中。。。 2009/07/04(土) 04:04:10.23 0

あの日の出来事が脳裏をよぎる
あの時も考えれば熊井ちゃんに煽られてここにきたんだっけな

梨沙子は緊張してるみたいで目線も定まってないし、一生懸命しゃべってたなぁ

あの後だよね・・・
私があのとき自分自身を止めることができてれば
今だって梨沙子は隣にいてくれてたかもしれない

梨沙子・・・逢いたいよ・・・ねぇ梨沙子
今・・・なにしてるの・・？

佐紀目線

44. 名無し募集中。。。 2009/07/03(金) 03:27:10.50 0

みやが出て行って、熊井ちゃんとふたりっきり。
熊井ちゃんも泣きだしてしまった。
どうしようどうしよう・・・HIGH-KINGどころじゃなくなっちゃった。
「ねぇ・・・熊井ちゃん。なんであんなこと言ったの？」
「みやは・・・やっと見つけたんだと思うよ。」
熊井ちゃんは泣いているにも関わらず、落ち着いて話し始めた。
「たぶんね、みやは梨沙子にももと同じものを感じたんだと思うよ。」
「同じもの？」
「外見じゃなくて、内面を見て話をする。そういうとこ。」
「内面・・・」
熊井ちゃんって普段はバカなのにいざというときは本当に頼りになる。
女の子に人気があるのも納得がいくよ。
「だからさ、二人は一緒になるべきなんだよ。愛理ちゃんには悪いかもしれないけど。」
「・・・愛理ちゃんはうちがなんとかする。」
「はは・・・お願いねｗ」
自嘲するように笑う熊井ちゃんを抱きしめたくなったけど、うちにその権利はない。
だからせめてものお願い。
熊井ちゃんも幸せになって――――

74. 名無し募集中。。。 2009/07/03(金) 23:38:19.88 0

「ちょっと飲み物買ってくる」
私はなんだか居たたまれない空気と気分転換に飲み物を買いに外へ出た
スタジオの近くに自販機はなくいつも歩いて10分くらいのコンビニまで買いに行っていた

歩いてる途中私の頭の中を巡るのは熊井ちゃんやみやのこと
愛理ちゃんや梨沙子ちゃんのこと
HIGH-KINGのこと…
色んなことが重なってもう頭の中がグチャグチャだ…
「はぁ…」
ため息をつき、ふと通った公園に目にやるとベンチに1人座っている寂しそうな少女を見つけた

「あれって…梨沙子ちゃん？」

熊井ちゃん目線

86. 名無し募集中。。。 2009/07/04(土) 02:34:30.95 0

キャプが飲み物買いに行って一人になったスタジオ。
防音設備の中なので本当に音がない。
気を紛らわせるためにドラムを無心で叩く。

ドラムを初めておよそ1年半になる。
きっかけは単純なことだった。キャプに誘われたから。
最初はまったく出来なかった。練習しても出来ないんじゃないかとすら思ったほど。
バスドラはうまく踏めない。スネアの叩き方もいまいち分からない。
そんな状況のうちに、新身に教えてくれたのもキャプ。

バンドを始めてから人生が変わったと思う。
それまで特に取り柄のなかったうちに、唯一の生き甲斐が出来た。
練習すればするほどに日々成長していく自分。
ライブに出て、異空間とも言えるハウスの中でお客さんと感じる一体感。
いろんな事があった。
みやも、キャプも・・・Buono!も、うちにとってはかけがえのないもの。
これだけは、失う訳にはいかない。