225. 名無し募集中。。。 2009/07/05(日) 21:00:28.86 0
「おじゃまします」
「どうぞー」

初めてのみやの部屋。
結構広くて綺麗な部屋だ。
香水の優しいにおいが部屋に香っている。
そしてふと思う。こんな広い部屋にいつも一人なのかと。

あたしは家に帰れば親がいる。
口うるさくてたまにうざいけど、何かあれば迎えに来てくれるし、ご飯だって勝手に作ってくれる。
そんな生活が当たり前のあたしにとって、一人暮らしなんて未知の世界だ。

ましてや、今日みたいに色んなことがあった日や、辛くてどうしようもない時。
この広い部屋に一人はつらいんじゃないかって思う。
みやの寂しさは図りきれない。

「どうしたの?そんな悲しそうな顔して」
「あ、いや別に・・・」
「?今飲み物持ってくるから、適当に座ってて」
226. 名無し募集中。。。 2009/07/05(日) 22:01:09.01 O
「適当にって言われても…」
やっぱり一番目に入るのはベッド
ベッドに座ってたら期待してるとか思われちゃうかな…?
先輩はこのベッドでいろんな人と…
とかいやらしい想像をしてしまったり…

色々考えてそばのソファに座ることにした


「それにしてもすごく広い部屋…他にも部屋があるみたいだし」
一度座ったはいいけどやっぱり落ち着かなくてうろうろする

大きなテレビに高そうなオーディオセット
きれいに整頓された本棚
そして白い机の上にはこの部屋で一際違和感を放っているもの
そう…なぜか倒されたフォトフレームと鉛筆立てに刺されてある何本かの線香花火
「…これなんだろう…?」
230. 名無し募集中。。。 2009/07/05(日) 22:46:04.03 0
それらに手を触れようとした瞬間だった

「触らないで!!」

先輩の怒鳴り声が飛んできて体が跳ねる
それと同時に血相変えた先輩があたしの腕を強く掴んだ
あたしは思わず固まってしまった
すると、ふとはっとしたようにあたしの腕を放した

「あ・・・ごめん・・・」
「いや・・・あたしこそ勝手に見ようとしてごめんなさい・・・」
「ううん、梨沙子は悪くないよ。ごめんね・・・」

なんとなく気まずい雰囲気が流れる
先輩が頭を撫でてくれるけど、あたしの鼓動は収まりそうになかった
怒鳴られたこともショックだけど、それより気になった・・・
あのフォトフレームは、なに・・・?
その写真には、誰が写っているの?
あの線香花火は何?

どうしてそんなに必死に隠すの・・・?
231. 名無し募集中。。。 2009/07/05(日) 23:03:44.29 0
梨沙子がフォトフレームを見ようとした瞬間無意識にうちは大声を出していた
誰にも触れられたくない・・・
あれはうちとももだけの思い出・・・
真野先輩にだって事情は知ってても触ってほしくないんだ

だけど腕を掴んだ梨沙子がおびえているのに気づいてはっとする
うちは何やってるんだ・・・
梨沙子は何も悪くないじゃん

「あ・・・ごめん・・・」
「いや・・・あたしこそ勝手に見ようとしてごめんなさい・・・」
「ううん、梨沙子は悪くないよ。ごめんね・・・」

ごめんという気持ちをこめて梨沙子の頭を撫でる
梨沙子は俯いたままごめんなさいと言い続けていた


239. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 00:18:29.02 0
そのままそっと先輩に抱きしめられながらベッドに二人座る
先輩の胸にそっと顔をくっつけてみるけど
先輩の心臓はあまりドキドキしていなくて・・・
あたしは死にそうなくらいバクバクしているのに先輩は慣れているように感じた
だけど先輩が優しく抱きしめてくれるから
あたしはぎゅっと抱きついて先輩のあたたかさを感じていた
257. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 11:10:24.52 0
「ごめんなさい・・ごめん・・・なさい・・・」
みやが優しい手つきで髪を撫で「いいよ」と言ってくれてる

でも

―――――触れてほしくないフォトフレーム、線香花火


胸に嫌な気持ちがくすぶる
具体的なことは思いつかない
ただ、頭をよぎったのは


あたしは・・・みやの特別になれるんだろうか――――・・・・・
258. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 11:32:08.68 O
あたしが落ち着いたと思ったみたいでみやはそっと体を離しあたしを見つめる

こんなに心の中はぐちゃぐちゃなのにみやに見つめられるだけで体は熱くなる
なにも考えられなくなってみやに夢中になる

そのままあたしは近づいてくるみやの顔に気付き無意識に目を閉じた
259. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 11:37:54.61 0
俯いた梨沙子の顔を覗きこむと目をギュッと閉じた

「ミルクティー、入れたから飲も・・・梨沙子」

うち少し落ち着かなきゃ・・・
咄嗟に床に置いたコップに目をやる
黙ったままコクンと頷く梨沙子をベッドに座らせ
何もなかったかのようにうちはコップを取り梨沙子に渡す


「はい。アイスミルクティーで良かった?」
「・・・ん」

氷と午後ティーを入れただけのコップを梨沙子は受け取り
喉が渇いてたようでコクコクと飲んだ
梨沙子の元々ピンクな唇が濡れ
迷うような視線と表情にドキッとした


ももの時とは違う
うちはこのコを離さない
衝動的に横から梨沙子にキスをした
ディープじゃない、けど口付けたまま少し長めのキス


ミルクティーの味がした
262. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 11:46:45.46 O
みやがいれてくれたミルクティー
市販のものだと思うけどみやがいれてくれただけで特別おいしく感じる
あたしはこのどうしようもなく夢中になっている自分の恋に戸惑い
ミルクティーを一気に飲み干す

みやが好き…好きだよ…みや

そう思っていると横からみやに突然口づけられ…その唇が優しくてあたしはそっと目を閉じた
264. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 11:51:26.04 0
みやからの優しいキス
舌を入れるでもないただ唇と唇が触れる・・・
でも長いキス

前に言われた「うちのものになって」なんて言葉より
『ずっと一緒にいよう』
って言われたワケじゃないけど
なんだかそう言われてる気分になった


あたしだけじゃなくてみやもそう思ってくれてるといいな
267. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 12:02:12.08 0
あたしの唇からゆっくりと顔を離し
みやは綺麗な瞳で真っ直ぐにあたしを見つめてた
一瞬、間があって考えながらゆっくりと話しだした

「うちは、梨沙子がほしい・・・。
ううん、なんて言うんだろう・・・そばにいて・・・えっと・・・」

なんだか戸惑いながら話すみやは可愛く見えた

「・・・だから、ね梨沙子・・・」
「みや」
「え?」
「あたし単純だから」
「え??」

「だからみやがあたしに『好き』って言ってくれたらいい」
「・・・梨沙子」
「あたしはみやのこと好きだからずっとみやといたい」

何も考えてないのに口からこんな言葉が飛び出してきた
前のあたしからは想像もつかない
でもみやが本当に本当に好きなんだもん
276. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 12:29:26.80 O
みやはあたしを真っ直ぐ見つめてくる
それだけであたしの心臓は破裂寸前だ

そしてしばらくたつとみやがあたしの髪を撫でて優しく笑うと口を開いた
278. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 12:36:22.20 0
伝えたいことをうまく伝えられず言葉に詰まってたら
梨沙子から直球でうちが言いよどんでたことを言われ・・・
正直泣きそうになった

可愛い顔して可愛いこと言う
・・・梨沙子のばか・・・
でもここで泣くのはイヤだから
でも梨沙子になら今更泣き顔なんて・・・色々また考えて
でも目の前にある顔はふんわりと綿菓子のように甘く笑う梨沙子

「ありがと」


言いながら梨沙子を引き寄せ
耳元で小さく、本当に小さく掠れた声で

「好き・・・」

それだけ言うと「いひぃー♪」って可愛らしく笑う梨沙子
抱きしめてるから顔は見えないけどうちは真っ赤で
きっと梨沙子はとろけるくらい可愛い顔で笑ってるんだろうな・・・
281. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 12:49:32.07 0
耳まで真っ赤なみやは恥ずかしがって後ろからあたしを抱きしめた
それからみやにずと後ろから抱きしめられたままテレビを見たりみやのCDを聴いたりした

あたしは誰かと付き合ったりっていう経験がないからよくわからないけど
こういうことをするのが付き合うってことなのかな…?
この幸せな時間がどうか続きますように…

そう願っていると後ろからみやの寝息が聞こえてクスッと笑ってしまった
282. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 12:56:33.41 O
後ろを振り返るとみやのがおだやかに寝息をたてている

出会ったときと同じ美しくて綺麗な寝顔

あたし…今この人と付き合ってるんだよね?
そう思うと照れて、だけど前以上にみやが愛しく感じて

これが愛してるってことなのかなって思った
285. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 16:16:39.53 0
ソファにもたれたみやの寝顔に見とれてたら
みやの寝顔が少し険しくなった

「みや・・・?」

みやにもたれていたあたしは振り返り名前を呼ぶ
あ、起きる・・・かな?

「んっ・・・・・・もも・・・・・・・・・」

”もも”知らない名前・・・

見たことない表情のみや

触れないでと言われたフォトフレーム

あたしは確かにみやのそばにいて『好き』という言葉も聞かせてもらえた


これは直感


きっとあたしはまた傷つくんだろう
だけどそれが恋愛ってものなのかな?
いつ崩れるかわからない幸せを大事にしたい
そう思ったら頬を涙が落ちた
287. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 17:30:30.61 O
「ん…、梨沙子…?」
ごそごそと音がしてはっと気づくとみやが目を覚ましていた
あたしはあわてて涙を拭う
だけどみやにはばれたみたいてあたしの顔を心配そうに覗き込む

「どうしたの?」
「なんでもないよ?幸せだなぁって思ったの」
必死で笑顔を作るとみやが顔を寄せてきてあたしの涙の跡に口づけてくれた
304. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 22:09:06.24 0
「なんか、うち泣かせてばっかだね・・・ごめん」
「え?そんなことないもん!」

みやが悲しそうに笑いながら言うからしっかり否定した
たとえ泣いてもみやと一緒ならそれより笑う方がきっと多いもん・・・
そう思いながらガシッとみやに抱きついた


〜♪ポ〜ニョポ〜ニョポニョ・・・・

あたしの着信!

「ママから!みやちょとごめんね!!
もしもし!・・・はい・・うん。ごめんなさい・・・はぁい・・・」

遅いわよ大丈夫なの?お友達に迷惑だから早く帰ってきなさい!

ママからのお小言に返事をしてすぐ切った
心配とか、するんだ―――・・・
今までこういうことなかったからな・・・あたし

「大丈夫?ごめん結構引き止めてた・・・」
「ううん!あたしがみやといたかったから!!」

306. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 22:27:59.95 0
「ありがと・・・ん〜っとさ、やっぱうちがチャリで送るよ」
「だいじょ・・・」
「ダーメ!外暗いし。この間の愛理ちゃんみたいなことになったら・・・」
「乗せてください」

ここは素直に送ってもらお
あの愛理が知らない人の車に乗せられちゃうんだから・・・
怖いし・・・


何よりみやと少しでもいられるだけいたい


これが本音


「またうちに遊びにこればいいよ」
「うん!絶対くるもん♪」
「うちいつも一人だからさ、泊まりでもいいから・・・・・・あ!変な意味じゃなくてね」


誤魔化すように笑うみやに口元だけで微笑んだ
一緒にいたい、それはホントの気持ち

でもあたしはみやのことを知らない
みやの顔に時折見える淋しい影にあたしは惹かれながらも怯えてる


好き、怖い、でも好き――・・・

313. 名無し募集中。。。 2009/07/06(月) 23:47:39.86 0
みやの部屋を出てエントランスで自転車を取りに行っているみやを待つ
今日は色んなことがあり過ぎた・・・
愛理と仲直りして・・・みやを偶然見つけて・・・
さっきみやに告白された・・・
告白されて時のことを思い出すだけで胸がきゅっと苦しくなる
そんな時・・・マンションのエントランスに入ってくる女子高生
可愛い人だなぁってぼーっと見ていると急に目が合う

あ・・・まずい・・・
すぐに目をそらして俯くとなぜか声をかけられる
「もしかして・・・あなたが梨沙子ちゃん・・・?」
「へ・・・?」

「あ、梨沙子!こっちおいで!用意できたから・・・って真野先輩・・・?」
みやはあたしの後ろの女の人を見て声をかける
「こんばんは、御飯余ったから差し入れ」
「あ、ありがとうございます、だけど今はちょっと・・・」
「中入っててもいい?」
「あ、いいですよ、じゃあ梨沙子行こう?」
あたしの手をぎゅっと握ってくれるみや

だけどあの人は誰?すごくみやと親しげだった・・・
それにみやだって中に入ってていいって・・・
みやとあの人はどういう関係?

あたしにはヤキモチを妬く資格なんてないはずなのに
みやの自転車の後ろで嫉妬から一言も話すことができなかった
320. 名無し募集中。。。 2009/07/07(火) 08:57:31.33 0
黙ったままみやの自転車の後ろに乗る
可愛いお姉さんだったな・・・
目頭が熱くなってきたけどグッと堪える

自転車をこぎながらみやが急に呟いた


「・・・梨沙子」
「っ、・・・何?」
「さっきの人、ライブハウスの娘さんだから」
「・・・・・・」
「それだけだよ。何も、ないから・・・
たとえもし何かあっても、うちが・・・今日梨沙子を・・・・・」


自転車をこいでるからみやの茶色い綺麗な髪が揺れるのしかわからない
みやは話すのが苦手なのかな?
肝心な時に話したくなような
伝えたいけど伝えにくい・・・

そんな言い方がみやらしいのかもしれないんだけど
まだ知り合って日が浅いあたしは話下手なんだと思うことにした

321. 名無し募集中。。。 2009/07/07(火) 09:09:51.05 0
ポツリポツリと考えるように話すみや
どう言うか考えてるのか途切れ途切れ
自転車の速度はグングン速くなっていった・・・・・・・


キキッ!


「・・・ハァ、ハァ・・・着いた」
「ん・・・ありがと」

322. 名無し募集中。。。 2009/07/07(火) 09:12:46.10 0
多分このときあたしは仏頂面だったんだと思う
とても笑顔でになれない気分だったから
すぐ家に入ろうとしたら手首をつかまれた

「あ!・・・ごめん梨沙子、少しだけさっきの話の続き・・」
「・・・・・・なに?」
「今日、言ったじゃん・・・ちゃんと、梨沙子に―――・・・・・・・」
「・・・・・(『好き』ってことかな?)」

「うちさ、こういうの今までちゃんと言ったことなかったから」
「・・・」
「あの、なんていうか・・・その・・・」

また言いにくそうに頬をかくみや
シャイ、なんだろうか
そう考えてたらバチッとみやと視線がぶつかった

家の前

人通りはない

否、あったとしてもきっとしたんだろう


どちらからとはわからない



キスを交わした
323. 名無し募集中。。。 2009/07/07(火) 09:30:28.00 0
みやの部屋でしてくれたのとは対照的に熱いキス

みやはゆっくり顔を離し謝る

「ごめん・・・家の前なのに」
「ううん」

自分もしたくなったから。そう思ったから。

「じゃあ家、入るね・・・ありが」
「梨沙子!」
「!!」
「あんまり・・・うちは口に、出せないかもしれないけど・・・」

324. 名無し募集中。。。 2009/07/07(火) 09:31:08.89 0
綺麗な目でみやがあたしに語りかける

「うちの・・・特別だから・・・・・・梨沙子は」

「・・・あたしも、あたしはみやだけだよ
みやが言わない分あたしが言うから。
あたしはみやが好き。ずっと好き・・・・・・」

みやは驚いた顔であたしを見てる

「好きって言葉にしすぎるのダメかな?
あたしは、やっと・・・そう言える相手、みやに会えたから・・・
言える時に言っておきたいんだ。みやが大好き!って・・・・・・言いすぎかな?」
「や、・・・・・・・ぁりがと・・・」

暗いからわかんないけどみやまた真っ赤なんだろうな
ホントの気持ちだからいいんだ

あたしは恥ずかしくない
この幸せが、いつか崩れちゃうなんてことを考えれば
恥ずかしいなんて思わないよ―――――――――・・・・・・・・・・・


また明日、今度はちゃんと笑えてみやに手を振った
自転車が見えなくなるまで時々振り返るみやを見ていた
最終更新:2009年07月08日 00:01