- 505. 名無し募集中。。。 2009/07/11(土) 04:02:51.07 0
- 「みんなお疲れー。明日は朝学に絶対に勝とうね!!」
『はい!!』
桃が部員のみんなに発破をかけて解散した
3年にとって最後の大会、負ければ即日引退
練習試合ではそれなりに勝てるようになってきたけれど、
最悪なことに明日の初戦の相手は都内最強の朝礼学園中学校
合宿もしたし、練習も死ぬほどした
練習試合も組んでやっとこ初勝利もあげたばかり
それでもやっぱり……相手が悪すぎる
「どうしたの、みや」
「ううん、別に」
月明かりの下、ゆっくり自転車をおして歩く
今日は二人とも自転車通学
いつもなら自転車を走らせて早く家に帰るのに今日はそれがなんだか勿体無い
- 506. 名無し募集中。。。 2009/07/11(土) 04:03:17.40 0
- だって、明日ですべてが終わっちゃうんだから
「ももさ、コンビニよらない? 今日はジュース奢ってあげる」
「え、いいの!?」
桃が尻尾を振ってついてくる
こうやって、二人で帰りにコンビニに来ることも、ジュースを回し飲みすることも
……それだけじゃない
プリクラだって桃くらいしか撮る相手がいないし
買い物だって桃くらいしか一緒に行く相手がいないし
そもそもバスケ部に入ったのも再開したのも続けてるのも――
部の同級生だって、別に仲が悪いわけじゃない
後輩ともうまくはやれている……かな?
でも、桃はやっぱり特別
うちの小さくて狭い世界の中で大きな部分を占めているのだから
桃が引退したら……桃のいないバスケ部を続けていける自信がない
- 507. 名無し募集中。。。 2009/07/11(土) 04:03:41.96 0
- 「はい、コーラ」
「わぁ、ありがとー。なんだか悪いね」
桃がおいしそうにコーラを飲む
この横顔が実はとても好きだったのに
明日で全部おわり
胸が締め付けられる
もとはといえば怪我人が出たから部に戻ってと言われただけ
こうして仲良くしてもらってるのはただの成り行き
- 508. 名無し募集中。。。 2009/07/11(土) 04:04:21.22 0
- 「どうしたのみや? なんだか難しい顔して」
「なんか、今日っていう日が終わるのが……やなんだ」
「へー。どうして」
「今日が終わって、明日が来ると……ももとお別れすることになるから」
「え、え? どういう意味? ちょっとわからないんだけど」
「だってうちは……もともと助っ人として部に戻されただけ
明日の試合に負けて桃が引退しちゃうと、こういう桃との関係も終わっちゃうのかなって」
桃は大きくため息をついた
「……みやって、たまにすっごく馬鹿なこと言うね」
「うちは真剣だよ」
桃の顔をじっと見つめる
ちょっと困ったように笑っていた
- 509. 名無し募集中。。。 2009/07/11(土) 04:05:00.16 0
- 「まあ引退は一つの区切りにはなるけれど、ただそれだけ
別にどうしようもなく遠くに住んでるわけじゃないし、死に別れるわけじゃないし
自転車で15分の距離だよ?
遊ぼうと思えばいつでも……まぁ受験控えてるからいつでもっていうのはアレだけど
それとも、みやはこの機会にもぉと会ってくれなくなっちゃうの?」
うちは大きく横に頭を振った
「でしょ。だからそれだけの話。会おうと思えば会えるんだから
いつかは必ず訪れる区切りなわけで……みやがそんなになる必要ないよ
それにさ、もう一緒のコートに立てなくても残る物だってちゃんとあるんだから」
たくさん練習していっぱい汗を流して
いっしょに笑ってときには悩んで涙して
自分ひとりじゃできないこともみんながいたからどうにできた
「あのコートでいっしょに過ごした時間は嘘じゃないよ。ね、みや」
「……そうだね」
- 510. 名無し募集中。。。 2009/07/11(土) 04:05:36.69 0
- 気がつくと桃に手をしっかり握られていた
あんなに不安でどうしようもなかったのが嘘のように安らかな気持ちになる
「それに! 朝学に負けると決まったわけじゃないんだから
前日からそんなに湿っぽくなってちゃ勝てるものも勝てないよ
明日は――頑張ろうね、みや!!」
ずっとずっとこのままの二人で一緒の道を歩んでいられたらな、と思っていた
でもそれはやっぱり無理な話
桃とは学年が違うし、何より違う人生をこの先歩んでいくわけだから
それでも
例えバスケという繋がりがなくなっても桃とは遊たいし、一緒の時間を過ごしたい
だって桃は……うちにとってかけがえのない人だから
「さ、早く帰ってさっさと寝よう。明日は早いんだから。打倒朝学!! ね?」
「うん、絶対勝つ!!」
最終更新:2009年07月12日 00:30