783. 名無し募集中。。。 2009/07/16(木) 15:11:24.94 0
「ん・・・」

窓から差し込む光で目が覚める。
体がちょびっとだるいけど、なんとか体を起こした。

隣を見ると、手を繋いだままスヤスヤと寝ているみや。
寝顔可愛いなーなんて思いながら空いてる方の手でほっぺをつんつんと突いてみるが、起きる気配はない。
みや、朝弱いって言ってたもんな。
ふふ、可愛いなぁ。
おはようのチューしたら起きるかな?それとも起こす前に朝ごはん作っておこうかな。
そんなことを考えてるだけなのに、朝から頬がだらしなく緩んでしまって焦った。

そういえば、みやにお弁当作る約束したし、食パン切ってサンドイッチでも作ろうかな。
少し多めに作れば朝ごはんにもなるし、一石二鳥だ。

よし、じゃあそろそろ支度しなきゃと気合を入れて時計を見る。
えっと、今8時半だから・・・・ちょっと急いで・・・ん?・・・・あ、れ・・・?

「8時・・・半?」

口に出したところで、あたしはようやく状況を理解した。


「みやッ!!!起きて!!!遅刻だよちこくーー!!!!」
786. 名無し募集中。。。 2009/07/16(木) 18:24:16.42 0
叫んだところで目が覚めた。

「夢かぁ・・・。良かった」

大きく安堵の息を吐き出しながら隣を見ると、
みやが手を繋いだままスヤスヤと眠っていて、これは夢と同じで良かったって思う。

差し込む月明かりが思いの外明るい。
あたしは普段目覚ましなしで起きてるくらいだから、
部屋の明るさに体が反応して目が覚めちゃったんだろう。

月がみやのかわいい寝顔までしっかりと見せてくれる。
そして、ふと顔を正面に向けた時に目に入った机の上も・・・。

やっぱり、フォトフレーム、ないよね。

こんなにかっこ良くて、実はすごく優しくて繊細な人だから、きっと恋人はいたと思う。
多分、入っているのはそういう人の写真だと思う。
だって、家族の写真なら、触られるのもイヤだってあんな風に叫んだりしないだろうから。

・・・もしかしたら、あたしに触られたくないからしまったのかな?
787. 名無し募集中。。。 2009/07/16(木) 18:26:04.64 0
思わず大きなため息をついてしまったのが耳に入ったのだろうか?
「ん・・・梨沙子?」
みやが目を覚ました。

「あ、ごめん。起こしちゃった?」
「いいけど、どしたの? 眠れないの?」
「ううん、寝てたけど、目が覚めちゃったの、月が明るくて」
「今、何時?」
「えっと・・・2時半かな」
目を擦りながら尋ねるみやに、机の上にあるデジタル時計を見て答えていて、
またフォトフレームのことが頭をよぎった。
788. 名無し募集中。。。 2009/07/16(木) 18:27:03.70 0
「どした?」
みやが起き上がって顔を覗き込んで尋ねる。
「なにが?」
「なんか、元気なくない?」
「そんなことないよ? 寝起きだからじゃない?」

ごまかしてみたけど、あたしの空気の変化にみやは気づいたみたい。

「どっか痛い?」
「え?」
何のこと?
「えっと、あの、体のどこか、痛む?  その、ちょっと激しかったかなって・・・」
意味がわかって一瞬すごく恥ずかしくなったけど、全然違うからすぐに否定する。
「ううん! 平気だよ」
確かにあちこちだるいかんじがするけど、ってのは口にはしなかった。
789. 名無し募集中。。。 2009/07/16(木) 18:27:58.99 0
「・・・なんか悪いことしたかな?」
「してないよ」
「でも、なんか変だよ。どうしたの?」

普段、無表情だと冷淡にすら思える目が、本気で心配している色で優しく見つめてくれるものだから、
口にしてもいいのかどうか確信がないのに、甘えてしまいたくなる。

「・・・」
「ん?」
あたしが口を開きかけたものの躊躇っているのに気づいたみやが、
今まで聞いたこともないような柔らかいトーンで問いかける。
790. 名無し募集中。。。 2009/07/16(木) 18:28:43.50 0
「あ、のさ・・・」
「うん」
「この間のこと、まだ怒ってる?」
「この間?」
「その、机の上の・・・フォト・フレーム、触ろうとして怒られたでしょ?」
「!?」
みやが、全く予想もしてないことを言われた、って風に目を見開く。
「今さ・・置いてないじゃん? あたしに触られたくなくてしまったのかなって・・・・」
「違う! 違うって!」
さっきのあたしの何十倍もの速さでみやが否定する。
791. 名無し募集中。。。 2009/07/16(木) 18:29:49.01 0
梨沙子の目が少し潤んでる。

正直うちは、昨日の晩ベッドから見るまで忘れてたのに、
梨沙子はずっと気にしてたんだ・・・。
きっと、聞くのに勇気がいっただろうな。

うちを待ってる間に見たりしただろうか?
・・・ううん、多分見てないだろう、うちがあの時「触らないで」って言ったから。
それを留守の間に見るようなこと、梨沙子はしない子だと信じられる。

だから、正直に言うべきだって思う。
792. 名無し募集中。。。 2009/07/16(木) 18:31:58.37 0
「あれ、前好きだった人の写真だったんだ・・・」
「そう、なんだ」
予想してたのか、梨沙子は驚いた様子じゃない。
「てか、初恋、かな?」
「そっか・・・」
「部活の先輩で、気がついたら好きになってて・・・。
でも、いきなり海外だかどこだったかに行っちゃった」
「・・・・・」
自嘲的に笑ううちを、黙って梨沙子は見つめてる。
793. 名無し募集中。。。 2009/07/16(木) 18:33:44.85 0
「ずっと忘れられなくてさ、反動みたいに遊んだりもしてた。
・・・知ってるかも知れないけど」
「うん・・・」
あ、やっぱり知ってたんだ、って今度は苦笑が出る。

「でも、うち、梨沙子のこと、本当に好きになったから・・・」
あんまり「好き」って言葉を口にするのは得意じゃないけど、今はすっと口から流れてきた。

「だから、もう、先輩のことは過去のことだなって思って、昨日しまった」
794. 名無し募集中。。。 2009/07/16(木) 18:35:09.30 0
「・・・・・」
「!?ちょっ! 泣かないでよ!」
「だって!・・・嬉しいんだもん・・・あたしばっかりみやのこと好きなんじゃないかって思ってたから・・」
まばたきの度に涙が筋になってこぼれる姿が愛しくて仕方なくて、思いっきり抱きしめる。

「うちも、ちゃんと好きだから」
「うん」
「どうしようってくらい好きだから」
「どうもしなくていいよ・・・」

「でも、泣いてる梨沙子見てると、ムラムラしちゃってさ、ほんと、どうしようって思うんだよね」
大真面目な口調で耳元で囁く。
「そういう意味? もう! 雰囲気ぶち壊し!」
怒る梨沙子に、体をちょっと離してニヤって笑いかける。
瞬間、お互いに吹き出した。あー、なんかすっごい幸せかも。

「ね、もっかいしていい?」
「・・・いいよ」
795. 名無し募集中。。。 2009/07/16(木) 18:50:20.81 O
で、結局梨沙子が見たっていう夢の通りになったんだけど、
それも笑い話だよね、なんて、
その時のうちらは、無邪気にそんなことを考えていただけだった・・・

最終更新:2009年07月18日 14:10