俺はかつて勇者と共に、世界を闇に覆った魔王を粉砕した魔法剣士。
しかし世界が平和になった今、俺の出番はもうなく、今は趣味の機械技術に
身を没頭させて過ごす平穏な、しかし少し物足りない日々を送っていた。
 自分所有の飛空艇で、太陽の光を浴びながら、ボンヤリとして過ごしていたら
突然、警報装置が鳴り出した。

A国で何か事件が起きたらしい。
いつもは、飛空艇制御室で地上のニュースを見て済ませる自分だが、今回は暇であった事と、
そのA国に知り合いがいるということで急遽、進路を変えA国に向かった。
 A国に近づくと、空の上からでも大変な事が起きていることがすぐに分かった。
煙が立ち上がり、ところどころ破壊された建物、人の姿は余り見えない。
 と、街中で山の方へ走っている少女を見つける。何かから逃げるように走っている様子だ。
その瞬間、大きな地響きと共に大地が大きく揺れる。転倒する少女。そして少女の横の建物が
今まさに崩れ落ちようとしている。「ヤバイ!」と思い地上へ降りるが間に合いそうにない。
落ちてくる瓦礫を見つめ恐怖で身動きが出来ない少女。「こっちだ!」僕は少女を抱え、
避難させようとするも、瓦礫の落ちてくるスピードの方がどうやら速そうだ。
「チィッ!」僕は仕方無しに、滅多に使う機会がなくなっていた魔法を使った。
対象の物体の速度だけを周囲から遅らせる時間魔法。落下スピードが緩んだ隙に、
僕は少女の手を引いて、その場所から抜け出した。と、同時に魔法の効果も切れ
ズズンという轟音と砂ボコリが立ち上る。間一髪って奴だ。
少女(17)は、俺と崩れた建物を交互に見ては、まだ何が起こったか理解できていないような表情をしていた。

「怪我は無かった?」僕は少女に声をかける。
「あ、あの、、あの、、、」少女は言葉にならない言葉を繋ぎあわせる。
「あ、ありがとうございました・・・」そう言い終わるか終わらないか、
少女はフッとその場に倒れこんでしまった。
助かった安堵からか気が緩んでしまったのだろうか。
「お、おい・・・困ったな・・」
助けたはいいが、状況も何も聞けない。地響きはまだ定期的に続いている。
とりあえず僕は、自分の飛空艇の医務室で彼女を休ませる事にした。
被害を受けないよう、とりあえず飛空艇で周囲を巡回しながら、彼女が起きるのを
待つことにした。

彼女は30分ほどで目を覚ました。ようだ。
らしいというのは、僕自身が彼女が目を覚ますところを見ていたわけでないから
こういう表現になる。
この飛空艇を制御する人工知能が、僕の携帯にそう知らせてくれたのだ。
僕は医務室のドアを叩いた。「入るよ」

僕は医務室のドアを開けた。(といっても横スライドの自動ドアではあるが。)
彼女はベッドから身を半分起こし、窓を見ていた。「・・・ここは?」
初めてこの艇に乗る人にどう説明してよいやら、いつも困る。
まして今回は自分で乗り込んだわけではなく、気づいたらここに連れて来られていた訳だから
どう説明していいものか。とりあえず、率直に話すことにした。
「ここは空の上さ。君のいたA国の上空1000キロってとこかな。それより怪我はない?」
「・・大丈夫です」彼女は窓の外を見たまま答えた。まぁ窓の外の景色を見れば、俺の言った事を
信じるしかないとおもうのだが。

この後、この少女はもちろん一緒に旅をする仲間になりますが
そろそろ、あまりに厨房くさすぎて死にたくなってきたので手首を切ります。

本当にありがとうございました。


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最終更新:2009年06月07日 20:24