実習に関する国の議論

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実習に関する国の議論 - (2009/01/05 (月) 08:14:52) の編集履歴(バックアップ)


「診療参加型実習に関して国レベルで行われた議論を一部紹介いたします。

1.平成3年
「臨床実習検討委員会最終報告(以下、前川レポート)」
 (厚生省健康政策局、臨床実習検討委員会、平成3年5月13日)
  ※前川先生とは委員長のお名前

2.平成17年
「診療参加型臨床実習の実施のためのガイドライン(以下、ガイドライン)」
(文部科学省高等教育局、京都大学大学院医学研究科 福井次矢先生、
           九州大学大学院医学研究院 吉田 素文先生)


皆さんの参考になりそうな部分を抜粋しましたのでご参考まで。
(二つとも支援セットダウンロードページから入手可能です)


【臨床実習に関する議論】


「国民の医療安全に対する意識が高まっている現在、
医師免許の無い医学生が侵襲的行為を行うことには慎重であるべきだ」
とする立場からか、わが国の臨床実習は主に見学を主体に行われています。

約20年前の全国80大学の医学部を対象とした実態調査では、
採血、鈎引き等の医行為が行われている大学は約30%であり、(前川レポート、p4)。
残りの70%の医学部では見学のみといってよい状況でした。

そこで、平成3年に前川レポートがとりまとめられました。
医学生を「医療チームの一員として診療の実際を介して必要な
知識、技能、態度を体得させるが、その状況下で採血等侵襲性の高くない医行為を
指導医の指導・監督下で実施させれば、患者との接触を深めることができ、
それが実習の効果を高めることになる(p6)」、とされました。

しかし、医師免許を持たない医学生に医行為をさせることで患者さんに
不利益が及ぶことやその場合の責任をとること、指導の手間が増えることなどを
負担に感じる指導医や大学側の事情で見学主体の実習は続きました。

まさに、前川レポートのいうところの、
「臨床実習内容が主として医療の「見学」と一部の「介助」にとどまっているため、
臨床教育の目標の一つである医師として必要な基礎的技能や態度の修得については
必ずしも十分に達成できない」(前川レポートp3)、状態が続いたと言えます。


平成17年、「診療参加型臨床実習の実施のためのガイドライン」が作成されました。
「診療チームに参加し、その一員として診療業務を分担しながら
医師の職業的な知識・思考法・技能・態度の基本的な部分を学ぶことにある」とする
診療参加型実習の導入が謳われました。

(ア) 学生は教科書文献的知識だけでなく現場での思考法(臨床推論法)や実技、
   診療上や学習上の態度も含めて医師としての能力を総合的に学ぶ。

(イ) 実際の患者さんや医師以外の医療職を相手に業務を実体験しながら実践的に学ぶ
    等を挙げています(ガイドラインp2)。

こちらもまだまだ緒に就いたばかりです。勉強の機会を与えてくれるかどうかは
診療科ごとの温度差もありますし、医師不足が深刻な地方の医学部では先生方の
負担がますます大きくなるために現実的に困難という状況があります。

その意味で、平成21年1月から導入される、山形大学のスチューデントドクター制度は
画期的といえます。


【諸外国の臨床実習】

平成3年の前川レポートでは米国・英国・カナダの臨床実習を調査しています。

(前川レポートp5;調査結果の要約より)
医学生は、採血、鈎引き等の侵襲性の低い医行為から、腰椎穿刺、
手術助手等かなり高い医行為まで実施することが許されており、
更に各種検査の指示や処方まで、指導医の確認をとれば行うことが許されている

また、臨床実習は、医学生は病棟に所属し、医療チームの一員として
患者の医療に携わる形で実習を行ういわゆるクリニカルクラークシップの形式で実施されており、
医学生の行う医行為は、医行為の習得自体を目的とするものでなく、
患者のための医療サービスの一環であるという考えに立って実施されている


【スチューデントドクター制度と医行為】


必ず議論になるのは、「医学生が医行為を行うのは問題ではないか」という点です。

前川レポートでは医行為を3つに分類しています。
「医学生の臨床実習において、一定条件下で許容される基本的医行為の例示」
の水準I(指導医の指導・監視のもとに実施が許容されるもの)

スチューデントドクター制度で医学生に許可されるのはこの水準の医行為です。
すでに、医学生が医行為を行うことについては「特に法的に明確化する必要なし」
と前川レポートで謳われておりますので、各大学や指導医の裁量で可能になるといえます。

(前川レポートp7-8より)
医学生の医行為が患者の人体にとって危険かどうかは、具体的な場面で
指導医が判断すべき性格のものであって、法令上一律に定めるべき事柄ではないこと、
インターン制度においてもその実施に当たっての条件等は
実地修練運用基準で定められていたことなどから、臨床実習の条件等も
基本的指針によリ明示すれば十分であり、特に法的に明確化するまでの必要はないと考える。


【参考】

●指導にあたる医師が患者診療から離れた教育プログラムを組む時の注意点(ガイドラインp9より)

① 必要最小限の講義は盛り込んでもよいが、学習効果を高めるには、
 まずさせてみて本人ができないことを自覚した後に初めて教えるというやり方がよいとされている。

●指導にあたる医師が学生による診療参加について認識しておかねばならない法的側面
① 学生による診療録や医療文書の記載を指導にあたる医師が最終的に執筆・署名すればよい。

●1診療科あたり1~2 週間の配属期間で診療科毎に独立した学習評価を受けるのではなく、
  例えば、1診療科あたり4~12間の配属期間の中で指導にあたる医師から
  継続的な評価を受ける、さらには、診療科間の共通基準により診療科を越えて
  継続性のある学習評価を受けることなどの必要がある。
   (ガイドラインp2 診療参加型臨床実習の主旨より)

●「医学生が下記の条件の下に医行為を行う場合には、医師法上の違法性はないといえる」としている。
① 侵襲性のそれほど高くない一定のものに限られること
② 医学部教育の一環として一定の要件を満たす指導医によるきめ細かな指導・監督のもとに行われること
③ 臨床実習を行わせるに当たって事前に医学生の評価を行うことを条件とするならば、
  医学生が医行為を行っても、医師が医行為を行う場合と同程度に安全性を確保できる。
  また、医学生が医行為を行う手段・方法についても、上記の条件に加え、
④ 患者等の同意を得て実施することとすれば、社会通念から見て相当であると考えられる。
    (前川レポートp9,ガイドラインp14より)
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