ZDriver and a New Type

「今度の相手はお前が接触したアンノウン部隊・・・そうなんだろう?小僧!」
通信回線を開いたコックピットにはジェシー・D・ドライブス。
地上での戦闘はいつぶりだろうか・・・重力下での高速移動は、宇宙空間に比べると全くの別物となる。
それをふまえたとしても、このAICの面子の中で自分ほど動けるパイロットはいまい。
「・・・わけのわからない超長距離から狙撃された・・・されました。気をつけろ・・・てください」
イライラがそのまま聞こえるようだ。
Z+は先行する。アルク・E・ガッハークの乗るMk-Ⅱに速度を合わせるようにして。
飛行形態で飛んでいるが、余裕のある飛行に、恐らくアルクは『いつでもお前なんか振り切れるんだぜ』という言葉を思い浮かべてまた、イラついている事だろう。
実際、本当にいつでも振り切れるような状態なのだからしょうがない。
ジェシーは出撃してこのかた1度たりとも後から付いてくるアルクの姿を見ようとせず、レーダーレンジのモニターを除いている。
「今回は俺とお前の2人だけだが・・・その機体にはココじゃ何の期待もしていない。せいぜい落ちないように気をつけろ」
「な、なにぃ!」
そう。『ここでは』何もできない・・・このMk-Ⅱは地上用ではない。
ジェシー自身は一目で見破ったが、本人ははたしてそれに気付いているのかそうでないのか。そうでないのだろう。
「・・・もうすぐ目的地点だ。先行する!」
「なっ・・・!?」
速度を一気に上げるZ+。Mk-Ⅱが付いて来れるハズはない。
どんな戦場だろうとどんな場面だろうと。基地から全開走行で最初に一撃を加える・・・Z系の宿命みたいなものだ。
Z乗りは必ず、戦闘の序章を制せねばならない。
Mk-Ⅱの姿が途端に小さくなる。そして指示された地点・・・見えた。

「JD、交戦する!!」

一撃離脱。目視できる敵機はMk-Ⅱが2機。
アークオブノアに似た放熱板を持った機体を狙ってしまったのは、冷静な判断をするべき自分に少し感情が浮かんでしまったせいだろうか。
少し苦笑しながらビームスマートガンの引金を引き、着弾を見届けずにMS状態に変形。そのまま2機を軸にして円を描くように回り込む。
どうやら最初の一撃である程度のダメージは与えたようだ。放熱板付きの動きが鈍い。
見ろ。俺は何も変わっちゃいない。まだ行ける!まだ一歩を踏み出せる!
「弱い奴から叩く!」
牽制の一撃を放つと、再び飛行形態に戻り急上昇する。


その機体を目視できる位置までやってきたのはMk-Ⅱ.ARK-OF-NOAH・・・アルク機。
「ほ・・・本当に人間が動かしてるのか!?あの動きが!?」
この男の戦いの中に自分の入る余地があるのだろうか。
唖然と見守るしかないアルクの目には、急降下すると同時に相手の射撃をことごとく避けるZ+の姿。
そしてその銃口が敵機に向けられた時。

昔に居た。

この地球に来る前・・・長い間住み慣れたコロニーの一画。
アルクの目の前に差し出された小さな手。
その手を握ろうと必死でさしのべる自分の手も、小さな手。


・・・え?


「駄目だジェシー!!撃っちゃ駄目だ!!待ってくれ!!」
思わず叫んでいた。
根拠は全く無い。ただ何か怖い、とてつもなく恐ろしい感覚を背中に持った。
その言葉を聞いたZ+はトリガーを引く手を思わず止め、バランスを崩しながらも回避行動を敢行する。
ジェシーの反応速度の良さが無ければそのまま敵機を撃っていたか、もしくは制御を失い地上に激突していた事だろう。
「ちっ・・・!!小僧!・・・こいつは本気で厄介者だッ!邪魔をするな!」
光景がフラッシュバックして現実に戻る。
自分の口走った事に戸惑いながらも、Z+の援護をしなければと一歩踏み出した。
『白いの!貴様だけでも!!!』
そこにやってくる、もう1機が放つビームライフルの連激。
直撃・・・モニターが半分死ぬ。やばい。
ガン!
そして来た衝撃は、JDのZ+がMk-Ⅱを抱え上げた事によるものだった。
「とんだ疫病神だ!畜生!たった今からお前を死なせないのが俺の仕事だ!」






AIC-03、06、共に帰還。03は修理に回します。戦果はゼロ。パイロットは戦闘記録を・・・』







「俺は、地上での繋ぎ・・・でしょ?ガルシア・マックラーレン所長」
所長室の来客イスに深々と腰掛け、ジェシー・JD・ドライブスは腕を組んだ。
机の前では等のガルシア・マックラーレンが葉巻をふかしている。
返って来た言葉は無く、無言。
叩きのめされたZ乗りが行き着いたのは子守りの任務。正直情けない事この上ないが・・・そんな想いは"あの時”に比べりゃどうってことない。
「ならば俺は全力でこの部隊を守りますよ。どんな厄介者がいようとも、ね」
もう、決して仲間を落としたりはしない。
ZDriverの誇り、自分達が必ず部隊を護り切ってみせるという誇り高き騎士道。
そして・・・そしてあの時俺が護りきれなかった仲間達よ。必ず俺は仇を取る。
イスから立ち上がり所長室から出ようとするジェシー・JD・ドライブスの背中に、司令の声がかかった。
「君の任務は、確かにその通りだ。だが。もう一つ君の仕事がある」
「・・・何だってんですか」

「復活しろ」

「俺は今でも変わりませんよ」
何かを失った自分自身をごまかすように、俺は背中越しに言葉を吐き捨てた。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年08月29日 04:16
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。