-筑波研究学園都市(つくば市内)-

街路樹が均一に並び、都市部の道路を感じさせる街並みが美しい。 ここはつくば市。

 「で、どこの建物をぶっぱするの?」

高速を降り下道で学園東大通りを走りながら後ろに質問を投げる。

 「すぐ左に見えてくる敷地の一角…」

顔色悪く水を飲みながらイベリコは指さす。

 「国の頭脳の一部か…」

研究学園都市とは茨城県南部に位置する研究学園都市である。地理的な範囲は行政的に茨城県つくば市と同じと定義され、「研究学園地区(約2,700ha)」と「周辺開発地区」で構成される。1960年代以降に開発され、2012年時点で約300の研究機関・企業と20,185人の研究者を擁し、このうち日本人の博士号取得者は7,215人に及ぶ。かつては万博も開催され、日本の宇宙センターもここに拠点を置くほどの場所だ。

 「まずは荷物と着替えあるからホテルへ…」

ナビに入力したホテルへ車を向ける。

 

-つくば市 大清水公園前-

 「これは…」

 「すごく…」

 「大きいです…」

ナビ通りに目的地に着いたのだが、場違いにもほどがありそうな高級ホテルに着いた。何度も住所を確認するがここだ。

 「ドレスコードいるやつじゃない?なんも用意してないよ?」

 「宿泊だけなら大丈夫なはずです…」

なんと手配されたのは4星ホテルだ。星つきの宿など縁がない。あるわけがない。

正面玄関に車を寄せるとドアマンに迎えられ、トランクや後部座席の荷物を降ろしてもらう。イベリコが最大限の笑顔を出しながら受付へ向かう。

ここで警官の職質がきたら北の大地と同じ事を繰り返しそうである。

 

荷物をカートに載せイベリコが受付を済まし、ベルボーイが部屋まで案内する。

高級すぎる館内に三人とも緊張しながらエレベーターに乗る。

動いている時のエレベーターの中の空気が気まずい。

ポーン

10階に到着し、先導するベルボーイに連れられ通された部屋にさらに目が眩んだ。

そこはファミリースイートと呼ばれる部屋 

54.0m²(ベッドルーム 23.9m²58in.フルハイビジョンTV/ブルーレイディスクプレーヤー/専用インターネット回線/8名掛けダイニングテーブル&チェア、4名掛けラウンジテーブル&チェアダブルベイシン洗面カウンター/ジャグジーバス&TV/マッサージシャワーブース カウチチェア、オットマンチェア/46in.液晶TVCDi-podステーション/セーフティーボックス/ミニバー

 

 「教授すげぇ…」

 「ここに住みたい」

コウがネットに繋ぎながらベッドに飛び込む

 「荷物置いたらこれからの予定を確認しますよ」

 「うーい」

 「あーい」

 

 「まず支給されたこの制服と白衣を羽織って研究所を訪れます。アポは取ってあるのですぐに責任者と合えるはずです」

 「責任者?」

 「教授が憎んでる人。私たちは飛び級高校生でこの研究の分野に精通しているので紹介で研究に参加します。研究をしながら建物の構造 需要データの保管場所・破壊場所・逃走ルートの確認を同時にこなしてもらいます。コウは初日はここからサポートと情報整理、私たちは隙をみてデータの保管場所を探します。これを」

イベリコからUSBメモリを渡される。

 「これは1TBの容量を誇る最新のUSBです。高いので取り扱いに注意してください」

 「ちなみに…いくら…?」

 「30万でしたっけ?」

 「大切に扱います」

 

クリーニング袋から全国でも有名なお嬢様学校「常盤台」の制服を取りだす。

夏服だが紺のスカートにYシャツの上にベージュのベストを着る

 「ミニスカートなんていつ以来だか」

 「そもそも学生服自体…」

 

 「似合ってる?」

 「小学生に(ry ごふぅ」コウに肘を入れた

 「首元に咽頭マイクと骨伝導イヤホンが仕込んであります」

イベリコが坦々と制服の説明を進める。

 「銃は…持てないな。 小型のナイフぐらいは仕込んでみるか」

 「学生鞄を携行するのでそちらに銃を入れてもいいですが、初日なので騒ぎは絶対に起こさないでくださいね?」

 「善処します」

 「さて、行きましょう」

 

ホテルを出て研究所のある南へ向かう。 さすがに飛び級設定とは言え、高校生が車を運転すると怪しまれるので徒歩で向かう3.4km 45分ほどの道のりだ。

 「これは掃除ロボット?」

 円筒状の機械がブラシとファンを作動させながら公園や歩道を往きかう。

 「ググってみたけどルンバの進化系みたいなもの プログラムされたルートの掃除はもちろん、ゴミを見つけると回収するAIなども積まれていて搭載カメラは警備も兼ねている」

 無線越しにコウのタイプ音が聞こえる。

 「上空の飛行船も天気予報やニュースを流していて本当に近未来の技術を感じます。あ、コウ?ちょっと無線封鎖するよ?」

 「? わかった」

 「どうした?」

 「貴女はいつになったら私に股を開くんですか!!」 

イベリコがこっちを向き、両手で肩をがっしり掴むんで来る。

 「だから本気で惚れた相手しか身体は預けないっていってるだろ!」

 「こんな魅力的な女が側にいながらピクリとも来ないのですか!?襲ってもいいのですよ!」

イベリコがかなり息を荒げている。 大通のど真ん中で。

 「落ち着こう お前は大切な家族だ。そのような関係にはできない それでも我慢できないのなら…」

 イベリコを強く抱きしめた。両手を背中にまわして顔を彼女の顔の横にやり擦りつける。

 「今はこれで我慢してくれ 大切な家族なんだ」

 

 「仕事へ急ごう」

顔を真っ赤にするイベリコを放置して先に進む

 

 

-つくば技術研究所-

総合案内で名前を伝えると来賓用の身分証を渡され、建物の中に通された。

玄関から職員用通路へ入り、いかにもな研究室の中を抜けていくと身体にセンサーやコード、パワードアーマーの様なものを取りつけたり、VR用のHMDを装着した研究者などでいっぱいだ。ここはヴァーチャルリアリティなどの研究をしているのか。

途中 「資料室」「電算室」と札のついた部屋を見つけたので記憶しておく

 

そして「主任」と書かれた部屋の扉が開かれ、白衣着た函館の教授に似たような風貌の科学者に出迎えられた。

 「ようこそ我が研究所へ 貴女方の学歴、実績は拝見しましたが大変すばらしいです。そしてこの実験に協力していただけるとあって私を始めメンバー一同大喜びをしております」

 「はじめまして、常盤台特別クラス花澤香菜と申します。この度は我々のわがままをお引き受けくださり誠にありがとうございます」 

イベリコが挨拶 もちろん偽名

 「同じく二階堂詠春と申します」 同じく偽名

 「会議室でプロジェクトメンバーが研究物を用意しているから」

すぐ隣の会議室へと入る。 中には5名の白衣と複数のPC・HMDや全身に装着するセンサーのようなものがある

 「ここから先の内容は絶対機密とする。 いいね?」 

主任が強く言い放つ

 「もちろんわかっております」

主任がプロジェクターで映像を流す。

 

 「これはVR空間において中の物・人物に触れたら機械を通して手のひらに感触など身体に伝えるものだ。すでに米軍はVR訓練を実用しているがこれはその先をい行く。 なんと、VRの中にいるNPCと会話、接触ができるのだ!!」

 「感覚がフィードバックされると言う事は、痛みもですか?」

 「もちろん痛みを感じる事ができ、体性感覚・特殊感覚、主に五感と呼ばれるものは再現できる。空間の中で熱い物に触れれば熱いと感じ、程度によってはその後の後遺症まで再現する。これは頭部につける特殊な装置から発する電波と脳波をシンクロさせ、感覚器官・神経に直接伝達する。グローブから再現された痛みだけを皮膚で感じるのとは違う。

もちろん生物学上危険な行為であるため長年大学などで研究をした。」

 「これで世界は変わる。いや、変えるのだ」 

主任は声をたからげる

 「これが主任の研究…」

 想像より上の技術に驚きを隠せない

 「だが、実は完成していない…」

 「これだけでも世界を驚かす事は可能ですよ?」

 「我々が目指すのは…」

 「目指すのは…」

 唾を飲む

 

 「好きなアニメキャラと会話したり身体を交えることだ!!そのために人生数十年重ね、ここまでたどり着いた!」 

かなり興奮してる

 

 「音声もアニメやゲーム音声を細かく解析してその声優さんの声をデータから出し合成、またボイスロイドより違和感なく会話が可能 メインサーバーに接続すれば使用したデータを集積して改善につなげる 

先ほどの感覚フィードバックにより手を繋いで歩いたりも現時点で可能になるが、今もっとも我々が望み、実現を目指すのが」

 「…」

 

 「性交だ」

 

 

 「なんとなく想像できました」 

イベリコの冷たいセリフ

 「好きなアニメキャラとのセックス…それはどんなにすばらしいことか…誰もが夢みたこと。 

だが、自慰補助具を使ったものはもう登場しているので我々は別に快楽を伝達させようと考える。 神経に直接、ね」

 「先ほど説明した通りこの通常のVRキットも特殊脳波で神経を共鳴させ、痛みなどを感じさせることを可能としてきた」

 「そこまで開発されたのならソフト弄って完成するのでは…?」

 「それが重大な壁に当たってここ数年研究が進んでいない…」

 「壁 とは?」

 「性交の快楽や女性器を知らない……ここにいる全員童貞で業務以外で女性と手を握ったことがないんだ」

 「あー」

 「あー」

 二次元を夢見る童貞あるある

 「なので今現在帰国子女で美少女飛び級高校生が同じ部屋にいるとだけあってみんな緊張している 大学入試以上に」

 確かに顔は赤く息も荒い

 「主任は大丈夫なのです?」 

イベリコの冷ややかな目つきは変わらない

 「管理職になると女性の部下をもったりするから喋る程度は・・・でも今、動機がやばくて倒れそうだ」

 「でもこの世界に輝く研究でしたら業務として研究者か検体を公募すれば」

 「女性器の構造などは医学部からデータを貰ったのでたしかに完成しそうなのだが、データだけで作ったものほど信用ならないものはない」

 「だからと言って私たちがお相手するのは絶対に嫌ですよ?」 

イベリコの満面の笑み

 「そりゃそんな事したらこのチームは処分くらって解散だろう」

 「では我々になにを求めるのです?」

 「総合的なデバックと女性から体験した時の感想などなど 最悪今完成している二次元の女の子と好きな会話をできる程度まであれば世間には出せる」

妥協点そこでいいのか

 「本日はシステム担当が予定の都合でいませんのでVRを体験する程度になりますが?」

 「構わない 君は資料によると米軍のVR訓練を受けた事があるのだろう?」

 主任がこちらをみる

 「ええ、まだ正式ロールアウト前に全パターンを」

 「結構 やはり一番マーケットでうるさいのは軍部だ。なので簡単な歩兵訓練をお願いしたい。あれより肉体負荷を低減しているし楽に使いこなせると思う」

 「設定はすべてお任せします」

 「ではこちらにある 始めよう」

プロジェクターを繋ぐPCからカセットのような物を取りだして説明が終わる。

 「磁気テープで保管されているのですか?」

イベリコは見逃がさない。

 「ああ、やはり電子管理は怖い。 物理での保存が一番だ」

 

作業着に着替え身体にコードのついたバンドや電極を貼っていく 数世代前まではHMDからの映像と音声だけであったが、床が走ってもラニングマシンのように動いてくれる専用部屋を使えば視覚・聴覚・感覚までもVR世界とリンクできる。

HMDを装着して起動すると研究所のロゴと共に映像が流れ始める 。

 「では始めよう」 

別室でモニタしている主任の掛け声で私はどこかの砂漠の街に飛ばされた 周囲には味方NPC3人 装備を持っているため身体にはずっしりと重量感を感じる。

 「今までできなった味方とコミュケーションをしながら進んでくれ 自由に指示を出していい このシュミュレーションに正解とかないんだ。常時変わる戦場はこっちのコンピュータが計算して変更する」

 へぇ、それは面白い

 「アイコンタクト ツーマンセル ツータッグ ムーブ!」

ハンドシグナルと掛け声でCPUが二人組を作りキャットウォークでゆっくりと進む 

本当に自分の思い通りにNPCを動かせるのか。 システム側の処理が重そうだが、それを解決したのだろう。 これを公表すれば軍の教育施設は変わるだろうな。

 「11時方向 テクニカル数1、3番(NPCは名前がない)撃て。 落ちつけ冷静に」

NPCが敵兵士を一発で仕留める。

 「これ本当に一般米兵設定?こいつら上手いぞ?」

 「それは君が落ちつけと言ったから反応して実行したのさ」

 「なるほど」

肌に照りつける太陽 

砂塵をすくんだ暑い風が舞い 

汗をかきながら前へ進む。 すべて機械が作り出した感覚で

 

 

-つくば市内 市街地-

帰り道、夏の夕陽が照らしつける中とぼとぼとホテルへ向け歩く。ヤシの実サイダーを片手に熱いアスファルトの上を歩くがあつい

「あついから路地いこ?」

イベリコを連れ大通から外れ飲食店の並ぶ路地へ入る。

と瞬間

 「へっへっへ…」

 「かわいいじゃーん」

 「今から遊ばない?」

テンプレ通り不良に絡まれる。 しまった今は制服姿だ。

 「急いでるから通して」

避けて通ろうとするも腕を掴まれ

 「暑そうだね こっちで涼もうぜ」

お城風の建物方向へ誘導される

 「やめてください!」

 イベリコが必死で抵抗するふりをするもやはり男相手では

 「このっ」

 鞄に入った拳銃を取り出そうと手をかけた瞬間

 「ジャッジメントですの!」 

腕章を掲げながら数名の女子学生が後方より現れる

 「やべっ」

 「逃げるぞ」

 不良は私とイベリコの鞄を奪い全力で逃げた と思った瞬間

 「逃がしませんわ」

 さきほどまで背後にいた女子学生が彼らを取りおさえていた

 「大丈夫ですか?」 

別の制服ではあるものの、同じ腕章をして花の髪飾りをつけた生徒に介抱される

 「大丈夫 傷とかないから」

 「こちらも大丈夫です」 

 「無事で何よりです。こちら持ち物の鞄を」

 瞬間移動をした生徒が鞄を手渡してくれる

 「あの、お礼は」

 「必要ありません 悪いのはこいつらです 暴行罪に窃盗罪でこれから警察へ引き渡します。貴女方もなるべく大通を歩いて帰路について下さいね」

 「ありがとうございました」

 

大通へ出て日差しを我慢しながらまた歩く

 「なんだこの都市は…学生が警察みたいな自警団を持ってるのか?」

 「それに瞬間移動…?みたいな事をしてました。いったい…」

謎を多く抱えたままホテルへと戻る

 

 

 

 

-ホテル-

 「まいった サーバーにちょちょいと高圧電流流せば終わると思っていたが、物理保存とは」

レストランは子供の入れる空気ではなかったのでファミレスで夕食も終えて、リビングでお菓子を広げての作戦会議と

 「データ化されてるものは全体の三分の一、とここまでネット対策してるとは驚きです。いちいち外付けで読み込むんですよ?」 

イベリコがポテチをかじりながら資料の入ったファイルをめくる

 「私たちみたいなのから守るには一番なんだよ」 

ウはホッキーを咥えながらノートPCを叩く

 「で、ショッピングカートいっぱいに磁気テープ載せて帰る?」 

私はカキの種をほおばる

 「約200平米分のテープを?バカ言え」

 「おそらく最重要テープは金庫かどこか別にあります…それとデータ化されたものだけでも持って行きましょう。最悪破壊のみでもOKを貰ってます」

 「問題は…手元のプラスチック爆弾だけじゃデータは破壊できないことか」

キャリーケースには1kgのC4爆薬しか入っていない

 「ディスク系は割れても修復はできるから、跡形もなく消さないと 磁気テープは燃やすか?」 

最近はHDDを叩き割っても何しても残骸があれば修復できるらしい

 「あの保管室は防火設備に優れています。マッチで火をつけた程度では無理ですよ?」 

すぐに研究所の見取り図が出される

 「しかしすごい施設だな。 研究内容も歴史に名を刻みそうな内容なのにエロ目的ではイグノーベル賞いきだな」 

コウが炭酸飲料に手を伸ばす

 「最新の科学技術は軍事兵器かエロから生まれるものです。日用品のほとんどが元は軍用品」

 「欲求ってすばらしい。 さて、どう破壊する?」

 「ガソリンまくか」 

安直な考えを提示する

 「どれだけ必要よ」

 「んー コウ、いつもの通販サイト開いて 米軍の横流し品のバーゲン漁ろう」

 「B52でも買って更地にする?」 

その手があるか

 「高いので却下です」

 「そもそもどっから飛ばすんだよ… これ、一個ポチってお急ぎ便で」

 「え?セット品だよ?」

 「いいんだよ 私にいい考えがある」私はキメ顔でそう言った

 「爆発しそう」

 「爆発させるんだよ」

 

 

女子力のあるトークも弾んだところで時刻は0時を過ぎる

 「そろそろ寝る…明日も私がモルモットだろ?」

いくら身体自慢と言えど疲れる

立ち上がり私のベッドへ向かう

 「そうしましょう」

 イベリコも続く

 「お、そうだな」

 コウも続く

一応スイートでベッドの大きさにゆとりはあるが、三人は狭い

 「てっか、なんで二人も一緒に入ってるんだよ!!」

 「恐らく貧乏人の癖です」

 「野生の感」

 「あっちにそれぞれのベッドあるだろ」

 「しってます?兎はさびしいと死んでしまうってのはデマなんですよ?」

 「そうだ、一人ぼっちはさみしいもんな」

 「脈絡ないし、会話になってないし、無駄知識だし、そもそも自宅では個室あるだルルォ!?」

 「一緒に寝たい時もあるじゃないあ」

 「オニイサンイッショニネルネー」

 

 「出てけ!!」

二人を蹴り飛ばし部屋から出して鍵を閉める

ドアを叩く音と不満の声が聞こえるがすでに睡魔に襲われ意識が遠退いていた。

最終更新:2016年11月02日 23:22