-つくば技術研究所-

二日目

朝から実験部屋に入りVR装置のデバックをすすめる。

今日はコウが付属しているので作業のデータを取るフリをしてもらい、その間にいろいろデータを頂く予定

が、

「個人のPCの持ち込みはお断りしているんだ。ウィルスやハッキング対策でね」

 「ん~ならこの私が作ったVR訓練用のパッチが入ったUSBメモリは?」

 「それなら通信機能もなさそうですし、許可します。どちらかと言えばどんなパッチが気になりますが」

 「そっちにデータ送るよ」

 作業用に与えられたPCにメモリを接続してコウが慣れた手つきで操作する

 「これは、すごい 本当に君らは天才なんだな!」

 主任が驚くデータは天敵が作ったものだからそりゃね。他の技術者も主任のPCに群がる

 「これの特徴はですね」 

イベリコが説明しながら目線を飛ばした

瞬間、コウはメモリに仕込んだハック用のソフトウェアを起動してバックドアを仕掛けると共に保管場所など建築物のデータも吸い取る

 「ほら、せっせと動け」

私は昨日と同じく身体を動かし続けるのだが

 

-つくば市吾妻-

結局一日中走りまわされフラフラとした脚で街を歩く

「結構な成果を得られた」

らしいが今の私は食事以外頭にない

ホテルには日本食、中華、洋食とレストランが揃っているが、どれも一流で入りづらく、さらに値段が高いので、帰りに駅前をブラついて適当な飲食店を探す。

せっかくなのでこの辺の美味しい店を探そうとスマホと必死に格闘しているが

「ここにしましょう」

財布を握ってるイベリコがすでにお店に入ってしまった。

黄色がイメージカラーの全国チェーン展開している長崎ちゃんぽんのお店で手軽さと皿うどんがうまい。

 「もっと選ばせてよぉ」 

文句を言いながらも続く

 「どうっせ油と麺マシマシのラーメン屋でも入るつもりでしょう。 もしくは大盛り20分チャレンジとか」

 「」  返す言葉もない

 「出禁の店今いくつよ」 

コウが通されたテーブル席を陣取る

 「普通の量を普通に食べればいいのです」

 「さっきまで汗出して動いてたこっちの身にもなれ…」

 「ご注文は?」

 店員に尋ねられたので

 「ちゃんぽん麺増し400g あとはちゃんぽん並み二つ お願いします」

二人に決める隙を与えず注文を通した

 「あ、」

 「こら」

 「へへーんだ」

 

間もなくどんぶりが三つ運ばれてくる

どんぶりの中には白く輝くスープが張られ、その中には太麺が踊る 麺の上には溢れんばかり野菜、魚介が載せられ彩りを飾る

美味しい国産野菜と豊富な山海の具材から生まれるスープの深いコク。具の油から薫る香ばしさ どれをとっても文句はない

私のは大盛りで麺が並みの二倍だが、この程度

「「「いただきます」」」

割り箸を割る音が響いた

 

 

-深夜 技術研究所-

深夜と言えど残業や終わらない論文のために人が残る研究所の中で、すでに帰宅したはずの学生が実験室でこそこそPCを弄っていた。

 「コウ、そっちはどう?」

 明りはモニターだけで青い光がまぶしい。

 「データはこっからじゃ無理。 そこで直接コピーして」 

サーバールームに潜入したコウに解析をかせると欲しいデータは研究所内でも共有はされてないらしい。

 「この固定PCか。起動するから待って」

 いつも実験で使う機材が繋がるPC見つけ、スイッチを入れるとピポッっと電子音の後にパンスポォンポォン・・・!パンポォン・・・! と起動音OS画面がでる

カタカタカタカタ

 「読み込みなげぇ」

 「ふるっ」

ログインIDとパスワードを求められた。

 「コウ、IDとかわかる?」

 「知ってるわけない なんか手がかりは…」

周囲を見渡す。 

 「んっ…?」 

画面端にふせんが貼ってある

 ID:niconico

 PW:07214545

 「ログインできた」

 「嘘だろぉ!?」

 

数分待ってデスクトップ画面が安定したのでUSBに例の高いメモリを刺す。

 「で、こっから全部のドライバをドラッグしてコピーでいいの?」

 「そんなザルい方法でできる訳ないだろ。 今からコンマド教えるからそれ打ち込んで…」

 「コピーできてる!あと30分はかかるけど」

 「うっそだろぉ!?」

 「イベリコ、そっちは?」

 「今荷物満載の車で駐車場に到着 裏口に停めるからカメラ消してください」

 「あいよー」

 「コピーに時間かかるから手伝う」

 PCをそのままに裏口へ向かう。

 

裏口にはM3を近くまで寄せて大きな機材を降ろすイベリコの姿があった。

トランクにはさっき通販で買った物が届いた物が入っており、かなりの重量なので事前にスーパーから拝借したショッピングカートにタンクのついた装置を載せる。

 「よいしょっ」

 そして背中に大きなコードリールを背負う。

 「重いです…どっかに台車は…」

 イベリコが一斗缶のような容器を手に震えている。

 「それ火気厳禁の落下禁止だからね」

 「わかってま…す」 

ショッピングカートに移し安堵する。

 「コウ、コピー終わってるかな?」 

無線で尋ねる。

 「時間的に大丈夫なはず」    

 「さぁ、磁気テープのバーゲンセールだ」

コウが仕掛けた爆薬で配電盤を焼き、電力をすべてカットする。緊急用の自家発電装置はさっき憂さ晴らしにバールのようなもので叩いておいた。

建物の明りがすべて消え、闇に包まれる もちろんUSBを刺したPCも※読者の皆さんは安全に取り外しできる項目をクリックしてからUSB外しましょう。真似しないで

私たちは暗視装置を装着し防犯装置の鳴らなくなった扉を次々と蹴り開けていく

 「イベリコは主任の部屋へ行き磁気テープを 私は花火大会の準備をする。ついでにさっきコピーしてたUSBメモリも回収しておいて」

 「了解です、気をつけて」 

イベリコが離れ一人暗く静かな廊下を歩く

背中のコードリールがからからと音を立てながら電線を落としていく 定期的に手のひらサイズのC4も結んで投げておく

事前に覚えた地図を思い出しながら資料室のある区画へ辿り付く

 「ここだな」

重厚感のある扉の間にたどりつくとドアノブと蝶番にスマホサイズの爆薬を張って少し離れる。

 

 「お邪魔しまーす!」  

少量の爆薬で資料室の扉を破壊し中へ入る。 いくらICカードや指紋認証のセキュリティでも物理破壊には勝てない。

 

 「~♪」

鼻歌を歌いながら缶を開け、タンクのついた装置へ液体を流し込み、入っていた液体と混ぜる。

やがてそれはセリー状となった。

装置からホースを取り消火器の用に構えスイッチを押す。

タンク内の液体を噴射し、天井床壁棚保管箱をゼリーで埋めていく。

 「スプラトーンやってるみたい!!」

楽しみながら散布を続ける。

こ れは火炎射器の発射機を改造して中身だけ噴出するもので、 中身はナパーム弾や火炎放射器の燃料に使われるポリスチレン・ベンゼン・ガソリンを混ぜた物だ。 付着するとその親油性のために落ちにくく、水をかけても消火が困難である。消火するためには界面活性剤を含む水か、ガソリン火災用の消火器が必要である。  なのでこの部屋のスプリンクラーでの消火は不可能なのだ。

火炎放射器やナパーム条約で禁止されてから闇市では簡単に使える破壊兵器として人気なので在庫もありすぐ届いた。

 「どう?そろそろ復旧される?」 

散布を続けながら無線に呼びかける。

 「自家発電装置も破壊されてる事に不審を抱いて、警察とかに通報してる。 そろそろやばい」 

コウの声に焦りを感じる。

 「イベリコ?」

 彼女も大丈夫だろうか

 「主任が大事に隠し持ってたテープを回収しました。彼は私のテクで昇天」 

残業で疲れてた彼にナニをしたのか

 「じゃあ車に先に戻ってて。 起爆用の爆薬おいたらすぐ逃げる」

部屋がゼリーで満たされたところでC4爆薬を取りだし、電線と信管を繋ぐ

 「POIっと」

部屋の中にC4を投げ捨て車のある出口へ向かうと突然明りが灯る 目の前が明るくなり画面が焼けたので急いで暗視装置を外すと

 

 「動くな!」 

ボディアーマーを着こみ武装した集団に囲まれた

 

 

 「まずい 先進状況救助隊だ」 

 「なにそれ」

 「アンチスキルって呼ばれる治安維持組織。 警察よりこわい」

 「ああ、銃向けられてる」

 「君はどこの学生?そこで何をしていたの?」 

リーダー格の警備員に身分を求められる

 「常盤台の…」 

学生証を取りだす仕草でポケットに手を入れ

 「常盤台の…?」

 「バイバイ」

閃光手榴弾を落とし目を隠す

電気がついたとは言え夜に慣れた目に強烈な閃光は大敵

 

 「ぅぐぅあ」 

叩きつける重い音

フラつく警備員を一人背負い投げ銃を奪う

 「SIG552?珍しいもの使ってるねぇ」

弾倉を確認し、セレクターをバーストに入れて持ち去る

 「銃を奪われた 応援は・・・」 

置き去りにされた警備員が無線に叫ぶ

 

廊下を走る途中窓から外を見ると装甲車とヘリに外周を囲まれていた。

裏口の方から銃声が聞こえる おそらくイベコウが交戦している。

 「むっ」

建物内から裏口へ向かう部隊と出くわす

 「銃をおr」タタタタン

ためらいなく撃つ。 相手は武装し、盾まで持っているのだ。

 

しかし

 「抜けないなぁ」 

5.56mm弾をリズムよく撃つも透明の防弾盾にさえぎられる

 

 「抵抗をやめなさい」 

足元を牽制射撃され、一瞬立ち止まる

拾い物で残弾はゼロ 

 「無駄な事はやめなs」

 制止を求められる が、ナイフはある 太ももにベルトで固定した二本抜きとり前方へ走りだす。 一気に近づきハードル走のように盾を飛び越えて列に飛び込む。

 「ギャオ」 

近い警備員から喉元など装甲のない部分を左手で切りつけ、右手で突く

 「」  状況を把握できない者と叫ぶ者で混乱する 

くるくる踊るようにナイフを振り、最後の一人の首を裂いたとこで廊下は静かになる

 「結構かわいい制服なのに」 

頭から浴びた返り血で全身は汚れ、真っ赤に染まる。

 「はやくこい もたんぞ」 

無線からコウの必死な叫びが聞こえ再び走る。

 

 「ごめん 待った?」 

裏口に辿り着くと装甲車にパトカーから照明を当てられ、駐車場のワゴン車越しにイベコウが銃撃戦をしていた。

 「待った?じゃない!!」

 「とりあえずこれを」 

イベリコがバッグをこちらに蹴り飛ばす。 中にはACRといつも使う装備が入っている。

手早く組み立て、まぶしく照らしつける照明車に向かってバラまく

 「眩しいんだよ!」

いくつか照明を割ったとこで

 「左の垣根 増援」

 コウの声 すぐに照準を合わせ頭に撃ち込んで沈静化させる。

正面の装甲車が邪魔だ

 「効くかな?」

 アンダーマウントのM204擲弾発射器から40mmグレネード弾を装甲車に打ち込むも

 「あまり効果ないですね」

 しゃがんで弾倉交換をしながらイベリコが確認する

 「ジリ品かな」 

三人しゃがみ次どうするか会議

 「トランクに入ってるLAWで装甲車を動かして隙間つくる。 あとはイベリコ先生のドライビングテクで逃げよう」 

コウの提案

 「賛成。 まだ花火も上がってないしね」

 手元の起爆スイッチを遊ばせる

 「ではトランク開けますから持てるだけの銃器を出して後部座席に乗車。 二人は応戦してください」

リモコンキーでM3の鍵とトランクが開く

 「BOM」

電線から延びるスイッチを押してC4を起爆する 小さな爆発の後大きく地響きのするような轟音とともに窓から炎が立ち込めた 転々と置いた爆薬で支えを失った建物は倒壊を始める

保管庫は爆発と着火した炎を上げ、高熱で磁気テープが焼かれていく 建物へも火は移りこの勢いでは数分で全焼するだろう 大量の酸素を焼き尽くすこの着火剤は酸欠などもおこすため、中にいる人間は助からないだろう

火災警報器が鳴り、消火器などで初期消火する者も見えるが、スプリンクラーの水ですら効果のない着火剤には焼け石に水もいいとこだ

周囲が動揺する中

イベリコのフルバーストの援護でコウと共にトランクへ走り2.5kgの筒を数本と予備弾倉を後部座席へ投げて滑り込むように乗車 

サンルーフを開けコウがM249で援護射撃すると、ドライバー様がサイドテールを留めているリボンをほどき、降ろしたその綺麗な赤髪を靡かせ運転席に駆け込む

エンジンを手早く始動し

 「捕まってください!」

乾いたエンジン音が大きく響きアクセル全開の車体はパワースライドさせながら走りだす

回転数をレブまで当てながらパドルシフトでギアを換えていく殺人的加速に身体がとられるが、筒を長く伸ばしてなんとかサンフーフから身を乗り出し構える

トリガーを押すと激しいバックブラストと共にM72 LAWの弾頭が撃ちだされ正面の装甲車へ着弾し爆破する

戦車など主力車両は抜けないものの、この程度なら破壊が可能だ

 「道は開いた いけ!」

銃撃を避けながらの蛇行運転をやめ、迷いもなく隙間へ突っ込む

車幅ギリギリだがそのハンドル裁きにブレはなく、静かに包囲網から脱出した

狭い敷地内を車両・障害物何一つ当てずに高速で走り、学園東大通へと出る

検問が張られているが銃撃で怯ませ、歩道の隙間などを利用して突破する

 「このまま高速上がる?」 

弾倉を交換しながら聞く

 「封鎖されてなければ…ですが」

 運転に集中している

 「先に後ろにお客様だ」

 パトカーと警備員の車両が増えてくる 上空にはヘリもサーチライトをチラつかせながら追跡をしている

後部座席二人で銃撃するも動く車の上では当てづらい

 「こりゃ質より量だな」 

 コウが二脚を天井に立て、しっかり肩でホールドしてリブム良く撃ちこむ 銃撃に慣れない日本警察などすぐに視界から消えるものの、どうやら荒事が日常の警備員はこの程度では無理らしい あちらも銃を撃ってきた

 「タイヤをやらせないでください!」

イベリコ先生の悲痛な叫びに答えなくては

 

 「このあたり」

ホロサイトを除きながら瞬間を待つ

前後左右に動く相手車両の銃座が射線に出るのをしっかり待ち、引き金を引く

銃撃は止んだので運転手を狙う

 「そこ!」

狙いはいいが防弾ガラスのようで白いクモの巣のような亀裂ができる

視界を邪魔できたのか速度落としたの結果往来か

 「おらおらおらおら」

他の車両はコウのM249制射で次々と失速していた

 「私の見せ場ないじゃん!」

 

 「車内に入って」

 イベリコが叫びが聞こえた直後

彼女はハンドルを左へ切り、直後反対へ切り込みカウンターを当てながら、アクセルを踏み込み、綺麗なドリフトで交差点をクリアした

後続の車両は曲がり切れずに玉突き事故や一般車両との衝突をする

 「コウ ヘリを集中的に撃て」 

指示を出して残りにM72をヘリに向けて撃ちこんだ

 

 「やったか?」

無誘導では当たるはずもなく、コウが銃撃で牽制する

 「当たってはいるな 操縦が乱れてる」

ヘリは追跡を重視しているようで攻撃はしてこない

 

 「高速が空いてる…?」 

その呟きがきこえた瞬間ブレーキ

速度を落としながら車は高速のICへと突っ込んだ

料金所を丁寧に止まることなく突破し、常磐道下りへ分岐を横に滑りながら侵入する

そのままドリフトを続けるようにスキール音を響かせながら大きなカーブを抜け、加速路へ出ると本線までの直線でギアを一速落としてアクセルを踏み切った

メーターは200を振り切ってさらに加速をする 窓をあけてられないのでパワーウィンドを閉めてコウと息をつく

 

 「このまま逃げれるといいねぇ」

高速ICで追手のパトカーなどは振り切り、ヘリは大量の銃弾を浴びせたのが効いたのかもういない

街灯もない真っ暗な道路を白いセダンが走り抜ける

帰りのフェリーはきっと爆睡だろう 疲労感全開でシートに深く腰掛け、外を眺める

 

最終更新:2016年11月02日 23:29