-横浜市中央区 ホテル-
朝食は毎度おなじみバイキング形式で好きな物をとり食べる。私は王道を往く和食でイベリコはパンと洋食、コウはあまり皿には盛らない。4人がけのテーブル席をあらかじめ取っておいたので先に主食の皿を置いたら飲み物を選びに向かう。いつもなら珈琲なのだが、ごはんとみそ汁にはどうかと思ったので冷たい緑茶をコップに注ぐ。
「目標は7名、各自の顔写真は覚えましたか?」
「人の顔覚えるの得意じゃないんで」
「私前線でないんで」
「覚えて下さいね?」
「「はい」」
「最重要目標はこのリーダー格の男 篠塚 巧 です」
「うわっ」
「アウトレイジにでてきそう」
「しかしどっかで見たような…過去に…どこか」
「あちらもなにかしらの対抗手段を用意してるはずなので気を抜かないようにお願いします。」
「失敗したら爆破オチ?」
「にしてもいいですが、一般人の二次災害がとても多く想定されますので無駄な殺生を避けるためにも最低限の無駄のない動きを期待します。」
「私は今回はなにをすればいいんだ?」
「コウは裏から入って事務所で監視カメラの記録媒体を破壊してください。店内でドンパチ賑やかになったら援護お願いします。」
「ういー」
「ま、簡単な仕事だろうから食べ放題を楽しもうぜ~」
そう、ここにいる誰もがすぐ終わり横浜観光へ行けると思っていた。
-横浜市-
閃光手榴弾を投げて自分のテーブルに伏せる。強烈な光に店内は照らされ、通常であれば気絶か視界を失っているはず だったが、その7人は平然とその場に立ち尽くす。
「あれは、レイ○ンのサングラス!全員装備していたの!?」
「知っているのかイベリコ!?」
「選ばれし者にしか着用できない伝説のサングラスです。あの光程度は防げるはず」
「ならばっ」
ハンドガード上部にある槓桿を引き初弾を装填すると、セレクターをフルオートに切り替え、ソファから身を少し出してACRで牽制射撃を開始。3~5発ずつ撃ち、自分で残弾を確認しながら発砲を行う。金色の薬きょうが通路の方へキラキラと舞い、左にいたイベリコもMP7をリズミカルにバラまく。
「イヤーッ!!」
掛け声と共に目標に命中する前に何かに弾かれ、彼らは無傷だ。
「えっ…」
「そんな、ありえない」
二人とも驚愕する。 イベリコはともかく私はしっかり照準を合わせて放ったはずなのに
すべて撃ち切り手元の銃は静かに硝煙を上げている。
「今度はこちらの出番だな」
マフィアのような顔つきの男が笑みを浮かべながらM1911を取りだしてこちらに向ける。45口径をこの10mも離れていない距離で受ければ重傷だ。
「伏せろ!!」
イベリコを庇いながら床に伏せたと同時に乾いた銃声が響く
重い弾丸の飛翔音が5発響く 5発響いただけだった。単列弾倉でも7発はあるはずが…?こっそり頭を出して伺うと、弾切れしてどうしようもなく立ち尽くす男の姿が目に入る。
素早く弾倉を交換し反撃しようとするも
ネリネリネリネリ
何か手元で練っている。見た目はパッドの様で、スイッチがあるので恐らく機械と推測される。
ピピッ
何度も練り合わせるとその機械は電子音を鳴らした。
「撃て撃て撃てぇい!!」
不気味な光景に少し見入ったが目標を排除することが最優先であるため、しっかりと男の額に狙いをつけて引き金を引く。右肩に反動が伝わり、少し銃身が跳ね上がるのを抑えながらもソレに撃つ
「弾丸が反れる!?」
こちらの弾は男に当たる寸前に、謎の軌道を描いて別方向に飛んでいく。物理学的には同じ速度で移動し続ける 点P 並みにありえない事が起きているのだ。
読者の中で救命講習を受けた方ならお分かりと思うが、あれはAED(自動体外式除細動器)である。心室細動の際に機器が自動的に解析を行い、必要に応じて電気的なショック(除細動)を与え、心臓の働きを戻すことを試みたり、銃撃などにより死亡した人間の蘇生が可能な医療機器である。彼はその最新型で軍用の物を使っており、最大まで電力をチャージすると特殊な電磁波を発生させ銃弾など接近する金属片を磁場で軌道を変更させる事ができるのだ。
「ならばっ」
腰のホルスターからタクティカルナイフを抜きながら走り出す。
S&W製で刃渡り18.4cm刃厚が7mmと厚く、440鋼無反射ブラックパウダーコーティングの強固な作りのナイフだ。
「この距離ならバリアは張れないな!」
瞬時に相手の懐に飛び込んで順手で握ったナイフで下腹部を狙い突く
「くっそぉ…」
くないを持った忍者装束に身を包んだ彼の仲間により弾かれた。隙に取り巻きがFAMASやOTs-14などで援護射撃をしてくるのでソフトクリーム機があるカウンターを飛び越して身を隠す。
「コウ、援護して。トランクのアレ撃っていいから」
「30秒待て」
「イベリコ、他の目標に制射」
ナイフを抜いた時に愛銃は置いてきてしまったので太ももに吊るしたSP2022を引きぬいて安全装置を外してタイミングを待つ
「いつでも撃てる。指示を」
コウが車に積んだM72 LAWを店内へ向け構える
「イベリコ耳ふさいで口あけて姿勢を低くしろ!コウ、カウント10で撃て」
拳銃を撃ちこんで牽制をする。注意をこちらに逸らすのが目的だ。
「……3・2・1」
駐車場から圧縮空気が抜けたような大きな轟音と共に何かがこちらに迫る
身を屈めて衝撃を少なくしようと構えると大きな爆発がで建物と地面が揺れる。爆風は頑丈なカウンターが防いでくれたので直接被害はない。どんな技を持つ人間だろうと対車両兵器から生き延びる事はできないはず。そう思い込み立ち込める煙と炎を払いながら立ち上がるとその7人は先ほどと変わりなくその場に立っていた。違う点を挙げるとすればVR機器のようなレィバンサングラスをした束子頭の男が外に向いて立っていることぐらいだろうか。
「なぜ…生きている…」
弾頭を放ったコウもただ驚き立ち尽くす。
煙が晴れると状況が目に入ってきた。爆心地は本来彼らのはずだが、その数m手前で炸裂した痕跡が残る。つまり発射された弾頭を何かしらの手段で撃ち落としたと推測される。
「小銃程度では威力が足りない、何を」
「あれは、サイクロップスのバイザー!?」
「知っているのかイベリコ!?」
「映画X-MENでサイクロップスが使用したレーザーを抑制するバイザーです。今はおしゃれアイテムとして改良、市販されてますがあれは恐らくレーザー射出機です!」
「もうわかんねぇな!」
忍者にAEDバリアにサイクロップスと常識を逸脱した相手にすでになす術を失っていた。あとは核弾頭でも撃ちこむぐらいだろうか?
「ま…だ…」
空になった発射器を捨てコウがゆっくり立ち上がる
「まだだ、勝負は別の方法で付けるぞ篠塚ぁぁぁ!!」
悔しかったのか感情的になっている
「ほう、ソレで勝負するのか、いいだろう。受けて立つ!」
男は鞄を開ける コウは車の後部座席から自分の旅行鞄を持ちだす。そして、
双方共にデュエルディスクを腕に装着し
「「デュエル!!」」
二人の叫びは横浜の街に響いた。
「なんだよこれ!?」