-函館 自宅-
再び平穏な日常が訪れる。あの事件の後、政府から莫大な額の謝礼を受け取った。もちろんお金だけで済む話ではないので晩さん会に招待され、改めて首相以下 高官から直接お詫びの言葉を貰い豪華な食事を楽しんだ。また、イベリコの交渉の甲斐あってロシア政府からも謝礼を受け取ることができたので当面は生活に苦 労しない。誰もが気になるであろう交番に置いてきたPCパーツは無事届けられ、なぜかオマケも付属していた。
世間にはマフィアの抗争として報道され、真相は隠されたままだ。
そしてコウを守るために一人で戦った諜報員の行方はいまだに不明であり、コウは何も語らない。
大量のお金が入ったのでバイトも休んで家でゴロゴロしているとインターホンが鳴る。確認すると宅配業者だ。ハンコを持って玄関を開け、荷物を受け取ると宛名はコウだった。差出人は海外でよくわからない。きっとオークションでなにか落札したのだろう。
「コウ、なにか届いてるよ」
「え、なんか頼んだかな?」
「エアメール 海外の通販かオークション?」
「あまり覚えはないが、ありがと」
そう言って彼女は部屋に戻る。
-コウの部屋-
はて、何を買っただろうか?通販もオークションも身におぼえないが…
差出人は達筆な筆記体でよく読めない。住所はメリーランド州フォート・ジョージ・G・ミードの……陸軍基地?ますますわからない。
「とりあえず開けよう」
小さな小包の包装を解いていくと中にはあの日脱ぎ捨てた靴と同じ物が新品となって入っていた。手紙も添えられている。
『シンデレラへ 忘れ物を渡し損ねたので送らせてもらった。
正義と自由の国の紳士より
P.S. これはジャンヌのお嬢ちゃんに渡しておいてくれ。彼女スマホ壊しただろ?』
溢れる感情を抑え同梱されてる箱を開けると彼女がゾフマップで眺めていた最新スマホが入っていた。
-リビング-
「いやぁ、なにもしない日常っていいねぇ」
イベリコは事務処理で外出、コウは部屋に籠っているのでコーヒーを飲みながらソファで寛ぐ。
バァン
急に扉が開かれた。
「ななな、なにかなコウ?」
「これ、スマホ壊しただろ?今度は大事に使え」
ボールのように投げられたのは電気屋で手に取ったあのスマホ
「いいの!?」
「ああ、」
「さんきゅ♪」
お礼を言い終わる頃には姿は消えていた。わざわざこのために通販してたとはありがたや~
部屋に戻った彼女は壁にもたれかかり複雑な気持ちでいた。
「あのバカ…直接渡しに来いよ」
一滴の涙が頬を流れ落ちた。だがその顔は誰にも見せた事のない笑顔で満ち溢れていた