-横浜市中区 横浜中華街-
横浜に来たのになにもせず帰るわけにもいかない…たとえ仕事が空振りしても腹は減る。ここはやはり中華を食べて帰らねば
時間はもうすぐティータイムと言ったところだろうか お昼は食べ放題のお店にいたがまともに食事ができなかったからなぁ…この数多くお店が並ぶ中華街へ足を入れる
時間や社会に囚われず、幸福に空腹を満たすとき、つかの間、彼女は自分勝手になり、自由になる。
誰にも邪魔されず、気を遣わずものを食べるという孤高の行為。
この行為こそが、現代人に平等に与えられた最高の癒し、と言えるのである。
『横浜市 中華街の庶民派中華』
残暑残る都会で日差しをなんとか遮りながら歩く。とてもあつい。
「うむむむ」
やはりどこもランチタイムは終わり、通常メニューや休憩時間となっていた。最近は時間制限食べ放題が競い合っているためにお手軽にランチを食べれるが、午後2時を過ぎるどこもラストオーダーを迎えていた。
「でも食べ放題じゃないと高いなぁ」
観光客向けに値段は世辞にも安いとは言えない。上は限りなくあるのだ。
「せめて一品だけでも…」
中華街大通りを外れ、小さなお店が並ぶ路地へ入る。古寂れた看板に店頭サンプル、一昔前は地元の人が多く利用しただろうか。だがインターネットの普及により路地の隠れた名店など話題になり、裏路地も観光客で賑わっていた。
「ここは、まだ開いてるのか?」
足を止めたお店は白を基調とした建物に木製のレトロな扉、店名の赤い文字看板と『THE・中華料理屋』と感じさせる外観だ。軒先にはビールケースが雑に置かれているのを見ると中は狭そうだ。しかしお昼も過ぎているのに客の出入りが多い。
…「ここに決めた」
扉を開けると香ばしい香りと共にエアコンの冷たい風が身体を包む。
「いらっしゃいませー!!空いてる席へどうぞ」
店内は想像通りと言っては失礼だが、テーブルが4つだけととても狭かった。階段があるので二階にも席はあるのかもしれない。奥には仕切りもない厨房がある。
「どうぞ」
お冷とおしぼりを出され夏の暑さで噴き出た汗を拭きとる。(真似しないでください。)
「あ~」
生き返る
店内を見渡すと他のお客はテーブルにしゅうまいが鎮座している。さてはここの名物か?他には麺やあんかけ系、肉が中心のようだ。ちょうどいい、お肉をがっつりといただこうじゃないか
「すみません、しゅうまい2つと……」
「はい!」
「あとなにか人気の物ってあります…?」
「そうですね、豚バラそばや牛バラ飯をよくご注文いただきますね」
「じゃ、その二つもお願いします」
「少々お待ち下さい」
勢いで頼んだがまぁ、大丈夫だろう。
店員はすぐに厨房に入り調理を開始する。その間にも私のコップの水は3回ほど入れ替わっていた。こうも暑くては喉が渇いて仕方ないのだ。
店内を見渡すと数十年は経っているだろうポスターや飾りが見受けられる。外観もそうだが、内装もやはりレトロでどこか懐かしさも感じる。きっと昔から食堂として愛されてきたのだろう。
「お待たせしました。まずはしゅうまい」
きた。なんといい匂いだろうか。
しゅうまいの見た目は形が不揃いで整っていない。手作り感が肉汁と共に溢れだしている。
「いただきます」
手を合わせ小さく唱えてから割り箸を割ってしゅうまいに箸を入れる。少し弾力がある中身はぎっしり肉が詰まっており、お皿に汁が流れていく。醤油にからしを混ぜ、そこに漬け込むとまず一口
「…あつっ、うまっ」
熱かった。作りたてだから当たり前だが、肉汁でヤケドしそうなぐらいに
「うんまい」
だが口の中に広がる豚肉の風味と軽いスパイス もちもちとした触感の皮に包まれ舌触りも最高だ。
「豚バラそばに牛バラご飯お待ちね」
どんぶりにあんかけの麺とごはんが現れる。
「…頼みすぎたかな」
Wあんかけはなかなかお腹にくるかもしない
「まぁ、いいや」
まずは麺を
あんかけの上には青菜に豚肉とシンプルな盛りつけ 少し重めのスープを纏わせ一口すする。
「食べた事ない味だ」
見た目の印象はとてもボリューミーなのだが、食べてみるとそうでもなく、サクサクと箸が進む。盛りつけの豚バラは口の中で溶けそうなほどの柔らかさでくどくない。
以外にお腹に優しいのだな。汁をすするがいける
「おっと、忘れちゃならん」
恐らくメインの牛バラご飯だ。これも丼にたっぷりのすごいボリューム。
大きな角煮は程よく柔らかに見上げられていて、青菜と一緒に閉じられている。
「さぁ、こいつはどうかな?」
口に入れるとやはり見た目ほどには醤油の味は強くなく、ご飯との相性は良い。牛バラご飯としては模範的とうい印象。ご飯も平均より上といった感じだった。
「いけるいける」
麺をすすり、ご飯を入れ、汁で流す。この三連コンボが止まらない。あんかけ系でご飯との相性を懸念したが愛称はばっちりでどんどん胃袋へ駆け込む。
ふと隣の席を見ると色とりどりの大盛りチャーハンが運ばれていた。不思議な具だ。
しゅうまいをもう一個食したとこで
「すいません、チャーハン追加でお願いします」
つい注文してしまった。
その間にも麺は伸びてしまうので豚バラめんをすする
「お待ち」
注文からすぐに運ばれた。
銀の皿に敷かれたチャーハンを付属のレンゲですくい上げる。高火力で炒められ、卵で黄金にコーティングされたご飯はパラパラになっており、息を吹きかけただけで飛んでいきそうだった。
「エビにレタスに…ナルトか?」
不思議な具材の組み合わせだ。エビはエビチリにでも使う用なのか大きく、ナルトは言うまでもない。
「ほう…」
これも旨い。見た目は味付けが薄いと思いきや、塩コショウと鶏ガラでしっかり味がついており、大きめの具がある事で飽きを感じさせない。
口の中がぱさついた時は豚バラめんの汁で湿らせる。
「うまいうまい」
外観が少し不安だったが料理は大当たりだった。
すぐに完食して皿は綺麗になった。だがこの季節に麺物はやはり大敵で汗が止まらない。お冷はすでに何度おかわりしただろうか
「ごちそうさまです、お勘定を」
「ありがとうございます!!」
お金を支払ってお店を出ると夏の熱気が全身を襲う
「中華も食べてお腹もいっぱいになったし、帰るとしますか」
連れとの待ち合わせ場所へ向かう 中華の匂い染み込んだスカートを翻し中華街を後にする。