-南シナ海 洋上-

 

 赤道に近付くにつれその日差しは強く肌に突き刺さる。

 「うーみーはひろいーなーおおきいなー」

 歌いながら大型の双眼鏡を覗くもどこも海、水平線しか見えない。

 「左ウィングCIC、異常なし」

 「CIC了解」

 インカム無線で報告を済ませると厚い水密扉を開け艦橋へと入る。空調が効いておりとても過ごしやすい。

 「司令、見張り(ワッチ)交代します」

 灰色のツナギに身を包み敬礼をする同年代の少女たちが待っていた。

 「ごくろー」

 答礼して艦内のラッタルへ向かう途中にふと思い出したかのように助言する。

 「と、日焼け止めは塗ったか?紫外線すごいぞ?」

 「え、あ、あの、やはり勤務中はそのようなものをつけては…」

 化粧品の部類はダメなのだろうか

 「いーのいーの、私が許すからさ 若いうちに肌は守りなよ」

 手をひらひら振りながらラッタルを降りて第一士官室へ向かう。

 そう、ここは護衛艦の中なのだ。

 私たちは今洋上にいる。 

 

-函館市 自宅-

 

 「次の仕事は……」

 嬉しそうにジョジョ立ちをしながら張り切る赤い髪の少女

 「海上護衛です!!」

 「海か…」

 「海ね」

 乗り気でない他二人

 「政府のある貨物船をオーストラリアから護り抜く。簡単なお仕事ですよ?」

 「艦●れみたいに艤装背負って海上スケートするのか?」

 ”だが断る!”と書かれたTシャツを着た巨乳黒髪がダルそうに質問する。

 「そんな便利道具はありませんし、私たちもそんな器用なことはできません」

 そりゃな

 「じゃあ、プレジャーボートに銃火器積んで船団護衛?」

 「確かに函館近海で何度か護衛をしたことはありますが、今回はオーストレリアからです。それ相応の船など用意されます」

 「具体的には」

 「海軍より駆逐艦2隻、沿岸警備隊より巡視船を4隻、民間警備会社より護衛艦を5隻に護衛対象を加え12隻の艦隊です」

 「大艦隊じゃないか…」

 「私たちが頼まれた理由は?どちらかと言えば陸で撃ちあうのが専門だから船に乗っても役に立たないと思うが?」

 「依頼をして下さったハルニコ警備保障が私たち三人が良いとの事で、選定基準はあまり知らされていません。恐らく臨検や地上での何かを想定しているのかと」

 「政府の船を守るのに依頼主は民間の警備会社か?」

 コウが不思議そうな顔をする

 「重要機密の輸送との事ですから詳細は現地ですが、政府も軍だけでは対応できないようです。現に護衛や兵站などは民間事業に頼りっきりですから、これが現状です。悲しいですが一国として人出が足りないのです」

 「持ち物は?」

 「いつもの装備と言いたいとこですが、先方からPDWなど取りまわしの良い物をお願いされています。CQBなど屋内戦闘を想定してください」

 「じゃあACRのバレルを短くして予備にMP7を持ってく」

 ACRは元々Magpulが開発したMASADAを今後軍用に開発する権利を得てブッシュマスターが買い取った。マグプル社はM4などのカスタムパーツから手を広げこのMASADAを開発した。特徴は各パーツをモジュール化する事で、長銃身に固定ストックを付けた中距離狙撃仕様や、短銃身にフォールディングストックとレールシステム付きハンドガードによる近代アサルトカービン仕様、更には5.56x45mm NATO弾仕様(マガジンはM16と同じ規格)から7.62x39mm弾仕様(AK-47のマガジンと互換性を持つ)への変更など、様々な用途、口径に対応する事が可能となっている。特に銃身はクイックチェンジシステムの採用により、ほぼワンタッチといって良い程容易に交換が行える。組み合わせ次第で状況に合わせた銃を組み立てることが可能なのだ。パーツメーカーならではの着眼点で一丁で多様な任務に対応できる効率を重視されている。

 「出発は5日後の朝、ハルニコ社函館支部へ向かいます。ちなみに乗艦するにあたって制服の着用をお願いしますね」

 イベリコがクリーニングの袋から取り出したるは陸軍第三種夏服 リボンや記章なども取り付け済み

 「民間とは言え艦内は規律がありますので、コウも着るように」

 「あーい」

 「出航後は作業服で大丈夫だそうですよ」

 別に水色を基調とした作業服も取りだされる。

 「ところでさ、やっぱ船って男しかいないじゃん?その辺大丈夫なの?」

 確かに今では海軍に女性が増えたものの、男の比率が9割なのは変わりない。

 「安心してください。乗艦するのは女性しかいません」

 「女性専用護衛艦?」

 「いろんな団体から訴えられそうだなあ」

 未知の世界だ。

 「でも…女性だけってものいいじゃないですか」

 イベリコの顔がとてもゲスイ笑いを浮かべたので

 「「試着してくる」」

 コウとリビングを後にした。

 

 「久しぶりの軍服だな」

 「私は着た事ない」

 そりゃ民間人だし

 「ところでさ」

 「んー?」

 「あのスパイ野郎とはどこまで進展したの?」

 「はて、なんの事だか」

 あくまでしらを切るコウ

 「同じ住所から頻繁にエアメールくるやん?最近服装も女々しくなったやん?」

 「で?」

 「男ができたのかなー って」

 「んな訳ない。そんな男イベリコに消される」

 「さいですか」

 試着も終えてリビングへ戻るとなにか妄想に耽っているイベリコ先生の姿があった。

 

-函館市沿岸部 haru-nico警備保障-

 北海道が独立後、日本近海での治安は悪化の一途をたどる。戦争により世界経済が不安定になり、大量の失業者や移民は海賊として活動するようになり、それに目を付けたテロリストが組織として迎え入れ、報酬を与える事でテロ組織を肥大化させ、海洋国を困らせる事になった。その海賊に対抗するためPMCが始めた民間自衛機関を組織した。中でもharu-nico警備保障は海上での実績はトップクラスであり、最新鋭のフリゲート艦を備える商船護衛のプロ集団だ。かつて米軍から奪還された最新兵器もこの民間企業の護衛艦によって退治された事もある。

 

 身分証を守衛に見せ、ゲートをくぐって埠頭へ進むと停泊中の護衛艦が目に入る。4隻は同型艦のようで、船体は一様に白く塗られ、側面に青と水色のラインが入れられており、喫水線下は緑色。三胴式船体で凹凸も少なくステルス性と高速性に優れているだろう。

 

 「1隻だけ色も形も違うね」

 「ぱっと見はアーレイ・バーク級っぽいけど、むらさめ型より小さいな」

 「あちらはパスカルメイジ、わが社の最新にして最高の民間護衛艦になります」

 何か言おうとしたイベリコより先に答えたのは胸下までの白の上着に紺色のスカートに飾緒をつけ、舟形帽を被っている。髪はショートで年齢は20代前半、とても美人だ。

 「初めまして、私はハルニコ警備保障実務船舶部第7課所属護衛艦パスカルメイジ艦長の美咲 七波二等海佐です。この度は皆さまのエスコート役を仰せつかりました」

 「よろしくお願いします。担当は陸持マネージャーでしたが?」

 イベリコが差し出された手を握り返して握手を交わす。

 「陸待は会議室でお待ちです。案内します」

 「お若くして艦長とは大変ではないですか?」

 「いえ、自分は元海軍だった経緯から艦長を任されただけで、クルーも全員若い女性ですからどちらかと言えば学校の先生の気分です」

 七波艦長は半笑いで喋ってくれた。もっとクールな印象があったのだが

 「元海軍エリート”マーキュリーズ”にいたのですから謙遜なさらないでください」

 「良くご存じで?」

 「それは私たちのような業界では有名人ですよ?この娘のように」

 イベリコの刺さる視線

 「ええ、かつて陸軍を率いて戦った英雄、軍の時にお目にかかれず残念でしたが、今お会いできて光栄です」

 「負け戦だったんだ。ほめられたくない」

 「ですが、射撃や格闘術において右に出る者はいないと聞きます。その力を今回貸していただきたいのです」

 「できる範囲でね」

 適当な返事を返した。

 

 埠頭の中にひと際大きなビルがあり、その中へ進められるとエレベーターで上層へ登る。

 

 「こちらへ」

 会議室へ通されると中には背広、軍服を着た中堅男性でいっぱいだった。

 「どうぞお掛け下さい。この度は我々のわがままをお受けいただき感謝いたします。私は実務船舶部マネージャー陸待です。今後の予定を各機関の代表、わが社の護衛艦責任者らと共に説明させて頂きます」

 「まず、今回護衛するのは泊原子力発電所へのプルトニウムを運ぶ特殊貨物船です。新政府になり初めての発電所の燃料交換の時期がきたので官民合同で無事に輸送したい。本来であればイギリスから無寄港で運び入れるのが理想であるが、護衛船舶の航続距離や政府の負担の問題からオーストラリアまでは英国原子力公社警察隊が護衛している。そこから先は我々が護衛する事になっている」

 

 「問題は道中海賊が核燃料と護衛艦を狙って襲ってくる事だ」

 「護衛艦を?」

 思わず聞き返す。

 「護衛艦狩りをご存ですか?近年シーレーンの重要性が高まった中で我々のような民間警備会社が進出する。その護衛艦を狙ったテロ行為後を立たないのです」

 「目的は?」

 「力の見せつけでしょう あとは正規軍の駆逐艦や潜水艦を鹵獲されたケースもある事から兵器の強奪も」

 「今回はそれプラス核燃料を強奪してテロないしは国家への脅迫に使われかねないと」

 イベリコ先生の冷静な分析

 「その通りです。ですのでこれだけの兵力と貴方に協力を仰ぎました」

 「皆さんには佐官の権限がつきます。これは軍を始め各機関から推奨された位です」

 「つまり、私は前の階級を引き継いで大佐?」

 「左様です。制服に階級章があると思いますがそのままの階級でお願いします。他お二人は中佐ですね」

 

 「(ちょっとイベリコきいてないんだけど)」

 小声で耳打ちする

 「(付き添いじゃなかったのか?)」

 コウも予想外の事に動揺を隠せない

 「(いやぁ、契約書が分厚かったので全部読んでなくて)」

 あの真面目キャラはどこにいった

 「あと役職もつきます」

 

 「役職!?」

 

 「大佐には艦隊司令官を、イベリコさんには副司令、コウさんには司令補佐と、これは過去の経歴と軍の熱い要望により決定しました」

 「私陸戦で銃撃ちあうしかできません。まして海とあっては勝手がわからないですし、指示を出すのはイベリコのが向いてます」

 「軍からお借りした資料によりますと将棋・チェス・バトルシップでは負けなし、米軍の艦隊シュミュレーターを経験され、潜水艦を操って米空母を撃沈判定させたとか?」

 

 反論する余地もなく

 「よろこんで拝命いたします」

 引き受けた

 

-ハルニコ警備保障 埠頭-

 「我がパスカルメイジは他の護衛艦と違って従来の同種艦艇に近い艦影を持ちます。原型となった小型フリゲート艦が退役、保管されていたのを格安で買い取り持てる技術を持って改修しました。全長124m、基準排水量3420tと小柄ですが汎用駆逐艦と同程度の武装を持たせた重武装なために速力は42ktに落ちましたが商船護衛には問題ありません」

 坦々と説明を続ける艦長。

 「武装と人員は?」

 ここ、重要

 「武装は155mm単装速射砲1門、57mm高速速射砲2門、CIWS 2門、四連短SAMランチャー2基、Mk.62VLS 64セル、そしてレーザー兵器THEL-CIWS 2門と艦載機にVTOL哨戒機1機です。人員はシステムの自動化が進み48名で航行が可能です」

 「48人?このサイズでも駆逐、フリゲート艦は200人弱だったが、そこまで人員削減に成功したのか」

 「精密機器メーカーのモニタリング契約を結んでおり、開発された最新技術をいち早く搭載します。メーカーは実施試験およびフィードバックを行う見返りに、安定性見確認ながら最新の技術を安く提供されると言った関係です。艦橋も3名と副官、指揮官席しかありませんし、あとはCICと機関室ですべてコントロールします」

 「予算の度外視や契約も民間でしかできない事だねぇ」

 「大佐は目が良いと伺っておりますので、艦橋にて観測主もお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

 司令官と言ってもこの船は初めてでトイレの場所もわからないのだから椅子に座って昼寝する訳にもいかない。

 「構わんよ、外の景色と空気があるとこがいい。他二人は?」

 「システムサポートと戦術アドバイザーとしてCICに入って戴く予定です」

 「空調効いたとこなら歓迎」

 コウが「やったぜ」と表情を浮かべる。

 そうこう歩いているとその巨体の近くまで来ていた。小型と言えど人間一人と比べるととても大きい。出航準備で慌ただしい埠頭は様々な人が作業に追われている。その中でも目を引いたのがパスカルメイジ乗員の存在だ。全員女性であるため目立つ。だがその中に見覚えのある人を見るける。

 「 鯨伏中佐!」

 黒い海軍服の正装に身を包んだ男性に声をかける。この人は知っている。

 「これは大佐、お久しぶりです」

 帽子を取り、会釈を交わすと美咲が不思議な顔をしていた。

 「お二人はお知り合いですか?先ほどの会議は同席しましたが」

 「鯨伏中…二佐は陸奥上陸戦の折に乗艦していた揚陸艦の艦長だった。私が下っ端の部隊長なのに気にかけて下さって感謝している」

 「いえ、私は貴方達を送り出すタイミングを間違えてしまった。あのミスさえしなければ海岸での被害、そしてその先も重傷を負わせずに済んだかもと思うと、どれだけ謝ればよろしいか…」

 「その責任を追うのは前線指揮官と司令部です。貴方ではなかった、軍を辞めたとまでは聞いていましたがやはり海の男を続けられていたのですね」

 「恐縮であります。私はこの道しかないものですから、こうして再会してみれば階級が逆転しているなんて思いもしませんでした。私の船ではなくアリスブランドに乗艦とは少し納得がいきませんが…」

 アリスブランド?パスカルメイジのあだ名かなにかか?

※アリスブランド 僚艦の男性クルーや本艦を良く思わない職員などからは“少女趣味の艦”を意味する「アリスブランド」と揶揄されることがある。

 「積もる話もありますが、美咲艦長達を待たせる訳にもいきません。」

 「大佐もお気をつけて」

 綺麗な敬礼をする。

 「二佐も」

 答礼で返し、パスカルメイジへ足を向けた。

 

-埠頭 護衛艦パスカルメイジ-

 

 「気をつけ、艦長ならびに艦隊指揮官殿に敬礼!!」

 乗員が綺麗に整列して出迎えた。年齢は労働基準法ギリギリっぽい見た目から20代後半まで様々は女性が並ぶ。前列に並ぶ階級の高い者は緊張している面持ちだった。私のよからぬ噂でも聞いたのだろう。

 「諸君、楽にしていい。さて、いきなり外部から来た見ず知らずの小娘が誰よりも偉い地位で仕切られることに不安と不満があるだろう。しかし、この業界では良くあることだ、慣れるといい。 

 この先の航海は私にも想像がつかん。護衛艦狩りは出るのか。一発も撃たずに済むのか。はたまた全員生きて帰れるのか。どこの戦場も同じだ。だが、私や艦長の指示に迅速に従い、君らが行動すれば必ず任務は達成し、全員を生かして返すことが可能だ。諸君らの働きに期待する。以上」

 

 「敬礼!」

 

 答礼をしながら不安定なタラップを上がり乗艦したこの時、私たちはこの大艦隊のトップ3となったのだ。

 艦内通路を歩きながら予定を確認する。

 「艦長、出港準備は?」

 「順調に進んでおります。2時間以内には出港可能です」

 「遅い。一時間で出るぞ」

 「了解しました」

 「補給リストに目を通しましたがこの艦に対潜装備はないのですか?」

 イベリコがタブレットを操作しながら船のデータを確認する。

 「条約により民間では禁止されております。スティガンテ(※1)の設定深度書き換えで対応は可能です」

 

1 VLMSから発射される対艦魚雷。海賊により利用されることが増えた大型タンカーに対して水面下にダメージを与えるべく搭載された。発射されると目標近くまでロケットモーターで飛翔、弾頭が分離して着水すると魚雷として目標を目指す。 本来海賊を相手とする民間護衛艦は条約により対潜装備を持てないが、本魚雷は設定深度を書き換えることで対潜水艦戦に転用することも可能である。

 

 「私たちはこの船についてサッパリわからん。艦長君次第だ」

 「足手まといにならぬよう努力いたします」

 すべての質問に完ぺきな答えをする七波に驚きながら綺麗に改装された艦内を歩く。

 「こちらの4人部屋をお使いください。本来であれば身分から個室を用意しますが、余裕がないもので」

 「構いませんよ。たぶん部屋に戻る時間少ないですし」

 「恐縮です。では、我々は出航準備がありますのでなにかありましたら部屋のインターホンで呼び出してください。失礼します」

 艦長が去りいつもの三人となるので

 「さて、この仕事どう思う?」

 「楽な…厳しいでしょう。核の輸送に海賊、おまけに私たちは艦隊指揮と、見知らぬ女三人にここまで任せる理由はなんでしょうね?」

 イベリコよ。お前本当に契約書読んだのか?

 「大方政府と軍部の推薦だろう。役職もお飾りだし、座ってるだけでどうにかなるんじゃない?」

 コウはタブレットやノートPCを準備していた」

 「なんにせよ、誰も不幸にはさせんぞ」

 「わかってます」

 「なにをいまさら」

 

 「全員生かして返さないと」

 

-埠頭 パスカルメイジ艦橋-

 「司令、点呼完了しました。いつでも出られます」

 艦長が直立不動で報告をする。

 

 「出港用意、舫放て」

 初めての指示

 「出港よーいっ!!」

 

 「取り舵20、前進微速」

 

 「アイ、ショーティー! ヘルムライト20、前進微速」

 鉄の船体がゆっくりと動き出す。エンジンの振動がこの艦橋の床に伝わるのが感じる。

 通常戦闘艦はバウスラスターを持たないが、パスカルメイジは装備をしているのでタグボートなしでの離岸が可能だ。これも人員削減の一つ。

 「左帽振れ」

 

 港には乗員の家族や地上職員などが見送りに来ていた。

 甲板の乗員が港の見送りに帽子を振りながら船は進む

 

 私たちに見送りはないと思っていたが、ハルニコのトップや軍関係者が姿勢よくこちらに敬礼していた。少しうれしい気持ちになり答礼し、指示を出す。

 

 「両舷前進1/2 気を引き締めていくぞ」

 

-フィリピン沖-

 

 各行政から集められた護衛艦隊は輪形陣と呼ばれる陣形で進む。主力艦(空母など)や護衛対象を中心に丸を描くように艦艇を配置して防御力を上げることができる。現在はもっとも火力のある海軍駆逐艦が先頭、最後尾につき、左翼・右翼をハルニコ社の護衛艦、中心はミサイル攻撃など対空戦闘に不向きな沿岸警備隊を配置している。

 

 太平洋、すでに日本のEZZを出て水平線しか見えない場所を南下している。

 

「準備完了しました」

艦橋にて艦長が報告を済ます。副長はストップウォッチとメモを用意していた。

「教練左対空戦闘用意!!!」

 私の号令と共に館内にブザーが鳴り響き全クルーが慌てて配置につく。そして艦橋のメインモニターには左舷から接近するミサイルと戦闘機が映し出された。

 

「ミサイル並びに攻撃機接近」

レーダー員の報告

「短SAM装填、副砲、CIWS起動」

素早く副長が指示を出す。

「装填完了、端末誘導イルミネーターリンク」

 砲雷長が素早く準備を整える

「撃てぇ!!」

「目標まで…3,2,1マーク、インターセプト 攻撃機撃墜!」

「対艦ミサイル外れました!さらに接近します!」

レーダー員が叫ぶ

「弾幕を展開」

「ミサイル回避行動、上に跳ね上がって突っ込んできます!」

観測員が叫ぶ

「左舷第二甲板に被弾、火災並びに浸水発生!」

 

「ダメコンB班を向かわせろ!機関室」

副長がインカムに吠える。

「航行に支障はありません。隔壁閉鎖して居住区で浸水は止まりました」

 すぐにダメージコントロールが始まり被害を拡大を防ぐ

「消化完了、補修も間も無く終わります」

 

「対空用具収め 」

「さすがの練度だな艦長 クルーの対応の早さに驚いた」

「ありがとうございます」

 そう、これは訓練だ。予め何が来てどうなるかを一部の人間が把握してるためにミサイル全部撃墜して平和とは限らない。被弾させダメージコントロールの訓練もさせる。

「間も無く赤道を抜け南半球に入ります。インドネシア沖を出れば周囲に小島はないので海賊の脅威は薄れるでしょう」

「今のところ順調、か」

席を立ち、身体をほぐしながら見張り台に出る。熱帯の熱く湿った風が吹く。

「私はこのまま艦橋で見張り員してるから各自休息とって」

艦長は私に敬礼した後マイクで指示をだした。

「外の空気吸いたいし見張りでもやりますか」

赤道に近付くにつれその日差しは強く肌に突き刺さる。

「うーみーはひろいーなーおおきいなー」

……

 

 

-艦内 第一士官室-

 「あら、お食事ですか?」

 砲雷長が遅めの食事をしていた。クレイオ・アクアノート三佐アメリカ国籍、ギリシャ系移民第2世代。目に付くようなナイスプロポーションの持ち主で、戦闘能力に長けている。同じ才色兼備のターニャ(副長)と人気を争っている。

 「見張り交代したからね」

 「赤道直下は熱いでしょう?空調の利いたこの部屋でお休みください」

 「ああ、そうする」

 「食事を温めさせますね」

 「悪いな、でもこの船の料理は冷めても美味いよ?いい腕してる」

 「実は交代制で作ってるんです。これも人員削減のしかたない事で、始めた当初は皆文句を言いながら作ってました」

 彼女は半笑いで料理を温める。

 「でも女性しかいないから料理はできた と」

 「ええ、今日の鯖の竜田揚げも仕込みから丁寧に調理されてます」

 「これは…」

  『11時の方向より飛来する空中目標あり、対艦ミサイルと思われます。数は2

 

  レーダー員の艦内無線が入る。護衛艦狩りのおでましか

  『対空、対水上戦闘用意!』

  「ええい、せっかくの食事が!!」

 CICにいる艦長の号令と共に警報が響く。食事は惜しいが士官室を後にして艦橋へ駆け上がる。

 

 すでに副長が艦長席に着いており指示を出す。

 「進路そのまま、発射位置の特定を急げ、僚艦とのデータリンク密に」

 「アイ、ショーティー!!」

 艦橋三人娘が応答する。

 「遅れてすまん」

 「指揮官席へどうぞ」

 艦長席横のシートに座るとヘッドレストにあるバイザーを装着して目の前に艦隊の情報を映し出す。ミサイルはすでに一基が駆逐艦に迎撃されたがもう一基が回避行動を取りつつ接近していた。駆逐艦の激しいCIWSの弾幕で無事に迎撃される。

 「艦長、私この艦のことはわからん、指示は一任する」

 「了解しました」

 「レーダー探知圏内に不明な艦あらず」

 レーター員はが索敵を行うも発見はできない

 「よく探して、小型のミサイル艇だから波の陰にでもいるわよ」

 「新たな熱源を感知、数8、対艦ミサイルです!方位同じ」

 「ミサイルの目標は!?」

 「駆逐艦と、本艦にもレーダー照射、ミサイルきます!!」

 「短SAM起動、フェルメール装填」

 「4番から8番装填」

 砲雷長が復唱する。

 「フェルメール撃てぇ!!」

 

 後部の短SAMランチャーから対空ミサイルが轟音と煙を上げて発射される。4発が敵のミサイルへ向け方角を修正しながら加速する。高軌道のミサイルは独特の起動で目標へ向かう。

 

 「1機撃墜、他はなお接近中」

 「副砲、CIWS迎撃」

 音速で飛来するミサイルは数十秒で着弾するためもう一度対空ミサイルを撃っても間に合わない。57mm砲が毎分100発の射撃速度で対空射撃を行う。1機撃ち漏らすも40mmガトリングのCIWSがしっかり撃墜した。

 「発射位置特定、方位162 距離6500 数2 レーダーではごくわずかな反応のため小型ボートクラスと思われます」

 「対象をイリーガルと認定、イリーガル12を見失わないうちに反撃します。VLS67番レーヴァテイン用意」

 レーヴァテインとはパスカルメイジが搭載している対艦ミサイルのこと。

 「アイ、ショーティ。67番発射用意」

 「レーヴァテイン撃てぇ!」

 

 前方の甲板のハッチが二つ開くと圧縮空気で打ちだされた対艦ミサイルが垂直に射出され重力で自然落下を始める。すぐにロケットモーターに点火してミサイルの飛来した方角へ向かう。

 ピンク色の飛翔体は目標に近付くと自立AI制御により回避しながら接近、ホップアップしてその小柄な船体に大穴をあけた。小型の船には多すぎる爆薬で船体は粉々になり瞬く間に海中に没した。

 

 「レーヴァテイン着弾を確認、レーダーからイリーガルをロストしました。撃沈です。」

 「まだ潜んでるかもしれない、周辺警戒を厳にしなさい」

 「艦長、やはり護衛艦狩りか?」

 インカムで艦長に尋ねる。

 「我々の経験上からそう判断します」

 「周囲には人の住む小島もないこの海原であんな小型艇で攻撃をしてくるものか?」

周囲は陸地も島もない海 小型船舶が補給なしで近付けるとは思えない。

 「たしかに海賊の部類は島や入り江など死角の多い場所からの攻撃が常套手段です。しかし攻撃手段や装備などからそう判断するしか」

 「少し解せないな…なぜリスクを多く背負ってまで攻撃するのか… 周辺に母艦になりそうな船舶は?」

 「レーダー圏内は一般商船ばかりです。どれも偽装して海賊の母艦にできる大きさですが」

 「船籍などを照合しろ」

 「衛星と通信中です、お待ちを。できました。探知圏内の4隻すべて届け出がある民間の貨物船です。所属会社まで調べましたが怪しい点はありません」

 「ふむ…」

 「まだ気になりますか?」

 「もちろん AISで航路を探れ。どこか島に寄ったり不審な動きはないか?」

AISとは自動船舶識別装置の略称であり、速力、目的地などのデータを発信するVHF帯デジタル無線機器で、対応ソフトウェアがあれば受信したデータを電子海図上やレーダー画面上に表示することができる。全ての船舶に搭載が義務化されている。

 「どの船も航路に問題はないですね」

 「疑い始めたらキリがねーぜ?」

コウの諦めの声

 「しかし」

 「待って下さい、2時方向の中国籍の貨物船ですが2時間前に停船しています。時間は20分程度」

 観測長がなにかを見つける。

 「場所は?」

 「進路を変えていませんので方位はあまり変わりありません」

 「司令?」

艦長が不安そうな声をあげる。

 「沿岸警備隊に連絡、本艦と巡視船で対象を臨検する。臨検チームを編成、武器の保管庫の解放を許可する」

 「待って下さい!船籍も所属会社も疑うべきところはありません、臨検する理由など」

艦長はこのような強引な事が嫌いなのだろう。

 「船乗りの信ずるものはなんだ!?」

 「己の目と耳と感であります!」

 「私の感ではアレは偽装した海賊母艦だ。怪しかったら臨検も断らないし荷物も見せてくれる」

 「しかし本国とは無関係の船舶を勝手には」

 「艦隊が攻撃された。これだけで十分だ。打電 面舵20 両舷全速」

 「アイ、ショーティ。ヘルムレフト20 両舷全速」

制止を振り切り指示をだす。最高司令官の特権だ。

 「司令」

 「すぐにわかる。私が直々に乗りこむから指揮はイベリコに 着替えて保管庫へ向かう」

 バイザーを外して艦橋を後にした。

艦長は不安だった。

「貨物船へ針路をとります。に続くよう打電、臨検チームをヘリでこちらへ向かわせてください」

「白か黒か」

唇をかみしめた。

 

青を基調とした作業服に着替え、防弾を兼ねたベストを着込み、太ももにホルスターを装着する。この艦は自分に似た体格の乗員が多いのでとても助かる。

「司令、巡視船の臨検チームが到着しました」

部屋に放送が入る。

「第一士官室へ ブリーフィング行う」

 

「さて、どこまで話を聞いてるかわからないが、貨物船ソレ・ナ・テエロゲを臨検する。明確な証拠はないがミサイル艇の母艦と思われるからだ。まずは無線で連絡し、乗船を快く引き受けてくれれば内火艇から、拒否すればヘリで強襲する。前者ならばいいのだが」

 警備隊から選抜された5名の特殊部隊員がそろいの洋上迷彩のBDUに身を包み整列している。その後ろにはパスカルメイジのチームだ。軍のエリート出身の副長ターニャ・L・コジマ三佐が率いる。

「質問よろしいでしょうか?」

警備隊の隊長が手を挙げた。

「なんだ?」

「万が一の事態の交戦規定は?」

「普段と変わらんよ。自分に危険が及んだら撃て 船長やリーダー格さえ生きてればいい」

「護衛艦から攻撃は?」

「しない。なるべくこのままの状態で拿捕して海賊がどのような活動をしているか調べる」

「これは貴様らの力を持てすればダメージなしですぐに終わる任務だろう。普段の訓練のれ成果を見せる時だ!全員気を引き締めかかれ!」

 

-艦内 CIC-

「艦長、ソレ・ナ・テエロゲから臨検承諾の電文です」

「あっさり引き受ける……本当に白なのか罠か…とにかく司令に連絡、内火艇用意!あと主砲副砲の照準を貨物船へ、機関銃もいつでも撃てるように」

 

-艦内 左舷格納庫-

 パスカルメイジの内火艇は屋内格納されており必要時にハッチを解放してクレーンで降ろす。内火艇前に集合して点呼を済ますと、各自で装備の確認をする。パスカルメイジにはMP7が配備されているが、自宅から持ちこんだACRの予備弾倉を防弾ベストに入れる。拳銃はSP2022、腰にはナイフそしてコウが作った例のiイルミも支給した。警備隊はM4カービンの銃身を切り詰めたCQBスタイルにポーチを多数備えたチェストリグに拳銃をサイドアームに装備している。

確認が終わったところでを乗りこみを始める。

「君たちはちょっと狭いけどこれを被って」

パスカルメイジチームを呼び止め、私が取り出すはカンバス

「なぜです?」

「私にいい考えがある」

 

 

-洋上 内火艇-

 外洋だが波は比較的穏やかで揺れもすくない。隣で難しい顔をしている青髪の艦隊司令官は何考えているのだろうか?ただ、その実績から誰も不平不満は出さない。

 貨物船に近付くとタラップを降ろして船員がロープでこちらを引き寄せた。

「協力に感謝します!」

「臨検するのは6名ですか?」

「私はこの内火艇の見張りをするのでこちらの5名を乗船させます」

 なにを考えているのだ?ここに残る?カンバスに隠れてるアリスブランドも意味不明だが何を考えているのか

「臨検は通常通りお願いします。異変があれば無線で読んでください」

「了解しました」

 

 疑問を抱きつつ乗船すると船長が出迎えた。

 「私が船長のチェン・イムスです。この度は御苦労さまです」

 「この付近戦闘があった突然の臨検申し訳ない」

 「構いません。不明な点があればどんどん質問をしてください。では艦橋からご案内します」

 とれも悪い人には見えない。だが気を抜かず船長の案内の元艦橋へ上がる。

 「先ほど洋上で20分ほど停泊してようですがトラブルでも?」

 「発電機からボヤがありまして、航行に支障はないのですが船を停めて対応に当たっておりました」

 どこも疑うとこはない。

「そっちはどうだ?」

 部下に航法装置などをチェックさせるも

「これといって怪しい物はありません」

「では貨物室へご案内しましょう」

 すぐに船倉を見せるとはやはりやましい事はないのでは? 

「お願いします」

 

 階段をいくつも降り、水密扉を開けるとそこはとても広い空間だった。

 そして言葉を失う。

 コンテナなどは少量しかなく、小型のミサイル艇や魚雷艇が補給やメンテを受けている。そう、ここは海賊の母艦、ドックなのだ。今は海水は少量しかないが、注水して艦首を解放、出撃させる。

 「船長、説明願います」

 睨みつけた。

 「見ての通りですよ?」

すぐにM4を構え銃口を船長と付近の船員に向ける。

「今すぐに貴方たちを拘束する」

 手錠に手をかけるも

「できるものなら」

船長は笑顔で拳銃をこちらに向けた。その瞬間私たちの身体に無数の赤い光が照射される。四方八方AKを構えた船員が我々を取り囲んでいた。

 

 「パスカルメイジ応答を、こいつは黒だ!攻撃を」

 無線のマイクに叫ぶも

 

 「………」

 

無線が繋がらない!?

 「ここはちょっと特殊でね。まず武装解除してもらおうか?」

 状況から察するに従うしかないだろう。M4を床に落し、上を頭の後ろに組んで死を覚悟した。

 「なに、そっちの目的、戦力など聞く事は山ほどある。まだ殺しはしな、暴れられると困るかちょっとは傷めつけないとな!!」

 船長が私の太ももに銃口を向け引き金を引いた瞬間に着弾音が響く。だが弾は明後日の方向に着弾し、その拳銃は弾き飛ばされ床に転がり落ちた。

「大尉!!援護するから銃を拾って物陰に隠れろ!急げ!」

 司令官!?彼女が援護射撃をしたのか 兎に角先ほど床に落したM4を広い隊員全員がコンテナや堅そうな壁に隠れ銃撃戦が始める。

 

 

-数十分前 貨物船脇 内火艇-

「さてと」

 警備隊を先に乗船させたのは囮にするためだ。申し訳ないがその間にこっそり侵入し船内を調べて白黒はっきりつける。白なら彼らは無事だろうし、黒なら尋問されるだろから後で助けよう。まずはタラップで見張りしている船員か

 ヘルメットを取り、髪の毛を靡かせると船員に笑顔を送る。手を振って愛嬌を振りまくと彼はにやけ顔になる。おいでおいでと手招きをしてタラップを降ろさせ、内火艇の近くまで来た瞬間、鉄板の入ったコンバットブーツで股間を思いっきり蹴りあげた。腹にも拳を叩き込んで声も出ないようにする。

 この時巡視船とパスカルメイジから多くの乗員が見ていたが、巡視船の男性達は顔が青ざめ、股間を手でおさえたと記録があった。パスカルメイジの乗員はさすがにドン引きしていたとか

 一発で悶え苦しむ船員を拘束したところで

 「出てきていいぞー」

 隠していたチームを呼び出す。全員ドン引きしていたが

 「さすがに…やりすぎじゃないですか?」

 「何言え、こいつ拳銃持ってたぞ。このまま拘束ておく。これから船倉へ潜入するぞ」

 

 ひょこっと甲板に顔を出すと先に行かせたチームが艦橋へ上がる。歩哨は目立つのかいない。コンテナ広がるカラフルな甲板をCQB用にバレルを交換したACRを構えてキャットウォークで進む。連れの隊員は全周囲警戒させながら間隔で歩かせる。船内へ通じる防水ハッチを見つけ、ハンドサインで止まれと指示し二人掛かりで重いハッチを開ける。

 「うひゃ」

 資材をクレーンで搬入する時に使うのだろうか。梯子があるが船内置く深く、真っ暗な闇へと続く。

「これ、おりるんですか?」

 副長が質問するが

「もち」

 即答

 女性だけでうす暗い船内へ降りていく。

 降りた場所は扉やクレーンの操作盤が少し光ってる程度でうす暗く、周りは再びコンテナで囲まれていた。

「歩哨はいないな」

 すぐに副長が気付く。

「あっちから人の声がします」

 その方向へ向かうと水銀灯のライトで明るく照らされれた広い空間へと出た。例えるなら秘密基地の地下ドックだろうか

 港に数隻のミサイル搭載ボート 周りには補給用の弾薬や燃料など

 沢山の作業員が動いている

「やはり母船だっか。無線連絡」

「ん?ダメです、強力な電波妨害で繋がりません」

「なら別の手段だ」

 コウの魔改造スマホを取りだし通話を試みる。繋がった。

「あーCICへ 今船内にいるが無線はジャミングで使えん。船内にはドックがあり小型艇が補給を受けている。海賊の母艦と認定するから主砲、副砲、機関銃をこちらに向けろ。あとは指示あるまで待機。以上」

「了解です。追加のチームを編成してヘリで待機させます」

 

「さーて、ここからどうする?」

 この人数で突撃してもなにもできない。爆薬もなければ手持ちの小火器じゃ破壊も不可能。

「拿捕されるのでしたらなるべく無傷がいいでしょう。消音機もありますし、少しずつ敵を排除しましょう」

 さすが副長

「じゃあまずはどこから…」

 

 「パスカルメイジ応答を、こいつは黒だ!攻撃を」

警備隊長の叫び声 やや上の方からだ。

 「隠れろ、状況確認」

 全員が素早く身を隠しその方向をiイミルネーターで情報を読み取る。どうやら警備隊は罠にかかって捕まりそうだ。

 「援護しますか?」

 「距離にして80mね。グラスの照準アシストを使ってやってみるか。ただ助けた後はこっちにも大量の敵がくるぞ?」

 「仲間を助けるのが大事かと」

 「りょーかい。なるべく船長は活かしたいから致命傷は避けて…」

 よく狙いを澄まして敵の構える拳銃を……

 乾いた発砲音と共に見事に命中

 「大尉!!援護するから銃を拾って物陰に隠れろ!急げ!」

無線が使えない以上叫ぶしかない。するとこちらにも銃撃の雨が降り注ぐ。相手の武器はやはりAKシリーズ 7.62mmは重い。

 「上のチームと合流しる。移動しながらから応戦、なるべく近くの奴の急所を狙え」

 「「了解!」」

 「ムーブ!!」

 コンテナの陰から陰へと走り出す。視界に入った敵をなぞるようにタップ撃ちし、倒していく。後ろのお嬢さん達もいい腕をしていた。

 コロン コロン

 この音は

「グレネード!!!」

思い切りその球体を蹴り飛ばして爆発 少し体勢を崩すも問題なし。

 「大佐、こちらです!」

 隊長がフラッシュライトでこちらに合図した。階段を駆け上がり、その瞬発力を活かして物陰に飛び込む。

 「副長、援護するから全員走らせろ」

 「わ、わかりました」

グラスに移る限りまだ敵は20人 

 「男の意地を見せろ、援護射撃!」

 巡視船チームが一斉に射撃を開始しメイジのチームが走る。副長が最後尾を務めている。

 「アマがぁ!!」

 しまった グラスでも見逃していた。陰から男がナイフを持って副長に襲いかかる。考えるより先に身体が反応しており、腰のナイフを逆手持ちで抜刀し、持ち前の俊敏さで一気に間合いを詰めて男の振りかざすナイフと止めた。

 「どけガキが」

 「こっちのセリフだ海賊!!」

 屈んで相手の力を抜いてバランスを崩させた好きに太ももにナイフを突き当てた。大動脈を切り裂き、大量の出血をする。

 「ぐあぁぁぁああ」

悲鳴を上げる男の腹に回し蹴りを入れたとこで床に倒れた。

 「副長早くあちらへ」

 「あ、ああ」

 グラスで索敵をするも敵のマーカーは船長など生かしてとらえた者だけとなっていた。

 「状況終了か?」

 「はい、大佐 恐れ入りました」

 「え?」

 「最初何を考えてるかわからない小娘と思っておりましたが、助けられ、敵を鎮圧されました」

 「鎮圧したのは皆でだよ」

 「貴方の指示です。ご無礼をお許しください」

 隊長は頭を下げるも

 「戦場ではよくあること 気にしなくていいさ。みんな無事なんだ。帰ろう」

 

 その後応援がヘリで駆けつけ貨物船は制圧され、近場の国の軍に引き渡した。

最終更新:2018年03月13日 23:44