事件2日前 中央区 南二条西-

 

 

連勝してたがさすがに疲れたのでクレジットを傍にいたお兄ちゃんに譲って別のゲームへ行こうと階段へ向かうと

 「や、また会ったね」

例の男性巡査だ 暇なのかな

 「暇なの?」

ちょっとからかってみる

 「今は非番で帰り道だよ」

たしかに格好がラフだ

 「あら 不良さんなのね」

 「練習忙しいのに坦々麺食べてゲーセンで女帝になってる子に言われたくないなぁ」

なんと晩飯も見られていたのか

 「それを言われるとつらいな」

 「ホテル前でも言ったけど、今は情勢的に治安がよろしくない。もう帰るのを勧めるよ」

 「それは巡査として?それとも紳士として?」

 「後者かな」

 「かっこつけ」

 

悪い気持ちでもなく、なにか嬉しい思いがこみ上げてきた。

 「ねぇ、少し寄り道しない?」

 「ふぁっ!?」

私からの予想もしない誘いに動揺する巡査殿

 「嫌ならすぐ帰る。こんな可愛い女の子の頼みも聞けない男は……」

 「しょーがにゃいなー」

キモッ っと思いつつも気持を抑え、すすきのへと脚を向けた。満面の笑みを浮かべて彼の手を引いた。

 「お、おい」

 「なに戸惑ってるの?童貞?」

 「バカ野郎、俺は100人切りをした男だぞ!」

 「ヤリチンかー へぇ」

 「な、なにニヤニヤしてんだ」

 「別にぃ さ、行くわよ 亮介」

 「いきなり呼び捨てかぁ~?」

 「私もリルでいい」

 「わかったよ、リル。どこ行くの?」

 「私札幌は全然知らないよ?とりあえずの方面向かってるだけ」

 「ここはすすきの繁華街だ。あまり、その、いい雰囲気じゃ」

 「ラブホ通りじゃーん 寄って行こうぜ」

 「人の話聞いてた!?」

 「そりゃ男女が夜に繁華街デートと言えば行きつく先はここでしょ?」

 「さすがに順序があるし、お前は未成年だろう」

 「キニシナーイ」

 お酒飲める歳だけどな!!

 「こっち」

 

 今度は宮門が私の手を強く引き繁華街から緑地のある公園方向へ向かう。人が少なく、静かで涼しい。

やがてベンチを見つけ腰を下ろす。

 「自販機しかないけど飲み物なにかいい?」

 「あら奢ってくださるの?ジョーシアブラックで」

 「…えらく渋いチョイスだな。座って待ってろ」

 彼は財布の小銭を確認しながら明りをともす鉄の箱へ小走り

 

 ふと空を見上げると満点の星空が広がる。この地域最大の都市とは言ってもやはり星がたくさん見える。

 「こんな田舎が……調子乗って独立して人殺して…」

 「こんな田舎でも国として世界が認めたからすごいじゃないか?はい、アイスティーしかなかったけど」

 うっかり愚痴を聞かれてしまった。空を見上げた顔を降ろしてアイスティーを受け取る。

 「公務員に聞かれたらまずかったかしら?てかコーヒーは…」

 「問題ない。誰だってそう思ってるけど口にしない。日本人はそんな性格だろ?」

彼が私の左に座る。

 「むー」

 「僕らも言いたいことはたくさんあるけどさ、職業柄ね。ただ海外の同業者は普通に口にするらしい」

 「亮介はどうなのさ?」

 「複雑な政治の話はあんまできないけど、変わりたいと思って行動を起こすのはいいことだとは思ってる」

 「同じ毎日より、違う明日を求めるの?」

 「ずっと同じってのもいいかもしれない。伝統を受け継ぐのも大切だ。けど、俺は変化を求める」

 「じゃあなんで政治家とか法律関係行かなかったの?なして警官に?」

 「勉強が嫌いなのと、僕はね、ヒーローになりたかったんだ」

 「は?」

 「”かっこいい・憧れる・誇れる”そんな存在になりたかった。昔から正義の味方とかごっこ遊びするじゃん?その童心を引きずってさ」

 「警備課って事は将来SWATとか目指すの?」

 「もちろん、限りなく上を目指す」

 

彼が飲み終わった缶をゴミ箱に投げ捨てると、私の手に重ねた。その手は男らしくゴツゴツするも、大きくて暖かく優しさを感じた。

 「…やっぱ星きれい」

 苦し紛れの言い訳をしながらも、指を絡ませて所謂「恋人つなぎ」をした。

 「夏の大三角だ」

 「アレガデネブアルタイルベガ?」

 「そうそう、はくちょう座・こと座・わし座だよ」

 その歌の通り彼は指さす。

 「全部食べれないね。かに座とか美味しそうな星座なら覚えるかも」

 「ははっ、リルらしいや」

 「あら、一晩だけで何がわかったと言うの?」

 「よく食べて、よく遊ぶこと、俺と一緒」

 「バレちゃー仕方ないな」

 缶を投げ捨て(真似しないでください)彼にもたれかかる。亮介は否定する事なく私の肩に手をまわして抱きこんだ。

 「ずっと、こうしていたい」

 「俺も」

 「もっと亮介の事を知りたい」

 「俺もだ」

 

 「この後、どこいこっか?」

この人と一緒にいたい。私情を挟むのはプロとして失格かもしれないが…

 「…とりあえず少し歩こう」

公園を後にして静かな郊外を少し歩く。彼の腕に強くしがみつきながら。

 「ちょっと暑くない?」

 「そう?当ててもらってうれしくない?」

 「まな板が硬… ゴフッ」

肘鉄

 「どこいこうか(真顔」

 「素敵な場所へご案内しましょう、お姫様?」

 「お願い…亮介」

 

 午後零時を回り、シンデレラの魔法は解ける時間となった。

 魔法が解けたのか、つい甘えてしまった。ひと夜限りでも、なぜか心を惹かれた。



 

-事件前日 中央区 札幌駅前通り-

 今日は夕飯を食べて早く帰ろうと思いすすきのまで出た。飲食店は駆け込み時とどこも開いて客引きに必死だ

昨日は麺だったから、今日はごはんか?

ふと、カレー屋の前を通るとザワめきが聞こえた。なんだろうこのデジャブは・・・中を覗くと青髪赤リボンの少女が巨大な皿のカツカレーを目の前にしていた。昔は3000kgカレーなどあったが、いろんな法律や持ったいないなどの理由で廃止されたのであれは大盛りの限界1500kgだろう俺だってあの量は無理だ。

 彼女はコップに浸してあるスプーンを手に取るとすさまじい勢いでカレーを食べ始める

周囲からは

 「無理だ」

 「連れはいないのか?」

 「エルタソー」

など皆無謀な挑戦だと思っているようだ。昨日までの私なら同じ言葉を唱えただろう が、

彼女は勢いを落とす事なくカレーを口に運んで行くときどきスプーンで細かくしたカツを混ぜ、水を補給しながら「食べる」作業を続ける

俺はとりあえず店内に入りテーブル席に通された。いつもの注文をして彼女を見守る

 

20分経っただろうかそのお皿は米粒ひとつ残さずキレイになっていた。いつもと変わらない表情を浮かべながら水を飲んで落ち着いていた。

俺は手仕込みチキンカツカツカレーにチーズトッピングで5辛 400gを食べていた。もっとも普通の量なのでもう食べ終わる。ならここは

伝票を持って立ち上がり、レジで会計をしている彼女の元へ行く

 「この子と会計一緒で」

 自分の伝票もレジに置く

 「本当によく会うねしかもメシ時に」

うんざり顔で彼女はため息をつく

 「運命かな」

 「うわくっさ」

 「冗談、この辺りは俺の庭だそれより奢る」

 「いいの?結構高いよ巡査殿」

 「公務員を舐めるななんぼなん?」

 「こちら2290円になります。さらにお客様の分を足して3240円になります」

 「ら、ライフで受ける」 

思ったより高いがお金をだす

 「警告したのに」

 

 

二人でお店を出て通りを歩く

 「今日はもう帰るのか?」

 「あまり遅いとどっかの紳士様が現れて帰れとうるさいからね」

 「明日も練習があるのだろう?早く休んだほうがいい」

 「なら一緒に『休憩』して帰ってもいいのよ?」

この娘は・・・

 「だーかーらー」

 「冗談ですでも、まだ一緒にいない?」

 「え?」

 「明日札幌を発つから、もう会えないかも」 

いつも明るい笑顔の彼女が表情を暗くする

 「じゃあとりあえずゲーセン行こう」

「賛成!!二人ならまた昨日の奴らボコボコにできるな!!」

俺もゲーセン好きだし彼女も相当に好きなようだ。


 

-中央区 南二条西-

 

二人で歩く夜の札幌

俺の左手には柔らかくスベスベすした肌の彼女の手がある。お世辞抜きにリルは美人だ。青がっかった髪に褐色の肌、モデル並みのスタイルと美女でさり、待ち行く人が振り返る。

「なーにチラチラみてるの?」

「べ、べべべ別に」

「こんな絶世の美女と歩けるなんてこの先ないよ?」

「自分で言うか…そりゃ…美人だけど…さ」

「きゃっー♪うれしいなぁ♪」

俺の腕をぶんぶん降りまわ足彼女がはしゃぐ

「いたい、いたい 腕ちぎれる!!」

「ふふーん、ご褒美と思いたまへ」

「俺はマゾではない」

「だよね。みるからにSオーラあるもん」

「リルは?」

「変態」

低いトーンに蔑んだ目で見られた。


 

「さて、着いた」

「軽くもんでやるかな」

機能と同じゲームの筐体に座り、コインを入れる。周囲の人間は昨日の惨劇忘れるわけがなく、彼女をてみて恐怖した。

「おい、あの男って疾風の宮門じゃないか?」

「間違いない。あの二人が組んだらやばいぞ…」

ギャラリーがどよめく中、機体を選ぶ。

「亮介の得意な機体は?」

「特にないかな、コストで合わせる」

「じゃあ私はゼロでいこう」

「りょーかい、ここにいる全員叩きのめすぞ」

亮介が笑みを浮かべと共に昨日敗退した全国覇者がさっそく乱入してきた。


 

-札幌 すすきの-

「いやー、100戦は疲れるね」

「だな、俺ら出禁くらうかな?」

ゲーセンを後にまたすすきのをぶらつき、人通りの少ない路地を歩く。

「大丈夫でしょ。この後どうしようか?」

時間は0時を回っていた。

「そうだな、そろそろ帰るk」

「一緒にいたい。もう、会えないかもしれないし」

彼女は俺に力いっぱい抱き着いた。

「でも、明日は…」

「それでも…亮介と最後の夜を」

彼女が上目遣いで俺を見つめる。ああ、これは

「わかった」

少し見つめあう。

「んちゅっ」

そして期待に応え、軽く唇を重ねた。最初はバードキスでソフトに、次第に口を開けさせ舌を入れると彼女はビクッと震えた。

「あっ、んちゅ…ちゅぱ…」

舌を激しくさ絡め次第に激しくなる。

「さ、さすがに場所変えようよ///」

彼女が頬を赤らめ恥じらいながらつぶやいた。

「うん」

そして彼女の手を引き、ホテルへ向かった。



 

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服を着て、身支度をしてからフロントに電話をしてチェックアウトした。

 

-中央区 郊外-

少しの無言が続く。行為の後は少し位が気まずいが、彼女と手は握ったままだ。

 

そしていい加減に帰らねばならない。別れの時間が来てしまったのだ。

 

だが静寂を破ったのはリルだった。

 

 「寂しいけど、これ以上仲良くなったら別れが辛いよ・・・・だからもう帰りましょう」 

 

彼女が強く言った顔をこちらに向けない

 

 「一期一会ってやつか楽しかった、また会えたら一緒に食べ放題でも行こう」

 

 「もちろん亮介の奢りでね」 

 

笑顔が戻る

 

「また、会えるよな!?」

 

絶対に会いたい

 

「君が望むならね」

 

 

「きっと、…」

 

 「それじゃ」

 スカートを翻し彼女は走り去った

 

もっと話して、彼女の事聞いて…あっ、連絡先を交換しておけばよかった

 

満足さ、寂しさ、むなしさを抱えながら彼女が見えなくなるまで見送った。

「かえ…らなきゃ…」

明日は重要な仕事がある。私情を持ち込まぬ様にしなければ…

 

「愛してる」

ただ一人暗闇の中でつぶやいた。

最終更新:2016年09月26日 16:00