腐敗した生ゴミの様な甘ったるい異臭が鼻腔をくすぐられ、蒼星Vは重たいまぶたをゆっくりと開いた。

なんだか、頭が朦朧としていて、まるで夢とうつつの境界にいるみたいに感覚のズレがある。

五感のうち、聴覚と嗅覚はしっかりしているのだが、視界がぼやけて平衡感覚も狂っている。あたかも幻覚性の毒薬を盛られたかのように。

「蒼い子、やっとお目覚めかい!」

頭の上の方からどこかで聞き覚えのあるような男の声が聞こえ、蒼星Vは虚ろなオッドアイを上と思われる方向に向けた。

「ずっと君の事を探していたんだよ」

同じ声が、今度は違う方から聞こえた。視界は相変わらず靄がかかった様にはっきりとしない。

「ずっと…、この時を待っていた」

不意にその声が耳元で聞こえた。温かい息づかいを感じられるほど……。

首を回して声の主の顔を見ようにも力が入らない。

…いや、力が入らないのではない。
そのとき初めて 蒼星Vは何かひも状のものが自分の四肢を縛るかのように巻き付いていることを認識した。

「くっ…」

からからの喉奥から蒼星Vは、たったそれだけを発音する事ができた。

「ほう…、さすがはハロワ国で武名の誉れ高き蒼星V殿。並の者では瞬きする事さえできないリセルグリュードの毒を…」

男の声はいよいよ耳元に近づき、顔は見えずとも、いかにも愉しそうにささやく男の醜悪な口元が容易に想像できる。
漂ってくる吐息から、蒼星Vはえもいわれぬ嫌悪感を感じた。

(無礼者っっ!)

歯がみをし、華奢な両腕に力を込める。力までは込められないが、拳を握ることはようやくできた。
そして、そのころにはぼやけていた視界の映像も、何とか理解出来るものになってきた。

「っ!!!」

眼前に広がる光景を認識して、反射的に蒼星Vは危機感と生理的嫌悪を感じた。

手足の自由を奪っているひも状の物と思っていた物質は、生き物の一部の様にゆっくりと煽動を繰り返し、鎧のわずかな隙間から露出した蒼星Vの素肌に粘液状のゼラチン質を絶えず塗り込めている。

太いものは彼女の手首ほど、細いもので蚯蚓ほどの太さをしたそれらが、まるでそれぞれ確固とした意志を持つ生命体のように、おのおのの目的を遂行するがようにゆっくりと蒼星Vの体を這っていた。

(こっ、これはっ!)

「やっと分かったようだな」

驚愕する蒼星Vの表情を読んだのか今度は少し遠くから、声の主が愉しげな声をあげた。

「そう、塔に棲む魔獣リセルグリュード」

その声に呼応するかのように海棲魔獣が低いうなりをあげた。

(ちっ、違う…。これは…)

塔のモンスターを日常から狩り続けるほどの戦闘力を持っている。むろん塔に潜むリセルグリュードなど、これまでに数え切れないほど倒してきた。だが今ここで蒼星Vの体を拘束する魔獣は、これまでに見たそれらとは明らかに違っている。

強い毒を持つタコ型の魔獣リセルグリュードは、象ほどの巨体に長い触手をもち、近づく旅人たちをその毒で痺れさせてから襲うという危険な生物だった。本来海棲なのだが、一部の変種は陸上にもその狩猟の場を広げ、近年では各街の塔に住み着き人々を食らっているともいう。

しかし、その毒の効き目も致死性のものではなく、蒼星Vをはじめとする上級職者にとっては比較的容易に狩れる部類のモンスターであった。

(…しかし……、)

このモンスターはそれまで蒼星Vが 遭遇したリセルグリュードの中でも、異常と言えるほどの大きさをしていた。いや、どんな戦士たちでもこれほどの超弩級にまで成長したリセルグリュードなど見た事はないだろう。

蒼星Vは反射的に愛剣エルヴンソード★★★★★★★(水)を探った。

しかし、愛剣はいつも下げているはずの腰から、鞘ごと抜き去られていた。…おそらくあの男に。

「さすがは戦士どの、勇ましい。しかし、残念な事に貴女の愛剣はここに」

声のした方に、やっと視力の戻ってきた目を向けると、遙か遠くに、鞘ごと大地に刺さっている宝剣を見つける事ができた。

(くっ)

蒼星Vは思わず歯がみをする。

彼方までは目算で二百メートルほど。全力で走っても間には合わない。ましてや、体中の自由を奪われているこの状態では…。

「魔力をふんだんに注ぎ込みここまで育て上げた、我がしもべの力を思い知るがよい。ふふはははは」

不敵な薄笑いが余韻となって遠くの闇へと消えていく。

(あいつの声、どっかで聞き覚えが…。でも、こんなことをするなんて…いったい狙いは何っ?)

ふいに、蒼星Vを拘束するリセルグリュードの触手に力が込められた。それらはゆっくりと、そして軽々と蒼星Vの華奢な躰を宙高く持ち上げていく。

「ひあッ」

思わず声が漏れる。

両腕、両足にもわずかではあったが、力が戻ってきた。

だがそれもリセルグリュードの巨大な力の前ではまったく意味をなさなかった。

いくつもの大人の腕っ節ほどの太さがある、灰色がかった触手たちが一斉に活動を始めた。黄緑色をした甘い香りのする粘液が、どこから分泌されるのかどんどん溢れてくる。

蒼星Vの体の上を縦横無尽に這い回る触手たちが、まるで巣穴を求めるウナギの様に甲冑の隙間という隙間を狙って侵入してくる。

「こっ、こいつら。ヤッッ、やめろぉッ」

下等生物に彼女の声が理解できるはずもなく、上がった体温が刺激をしたのか、より触手たちの動きが活発になっていく。

あるものは、袖口から。

あるものは、鎧とうなじの隙間から。

あるものは、下半身を覆うひたたれの間から。

羞恥も遠慮もなく、それらは蒼星Vの体を弄ぶ。

「貴様ッ、どっから入ってくるんだヨッ」

ぱちんっ。という派手な音が腰の辺りから聞こえてくる。

それらが何をしようとしているのか理解した蒼星Vは戦慄した。

ばちんっ。ぱちんっ。ばちんっ。

蒼星Vが上半身に纏っている、蒼く輝く甲冑。その留め金が、ひとつ、またひとつと、触手たちによって器用にもはずされていく。

ぱちんっ。

最後の一つがはずれた。


「イヤッ、こいつらぁぁッ」

蒼き鎧に秘められた白い肌があられもなく外気に触れる。開け放されたその白い腹部の上、そして気持ちばかりにふくらみかけた乳房の上、触手たちは好奇の声を上げるがごとくあふれ出す粘液を塗りつけていく。

「……やはりAカップであったか…」

どこからともなく、先ほどの声が聞こえる。

「うるさいわねぇっ。あんた、なにもの?目的は?」

しかし、返事の代わりに帰ってきたもは多量の触手の一群だった。

くらみの控えめな乳房を狙うかのように、ぴちゃぴちゃとしたたる粘液を塗りつけていく。

こんな経験は初めてだった。

双丘の薄桃色をした登頂が、今まで感じた事の無いような刺激を伝えてくる。

「なによ、こんなものッ。どうせ媚薬とかそんな落ちでしょッ」

強がる蒼星Vの口を塞ぐかのように、一本の触手が禍々しい先端部をその口に突っ込んできた。

「んっッッッ、ぐんんんん…」

のど元で激しくピストン運動をくりかえす肉厚な触手から、どろりと苦い液体が流れ出してきた。

「んんっッッ、……ぐぐぐッ」

止めどなくあふれ出る液体は、ついに蒼星Vの口からあふれ出し、苦悶にゆがむ口元から筋を引きながらしたたっていく。

流れ出した白濁した粘液は、蒼星Vのあごをつてい、糸を引いて首元に落ち、白い肌を伝って小振りな乳房に沿い流れていく。あとからあとから、止めどもなく蒼星Vの端正な顔を穢していった。

「…んぷっ…」

ようやくことを終えた触手が、蒼星Vのくちから引き抜かれた。すかさず彼女は口内に溢れる粘液をはき出す。

泡だった獣臭い液体が、ひかえめな胸の上に水たまりをつくる。

キッ、と蒼星Vは誰もいない虚空をにらみつけた。

(わたしは、負けない。いまから、どんな目に遭わされようとも、私は戦士の誇りを捨てはしない。)

「出てきなさい、そこにいるのは分かっているんだからッ」

右先方木立の茂る雑木林のあたりに向けて、蒼星Vは気丈な声を張り上げた。

「卑怯者ッ。こんな魔獣なんか使わないで、正々堂々私と剣を交えて勝負しなさいッ」

しんと静まり返った周囲に、むなしく蒼星Vの声だけが響く。言葉が少なからず震えているのは、恐怖からではなく怒りからだろう。お世辞にも大きいとはいえないふくらみが、乱れた息で上下する。

「こんなちょっとぐらい図体でかいだけの魔獣なんかに負けないんだからねッ」
無残にも胸部を覆い隠す鎧を引き剥がされ、まだ誰にもさらしたことのない乳房を外気のもとへ露にされながらも、蒼星Vはその羞恥心を包み隠すつもりで不敵な笑みでもって見えない襲撃者と対峙した。

ハロワ国の戦士という誇りたかい職業に就き、多くの後輩戦士からも敬われている蒼星Vではあったが、誰にも言われたくないコンプレックスがひとつだけあった。

貧乳……。

人はそれをステータスだと言う。またある人は、希少価値だとも言う。

生来のあけっぴろげな性格もあり、また戦士という自覚も手伝ってか、彼女は普段から貧乳であることを引け目に感じるそぶりを人前で見せないようにしてきた。

誰かが「おっぱいおっぱい」などと下賎な話を振ろうものなら、すかさずエルヴンソードをちらつかせ「貧乳のなにが悪いんだ?」とすごんでみせる。それでたいていの新入り戦士たちはおずおずと引き下がってしまうものだった。

しかしまた、蒼星Vは年頃の乙女でもあった。

先ほどのドサクサにまぎれて、襲撃者の放った「やはりAカップだったか…」といった一言が彼女の心をたぎらせていた。

(…まだ、誰にも見せたこと、なかったのに……)

少しだけうつむくようにして剥き出しになった素肌に視線を落とすと、風にさらされた蒼星Vの乳房は魔獣からあふれ出た黄緑色の粘液にまみれ、テラテラと卑猥な光を帯びていた。

(ぜったいに許さない……)

少しはなれたところで再度襲撃者の声がした。

「おやおや、まだ元気が残っているようだな。おとなしくするなら手加減もしようと思っていたが、気を使うまでもなかったようだったな」

この男はいったい誰なんだ。どこかで必ず聞いた声なんだが、しかもごく最近に…。蒼星Vは記憶の糸を懸命に手繰る。

「まだ俺のこと誰だか判っていないような顔だな…。まあいい、お楽しみは最後までとっておくのが俺の主義だ。ご覧、わがしもべもおあずけをくらっていきり立ってるようだ」

男の声を解するのか、魔獣はゴォッと一声雄たけびを上げる。

「クッ」

蒼星Vを捕らえる触手に再び力がこもり、その痛みから彼女は短く苦悶の声を漏らしてしまった。

「…なになに、もう我慢できないって?分かったよ俺のかわいいしもべ”エリンギちゃん"。もう少しだけ蒼星Vと遊んであげなさい」

その命令を待ちわびていたかのように、魔獣は再び、さっきよりも荒々しい雄たけびをあげる。魔獣の吐く息なのか、あたりにあの甘ったるい匂いが立ち込めた。

幾本もの太い触手に両腕を縛られ、蒼星Vの華奢な体はゆっくりと中空に吊り上げられていく。無論足首にも蛇のような触手が絡まりつき、その自由を奪っている。

身をよじりせめてもの対抗をするうちに、今度は少し細めの無数の触手たちが蒼星Vの足元から、ズリズリズリズリと這い登り始めた。

絡まり、もつれ、ほぐれて、また絡まり、じわりじわりと少女の体を侵食するように、それらは明確な意思を持って隠すもののない蒼星Vの素肌の上を登ってくる。

くすぐったさと吐き気をもよおすような嫌悪感がせめぎあい、思わず彼女は絶叫する。

「や、やめろぉぉおおッッ」

触手たちはむしろその声を愉しむかのようにゆっくりと、ゆっくりと登攀を続ける。

蒼星Vの小さなへそを嬲りまわし、薄く浮いたあばらを蹂躙し、やがてお椀のようなふたつのふくらみに達する。

幾筋もの細い触手たちがまるで無骨な男の指先のようにして、蒼星Vのまだ誰にも触れさせたことのない乳房をまさぐっていく。

「やめッ、イヤぁぁぁッッ」

かつて経験したことのない屈辱で彼女の声が裏返る。

一本の触手はその身を柔らかなふくらみの周囲にまきつけては、また一本の触手は薄桃色をした蒼星Vの乳首を執拗に押したり弾いたりしてはもてあそんでいく。

寄せては引き寄せては引き、触手たちは全体がひとつの波のようになって、戦士という名の鎧をはがされた少女の体中を包み込んで行く。それらは絶えず粘液を分泌し続け、少女の白い肌はたぎるように卑猥な黄緑色に汚されていった。

「いッ、いやぁああ、いやよこんなのぉッッ」

やっと魔獣リセルグリュードの精神毒が効果を発揮し始めたのか、蒼星Vは体が芯から火照りだしてくるのを感じた。怒りと戸惑いから、思わずそれらから目をそらせてしまう。

じゅるっ、くちゅっ、じゅるっ、

汗と粘液が混じりヌメヌメになった上半身を、触手たちが歓喜の声を上げるようにいやらしい音を立てながら蹂躙していく。

中に一本だけ先端が傘のように開いた触手がいた。それは傘を口のように開くと、そのままの勢いで蒼星Vの乳房にむしゃぶりついてきた。

じゅぶぶ、ぷりゅっ、じゅぱっ、
「ンあぁッ」

小さな乳首ごと飲み込むような形で左乳房に吸い付いたそれは、耳を覆いたくなるような音を立てながら蒼星Vの発育途中で敏感な部分を攻め続ける。

隠れていて見えないが吸い付いた傘の内側にはモップのような柔毛がびっしりと生えているようで、それらが蠕動を繰り返し絶えず刺激を送ってきていた。

「んッ…ひぅうッ、嫌ッ、気持ち悪い…」

蒼星Vの口から溜息にも似た声が漏れる。まだ嫌悪感のほうが圧倒的に勝っているものの催淫性の毒がすでに体中にまわり、ともすれば経験した事のないような快感とも取れる感覚が彼女を苛んだ。

もちろん彼女とて、男女の生業については知識としては知っていた。

先輩の女戦士たちとの日常的な与太話のなかで、一般の若い娘が知っているぐらいの情報は持ち合わせているつもりだった。

だが、まだ男は知らない。

(キスだって…まだなのに…)

そんな思考をまるで読み取られたかのように、一本の太い触手が彼女の顔めがけて突き進んでくる。ちょうど目の高さでまでくると、まるで鎌首をもたげるようにそれは動きを止めた。

突如触手の先端部分をつき破るようにして、内部から黒光りするつるんとした肉質が飛び出してきた。

いまだ実物を見たことのない蒼星Vにでも、本能でそれが何であるか理解できた。

(うそッ、これって…オトコの人の……)

あわてて首を左右に振って抵抗する。

独特の形状をしたソレは先端部からだらりだらりと白い液体をあふれさせながら、蒼星Vの顔に少しずつ近づいてくる。

このとき初めて、彼女は恐怖を感じた。

「やぁ…。こんなの、いや……」

叫ぼうとした瞬間だった、間隙をついて黒光りする凶相の肉棒は蒼星Vの口にその身を突き立てた。

「んーーーーーッッッッ、んーーーーーッッ」

生暖かい肉棒が蒼星Vの咽頭を容赦なく突いてくる。獣じみた潮くさい匂いが口中に充満した。

「んんーーッッ」

首を振って退けようにも他の触手たちに頭を抑えられ、とうに自由は奪われている。

大きな双眸に涙がにじんだ。

一瞬、噛み切ってやろうかとも思ったが、あまりの汚らわしさにそれすらもためらわれる。

ゆっくりとピストン運動をする肉棒につられて、蒼星Vの形のよい顎も前後に動きだす。

「んっ、んっ、んっ、んっ、ん…」
次第にその動きが速度を増してきた。呼応するように彼女の喉からも声が漏れる。

「んんーーっ!」

やがて血管を思わせる筋がいくつも浮いた肉棒のピストン運動が最高潮に達したとき、一瞬にして一回りも大きくなったそれの先端から熱い液体の奔流が一気に
蒼星Vの口内にほとばしった。

どぴゅっ、ぶりゅっ、びゅびゅっ

肉棒はすぐに引き抜かれたが、飛び散る白濁色をした粘性の液体はとどまるところを知らず、音を立てて飛び散りながら気品ある女戦士の顔をどろどろに汚し続けた。

(やぁぁん、なにこれ、あたしの顔がベタベタぁ…)

そうつぶやく口元から肉棒が発射していった液体が糸を引き滴り落ちる。苦く臭気を立ち上らせる魔獣の汁を、少しだけ飲んでしまった。

赤黒く変色した肉棒からはいまだ液体があふれ続け、蒼星Vの鎖骨を、乳房を白くヌルヌルと汚し続けている。

荒くなった息を抑えつつ、乳房から腹部へ、やがて下腹部へ、ゆっくりと伝っていく粘液をぐったりと見つめる蒼星Vの目に、さらに信じられない光景が飛び込んできた。

三本の触手がスカートの内部をまさぐり、器用に下着だけをズリ下ろしていく。

(まさかッ、そこは嫌ぁッッ)

必死に身をよじって抵抗するものの、両足それぞれを拘束する太い触手によって無理やり股を開かされていく。

(やめてッ、お願い…)

懇願もむなしく、水色のしましまぱんつが力でまかせに引き剥がされていく。下
着がひざの辺りに引っかかると、今度はさらに無理やり足を左右に広げさせられる。

ビリビリという音をたて、お気に入りの下着が引き裂かれた。

「いやっ、ここだけはやめてッッッ」

すらりとした太ももを伝って触手の群れが蒼星Vの秘部めがけて、いっせいに這い上がってくる。

怒りを通り越した恐怖から彼女は抵抗することも忘れ、ただ自分の絶対に触れさせてはならない部分を蚕食しようとする外敵の動きを見守るしかなかった。

足の付け根にいち早く到達した触手が、ちろちろと舐めるような動きをはじめた。

はじめは外側から、そしてちいさな割れ目の入り口。さらに少し這い上がって、自分の一番いやらしい部分…。

「あンッッ」

初めて経験する戦慄が、蒼星Vの脊髄を駆け抜けた。

(そこはッ…)

触手たちはそこに狙いを定めたのか、一斉に獲物へと襲い掛かり始めた。

少女にとって一番敏感な部分にあの粘液質を塗りこめ始めたのか、ぴちゃぴちゃというなんともいやらしい音が耳に届いてきた。

「ッ!くう…」

思わず腰が動いてしまった。

ふいに、全ての触手たちがその動きを止めた。

言い表すことのできないもどかしさが、蒼星Vの心を苛んでいく。

(うそっ!あたし、まさか、悦んでるのッ)

今までにない感情に、蒼星V本人から分泌された暖かい愛液が内ももを伝っていくのを感じた。

再び触手たちが活動を開始した。群れは塊となって少女の秘部を責め続ける。上半身では相変わらず勤勉な触手たちが小さなふくらみを愛撫し続けている。いつの間にかうす桃色をした頭頂部はツンと天を向いている。

「…んんッ、ああッッッ。きゃッ…」

自分の上げてしまった嬌声に自分が一番驚いてしまった。前身を愛撫し続けている醜悪な触手たち。本来ならば唾棄すべき魔獣に快感を与えられている事実が驚愕であり、またそれが蒼星Vを愛欲の淵へとさらに追いやっていった。

「くぅ……んッ。ハァ…ハァ…。んくぅッ…」

戦士として誇りをもって日々修行に明け暮れるだけの自分の口から、こんなにも甘ったるい声が出せるものなんだ、と蒼星Vは妙に納得してしまった。

半開きになっていた口元からよだれが一筋たれていることも、今は不思議と気にならない。

「くぅんッ…イヤ…こんな…っく、こんな魔獣に犯されるなんて……」

思考では必死に拒絶するものの、体が言うことを聞いてくれない。これが毒の効力というのか。

身をよじりながらも、蒼星Vの秘部は新たな刺激を貪欲に受け入れようとしているのか、自分の意思から独立した別の生命体のようにくちゅくちゅと音をたてながら、次にくる快感をひたすら待ちわびている。

ぴちゃぴちゃ。っちゅくっちゅ。

粘液なのか愛液なのか、もはやどちらのものか分からない湿った音を立てながら、触手たちは確実に蒼星Vへと刺激を送ってきてくれる。

まだかろうじて膣内への侵入は許していない。触手たちは執拗に蒼星Vのクリトリスだけを攻めてくる。

触手たちの動きが次第に活発になってくる。

一定のリズムを刻み蒼星Vのぷっくりと充血した部分を強く摩擦し始めたのだった。

「んッ、んッ、んッ、あッ、あッ、あッ、イっ、イっ、イっ…」

触手らが刻むリズムにあわせて、蒼星Vの口からも愉悦の吐息が漏れる。

(こんなの…、こんなのあたしじゃないッ。嫌…、みんな、たすけて……)

思考とはかけ離れ、体が感じる快感はそろそろ絶頂に達しようとしていた。

蒼星Vのクリトリスを擦る触手はそのスピードを一層増し、コンプレックスのある小さな乳房も二本の傘付触手によって揉みしだかれ続ける。

「いっ、いっ、あンッ…くッ、…ッく、ッく、いッ…いッ…」

宙吊りにされた戦士の体がもどかしくくねり始める。

「いッ、ッく…いッ…ッく」

蒼星Vは襲撃者のことも忘れ、あえぎ声を上げる。

「いッ、いッ、…ちゃうッ、ま…獣にッ……ッか、されちゃうぅッ」

ピンッ、と蒼星Vの頭の中で何かが弾けたような気がした。

「いッ、イクッ…、イクぅうううぅぅぅぅ」

瞬間世界が明滅した。

体が弛緩し、天と地とが逆さまになるような錯覚を覚え、蒼星Vの意識は深淵へと沈み込んでいった。


「やった、やったぞ!ついに蒼星Vを倒した!」

木陰で様子を伺っていた男が一人、狂喜に身を躍らせながら何故か前かがみのまま現れた。

「よっしゃー”エリンギちゃん"よくやった、それでこそわがしもべ。宿敵蒼星Vを見事討ち果たしてやった」

男は粘液でどろどろにまみれた蒼星Vの裸身を、何故か前かがみのまま覗き込む。

「こいつめ、いつも俺を討伐してくれて。積年のうらみじゃあっ」

男は蒼星Vからあらかじめ奪っていた荷袋をその場でひっくりかえした。

「あったあった、これこそ捜し求めていた秘宝の地図だぁっ!うんっ、ちゃんと破れてない。これさえあれば俺も…俺も十六夜に行けるんだぁああっ!いや、待てよ。こいつを手土産にあま~い国に行ってもう一回仕官させてもらうってのもアリだよな。…ふふふふふふふ、夢が広がりんぐ!よし、”エリンギちゃん"、もうこの女は用済みだ。さっさと帰るぞっ」

独り言を一通りぶちまけ満足すると、男はしもべの魔獣を仰ぎ見た。

しかし、リセルグリュードはびくりとも動かない。

「おい、あにやってんだ”エリンギちゃん"、俺の命令が聞こえないのかよ、おい、紀伊店のかっ」

グルルと魔獣がうなりをあげた。どんよりとした眼球が男の姿を捉えている。

「おい、なんだよその目は。ご主人様に逆らうつもりかよっ」

ふいに伸びてきた触手が男の両腕を捕らえ、そのまま空中に吊り上げた。

「おいおいおい、冗談きついって。俺と”エリンギちゃん"の仲だろーがよ。う

わっ、なにその目、なんかヤバイよまじで」

触手が男の衣服に手をかけた。

「ウホッ、まじ洒落ならんて。ウホッ、おれそんな趣味ねーから。やめてー、誰かタッケテー」

……そのときだった。


「教えてやろうか」

若々しい青年の声があたりに響いた。

「誰だッ」

紅き鎧を纏った一人の男が、闇の中から湧き出すように現れた。

「ひさしぶりだな、しいたけ」

「お、お前は」

「VIP参謀、音階のVenial」

「「…とそのなかまたち!」」

気づけば魔獣リセルグリュードと、それに襲われる形になった襲撃者しいたけは
ハロワ国参謀率いる勇士たちに囲まれていた。

Venialは無残な姿になっている蒼星Vに黙って歩み寄ると、纏っていた深紅のマントをかけてやった。

蒼星Vがうっすらと目を開ける。

「…さ、参謀…、あたし…」

「心配するな。もう大丈夫だ」

にこりと笑い立ち上がると、ハロワ国の若き参謀は宙吊りにされた襲撃者しいたけを仰ぎ見た。

「ウホッ、いい格好だな、しいたけ。お前にウホッな趣味があったとはな」

「うっ、うっせーぞ、こいつを何とかしてくれい。一体どーなってんだ」

「海棲生物であるリセルグリュードは、本来雌雄同体の特徴があるんだ。つまり、状況に応じて♂にもなれば♀にもなれる。ちなみに今は♀みたいだな」
魔獣は抱きかかえたしいたけを、いとおしそうに見つめている。

「なんーだよー、それはー」

「ま、自分で蒔いた種だ。自分で何とかするんだな」

しいたけを捕まえたまま、魔獣は地響きを立てながらゆっくりと動き出した。

「おいっ、へんなとこさわんなっ、…きゃっ、ヤメテー……」

しいたけの悲鳴がだんだんと遠ざかっていくのを、ハロワ国の勇士達はせめてもの哀悼をこめて見送るのであった。

252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/12(月) 16:20:08.35 ID:DgZDkSqA0 (PC)
ーエピローグー

「てか、参謀にみんな、一体いつの間に来てくれてたの」

「いや、実は…ずっとあそこの影で様子をみていたのだ…」

「ええーっ、ずっとあたし見られてたわけッッッ」

「すまん、圧倒的多数決でしばし様子見をと…」

「はい」「ずっと」「一部始終」「ごちそうさまでした」「おっぱい」「わっふるわっふる」


ー了ー

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最終更新:2009年10月12日 19:24