600 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/16(金) 22:02:25.60 ID:hb+OwaEl0 (PC)
割と暇な国王の一日
第四話
――農民の幸運――
「ROMさん、いるかい?」
「あら、国王じゃないですか?こんな早くにどうしたんですか?」
ハロワ国の記録室。
ひょっこりと訪れた国王に驚いたように顔を上げたのは、ROMではなく事務机に座って書き物をしていた歴史編纂部の夜勤であった。
少々高い記録室のカウンター越しに背伸びをするビプ妹に、向こう側の夜勤はいぶかしげに尋ねた。
「ROMさんなら今日は遅番ですよ。記録室に何か御用ですか?めずらしく落し物でもされましたか」
国内のあらゆる時事を記録するのが記録室の役目である。その記録は多岐にわたり戦争の記録から、戦士たちのちょっとした落し物の記録まで幅広い。
ビプ妹が訪ねた基本的にROMはここの室長であり、文字通り歩く記録メディアとも評されている。
「いや、落し物ではないのだが、実は……」
言いかけたビプ妹の背後で、ドアが派手な音を立てて開いた。
「夜勤ー、いるかー?」
農民のような格好をした男が、無遠慮に部屋へ入ってくるなり
「うんち」
と二人に下品な挨拶をした。
“百姓一揆”こと童帝ニートである。異常なレア運をもち、塔であろうが畑であろうが数々のお宝を拾いまくることで有名な男だ。
「森で変なもの拾ったんで持ってきた」
童帝が風呂敷をカウンターに広げ始めた。
「なんだよ、またレア拾ったのか。飯がまずくなるからやめろよな、そういうの」
ビプ妹が形のよい眉根を寄せる。
「いやいや、最近全然拾えてねーって。これも誰かの落し物っぽかったんで、わざわざ持ってきたんだよ」
風呂敷を広げると、【amazon.co.jp】と書かれた小包が入っていた。
「通販の商品のようですね、誰かが落としたんでしょうか」
夜勤が興味深げに小包を覗き込む。
「一応、中身は改めさせてもらったよ」
童帝が開封された小包を開くと、中にDVDのケースが入っていた。
《十六夜魔法少女・セロリちゃん》
「…………」
初回限定豪華仕様のDVDボックスには、かわいらしい少女のイラストが描かれている。
「アニメのDVDのようだな……」
ビプ妹は興味津々な様子で、それを持ち上げている。
「セロリ様の初回予約特典付だよッ。誰だよこんないろんな意味でレアなもん落としたのは。俺なんか予約期間中金欠で予約できなかったっつーのに…。もったいない」
「童帝にしては偉いじゃないですか。そのままパクらなかっただけでも」
夜勤が可笑しそうに言う。
「俺はセロリ様の前では真っ直ぐでありたいのだよ」
童帝は夜勤の差し出した拾得物届出表に記入しながら、ぶつぶつと喋っている。
「じゃ、持ち主に宜しくな」
ぶっきら棒にそういい残し、童帝は国王に一瞥しスタスタと帰っていった。
二人は残された《十六夜魔法少女・セロリちゃん》初回限定豪華仕様DVDボックスと童帝ニートの背中を交互に見つめるのであった。
ー次回を待てー
最終更新:2009年10月17日 00:35