568 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/10/16(金) 19:47:32.06 ID:hb+OwaEl0 (PC)
割と暇な国王の一日

第二話
――武人の奥義――

「たいへんだーーッ、詰まったぞーーッ」

なにやら城内が騒がしい。
一日休暇を決め込んだビプ妹ハロワ国王が、周囲にふよふよと精霊たちを漂わせながらお散歩をしていると、通路をバタバタと走り去っていく数名の衛兵たちがいた。
「おい、騒がしいぞ。どうしたんだ」

背丈の低いビプ妹王に気づかず通り過ぎようとする、赤みがかった褐色の頭髪をした一人の若い衛兵に声をかけてみる。
衛兵は一瞬だけきょろきょろとあたりを見回したが、すぐに目の前の国王に気づき大慌てで敬礼をした。
「こっ、これは国王陛下。しっ、しつれいいたまますた」
ムッとしながらも、ビプ妹は落ち着き払ってその若い衛兵に問いただした。

「赤褐色じゃないか。何事だよ、こんな朝っぱらから」
「はっ、それが……」
いいにくそうにしながらも赤褐色は話を続ける。
「それが、雲骨丸様が城内のトイレを詰まらせたご様子で……」

――武人・雲骨丸。
ハロワ国といわず近隣諸国にその武名をとどろかせる武芸の達人である。いざ戦争の折には独特の戦術を駆使し、城攻めの歳には敵城のトイレを詰まらせるといった誰にも真似できない芸当を用い、数々の武功を立ててきた戦術家でもあった。

「今朝、うっかり城内のトイレを詰まらせてしまったとの報告を受けています」
「なんだって! 大変じゃないか、そりゃぁ。……で、その雲骨丸殿はいずこだ?」
さすがのビプ妹もうろたえた。
「……それが、……現在逃亡中のようで」
「まずいな……、雲骨丸殿が詰まらせたトイレを戻す方法を知っているのは、本人を除いてそう多くない。早いとこ何とかしないと、ヤバイことになるな……」

少し思案してから、ビプ妹は軍主らしき落ち着いた声音で告げた。
「わかった。俺が何とかいい方法を探すから、お前らはこれ以上の被害がほかのトイレに及ばぬよう尽力してくれい」
「ハッ!」
国王の指令を受け、その赤褐色は弾かれたように駆け出していった。

ーつづくー

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最終更新:2009年10月17日 11:49