僕は泉家に飼われている黒猫です。

名前はクロにゃ。飼い主がクロと呼んでくれるから僕も納得してる。

僕が生まれてから数ヶ月間、僕が始めて飲んだ暖かいミルクはとても印象に残っていて嬉しかった。

僕は毎日起きるのが楽しみで仕方ない。それはね、飼い主さんがいつも僕のためにドライのキャットフードと柔らかいエサをくれるためだ。

僕は毎日それを食べるために飼い主さんを鳴いて叩き起こす。

大抵飼い主さんの反応は不機嫌だけど、僕の愛おしい瞳にやられて笑顔になるんだぜ。その反応を楽しむのも僕の毎日の習慣になっとる。

2年後・・。

僕は飼い主さんが何か新しい黒い制服に着替えてるのを見た。どうやら「ちゅうがくせい」という学校服らしい。

にゃんこはバカだからよくわからん。行ってから数時間飼い主さんがいないので暇だー。その時は大抵猫は寝て過ごすの。

飼い主さんは毎日決まった時間に帰ってきて僕のこと撫でる。これがまた気持ちいいの!! (*´ω`*)

また飼い主さんは定刻になると玄関を飛び出して行ってしまった。僕は遊び相手のいない家のリビングで寝る。

5年後・・。

飼い主さんが僕に振り向かなくなってきて数年が経つ。それでもエサはちゃんとくれる。すこし寂しくなってきたな・・。

飼い主さんは「こうこうせい」と呼ばれるところに進学していて、僕に構ってる暇は無いんだそうだ。

僕はいつものリビングで寝てると、どこか飼い主さんのパパとママが喧嘩してる・・。

僕はあまり関係ないので庭先に寝ることにしました。

喧嘩する声が聞こえなくなったので、僕は飼い主さんの部屋に行きました。

すると、飼い主さんはなんか泣いていて僕もすこし悲しい気分になったので傍に行くと飼い主さんは僕を優しく抱きしめました。

僕もすこし「にゃぉん、にゃぉん」と泣いてみると号泣しだし、さらに強く僕を抱きしめました。

10年後・・。

飼い主さんはどうやら「仕事」に行くらしく僕はいつも見送る。そして家には老人となった飼い主さんのパパとママがいる。

僕の頭を優しく撫でながらテレビを見ている。僕に構ってくれる人が飼い主さんとパパとママだけになった。

それから数年後、そのパパとママはとある旅行に出掛けた。

飼い主さんと僕だけになった。飼い主さんは僕を見ると「なにか、食べたいの??」

僕は別に食べたいわけではない。食べたくないといえばそれは嘘になる。

飼い主さんは電話の相手と話している。そして落ちる受話器・・。

飼い主さんはまたしゃがみこんで号泣する。僕は飼い主さんの傍に行く・・。「にゃんにゃん」と鳴きながら・・。

そして数ヶ月の月日が流れて旅行に行ったパパとママが黒い箱に入った姿で運ばれてきた。

僕は一体何が起きてるか分からずただ傍観するばかりだった。静かに眠っているパパとママの姿を見て号泣する飼い主さん。

僕はまたリビングで寝る。寝ることが増えてきた。飼い主さんは仕事で今日も帰るのが遅い。

僕はお腹が減ったのでお皿を見る。なにも入っていないことを確認すると飼い主さんの帰宅を心待ちにしていた。

飼い主さんが帰ってきた。そしていつものようにエサを入れてくれる。僕が生まれて初めて食べたあのエサだ。

また今日も仕事で行ってしまう飼い主さん。僕はまたリビングで寝る。次の日も、また次の日も。そしてまた次の日も。

僕はいつものようにリビングで寝ていた。お腹が減ったのでお皿を見てもなにも入っていない。

僕はいつものように帰ってくると想い玄関先で待っていた。

しかし・・。

今日は帰ってくるのが遅い。何時間が経過しただろうか・・。

飼い主さんはまだ帰ってこない。

エサがほしい。空腹で僕は倒れそうだった。

僕はあまり動かないほうが空腹を抑えられると思って飼い主さんの布団の上で寝ることにした。

すると、玄関から大声ではしゃぐ飼い主さんとその友達が帰ってきた。

僕は空腹で声も出すことが出来ず我慢していた。絶対僕のことに気付いてくれるからだ・・。

いつも、毎日、同じ時間にエサをくれた飼い主さんだからだ。

それでも飼い主さんが僕を探しに来ることはなかった。

飼い主さんは酔ってそのままリビングで友達の人と寝てしまった。

僕は飼い主さんのところに行こうと階段を下りた瞬間・・。

僕はよく分からないまま階段の一番下にいた。足とかが変な方向に曲がってしまっている。

そうか、僕は階段から転落したようだ。

僕は何とか飼い主さんの所に行くが足が上手く動かないまま倒れこんでしまう。

空腹で苦しい。飼い主さん・・。助けて・・。

そして数十時間後、私の前にいたのは静かに息を引き取ったクロの姿だった。

子供の時からずぅーと一緒だったクロ・・。

高校生の時も一緒だったクロ・・。

大学受験の不合格で落ちた時に親と喧嘩して泣いてたときに傍に来てくれたクロ・・。

親の葬儀の時は遠くから見ていてくれたクロ・・。

仕事に行く時はいつも玄関まで見送ってくれたクロ・・。

そんな私が一度の過ちで愛しいクロを死なせてしまった。

優しくて。いつも朝には起こしてくれた。

学校まで見送ってくれたときがあったよね。それで一匹家に帰ってたときがあったね。

そんなクロを私は殺してしまった。私は私自身が許せなかった・・。

悔しい。悔しい気持ちで一杯になった。涙が自然に出る。

私は親も親戚も亡くした。クロだけは一生のパートナーとして一緒に生きていくんだと決めたのに・・。

クロを殺してしまった。私はクロを動物の葬儀に出して火葬してもらった。

灰の姿になったクロの姿を見て私は号泣した。周りに参列してくれた友達やお経を上げてくれた御坊さんも共に泣いてくれた。

私は動物の葬儀屋さんに頼んでペット専用のお墓に入れてもらうことにした。

天国でもお幸せに・・クロ・・。

そして・・ごめんなさい・・・ごめんなさいクロ・・こんなバカな飼い主で・・ごめんなさい・・本当にごめんなさい。

許して・・ね。クロ・・。

      • ありがとう。クロは、私の最高のパートナーだったょ・・。

END

EDテーマ「ハナミズキ -石垣結衣さん-」
最終更新:2013年04月17日 08:51