むこぬこの親戚である仔寝は、むこぬことの買い物のために付き合わされる事に。
その待ち合わせ場所に駅前を選んだが、数十分経過してもむこぬこの姿が見られないことに仔寝も苛立ちを隠せないでいた。
すると、駅の改札口から出てくるむこぬこの姿を発見した仔寝が一言浴びせる。
むこぬこ「ごめん!! 待たせた?」
仔 寝 「おっそーい!!!!」
イライラしながらも仔寝とむこぬこは目的のお店へと歩みを進める。
仔 寝 「あんたが買い物したいって言うから付き合ってんだよ?」
むこぬこ「だから、ごめんって・・」
仔 寝 「はぁ・・それで何買うの?」
むこぬこ「たまちゃんが働いてる本屋さんで国語辞典買おうかなって」
仔 寝 「はあ? 中学生の時に使ってたのがあるじゃない? あれじゃダメなの?」
むこぬこ「実はさ・・ねこ関係の単語に赤線引いちゃってさ・・」
仔 寝 「小学女子かい、あんたは・・」
駅からほど近い珠子がバイトで勤める本屋さんに到着する。
早速来店すると店入り口前にいる珠子と目が合う。
珠 子 「いらっしゃいませ!! って!!」
仔 寝 「どうも・・☆」
むこぬこ「よぉ、たまちゃん!! 元気?」
珠 子 「あんたの顔を、見る事になるなんてね・・」
むこぬこ「ほらほら、今は店員さんとお客さんだよ?」
珠 子 「へいへい。そうでござんすね。で?」
むこぬこ「で?」
珠 子 「何か買いに来たんだろ?」
むこぬこ「うん。そうだよ~」
仔 寝 「早く、国語辞典。買っちゃおうよ・・」
むこぬこ「よぉーし。行こう!!」
珠 子 「ごゆっくりどうぞー」
店の奥に行くと斉藤君が本をジッーと見ていた。
そこにむこぬこ達が発見する。
むこぬこ「あれ? さいちゃん?」
仔 寝 「どうしたの?」
2人は本棚に隠れた後に、少しだけ顔を出し様子を伺う。
この状況に疑問を感じた仔寝がむこぬこに一言申し出た。
仔 寝 「さいちゃんって? 確かあんたの彼氏だよね?」
むこぬこ「うん。そう」
仔 寝 「どうしたの? 声掛けないの? つーか、なんで隠れてんの?」
むこぬこ「しー!!!」
斉藤は本の幾つかを決めた様子でレジカウンターに持っていく。
斉 藤 「これ、お願いします・・」
珠 子 「はーい。毎度どうも☆」
斉 藤 「・・・・」
珠 子 「あれ、あいつとは会わなかった?」
斉 藤 「はい?」
珠 子 「むこぬこと親戚の子が入ってきたんだけど・・」
斉 藤 「いや、会ってないですけど」
珠 子 「あらそう? ふーん。あっ!?」
本棚に隠れて様子を伺うむこぬこの姿を発見する珠子。
珠 子 「そこであんた、何してんの?」
斉 藤 「ぬこちゃん?」
むこぬこ「えっへっへっー!!」
珠 子 「自分の彼氏のこと様子伺って何しようとしてる?」
むこぬこ「まぁ、なんだろう。なに買ってるのかなって・・」
斉 藤 「えっと・・」
珠 子 「今度の試験テストの参考書でしょ?」
斉 藤 「そうそう、それ・・」
むこぬこ「えっ?」
仔 寝 「うん?」
珠 子 「あんた、もしかして・・」
むこぬこ「うん。忘れてた・・」
珠 子 「まだ、間に合うし買っておきなよ?」
むこぬこ「なんで・・」
珠 子 「なんでって、あんたはまた桃子にやらせようとしてんの?」
むこぬこ「だってだって!!」
珠 子 「だってじゃない。自分の力で問題を解いてみたら意外とすっきりするかもよ?」
むこぬこ「それはない」
珠 子 「この野郎・・即答しやがった。えっと、仔寝ちゃんだっけ?」
仔 寝 「は、はい」
珠 子 「あんたからも何か言ってくれない? このバカにさ」
仔 寝 「たまさんが言うのは正論だし、やってみれば?」
むこぬこ「えっ・・・」
珠 子 「やれよ?」
むこぬこ「うぃす・・(  ̄3 ̄) 」
斉 藤 「もし良かったら、俺の家に来る? 家近くだし・・」
珠 子 「おぉー!! それいいじゃん。行ってきなよ」
むこぬこ「でもな・・」
仔 寝 「私もいいかな?」
斉 藤 「うん。いいよ・・」
仔 寝 「ありがとう☆」
斉 藤 「 (´д`*) 」
むこぬこ「こらこらー!!! なに赤くなってんの?」
斉 藤 「ご、ごめん!!!!」
国語辞典と試験用参考書を購入した。
むこぬこと仔寝は早速斉藤君の家に向かうことになった。
むこぬこ「あ、そういえば、さいちゃんの家って行ったこと無いなぁ~」
仔 寝 「へぇ~あんた達、付き合って一年になるのにまだ無いの?」
斉 藤 「はい。ぬこちゃんの家には行った事あるんですけど・・」
仔 寝 「珍しい。私の彼氏とは付き合ってすぐ家に行ったけどな~」
むこぬこ「あれ? 仔寝って彼氏いたの?」
仔 寝 「バカ!! あんたが中学生の時から付き合ってるわ!!」
むこぬこ「あ、もしかして、あのちょっとインテリ臭かましてるメガネ男の古泉君?」
仔 寝 「そう!!」
むこぬこ「あーうそ!! 信じられない!!」
仔 寝 「信じられなくてええわ!!!」
斉 藤 「あの、ぬこちゃん? お話しが見えてこなくて困ってるのですが・・・」
むこぬこ「あ、ごめんごめん。えっとね・・」
仔 寝 「説明せんでいい。簡単に説明すると、古泉くんって名前の男の子が当時、私の通ってる中学校で優秀な子だったのね」
斉 藤 「ほぉほぉ・・」
仔 寝 「で、その子と今、付き合ってるの・・」
斉 藤 「普通にいいお話だよね・・ぬこちゃん、どこが信じられないの?」
むこぬこ「あいつは昔からナルシストだったよね」
仔 寝 「ナルシスト言うな!!」
斉 藤 「ナルシストって・・あの、自分や自分の容姿が好きだという。アレですか?」
仔 寝 「まぁ・・そうね・・」
むこぬこ「今でも、それは健全なの?」
仔 寝 「どういう意味?」
むこぬこ「ナルシストなのかなって」
仔 寝 「今は大分変わったわよ。自分が好きーとか昔は言ってたけど・・」
むこぬこ「やっぱり人って変われるんだね」
仔 寝 「今度会ってみない?」
斉 藤 「今度ですか?」
仔 寝 「ダブルデートって感じで」
斉 藤 「いや、えっとあの・・それは・・」
仔 寝 「行こうよ!! さいちゃん!!」
むこぬこ「ちょっとー!! なんだか2人でいい雰囲気なんですけど!? 」
仔 寝 「あんたもどう?」
むこぬこ「うん? そうだな。私も行って見ようかな。どこまで変われたのか確認してみたいし!!」
斉 藤 「じゃ、俺も・・」
仔 寝 「OK。それじゃスケジュール合わせるから携帯のアドレス教えてね」
むこぬこ「ほぃほぃ」
斉 藤 「分かりました・・」
仔 寝 「家って結構遠いの?」
斉 藤 「あ、この辺りですよ」
斉藤君の家に到着すると二人が唖然とする。
斉 藤 「どうしたの?」
むこぬこ「さいちゃんってアパート暮らしだったの?」
仔 寝 「私も意外だった・・」
斉 藤 「さぁ、とにかくどうぞ!!」
むこぬこ「おじゃましまーす!!!」
仔 寝 「失礼します!!」
園 子 「うぃーうぃーおかえりー!!」
部屋の中に入ると斉藤の姉である園子が麦茶を飲んで寛いでいた。
斉 藤 「あぁ、姉貴、こちらーえっと・・。俺の彼女のむこぬこちゃん・・」
園 子 「おぅー!!! いつかは連れてくるとは思ってたよ」
むこぬこ「あの・・どうも」
園 子 「おやおや緊張しとるって感じかな? まぁ~よろしくね☆」
むこぬこ「よ、よろしくお願いします~」
園 子 「うふふ☆ それでそちらは?」
斉 藤 「あ? あぁ。うん。ぬこちゃんの親戚の・・」
仔 寝 「こねです。誠に勝手ながら、上がらせてもらってます」
園 子 「うん!! 礼儀正しくて素晴らしい!! さぁ入って入って!!」
斉藤君の部屋ではなくリビングで勉強会をしているとむこぬこが一言つぶやいた。
むこぬこ「さいちゃん?」
斉 藤 「うん? なに?」
むこぬこ「さいちゃんの部屋で勉強会やらない?」
斉 藤 「え、ど、どうして?」
むこぬこ「だって迷惑そうだし・・」
仔 寝 「リビングだと、ご家族の方の迷惑になりそうな気もするけど・・」
斉 藤 「えーでも散らかってるし集中できないよ?」
園 子 「あぁううん。いいの。いいの!! 勉強のためなら好きに使っていいから☆」
仔 寝 「いいんですか?」
園 子 「いいのよ。こいつー普段は勉強なんかしないくせに彼女の前だからカッコいい所見せてやろうって張り切ってるのよ☆」
斉 藤 「んなバカことあるか!! 普段からちゃんとしてるよ!!!」
園 子 「どうだかねぇ~☆」
斉 藤 「くそぉ~姉貴の野郎・・・」
仔 寝 「まぁまぁ、優しいお姉さんに甘えちゃおうよ!!」
斉 藤 「・・・・・そう」
むこぬこ「ありがとうございます!!」
園 子 「はいはい。それじゃ私は近くのコンビニ行ってくるから勉強頑張ってね☆」
斉 藤 「逝ってこい」
園 子 「じゃあねー!! (*´ω`*) /」
近くのコンビニへ買出しに行くため外出した園子。
リビングで3人っきりになった。仔寝が口を開いた。
仔 寝 「あのさ」
むこぬこ「なに?・・突然?」
仔 寝 「今度花火大会あるじゃん?」
むこぬこ「あるの?」
仔 寝 「なによー知らないの?」
むこぬこ「駅前そんな張り紙貼って無かったよ?」
仔 寝 「地元の花火大会だから貼ってあるわけないじゃん」
むこぬこ「えーそういうもんなの?」
仔 寝 「そうなの!!」
むこぬこ「やっべぇー全然知らなかった」
斉 藤 「それで・・花火大会がどうかしたんですか?」
仔 寝 「そうそう。それで一緒に行かないかってお話になってるの!!」
むこぬこ「はぁ?」
仔 寝 「なに?」
むこぬこ「勝手に決めないでよ!!」
仔 寝 「なぁに? あんたは行きたくないの?」
むこぬこ「違うよ。予定をあれこれ勝手に決めるからさ・・・」
仔 寝 「来週だから大丈夫だよ」
むこぬこ「え、そうだったんだ。びっくりした」
仔 寝 「今週か明後日だと思ってた?」
むこぬこ「うん。思ってた!!!」
仔 寝 「アホか・・」
斉 藤 「結局、そのお話しって・・」
仔 寝 「あぁーごめんね。話しが反れた。で、梓、百代、梨穂子、玲子、美月、珠子、桃子って事になってるだけど・・」
むこぬこ「私は?入ってないけどー? どういう事なの?」
仔 寝 「ま、だからさ。うちの彼氏も連れてくるから、あんた達2人も一緒にどうかなって。そういうお話よ」
むこぬこ「なるほど~☆」
仔 寝 「はぁ~疲れる・・」
斉 藤 「俺はどうしようかな・・・」
むこぬこ「一緒に行こう!!」
斉 藤 「え、い、行く?」
むこぬこ「やだの?」
斉 藤 「うん。分かった行くよ」
むこぬこ「やったー☆」
花火大会へ一緒に行く事になった2人。勉強を終わらせて自宅へと帰ることになった。
見送りの為に斉藤君はむこぬこと仔寝を駅まで送ることに。
斉 藤 「仔寝さんのお陰で宿題が今日中に終わるとは思っても見ませんでした」
むこぬこ「うちもだよ~」
仔 寝 「あんたは普段から勉強してれば教える必要も、桃ちゃんの労力も軽減されるんだよ?」
むこぬこ「分かってるけどさ・・面倒くさいんだよ~」
仔 寝 「ホント、斉藤君? 貴方もこれのどこがいいと思ったの?」
斉 藤 「そ、それは・・・」
むこぬこ「あのさ、それをわざわざ当人の目の前で質問する~?」
仔 寝 「理解に苦しむわ」
むこぬこ「理解しなくていいよ~」
女の子2人の会話を後ろから聞いて微笑んでいると、駅前に到着した。
仔寝とむこぬこは、送ってくれた斉藤君に礼を言うと駅に入っていった。
そして一週間が経過し花火大会の日が近づいてきた。
駅前で待ち合わせをしていたむこぬこと斉藤の2人は仔寝とその彼氏と合流した。
むこぬこ「あれ? そちらは、彼氏さん?」
仔 寝 「あ、うん。そう。うちの・・彼氏の大輔」
大 輔 「どうも、よろしく」
仔 寝 「大輔? こっちがむこぬこちゃん。うちの親戚、お隣がぬこの彼氏の斉藤君。」
大 輔 「君が斉藤君だね? 話は仔寝ちゃんから聞いてるよ。順調のようだね」
斉 藤 「え? あ、ありがとうございます」
むこぬこ「ほぉ~イケメンっすね☆」
大 輔 「え?」
仔 寝 「またあんたはー!!」
大 輔 「ぬこちゃん。そういう斉藤君もイケメンなんじゃない?」
むこぬこ「はぇ? いやいや。うちのは・・ねぇ?」
斉 藤 「うちのはって・・(小声)」
仔 寝 「と、とにかく。早く行こうよ。皆現地で会おうってなってるし!!」
大 輔 「うん。そうだね」
むこぬこ「花火~♪ 花火~♪」
花火大会の会場にたどり着く4人はクラスメイト達と合流した。
むこぬこ「おぅーみんなー!!!」
珠 子 「遅い!! なにしてんのー!!!」
玲 子 「まぁまぁ~たまちゃん」
むこぬこ「あれ? 梓と桃子、美月は?」
玲 子 「桃子ちゃんの浴衣選ぶって言って地元のショッピングセンター行ってくるって・・」
むこぬこ「マジ? うちらより遅く来るってこと?」
珠 子 「まぁ~そうなるわな」
むこぬこ「たまちゃん。何で怒ったの?」
珠 子 「はぁ?」
むこぬこ「来るの遅いとか~何とか!!」
珠 子 「わしは怒っとらんぞ?」
むこぬこ「なぜに?」
珠 子 「その場の雰囲気よな。約束の時間に来なかったら怒るやろ」
むこぬこ「ギャルゲーのやりすぎだよ・・」
珠 子 「何か言ったか?」
むこぬこ「ううん。なんでもない☆」
2人の会話を傍観してる玲子が仔寝と大輔、斉藤君に気が付く。
玲 子 「仔寝ちゃん。久しぶり」
仔 寝 「玲ちゃん。元気にしてる?」
玲 子 「うん。私はね。そっちは・・・?」
仔 寝 「あ、紹介忘れてた。私の彼氏の大輔」
大 輔 「どうも。初めまして」
玲 子 「どうも~。体が大きいですね? 何か部活をされてるんですか?」
大 輔 「そうだね。サッカーを少し。レギュラーではないけど」
玲 子 「へぇ~サッカーやってるんですか。あ、でも、サッカーって言ったら・・」
斉 藤 「・・?」
大 輔 「・・うん?」
玲 子 「さいちゃん。サッカーやってるよね。しかも、レギュラーで?」
斉 藤 「うん。・・まぁね」
大 輔 「へぇ~。凄いな。実力では先輩だね」
斉 藤 「いえいえ。あ、どうも☆」
大 輔 「ぬこちゃんはそういう力強い姿に惚れちゃったのかな~」
斉 藤 「いえいえ。惚れたのは僕のほうです!!」
大 輔 「え? そうなの?」
斉 藤 「お恥ずかしながら・・・」
大 輔 「ううん。人を好きになるってのは、とても素晴らしいことだよ。恥ずかしく思わなくていいんだよ」
斉 藤 「そうですか。そ、そうですよね。へへへ☆」
大 輔 「うふ(笑)」
男同士2人の会話を傍観して聞く玲子と仔寝たち。
玲 子 「仲良く話してるね」
仔 寝 「そ、そうだね・・」
玲 子 「男同士で、良い友達関係になると思うよ」
仔 寝 「そ、そうね・・。さいちゃんが大輔のこと惚れてるように見えるけど・・」
玲 子 「そこは心配しなくても大丈夫だと思うけど・・」
大量の袋を持って走ってくる女の子たちが近寄ってきた。
それは浴衣姿の桃子、梓、美月、もやし、蓮ちゃんだった。
むこぬこ「あー!!! やったと来た。遅い!!! 花火始まるよ!!」
珠 子 「立花と貴阪もいるじゃん?」
むこぬこ「え?」
梓 「いやいや。ごめんごめん!!! 浴衣選ぶの手間取ってー」
桃 子 「ごめんなさい。わたしのせいで・・」
美 月 「桃子、気にするな!! 間に合ったんだからOK」
桃 子 「は、はい・・」
むこぬこ「もやし~。なぜ来たん?」
もやし 「なんでって蓮ちゃんと買い物してたらばったり会っちゃって」
蓮 「あ、あ、あ、さ、さそ、誘われたんです・・・」
むこぬこ「れんちょんは相変わらずのアガリっぷりだね」
蓮 「そ、そ、そ、そうでなんです・・」
もやし 「皆、まだなのん? 浴衣」
むこぬこ「うん。呉服屋さんで予約してて。そこで着替えるらしいけど」
もやし 「なるほどー」
珠 子 「よぉし!! 皆集まったことだし行くかー!!」
むこぬこ「おぉー!!!!」
一行はまず浴衣に着替えるため、予約を取っていた呉服屋さんへ立ち寄る。
店内に入ると振袖、浴衣、和服などの綺麗な生地が処狭しと並んでいた。
梓 「すみませーん!! 予約をしていた。"あずさ" ですけどー!!」
店 員 「はいはい。どうも。梓様ですね。承っています。こちらへ」
梓 「どうもー!!」
女子全員が呉服屋の奥へ消える。
その間、待たされる男子2人。
斉 藤 「今日は冷えますね」
大 輔 「そう? 僕的にはちょうどいいけど」
斉 藤 「マジっすか?」
大 輔 「うん。上着、ジャケットは着てこなかったの?」
斉 藤 「そうですね。いらないかなと思ったんですけど・・」
大 輔 「これ。もし良かったらどうぞ」
大輔からマフラーを受け取る。
斉 藤 「え、いいんですか?」
大 輔 「いいよ。凍えそうにしてるの見ると可哀想に思っちゃうから」
斉 藤 「あ、ありがとうございます!!」
斉藤君はマフラーを首に巻きつける。
ほのぼのとした顔でむこぬこの帰りを待つこと30分後。
梓 「おーい。男子諸君、お待たせー!!!」
仔 寝 「だ、大輔? どう?」
大 輔 「うん。仔寝ちゃんらしい可愛い絵柄だね。花柄選んだんだ?」
仔 寝 「そうなの。いいでしょ?」
デレデレする2人をよそに、むこぬこと斉藤の2人は少し緊張していた。
むこぬこの可愛い和服姿に何とも言えない彼氏。
斉 藤 「えーと、あの、何度も見て慣れてたはずだと思ってたんだけど・・」
むこぬこ「慣れてたって?」
斉 藤 「あぁーいやーそうじゃなくて・・・そういう意味じゃなくて」
むこぬこ「どうなの? これ和服なんだけど・・・」
斉 藤 「あぁーえ、そ、それは・・。か、かわ・・」
むこぬこ「もういい」
少し怒った様子で珠子たちの集団に戻っていくむこぬこ。
そんな軽いミスを犯した斉藤に仔寝、大輔のベテラン恋人たちが叱咤激励(シッタゲキレイ)する。
仔 寝 「なにしてるのよ。素直に褒めてあげなさいよ!!」
大 輔 「どんなに慣れてても男ってのは緊張から恥ずかしかったり素直な気持ちが言えないものなんだよ」
斉 藤 「はい・・」
大 輔 「だから、その時は一言、可愛いね。素敵だよって言ってあげればいいんじゃないかな?」
斉 藤 「大輔さん・・・」
仔 寝 「頑張りなさい!!! さいちゃんならできるよ!!」
大 輔 「がんばって。」
斉 藤 「はい!!!!」
花火が打ち上がり会場は歓喜と楽しさで湧き上がっていた。
珠子の女子集団の後ろ側で寂しく花火を見つめるむこぬこの傍に近寄る斉藤。
むこぬこ「・・・・?」
お隣まで近寄ってきた自分の彼氏に気が付くむこぬこ。
斉 藤 「ごめんね。言えなくて・・・」
むこぬこ「・・・・あ、そう」
斉藤は急に彼女の手を握りると驚いた顔でこちらを振り向くむこぬこ。
むこぬこ「・・どうしたの?」
斉 藤 「可愛いよ。和服・・・それが言いたくて」
むこぬこ「・・・・」
斉 藤 「・・・・」
むこぬこ「・・・ありがと」
笑顔で無言の相槌を浮かべる大輔と仔寝ちゃん2人。
むこぬこと斉藤との距離がまた少し縮まった感じがした1日だった。
彼と彼女との距離感に注目していこう。
END
次回、「学園祭の役者たち」
お楽しみに。
最終更新:2016年05月08日 04:01